動き出したeBook

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eBookの動向

イースト(株) 常務取締役 下川 和男 氏

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eBookはこの2年ほどで大きく変わってきた。そのきっかけが,1998年11月のComdexFallにおけるビル・ゲイツのキーノートである。彼は「コンピュータで読んでいるものは電子メールとホームページと辞書である。もはや辞書は画面で見るものだ」と明言した。紙で見ているものは新聞と雑誌と本であり,このOnPaperで読んでいる新聞,雑誌,本を、なるべく早い時期にOnScreenに移行していきたい,という趣旨の話をした。当時,マイクロソフトではOpenBookというデータ仕様の作成に協力したり,eBookという読書用のデバイスを開発していた。そのeBookは翌年にWindowsCEを搭載したPocketPCとして出荷されている。ClearTypeという液晶を使った技術を採用することもアナウンスされている。

2000年8月8日,マイクロソフトはパソコン用の読書ソフトウエア「MicrosoftReader」の無償ダウンロードを開始した。Windows上で動き,ブラウザの機能を内蔵している。初日に10万ダウンロードされたという。

MicrosoftReaderのeBookをBarns&Noblesやamazonから購入することができる。データファイルには「.lit」という拡張子がつく。Microsoft Word2000にReaderのプラグインを入れるとMicrosoft Wordに新しくReaderというメニューが追加され,AcrobatのPDFと同様に誰でも簡単につくることができる。プロ用にはReaderSDKが無償で公開されており,著作権管理を行う機能もついている。

一方,Adobeは2001年1月から,Acrobat eBook Readerの無料ダウンロードを開始した。Microsoft ReaderとAdobe Acrobat eBook Readerを比べると,使いやすさや見栄えなどいろいろな点でAdobe製品のほうが進んでいる。

eBookのダウンロード実験

2000年には,スティーブン・キングのeBookの実験が話題になった。スティーブン・キングは,小説「Riding a Bullet」の電子書籍を,サイモン&シュースターから2ドル50セントで販売し,売れ行きが50万部を突破した。しかし,実は初回の24時間は無料だった。40万部が無料でダウンロードされたので,実際に売れたのは10万部程度だという。このとき使われたパソコン上のビューアソフトは,GBReader(GlassbookReader)であった。

その後,スティーブン・キングはThe Plantという実験を実施した。このときはサイモン&シュースターも通さずに,1章を1ドルで直販した。最初に2章をstephenking.comで公開し,決済はamazon.comで行った。ダウンロードした後,1章1ドルずつ支払うという仕組みにした。ダウンロードに対してお金を支払う人が75%以上ならば連載を続ける予定であった。結局,6章で終了した。お金を払う人が50%を切ったからである。

日本の動きとしては,文庫を出版する8社が開始した電子文庫パブリがオープンした。文庫を中心にテキスト系のものを300円から800円程度で販売している。電子書籍はpaburi.comからダウンロードできる。

10daybookは,電子書籍コンソーシアムを事業化したもので,コミックや小説,実用書をダウンロード販売している。このサイトの面白いところは,超流通の方式を採用している点である。最初に書籍のコンテンツをDVDやCD-ROMなどで配布して,内容の一部を立ち読みができるようにする。欲しいコンテンツがある場合,お金を支払えば全部を読むことができる。ソフトウエア系では同様の超流通的な販売は多いが,書籍系で実践している珍しい事例といえる。

読むための端末

新しくeBookのプロジェクトが立ち上がるとき,必要となるのが新しいコンピュータである。そのコンピュータとは,表計算や文章を入力するコンピュータではなく,読書端末用のデバイスである。ザウルスやPalm,PocketPCの画面はますます大きくなっているし,タブレットPCもいくつか世に出てきている。なぜタブレットPCのような液晶画面だけのコンピュータが登場したのか。

ホームページが山のように増え,コンテンツが世界にあふれている。そこで,読むことに特化したコンピュータとしてタブレットPCが登場した。2000年のComdexでは,ビル・ゲイツがWhistlerというWindows2000の後継のOSを搭載した新しい携帯端末を発表した。この読書用の携帯端末の走りとなったのが,Rocket eBookである。GemStarという会社がこのRocket eBookを買収し,新たにRCAという端末を開発した。

