デジタルアーカイブとは
アーカイブの語源は古い記録の倉庫であり,公共の事務所という意味もある。今日的には博物館が典型であるが,貴重書から映像までデジタル化して管理するのがデジタルアーカイブであり,2つの意味がある。第1は博物館にあるモノをデジタル化するアーカイブ,第2はモノを管理するための情報をデータベース化することである。
博物館の法律で定義された意味は,さまざまな資料があるところであり,美術館から動物園・植物園・水族館まで含むが,図書館は含まれない。博物館のミッションは4つあり,(1)資料を集めること,(2)整理して保存すること,(3)調査研究すること,さらに2次的な機能として,(4)教育普及に使うこと,とされている。
博物館も情報化によって,データベース化が進み,ネットワークを利用した研究者間の情報交換や,国民がインターネットで見ることができるようにとか,展示もいろいろな情報技術を使うように進んでいる。
日本でどれだけインターネットで情報公開されているかがデジタルアーカイブ白書2005に報告されていて,デジタルアーカイブを公開しているところは3割くらいだが,その内容である目録,資料そのもの,の公開されている数は少ない。絵画や彫刻はよく画像で公開されているが,地図や自然物はあまり公開されていない。
先行事例はいろいろ出てきているが,全体を考えるとまだデジタルでの管理が進んでいない。アーカイブは人手がかかる作業なので,さらなる情報技術の活用が望まれている。
世界の動き
世界では,UNESCOがデジタルアーカイブの中心で,文化遺産の認定などもしている。日本のものなら姫路城が世界遺産として紹介されている。UNESCOと連携して文化財の情報共有について作業しているNGOに,ICOM(パリ本部)があり,博物館の情報化の促進活動をしている。
イギリスでは,文化庁にあたるDCMSが24HourMuseumsといって,国内の博物館のデジタルアーカイブされたものをひとまとめにして,全世界に発信する活動をしている。個別には,BritishMuseumがインターネットで公開していて,compasという子供たちわかりやすくナビゲーションする試みを行っている。
フランスも国家的にデジタルアーカイブを推進していて,BNFという機関は,資料のデジタルアーカイブを行い,INAは映像のアーカイブ,RMNは美術品のアーカイブ,というように対象によって3つに分けている。
アメリカはCIMIというコンソーシアムがあり,ヨーロッパ・カナダと共同で事業をしている。個別には,スミソニアンは10強の言語を用意し,Webで公開している。メトロポリタンは,タイムラインという見せ方をしていて,地域と時代のマトリックスで収蔵品を紹介している。またビル・ゲイツの大規模なデジタルアーカイブ,Corbisが有名である。約7000万アイテムあって,有償販売している。
カナダは政府機関CHINがあって,個人などの持っているものをデジタルアーカイブするにはどうすればよいかも紹介していて,デジタル化を民間ベースで裾野を広げようとしている。
韓国では,国家プロジェクトとして,国家文化遺産総合情報システム事業において,各館が収蔵品のメタデータをダブリンコアに準拠した形で作らないと助成金を出さないというように,強力にデジタルアーカイブを進めている。
中国は故宮が中心となって,デジタル化が進んでいる。日本語を含む4ヶ国語で世界に向けて発信している。敦煌研究院では洞窟のデジタル化が行われている。
日本の動き
日本では,政府がe-Japan構想において,高速ネットワークインフラに流す優良なコンテンツとして,文化遺産オンライン構想に,平成15年から文化庁・総務省が取り組んでいる。インターネット上での文化遺産の総覧が実現,文化遺産情報化推進戦略策定がされ,ブロードバンド流通と利活用に向けた実証実験が行われた。そこでは,コンテンツ流通のためのメタデータの開発,不正防止の検討,権利処理が検討された。
総務省の実証実験の中で,デジタルコンテンツが利用される状況,ビジネスモデルを検討した。博物館・美術館からエンドユーザに情報を提供するためには,どこかで一元的に管理しなければならない。このモデルでは,博物館・美術館から中卸をするセンターシステムを置く。小規模な館のコンテンツのデジタル化を手伝う,エージェントのシステムを考えている。エンドユーザに提供するためには,個々のサービスごとにプラットフォームが必要で,センターシステムとユーザの間に,プラットフォームのシステムを考えた。他にポータルサイトや,加工業者があるというモデルで検討がされた。
メタデータは放送番組用J/metaと,コンテンツIDフォーラムのcIDfと,XRMFという権利処理の記述方式を足して,383項目のメタデータが実験に使われたが,博物館資料の項目とは20項目くらいしか合わなかった。利用者にとって,何が有益なメタデータであるのかを検討しなければならない。利用制御とか,権利保護については,既存技術の組み合わせでできそうだが,きちんと管理すると,利用者にとって敷居の高いものとなってしまうことがわかった。
文化庁側の活動では,文化遺産の総覧が実現され,文化遺産オンライン(試験公開版)というホームページで,年代,分野,地域から,日本の文化財を検索して閲覧できる。表示された文化財をクリックすると,それを所蔵している館のページにリンクする。検索は,任意の文章から連想検索する技術が採用されている。長い文章を入れて,近いものを探すことができる。
文化遺産オンライン以外では,国立情報学研究所がUNESCOと共同で,デジタル・シルクロード・プロジェクトを行っている。その他に,バーミヤンの遺物を対象とした取り組みがある。
自然科学系博物館でも独自の取り組みがあり,国立科学博物館が, GIS情報も含んだ標本資料データベースを,またサイエンスミュージアム・ネットは160の博物館の連携で横断検索などを行っている。美術館では,国立4館の収蔵品を横断検索する仕組みが提供されている。
課題
梅棹忠夫氏は,博物館は高度な内容を正確に市民にわからせるための知的情報伝達システムであると述べたが,日本の博物館における,資料台帳の整備状況は,すべての資料を記載した台帳があるのは全体の3割,その資料を印刷刊行しているところは3割,収録品目録がデータベース化されているのが4割,持っている資料のうち,台帳に記載されているのは5割くらいであり,デジタルアーカイブの本格化はまだまだこれからといえる。
PAGE2006 A1「デジタルアーカイブ時代の情報管理」より(文責編集)
会報「VEHICLE」2006年5月号 Vol.18 No.2通巻206号
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