インフォテリア株式会社 代表取締役社長 平野 洋一郎 氏
インフォテリアは,XMLをベースとしたソフトウエアを開発・販売するソフトウエアベンダである.XMLをベースとしたB2B(Business to Business)は,現在のところ製造業や企業内消費財業界などにフォーカスが当たっている.しかし実際には,あらゆる産業にかかわりがある.
<中見出し>B2Bはブームではない
<本文>B2Bは,マスメディアでもよく特集が組まれ,ブームのように言われることがある.しかし,B2Bはいわゆるブームのようなものではない.オフィスやビジネスの中で,コンピュータが活躍するIT革命の第3段階に匹敵する,非常に重要なものである.
第1段階は1980年代である.1982年にIBM PCが出荷され,オフィスにPCとソフト(ワープロ,表計算,会計など)が導入されて個人の生産性が高まった.
第2段階は,企業の中にLANとLANを使用したアプリケーションが導入されたことである.LANを通じてメール,グループウエア,イントラネット,ERP,RDBなどをグループで使用することによって,企業内の生産性を上げた.
第3段階は,インターネットをベースにして企業間の生産性を上げる段階である.これがB2Bである.したがって,1〜2年のブームではなく,第1段階,第2段階がそうであったように,10年ほどかけて取り組まねばならない非常に大きな流れである.
<中見出し>B2Bの重要性
<本文>企業内にPCが増えて,まず個人の生産性が上がった.その増えたPCがLANでつながり企業内組織の生産性が上がった.従来から,ビジネスプロセスは,企業内プロセスと企業外(会社間)プロセスとが連続して繰り返されるものである.現在の状態は,その企業内プロセスが,PCとLANによって非常にスピードアップされ,効率化されている状態である.この状態でビジネスプロセス全体をより一層効率化するとしたら,どこに力を注げばよいかということが,今突きつけられている課題である.
もちろん,企業内プロセスをさらに効率化することもできる.しかし,すでに効率化が進んでいる企業内プロセスより,現在ボトルネックとなっている会社間プロセスの効率化を図るほうが,ビジネスプロセス全体の効率化を図るためには効果的である.ここに企業間をつなぐB2Bの重要性がある.
B2Bの導入を勧めた場合に,「見積書も契約書もFAXでやりとりしている.実際の受発注もFAXである.わざわざB2Bを導入する必要はない.しかもB2Bは導入コストもかかるし,使い方もよくわからない.そもそも他の会社が使っていない」とよく言われる.しかし,そのFAXも,たった20年前には同じように言われた.
20年前は,現在のFAXで使用されているG3規格がなかった.G3規格は,1983年に制定され,それから5年ほどの間に急速に普及した.今,会社にFAXがなかったら,ビジネス上に支障を来すだろう.
B2Bは,デジタルでコンピュータとコンピュータをつないで商売する仕組みであり,普及したときにその仕組みを持っていなかった場合には,FAXがなければビジネスに支障を来す現在の状況よりビジネス上の大きな支障となるだろう.
<中見出し>B2Bに必須のXML
<本文>企業間をつなぐというのは,昔からなかったわけではない.グループ内や系列企業内で,システムやソフトウエアを統一してつないでいた.EDI(Electronic Data Interchange)もグループウエアも同じである.例えば,全部Notesで統一するとか,Exchangeで統一するとか,SAPで統一するという形であった.
ところが,インターネットを使って企業間をつなぐことになると,系列外,グループ外,国外などの企業間ともつながなければならず,ソフトウエアもシステムも統一できない.
しかし,電子商取引を行うためには,システム同士がコミュニケーションできなければならない.そのためには,異なるシステム間やソフトウエア間でも理解できる,共通言語が必要になる.その共通言語が,まさしくXMLである.この企業間接続に共通言語を必要とすることが,グループ内や系列企業内でつないでいた昔と大きく異なるところである.
IBMは,XMLを「eビジネスの言語(XML is the language for e-business.)である」と言っているし,Microsoftは,社運をかけたドットネットをすべてXMLベースとし,「XMLはシステムやデバイスの壁を取り払って,ネクストステージのデジタル革命をなし遂げる」と言っている.
<中見出し>なぜXMLなのか
<本文>「コンピュータ同士をつなぐために,なぜXMLなのか.データを交換するだけならCSV(Comma Separated Value)で十分だろう」と言われる.確かにCSV形式はよく使われているし,いろいろなソフトウエアでもサポートされている.