アメリカで話題になっているのがFranklinのeBookManという端末である。Palmと同じ大きさで,画面に文章が表示されて読む。eBookManの大きなメリットは安いことである。RCA1100は299ドルだが,eBookManは130ドルで買うことができる。さらに,eBookManはオーディブルというナレーションなどの入ったファイルをダウンロードする会社とも提携しているので,朗読を聞いたり、搭載しているMP3プレーヤでウオークマンのように音楽を聴くことができる。

eBookを手掛けるためには,コンテンツのデジタル化をしないといけない。このため,イーストではXMLデータを作ることを提唱している。XMLは最近のテクノロジーのベースになっているので,印刷会社にもXMLをベースにデータを作ることを勧めたい。

10年後の読書環境

10年後の読書環境はどうなるか。テレビとパソコンとインターネットは,一体化するだろう。SONYから発売されているAirBoadという商品は1枚の液晶に電話線やテレビゲームがつながる。液晶を外して持ち運びができるので,ワイヤレスLANを経由して移動しながらテレビを見たり,インターネットにアクセスしたり,読書をすることもできる。今後,ますます家庭内にパソコンか,電話かテレビか区別のつかないものが増えていき,それがいつでもどこでもインターネットに繋がっているという環境になるだろう。

今,紙の本という形で実現しているもの,例えば辞書は辞書サーバ(sanseido.netなど)に変わり,本が電子書籍になり,教科書はeLearningに変わっていくのではないかと予測している。

電子書籍は第2世代である。MicrosoftReaderやPDF,超流通など,コンテンツがデジタル化されて,ハードディスクの中に入れられている。本棚の紙がなくなってハードディスクの中に入るというのが第2世代で,次の世代はハードディスクにも入っていない。世界唯一のサーバに存在するだけになるだろう。音楽を聴きたければストリーム配信されて聞ける。これからは,自分の得たい情報はサーバから飛んできて,見たり聞いたりする世界になるだろう。

最近,「たまたま紙だった」と,よく表現する。たまたま550年間の印刷技術があり,紙の上でどうするかということを出版社,印刷会社は考えてきた。これからは幅広い意味で,インターネット上でどうするかが重要な問題となるだろう。

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出版社におけるeBookの取り組み

(株)新潮社 ネットワーク室次長 村瀬 拓男 氏

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紙ベースで歴史や経験を積んできた出版社としては,電子書籍に対して何をどうしたらよいのかということは悩ましい問題である。新潮社も過去10年,広い意味での電子書籍についてさまざまな試みを行ってきた。

出版社の仕事の中で電子書籍の分野を位置づけるとき,最も重要なことは電子出版と一言に言ってすべて同じ方法で解決できるものではないということである。分野によって大きく事情が異なる。新潮社が得意とする文芸書の分野,それ以外の学参,地図,児童書,コミックなどの分野,すべて同じ出版社で発行していても,まったく別の会社のような仕事の進め方が行われている。また,分野によって流通や販売システム,商習慣まで異なる。

出版社としては,電子出版は単なる1つの言葉ではなく,各分野ごとにいかに電子化すればよいか,ということを語る必要がある。そこで,新潮社はメインである文芸書の分野の電子書籍化に特化した話をしたい。コミックにおいてはまったく事情が異なるから,同じ方法論は取るべきではないだろう。

新潮社における電子出版の位置付け

文芸書の特徴は,一つの版を作ると何年でも,何十年でも,同じものを売り続けたいし,読む側も同じものをいつでも読むことができる,というものだ。この点は技術書と大きく異なる。必ずしも内容的に最新である必要はない。ある時期に買ったものを5年後,10年後,同じように読み返して,その都度新しい感想を得るという種類のものだ。1回出版したものはずっと誰もが継続的に読める状況にあるのが望ましい。

しかし現在,紙ベースの流通上の問題で,それが非常に難しくなってきている。例えば,新潮文庫の場合,1年間で1000冊から2000冊以上売れないと,リストから消えていく運命にある。物理的にかさばり,重たい紙をベースにしている限り,商売ベースとして成立しないからである。新潮社に限らず,文芸書籍を発行している出版社はすべて同じ問題を抱えている。それが,電子出版に関する取り組みの最も大きな動機となる。

このため,電子出版の位置付けは,電子出版のオリジナルを作るというよりは,出版の制度やシステムの問題によって紙ではカバーできない部分を,電子メディアに移し変えていく手段である。

