大阪経済の現状を探る

掲載日:2015年12月9日

大阪経済は、大企業の好業績を基盤とした緩やかな回復基調とはいうものの一服感も拭えない状況だ。昨日(12月8日)発表の7~9月期GDP実質成長率は年率換算1.0%増であり、11月発表の速報(マイナス0.8%)から一転プラス成長になった。GDPは上方修正となったが、大阪の印刷業界では回復基調とも思えない状況が続いている。今回はそんな大阪を中心とした関西経済を再確認してみる。

大阪の位置づけ

大阪府の府内総生産額は、名目約37兆円、実質約39兆円(2013年度)である(なにわの経済データ)。対前年増加率は、名目0.8%増、実質1.2%増であり、名目・実質経済成長率ともに2年ぶりの増加になった。また、2012年度全国平均1.0%増のなか大阪±0%、2013年度全国2.1%増大阪1.2%増であり、残念ながら全国平均は下回っている。
大阪府の総生産額(約37兆円)は、日本経済に占めるシェアとしては7.8%だ。最近の10年間は7.7~7.9%で推移している。ちなみに、東京都の日本経済に占めるシェアは19.4%、愛知県7.2%、神奈川県6.4%である。
大阪府の総生産額を主要国の国内総生産と比較すると28番目に相当しオーストリアを上回る規模である。近畿全体では、16番相当、インドネシアを上回りメキシコに次ぐ規模になる。
大阪府の一人当たり府民所得は約294万円で全国10位だが、1人当たりの府民雇用者報酬は526万円で東京に次ぐ2位である。
大阪府における産業別総生産構成をみると、サービス業が増加傾向にあり、全体のトップ21.8%である。一方、製造業は減少傾向にあり、サービス業、卸売・小売業、不動産業に次ぐ4位13.7%という結果だ。

「ものづくりの街」は健在か

大阪府には、約40万の事業所が存在する。この数は全国の7.4%だ。産業別では前述の卸売・小売業が最多であり、宿泊・飲食業、製造業と続く。大阪は「商い街」「食の街」「ものづくりの街」とよく言われるが、データからもその特徴が裏付けられる。また、大阪府には不動産・物品賃貸業や生活関連サービス・娯楽業、医療・福祉などのサービス業の事業所も数多く「サービス産業の街」としての一面も見られる。
大阪府に新たに設置された事業所数割合(開業率)は、ここ数年平均2.1%であり全国平均1.8%を上回っている。しかし、事業所が閉鎖される割合(廃業率)は開業率を大きく上回る7.0%と全国6.3%と比べ高い水準である。
2005年~2014年の10年間に、大阪府へ転入した企業は1523社、大阪府から転出した企業は2424社だ。転入・転出先はともに兵庫県が多く、東京都と続いている。
大阪府内の99.6%を占める中小企業数も近年の推移をみると減少傾向にある。また、資本金100億円以上の企業も本社移転等の理由から減少しているのも残念だ。
大阪府の製造業事業所数は、全国1位、従業員数2位、出荷額は3位であり、全国有数の工業地域といえる。しかし、昭和40年代には10%を超えていた出荷額の全国シェアは減少傾向で、2013年は5.5%と落ち込んでいる。

望まれる次の一手

大阪では、住民投票にて「大阪都構想」が廃案となったが、その是非はともかく、産業の発展を望むには待ったなしの状況だろう。そのためには、企業が地域の雇用を創出するなど、人の動きや流れに大きな鍵を握るといえる。
一方、大阪府内を訪れる外国人客は、先行き不透明感はあるものの大幅に増加中であり、前年同期比92%増(2015年上半期)だ。円安に加え、関空(LCC)の便数増加、査証(ビザ)制限緩和、USJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)効果などで中国人客が寄与した。現在ではホテル不足やバスによる交通渋滞などわれわれビジネスマンにも影響が大きい。
中国の製品向上(すなわち日本製の優位性低下)と反比例すると思われるインバウンド効果が大きくあるうちに、次の一手を打ち出していく必要がある。

(西部支社長 大沢昭博)

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