クロスメディアプロモーション戦略

株式会社デジタルパレット 取締役副社長 星名 勧 氏

アメリカでは,以前日本でも注目を集めたOne to Oneマーケティングが再度注目を集めるようになってきている。それにはマスメディアでのプロモーションに以前にもまして効果が期待できなくなってきている背景がある。アメリカの場合は日本の様な全国ネットのテレビ局というのが存在せず,多チャンネルのケーブルテレビが普及していて,全国規模で一度にリーチできるマスメディアがほとんどない。またインターネットの普及で接する媒体もバリエーションを増している。つまりマスに流しておけばすべてにリーチするという時代ではなくなってきている。そこで,ターゲットをセグメント化してアプローチするプロモーション,One to Oneマーケティングに再び注目が集まっている。

One to Oneマーケティングの失敗

以前One to Oneマーケティングが注目を集めた時,残念ながら期待したほどの効果は得られなかった。その理由の第1は,One to Oneマーケティングがマスマーケティングと対立概念であったこと。「もうマスマーケティングは要らない」という極論まで語られていた。そのため,マスマーケティングとの連携で相乗効果を生むというような発想がでてこなかった。
第2は,そもそもOne to Oneマーケティングをするために欠くことのできないお客様のデータベース自体が存在していなかった。
第3は当時,One to Oneマーケティングに対応したデザインノウハウが確立されていなかった。
第4は,新しいマーケティング手法の導入に関してアメリカなどは,ROIについてどれぐらい投資効果があるのかを求められる。しかしROIを明確に提示することがなかなかできなかったのである。
第5は,One to Oneでアプローチするためにいろいろな技術的な制約があり,ネット,モバイル,Webだけを媒体として使っていたので,媒体として不完全であった。
第6は,One to Oneと当時言われていたものは,パーソナライズのみで,提供情報を完全にOne to Oneにできなかった。
以上6点が当時言われていたほどOne to Oneの効果が得られなかった大きな理由だった。

成熟したOne to Oneマーケティング

2003年ぐらいから,欧米を中心に6つの課題が解決されるようになり,再注目をされ出してきたということになる。
アメリカでは「クローズド・ループ・マーケティング」や,「ハンド・レーザー・マーケティング」,「マイクロ・マーケティング」という言い方で紹介されている。コンセプトは実は同じであるが6つの課題をうまく解決した。
第1はマスマーケティングとの連動である。マスマーケティングとはお客様に認知していただくもの。認知したら,より興味を持っていただいて深い関係になっていくものとしてクローズド・ループ・マーケティングの考えになり,マスマーケティングとの連動をうたっている。大手広告代理店も積極的にクローズド・ループ・マーケティングを提案に入れ,対立概念がなくなった。
第2は,One to Oneでアプローチするためのお客様のデータベースをお客様自身が構築をしている。もしくは,構築の仕方をソリューションとして提案している代理店が出てきたということで,データベースが実在するようになってきた。
第3はOne to Oneでは,自動的に情報を変更するということになるので,ハードウェアの制限があり,デザイン的にはパターン化されたプアーなデザインになっていた。One to Oneマーケティングをやるということは,多少なりとも1人当たりのプロモーションコストは上がる。コストアップさせてでも実施するスペシャルオファーなのだから,見栄えも良くて当然。この点でコンセプトと実施にギャップがあった。最近技術が向上したので,制約が少なくなってきたということと,テンプレートデザイナーという人たちが出てきた。この人たちが制約をカバーしつつ,プアーでないデザインをするようになってきたということが挙げられる。
第4に,One to Oneを提供しているエージェントが何らかの形でROIを明確に提示するようになってきた。お客様も安心して採用することができるようになってきている。
第5は,今までは技術的な課題により,One to Oneで中身をカスタマイズするというとネットベースになっていた。2003年,ゼロックスコーポレーションがiGen3というデジタルの高速の印刷機を発売したのをきっかけに,紙でもかなりのOne to Oneが現実にできるようになってきた。ネットやモバイル,紙という媒体で広がりを見せたということで一挙に注目を集めている。
第6はリリバンスである。アメリカではパーソナライゼーションとリリバンスということばを分けて使っている。
パーソナライゼーションでは,A様とかB様というように名前を変えるとか,基本的なコンテンツの中身は大きくは変わらない。しかしながらこれでは十分なOne to Oneでないということで,新たなに「リリバンス」,「リリバント」という考え方が取り入れられている。AさんならAさんにとって本当に重要な情報,極端なことを言うと,Bさんには全然関係ないのだが,Aさんに有効な情報をカスタマイズして配信をする。そこで初めてOne to Oneに効果をもたらすものとしてパーソナライゼーションと分けるためにリリバンスという言い方をする。コンテンツがパーソナライゼーションだけではなくリリバンスになっている。
これら6つの要素が加わることにより,以前コンセプトに比べて期待した効果が得られなかったOne to Oneマーケティングがクローズド・ループ・マーケティングというように言葉を変えてアメリカで盛んに注目され出している。

PAGE2005クロスメディアトラックC5「クロスメディアプロモーション戦略」より(文責編集)

会報「VEHICLE」2005年月3月号 Vol.16 No.12通巻号
(C)Japan Association of Graphic Arts Technology