最初の試みとして,新潮社では約5年前にCD-ROM「新潮文庫の100冊」を制作した。収録作品の一作である、中島敦の「李陵・山月記」を例にとると、難しい漢字が多いため,ルビが必要になるが,ルビ情報は表現し難い。プレーンなテキストを提供するという方法もあるが,そうすると紙の出版でつみあげてきた情報が落ちてしまう。また、JIS外の文字をどのように保持していくのかなど,問題は一朝一夕にはなかなか解決できない。「新潮文庫の100冊」では,ボイジャー社の開発したエキスパンドブックというフォーマットと専用のフォントを導入することにより,これらの問題をとりあえず解決した。紙に比べると読み難いが,何とか読めるレベルのレイアウトができたし,紙ベースで積み上げてきたいろいろな付加情報を可能な限り維持した形で電子データにすることができた。

電子文庫パブリへの参加

電子文庫パブリは,出版社8社が共同して作った出版社の直営サイトである。本来意図している出版が非常に難しい状況になっているため,できるだけそれを補完する形で電子メディアを使っていきたいという発想で成り立っている。新潮社も,紙の本で維持できなくなったものを集中的にここでダウンロードできるようにした。

例えば,現長野県知事の田中康夫氏が、1985年ごろ「朝日ジャーナル」に連載した時評を一冊にまとめた「ファディッシュ考現学」は、新潮文庫としては絶版になっているが、ここで読むことができる。ボイジャー社のエキスパンドブックを発展させた種類のブラウザ「T-Time」で読めるデータをダウンロードできる。ルビのデータや,外字のデータを維持する機能のほか,レイアウトを自分の画面に合わせて大きくしたり,小さくしたりできる。

当然のことながら,電子メディアのオリジナル作品をまったく排除しているわけではない。新潮社のサイトである「Web新潮」では、井上夢人氏の「99人の最終列車」を読むことができる。最初はジャストシステムのWebサイトで連載が始まった作品だが,事情があって、Web新潮に引っ越してきた。地下鉄銀座線の列車の車両に乗る99人の乗客、その客1人1人の視点から,それぞれ1分単位の時間で何を見て,何を考えたかを小説仕立てにしてある。従来の紙では表現できない構造を持っており,作者はハイパーテキスト小説と名づけている。4年に渡って連載された作品だが,2001年秋に,ようやく完結する。しかし,紙の出版をする予定はなく,Webからのダウンロードか,CD-ROMなどのパッケージメディアにしていくだろう。

このように新たな試みも手がけているが,やはり仕事のメインは過去の作品をどのように持ってくるのかであった。

課題となるXML化

出版社の大きな課題は,作品のXMLデータをもつことである。文字はコード化することによって将来的にいろいろな用途に使える。コードで保持すると,レイアウト情報と切り離すことができるので,いろいろなレイアウトに流し込んで表現することができる。また,コード化すれば,文字の読み上げや文字列の検索などにも簡単に対応ができる。文芸書の分野においては,テキストと,プレーンテキストでは表現できない日本語表現,ルビ,外字,その他約物などをタグの形で付加していく,という形のデータ構造が基本的には望ましいと考えている。

電子文庫パブリでは,電子書籍で提要しているタイトルを,オンデマンド印刷の本も用意して販売している。オンデマンドプリントの本と電子書籍は,まったく同じ工程で作られ,最終的なアウトプットとしてそれぞれに出力するという制作スタイルを取っている。

残念ながら旧来の本,CTS等で組まれた本からダイレクトにこちらに持ってくることはできない。CTS上のデータ構造は,印刷会社や印刷会社内で使っているシステムごとに異なる。また,レイアウト情報と本文に関する情報が必ずしも分離されて保存されていない。このように,紙ベースで印刷してきたものと,電子書籍,オンデマンドプリントがダイレクトにリンクしていない状況である。

今後作る本に関しては,雑誌連載,単行本,文庫本,さらに電子書籍,オンデマンドプリントの本が一連の流で制作できるような工程を考えていかなければいけないと考えている。

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イーブックビジネス

(株)イーブックイニシアティブジャパン 代表取締役社長 鈴木 雄介 氏

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イーブックの本命を目指す

私は30年間,小学館の編集者をつとめてきた。1998年に,本を電子書籍にして全国に届けるための実験を行う電子書籍コンソーシアムという団体を結成した。国の支援も得て,実際に実験も行った。このコンソーシアムは出版社が中心であったが,出版社以外の企業も集まり,全体で155社の企業がそれぞれの知恵や技術を出しあった。