売買に関する部分だけをつなぐなら,CSVを使用することも考えられるだろう.しかし,B2Bは単純にビジネスの一部だけをつなぐのではなく,プロセス全体をつなぐことである.したがって複雑なデータ構造なども扱えることが必要で,単純な二次元の表形式のCSVでは対応できない.
各種の企業プロセスをつなぐため,単純な縦横表では対応不可能であり,構造化やスキーマ変換ができるとともに各種のアプリケーションから独立していることが要求される.XMLは,これらの要求項目を特徴としている.この特徴から,例えばERP同士の接続や企業間でのECRM構築など複雑なデータも扱うことができる.これが,企業間プロセス構築のベースにXMLを採用する技術的理由であり,普及の引き金になっている.
なぜXMLなのかと問えば,多くの人は他の人が使っているからと答えるだろう.これを私は,XMLデバイドと言っている.つまり,XMLをベースにして企業間のワークフローを作り出すため,XMLを扱えることが仕事ができることであり,XMLが扱えなければ仕事ができないと判断されることである.
<中見出し>B2B取引の伸び
<本文>すでに多くのB2B導入事例があるが,一番ホットな事例は,2001年2月5日の新聞にも掲載された伊藤忠商事のInfimexで,自動車業界のJNX対応e-マーケットプレースである.このように電子業界だけでなく,各種業界でも取り組みが始まっている.
Goldman Sachs Researchの予測によれば,WorldwideでB2B上で取り引きされる金額は,2000年が約40兆円,2005年が約500兆円になるとのことである.つまり,500兆円の取り引きを行うシステムを,各企業が作ることになる.このシステム構築費用についても取引高の2%弱と予測しており,とすれば,2005年には9兆円程度になる.2000年から2005年までに取引額が約10倍になれば,システム構築に対する各企業の投資額も10倍になる.
<中見出し>XMLベースのB2B事例
<本文>B2Bの実装を進めるために,何が必要か.XMLは自由にタグを定義できる.しかし,個別の対応ごとにタグを定義し企業間をつなぐ方式では,コスト,手間,時間が非常にかかる.そこで,XMLだけではなく,XMLをベースにしてつなぐための各種の標準化が進められている.この標準を使用することによって,簡単に早く安くB2Bを実現できるようになる.
とはいえ,すべての標準化がそろわなければ,B2Bが実現できないということではない.すでにXMLをベースにしたシステムがいくつもできている.
<小見出し>Biznet
<本文>Biznetは,企業内で必要とする各種備品類の購買を代行するもので,文房具会社プラスの100%子会社のビズネット株式会社が運営している.顧客企業の総務部門,購買部門から注文を受けてサプライヤから仕入れて渡すというものである.
従来はWeb画面(ブラウザ)から注文する方式であったが,2000年6月からXMLでも注文書を受けるようになった.ブラウザ入力方式では,以前に購入したことがあるものでも,ブラウザのフォームに1個1個再度入力しなければならない.
そこで,発注者側が発注データの管理,カット&ペーストなどの再利用,発注分析などがやりやすいExcelで入力し,XMLに変換して注文するというシステムを構築した.
実際に発注側で使われているツールは,iMaker for Excelである.このツールには,Excelのワークシートを指定のXML文書に変換して,電子メールで送るという機能まである.注文を受ける側にはiMessengerというツールを使用し,メールで送られてきたXMLの発注文書を取り出し,従来のブラウザ入力方式のシステムにデータを渡す.
<小見出し>orderit
<本文>orderitは,企業向けにパソコン,机,文具などをオンラインで販売するもので,NTTデータオフィスマートが運営している.このシステムの特徴は,発注者側企業のワークフローとインターネットサービスとを直結したことである.
発注者側企業の起案者が,orderitが提供している商品カタログの中から購入したい商品をブラウザで選択すると,選択した商品リストがXML形式で起案者に送られ,社内用の申請書が作成される.起案者がその内容を確認し,見積をorderitに要求すれば,その発注会社向けの見積がorderitから送られ申請書に自動的に添付されて上司にまわる.上司が承認した申請書が購買部門に回り,購買担当が発注ボタンを押せば,XML形式の注文がorderitに送られ,注文請書が購買部門に送られてくる.