実験にはいくつかの課題が検討されてきた。第1は大容量の配信である。出版社は小説のようなテキスト中心のものだけでなく写真集,漫画なども数多く扱う。電子書籍コンソーシアムでは,これらのコンテンツを画像でデジタル化した。しかし,その大容量コンテンツの扱いが大きな課題であった。1998年ごろは,現在のようにブロードバンドという言葉は普及していなかったため,大容量コンテンツの配信には通信衛星で配信という選択しかなかった。

しかし,今やブロードバンドという言葉が毎日のように新聞に書かれ,使いにくい衛星だけではなく,CATVインターネットやADSLがあるし,光ファイバまで目の前にきている。1年か2年の間には,自由に家庭の中でブロードバンドの時代を楽しめるだろう。

そうなると,最大の課題であった大容量の写真集や漫画,美術全集,料理の本が自由に配信できる。むしろブロードバンドは映画が配信できるくらいレベルを狙っているので,本の1冊や2冊は何でもないという時代に入りつつある。このように,大きな悩みであった大容量の配信がまもなく実現される。

第2の課題として,高画質のまま圧縮させる技術を検討してきた。実験を通じて,かなりきれいな状態で高圧縮ができる技術が開発され,イーブックイニシアティブジャパンでは,現在はそのフォーマットを採用している。

第3の課題は美しい日本語を表示できる高精細な画面であった。1998年当時は液晶画面も粗く,72dpi程度の画面ではルビがつぶれてしまう。実験では,文庫本のルビが読めるくらいの液晶を特別に開発してもらった。しかし,2000年半ば以降に発売されているノートパソコンは,きれいな高精細の液晶ディスプレイを搭載している。わざわざ特別な液晶を開発する必要がない状況になってきている。

第4の課題は携帯できる読書端末である。パソコンで読むのでは机に縛られてしまう。本は自分の好きな場所で読みたい。実験では特別に端末を開発したが,今では各メーカーで読書用端末のプロトタイプの制作が始まっていると聞く。

第5の課題はどこからでも電子書籍が買えるということだった。実験では,大型書店の店頭に情報キヨスクを設置して,そこに衛星からコンテンツを配信した。読者は記録メディアにコピーしてコンテンツを入手する。同様の配信は音楽分野でも始まっており,コンビニの店頭に情報キヨスクが設置されはじめている。音楽と一緒にeBookも配信したいという声も寄せられている。

第6の課題である決済も大きな悩みであった。クレジットカードが自由に使えればいいが,手数料が高く,1冊何百円という本には向いていない。現在は,少額決済に適当な方式がいろいろ提案されている。

eBook事業の実現

電子書籍コンソーシアムでは,大容量の出版物でもeBookにして配信したいと実験してきたが,その課題の多くが,現在の環境では実現可能となっていている。

2000年6月に小学館を辞めて,イーブックイニシアティブジャパンを設立したのも,電子書籍をビジネスにできる時代が来たと判断したからである。ブロードバンドの専用サービスを開始し,あらゆる書籍をeBookにして全国に配信したいと考えている。ここで,電子書籍コンソーシアムの成果を引き継いでいきたい。

実際にはブロードバンドを自由に使っている人はごく少数である。このため,ブロードバンドのサービスは時期尚早ではないかとも言われた。しかし,一方でビジネスチャンスでもあると考えた。現在の細い回線の中でのサービスをいくら提供しても,ブロードバンドの時代になると,eBOOKのデータ作りからやり直さないといけない事態が来るのではないか。

eBOOKビジネスは,出版界が抱える巨大な流通在庫,品切れ,絶版という問題を解決する手段となるなら、電子化に多少のお金を投資しても回収できるだろう。

日本の出版市場は,マンガが新刊の発行部数の約40%を占めるという大きな特徴がある。世界でもそのような出版市場を抱えているところはない。eBookにおけるマンガはアメリカでは関心がもたれていない。しかし,日本をはじめ韓国や台湾などのアジア圏は,今後大きな市場になる可能性があるので,この分野をきちんとカバーしておきたい。

なおかつ日本の印刷技術は世界からみても高く,美術全集,写真集,料理,絵本などの美しい本が多数出版されている。これらをすべて配信できる仕組みを用意すべきだと考え,画像データにすることにした。

10DaysBook

イーブックイニシアティブジャパンでは,10DaysBook(http://www.10DaysBook.com)というWeb上の書店を立ち上げ,電子書籍を販売している。(図1 10DaysBook)トップページに「今日のおすすめ」や「eBookの新刊」情報を提供している。今日のおすすめには,2日に1回程度更新する,編集部からのおすすめ本が表示される。日々電子化が進められているので,eBookの新刊は月に約200点ほどリリースされていく。現在のメインタイトルにはサイボーグ009,ドカベン,桜沢エリカ選集,赤川次郎,鈴木光司などの作品がある。10DaysBookで売上げが好調なのは,「静かなるドン」というマンガである。全体的にみてマンガが主翼を占めているが,小説も読んでいただいているようだ。

eBookの新刊は,本屋の平台のようにでランダムに表紙を並べている。説明はほとんどない。本屋に行って本を買うとき,普通は本の隣に何も説明がない。歩きまわって,気になるものを手にとるうちに,1冊買うつもりが4,5冊買ってしまう。このような本の買い方をしてほしいと考えた。

通常,コンピュータを利用して情報を提供する場合,検索画面がある。10DaysBookでは検索画面を作らなかった。その理由は,検索で探すと1冊しか購入してもらえないからである。10DaysBookでは表紙の画像を並べ,クリックすると中身の説明が出てくるようにした。「立ち読みする」ボタンを押すと,20ページまで無料で中身を読むことができる。10分も20分もかけていろいろな本を立ち読みをすることもできる。20ページ以上読みたい人には購入してほしいという作りにしてある。(図2 本の概要と立ち読み画面)

立ち読みの機能には,イーブックイニシアティブジャパンが開発した高圧縮のきれいなビューワを採用している。印刷に近い高精細なデータになっている。何もしないと1冊200〜300ページの本の場合,1GBから2GBの大容量になるが,それを15MB〜16MBまで圧縮している。

コンテンツの特徴として,文字も画像データにしているという点があげられる。画像データでとり込んでいるため,挿絵がそのままいきる。画質は文庫のふりがなも読める。中高年の方で読みずらい場合は,拡大することもできる。文庫が2倍の大きさに表示されるので,ほとんど目も疲れないし,ふりがなもきれいに表示される。

イーブックイニシアティブジャパンは,本をわざわざテキストにする必要はないと考えている。日本の印刷技術がディスプレイ上でそのまま再現されることの方が,読者にとって違和感がないのではないか。

超流通で配信

10DaysBookはブロードバンド向けのサイトだが,eBookを読みたいけれどブロードバンドを利用していない,という人に向けて超流通の方式も利用する予定である。

CD-ROMやDVDにコンテンツを収めて,パソコンにバンドルして配布してもらう。パソコンメーカー数社と話し合いをしているが,新しいパソコンの使い方を提案できるのではないか,と各社とも大変興味を持っている。書籍データの入ったDVDやCD-ROMをパソコンにいれる。データの一部は立ち読みができる。読んで欲しいと思った人は購入ボタンを押すと10DaysBookのサイトにとぶ。そこで欲しい本の鍵を購入してもらえば,1冊全部読むことができる。

パソコン雑誌にもバンドルして,10万枚のDVDを配布した。これは今後も続けていき,年間60万枚くらいを配布していく予定である。書店や大学の研究室へのCD-ROMの無料配布も2001年4月からスタートする。2000年末,実験的にジュンク堂書店で10万枚を配布してもらった。これを年間100万枚配布する予定である。さらに,4月ごろから,大型書店や大学生協,コンビニの店頭で情報キヨスクを設置していく。ここにeBookをキャッシュして,フラッシュメモリのようなものにコピーしてパソコンで利用してもらう。

eBookの市場拡大に向けて

今後,10DaysBookという書店の看板をフランチャイズしていく予定である。既にいくつか始まっている。CATV,大手プロバイダ,通信キャリア,ADSL業者のポータルサイトに,10DaysBookという看板がいくつかかかげられている。

漫画家や作家のファンサイトにも展開していく。個人へのフランチャイズもてがけていく。フランチャイズ側は,10DaysBookの書庫から自分の好きな本を選んで売る。客はそれぞれのサイトで購入しているつもりだが,実際には10DaysBook側で全部決済し,10DaysBookのデータベースからデータがダウンロードされる。お金とデータの一元管理ができるというeBookならではのビジネスだと考えている。

将来的には,画像圧縮技術を利用して,メーカーとeBook専用機を開発することも考えている。

2001年2月末か3月ごろには,10DaysBookから韓国のマンガをハングル語で発売する。マンガは画像であるからこそ言語の壁を越える。日本からアジアへ輸出されたマンガ文化が,きわめて美しく育ってきている。ハングルのマンガを65万人の在日韓国人に展開していきたい。