ここでは,各社のDB(例えばOracle,SQL Server,DB2,Notesなど)からデータを取り出して発注電文を作ることから,iConnectorというツールを使用している.
注文を受けて処理するorderit側には,iPEXというXMLのライブラリを使ってXMLを処理する.
ブラウザ上で行うカタログ検索を除いて,発注者側企業とorderitとの交換情報はすべてXML形式である.このため,発注者側企業ではデータの再入力,転記,カット&ペーストなどの作業は不要で,必要書式へのデータの組み込みなどが自動的に行われ,社内のワークフローに自動的に流される.
<小見出し>RosettaNet
<本文>Biznetとorderitは,社内消費財をオンラインで販売する例であるが,RosettaNetは,エレクトロニクス業界で完成品を作るための部品調達と,完成品流通という2つを行うための仕組みを提供するものである.
この仕組みは,コンピュータメーカーDELLが,製造から販売まで一体化した垂直統合型モデルで成功したことを背景に,他のメーカーが大同団結して成功させようとしたものである.もともと米国で始まり,今は日本,台湾,韓国でも始まっている.この枠組みでは物品の売買だけではなく,パートナー情報,製品情報,在庫情報,マーケティング情報管理,サービス/サポートというビジネスプロセスまでカバーしている.
RosettaNetでは,(1)単純な売り買いだけではなく,これらのビジネスプロセスをカバーすることで,パートナー企業との密なプロセスの構築ができる,(2)従来のEDIや特定のフォーマットを使用するのではなく標準をベースとすることから,接続先パートナー企業が増える,(3)部材サプライヤ,製品製作会社,工場,販売会社,小売りなど,バリューチェーン全体にわたる情報の一貫性で,プロセスのスピードアップがはかれるなどの価値が実現されるとしている.
<中見出し>B2Bサーバの必要性
<本文>オークションやポータルのようなブラウザベースのB2Cシステムでは,Webアプリケーションサーバ(いわゆるWebサーバ)を構築し,その上に各種のビジネスロジックを積み上げる.しかしB2Bシステムでは,プロセスが自動になるなど,ビジネスロジックの部分が非常に複雑になるため,B2B専用サーバを使用することが最良の解決策になる.
社内ネットワークとインターネットを接続する場合に,両者の間にルータを置き,社内ネットワークとインターネットをルータに接続すれば,いちいち接続先と確認するなどの手間をかける必要はない.これと同じようにB2Bサーバは,企業と企業とをつなぐルータの役割を果たさなければならない.そこで,我々はB2Bサーバを,サーバではあるがB2Bルータと呼んでいる.しかし,現実のB2Bサーバは,まだそこまで達していない.B2Bサーバを他社,あるいは他のプロトコルシステムと接続する場合には,すべて接続確認を行っている.こんな状態では,B2Bが普及しない.ネットワーク接続のルータと同じように,B2Bサーバを接続すれば,面倒なことはすべて済ませてくれるようになる必要がある.
企業内プロセス(Private Process)と企業間プロセス(Public Process)の間にあって,両者をきちんとつないでくれるのが,B2Bサーバである.このB2Bサーバを使用することによって,社内システム側では社外のビジネスプロトコルを意識する必要はないし,社内システムをXML対応にしなくてもよい.
B2Bサーバには,その出自によっていくつかのタイプがある.社内の勘定系,業務系,販売系などを統合するEAI(Enterprise Application Integration)ソフトに外部とのデータ交換用としてXMLの口を付けてB2Bサーバにしたもの,XMLと相性のよいオブジェクト・オリエンテッド・データベースにビジネスプロセスを積んでXMLサーバになったもの,同一グループ企業間などで商取引に関する情報を交換するためのEDIに社内の部分とXMLの口を付けたもの,そして,Internet時代のネットワーク接続と標準化対応のためにゼロから作ったものなどがある.このゼロから作ったものに,当社のアステリアやMicrosoftのBizTalkがある.
アステリアはXMLで作られており,各種のビジネス標準(例えば,ROSETTANET,CommerceOne,ebXML,Aribaなど)をプラグインで差し込むだけで使えるB2B専用機である.アステリアは,前述したB2Bルータを目指しており,プラグインも順次整備する.
2001年2月8日PAGE2001コンファレンス「XMLシステムの構築」より(文責編集)
会報「VEHICLE」2001年3月号 Vol.12 No.12 通巻144号
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