ブロードバンドの時代に入り,専用端末が生まれた時が,eBookのブレイクポイントになるのではないか。

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アドビのeBookソリューション

アドビシステムズ(株) マーケティング部 石原 信義 氏

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eBookの普及のために重要なことは,第1にコンテンツの中身である。環境がどれほど整備されても,魅力あるコンテンツが投入されなければ,誰も読まない。第2は読書環境である。紙の本のように読むことができるかどうかが重要である。第3は著作権である。今は音楽配信では著作権侵害が大きな問題となっている。違法コピーを防止できないと作家はeBookに作品を提供しないだろう。

コンテンツは出版社がすでに取り組みをはじめている。アドビは読書環境,具体的にはビューアをいかに快適なものにするか,著作権をいかに守るかということに取り組んでいる。

アドビの製品は既にアメリカでは,大手書店のBarns&Noblesで採用されており、紙の本がオンラインで購入できる。日本のマンガはアメリカでも人気がある。ComicsOneというサイトは,アメリカで日本のマンガを買い付け,英語に翻訳したものを販売している。ここにもAdobeの技術が使われている。

アドビは2000年初頭に、eBookソリューションとしてPDF Merchantという製品を発表した。その後、アドビと同様のソリューションを提供していたGlassbookという会社を買収し、2つの会社が融合してどのような方向へ展開するか検討した。2000年末、製品の入れ替えを行い、日本ではAdobe Content Server,Adobe Acrobat eBook Readerを2001年の秋から開始する予定である。

電子書籍ソリューション

アドビの電子書籍ソリューションは、データフォーマットである「Adobe PDF」、著作権保護とコンテンツの流通・販売を行う「Adobe Content Server」、読書購入の端末ビューワソフト「Adobe Acrobat eBook Reader」という3つが大きなコンポーネントとなっている。

アドビがPDFによってこの分野で先行している理由は、DTPでPostScriptを使っている人にとっては簡単にPDFを作ることができるからである。Acrobatを使ってデータをPDFに変換しさえすればよい。Adobe InDesignやQuarkXPressはもちろん、Microsoft Word、Microsoft Excel、Microsoft PowerPointからでもPDFをつくることができる。

電子的に紙の本を再現する際,パソコンに入っていない書体や外字の扱いは大きな問題となる。PDFは、出版社にとってこの重要な書体を、ファイルに埋め込む機能もついている。

ContentServerは、出版社や書店など,本を売る,作る人に利用してもらう著作権を保護するためのアプリケーションである。Webベースで使い方はとても簡単である。機能は、PDFの暗号化や、暗号化したPDFファイルの解除,読むための鍵(ここではバウチャと名づけている)を発行する。また、BtoCへの販売、BtoBでの販売および仕入れ、販売履歴の管理機能をもつ。紙の本のようにeBookを、出版社から取次ぎA、取次ぎBと流通させたり、マネジメントをすることができる。

許諾情報をコントロールして、印刷回数の制限をすることも可能である。料理の本などに、1日1ページまで、とか1カ月毎に5ページまで印刷を許可するという細かい設定が可能である。

ContentServerを使用してダウンロードされたeBOOKは,ダウンロードしたパソコンでしか読むことができない。それにより、違法コピーを防止している。しかしながら,出版元がそのコンテンツに許諾を与えていれば,貸し借りや譲渡もできる。紙の書籍の慣習を継承することは,電子でも重要と考える。

ContentServerはライセンス形式で契約販売をする予定である。具体的な価格は決まっていないが、年間数十万円程度のライセンス料で出版社やオンライン書店と契約を結んでいく。ライセンス料に加えて、コンテンツごとに販売金額の数%のロイヤリティを徴収する。例えば1000円の本を販売したときには,例えば30円をAdobeに支払ってもらうというビジネスモデルを考えている。2001年秋にはサービスを開始したい。

ビューア環境

読む側に採用してもらう製品としてAdobe Acrobat eBook Readerがある。これは,Acrobat Readerと同じで、PDFを読むためのビューワである。Acrobat Readerとの違いは、ユーザインターフェイスを,本を読むために特化させたという点である。Content Serverで暗号を掛けられたコンテンツをこのeBook Readerで解除することができる。

USでは既に1月29日からダウンロードができる。Adobeのサイト,Barns&Noblesのサイト,ComicsOneのサイトなどからもeBookReaderをダウンロードすることが可能である。eBookReaderの日本語版もContentServerと同じ2001年の秋から提供する予定である。価格はAcrobatReaderと同様に,無償で配布する。

eBookReaderには蔵書という概念がある。eBookReaderを立ち上げると自分の蔵書をサムネイルで確認することができる。コミック、文学などのようにカテゴリー別に整理したり、著者別,買った日付順にソートすることも可能である。読むときはページをクリックしてページをめくっていく。Acrobat Readerと同様にリンクやしおり、マーカー、注釈機能もある。eBookReaderになって、見開き表示や回転表示も実現した。

アメリカでは大学の教科書が非常にeBookに向いている。アメリカの学生は本をたくさん読まないといけないため、大きな本を5冊も6冊も抱えて学校に通っている。そのようなところにeBookは大きな市場があるだろう。

ブックストアというボタンを押すと,あらかじめ登録してある本屋のホームページに飛んでいくことができる。自分の好きな本を選んで,購入すると、鍵とコンテンツがダウンロードされる。

ContentServer,eBookReaderなどを2001年の秋から日本でもサービスを開始し,積極的にこのeBookというマーケットを拡大させていきたい。

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ディスカッション

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下川

新潮社はCD-ROM上で新潮文庫の100冊などをてがけてきた。OnPaperからOnScreenということで,液晶で読むことに対して読者からはどのような反応があったのか。画面で読むことに対するユーザの声をうかがいたい。

村瀬

実は、読者はほとんど声を発してくれないため、こちらに届いている声がその多数を反映しているかどうかは確かではない。1995年に新潮文庫の100冊を出したときに,こちらとしては、紙の本よりは読みにくいだろう,商品として許容できる最低ランクではないか、という思いがあった。しかし、思いのほか好意的に受け止められている。特に年輩の方は文庫や書籍の文字を大きくして読むことができ、しかも文字を大きくすると紙より読みやすいと言う声がかなりあった。

下川

新潮文庫をデジタル化する作業は,具体的にどういう工程を経てなされているのか。OCRを使っているのかとか,手入力をしているのか,その後外字はどうするのかなどを教えて欲しい。

村瀬

工程はスタートポイントが2つあり、印刷所レベルでCTSや電算のデータが残っている場合と,残っていない場合である。経験で言うと,昭和の時代に初版が組まれたものは使えないものが多く,平成以降のものはだいたい使える。データが使えるものは印刷所に依頼して,データをテキストベースにしてものを出してもらった。しかし、そこには印刷用のタグが大量についていたので、それをプレーンテキストに戻して,ルビのデータや字下げ情報を打ち込んでいく。それをプリントアウトして,紙ベースで校正する。

昭和60年以前のものには,印刷用のデータはほとんど使えないので,市販のOCRソフトで取り込んで、校正してデータにしている。

オンデマンドプリント本や電子文庫パブリで展開しているものに関しても,基本的に同じスタイルである。オンデマンドプリント本として組んだものを紙ベースで校正して、最終的に校了にしたものから,電子テキストのタグ付きのテキストを作成している。

下川

2000年12月に10dayBookがスタートしてから、売れているタイトルや購読者層、購入する形態、読者の動向などを鈴木氏に伺いたい。

鈴木

サービス開始後から約1カ月なので,実質的な数字は大したことはないが,いくつか特徴的な点で驚いている。第1はリピーターが非常に多い。一度買いに来た顧客が何度も買いに来ている。つまり,eBookが確実に商品として価値をもっているということである。リピーターが少ければ,一度読んで幻滅してこないということになる。

第2は、マンガの特色でもあるが,まとめ買いが非常に多い。10冊,20冊とまとめて買っていく。ドカベン48巻を全巻揃えているが、それをいっぺんに購入した人もいた。良質な本やマンガが大好な人が集まりつつある。

売れている分野はマンガが圧倒的である。テキストのほうは動きが弱い。

電子書籍コンソーシアムでは、全国に読書専用端末を400台作って,希望する読者に貸し,20店舗の書店で電子書籍を購入してもらうという実験であった。実験参加読者の約400名に、10dayBookという読者が参加する良質なサイトを作りたい、とメールをだしたら、50人以上から「面白い,是非やろう」という熱いメールが届いた。eBookに対する期待感は,想像以上に高いと思っている。買い方の仕組みや,快適な読書環境を検討していけば、eBookそのものは熱い思いで支持されているだろう。

質問

鈴木氏に伺いたい。個人に対してもフランチャイズをするという話があったが、その際には,お金は掛かるのか。

鈴木

お金はいっさい掛からない。本はどこで売ってもいい。今回のビジネスモデルは誰でも本屋になれるということである。10DaysBookという看板を貸すのである。

例えば環境問題をとりあげたホームページを作っていて、10DaysBookの書庫から環境関連書庫を選んで売りたいという人がいれば、その表示のためのデータだけを渡す。ボタンを押せば,10DaysBookのサイトにジャンプして購入することができる。どこのフランチャイズから来たかは、10DaysBookでチェックできるようになっている。バックヤードは10DaysBookで全て用意するので、個人のホームページを運用している人は何の手間もいらない。決済の中から,それに見合うマージンを渡す。個人は儲けのためやっているのではないので,1ヶ月に3冊売れたというだけでも大変喜んでもらえるのではないか。

質問

村瀬氏に伺いたい。制作工程の中で,校正の時にはプリントアウトして行うという話があったが,これは将来的にも方法は変わらないと思うか。

村瀬

当面は変わらないと思っている。社内的なシステムがすべて紙ベースで動いているためである。校閲者などの技能も紙ベース馴染んでいるので,そこから踏み出すことは難しい。修正の履歴を誰でもわかる形で残していくという点では,まだまだ紙の方が便利に使える。

また、画面上の解像度の問題がある。プリントアウトをした印刷物の解像度はdpiレベルで4桁の数字があるが,画面の解像度は2桁から3桁の下の方になる。その解像度の違いは、間違いの発見に大きな影響を与えているというのが,これまでの経験上明らかになっている。画面で見つからないものが,紙に印刷すると見つかるということは多いので,当面校正は紙で行う。

下川

MicrosoftのDickBrassが2020年には,90%がeBookになってしまい,本の定義が変わってしまうという話があったが,紙ではなくて液晶で本当に皆が読むようになるのか,紙の本はなくなるのか,ということについて,いつ頃どうなるか,パネラーの方々に聞きたい。

鈴木

私はまったくはなくならないと考える。私たちがてがけているeBookが存在するのは、親分である紙が存在するのが前提だ。新しい才能が出てきて,新しいWeb上での出版物のやり方が提案されると別問題だが,既存の本という概念の中では紙が親だ。四六版の本があって,次に文庫になる,その次にeBookになると考えた方が,素直な考え方だろう。

今出版市場が2兆2000億〜2兆3000億円といわれているが,その中でeBookが5%も占めたらすごいことではないか。紙の本はとても素敵なので,それは十分に残っていくと思う。

ただし、国際的な動きの中で,例えば中国やインドのような巨大な人口の人たちの文化レベルが上がり,生活用の紙をどんどん使い始めて,紙の値段が10倍になったというようなときに,大きく出版は変わるだろう。外部の直接的な,ある意味では暴力的な影響がない限り,紙の本はまったく今と変わらない,と思う。

村瀬

私も鈴木氏と同じ見解だ。紙ほど便利なものはないと思っている。新潮社は文芸書がメインであり、これは実用品ではない。eBook関連の問題では,いつも利用などの概念が出てくるが,文芸書のような楽しむものは,利用という感覚と遠い存在だ。だからこそいまだに紙の匂いであるとか,手触りであるとか,そういったことが重要視される。

外部的な暴力的要因でもない限り,紙を捨てる必要は全くない。紙の本であるがゆえのマイナス点をこの電子メディアでいかに補うか、ということが基本的なスタンスである。また、それが当面正しい道だと思っている。

新潮社はオンデマンドプリント技術も実用的になりつつある。しかし、オンデマンドプリントはまだコストが高くて,電子本の5倍から10倍くらいの値段になる。それを反映して、電子本が10に対してオンデマンド本が1の割合で売れている。

石原

私も紙がなくなるとは思っていない。紙とeBookは両立するものだと思っている。用途や,読者によって選ばれていく。分厚い本を5冊も持ち歩かなければいけない人にとっては,eBookの方がいいと思う。校正をする人には紙の方がいいだろう。自費出版をしたい人は最初はeBookで出版して、反応が良ければ後で紙で出すという方法もあるだろう。

PDFのいいところはeBookでも出せるし,売れてきたらそのまま印刷して紙の本にもできるという,シングルソース・マルチユースが実現する点である。

鈴木氏が,eBookが紙の本の5%も行けばいいのではないかと言われていたが,私も2005年くらいに5%行けば,大成功だと思っている。

2001年PAGEコンファレンス「動き出したeBOOKより(文責編集)

会報「VEHICLE」2001年3月号 Vol.12 No.12 通巻144号
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