新入社員に大切な2つの「しつけ」

掲載日:2014年12月17日

急いで経験を積ませるよりも、どんな小さなことでも「好き」を見つけさせ「興味・関心」を引き出す後押しが大切です。「マーケティング思考」と「コンプライアンス」の2つが実を結ぶためには先輩や上司の指導力も重要です。

新入社員に何を期待しますか

新入社員が印刷会社を選択した理由はさまざまです。印刷やデザインの専門教育を学び、ハッキリした目標を持った人、いろいろな会社を回り気に入って決めた人、残念ながらあまり本意ではなかった人、先輩がたくさんいるのでと決めた人等々・・・・・。このような新人を上手く導き、育成する素晴らしい研修プログラムが各社の長い伝統の中で醸成されていることでしょう。
ところが、昨今の社会環境の変化の速さ、経営環境の厳しさの中で、企業はともすれば新入社員でも即戦力化を強く希望する傾向にあります。教育担当者にとっても優秀な新人が一日も早く一人前になってくれることを願うのは当然です。そのこと自体はよく理解できることです。しかし、即戦力としての中途採用社員と同じものを早急に求めてしまってはうまくいきません。「今を支える力」と「将来を背負う力」との目標の違いをしっかり踏まえなければなりません。
これからの印刷産業は、印刷がコアビジネスであろうが周辺であろうが、そのビジネスの翼を大きく広げないと、狭い一本道では行き詰ることは明らかです。これからの自社ビジネスの翼をどう広げるか、そのための戦力づくりに新人の力は欠かせません。新入社員の「興味・関心」を狭いものに閉じ込めないよう注意が必要です。急いで専門知識や経験を積ませることよりも、どんな分野、部署、小さなことであっても辛抱強く「好き」を見つけさせ「興味・関心」を引き出す後押しが大切です。この「好き」が見つかれば、確実に次へのステップへ進むでしょう。そして興味・関心はより深いものになるでしょう。

印刷の魅力をどう伝えていきますか

印刷が他の媒体(メディア)とは少し異質なのは「モノづくり」の側面を強く持っていることです。これが印刷の大きな特徴なのですが、そのことがともすれば「情報媒体(メディア)」であることを、忘れさせてしまうことがあります。1991年以前は「モノづくり」だけで成長ができましたが、2000年以降のインターネット普及・定着の中で「メディアとしてのモノづくり」という新しい役割を強く意識しなければ、お客様のニーズに応えられなくなりました。このような状況を「印刷は古いメディアだ」「印刷は遅れている・・・・」と否定的な目で見る新入社員や若者が結構います。大きな勘違いであることをしっかり話してください。確かに印刷技術は産業革命以前からの古い歴史を持った産業です。産業革命を経て紙メディアの中核技術として社会生活の基盤を支える産業に発展しました。しかし、20世紀後半までの社会は工業社会であって、決して情報社会ではありませんでした。工業社会は「物作り」そのもので、印刷も「モノづくり」として成長をしてきました。ところが21世紀に入り本格的な情報社会となり、印刷はone of themのメディアにポジションが変わりました。今日の印刷は「メディアとしてのモノづくり」へと発想を転換しなければなりません。つまり、やっと時代は情報社会の扉を開いたのです。印刷メディア自体は決して古くも遅れてもいません。遅れているとすれば工業社会の発想から抜け出られない私たち自身なのです。
情報メディアが社会経済の中心となり、新しい時代の一角を担っているのが印刷メディアであることを新入社員によく話してください。

新入社員だからこそ、厳しく指導しなければならないこと

新入社員を温かく見守りながら育てる反面、内定時教育から厳しく「しつけ」なければならいことがあります。経営者のユニークな「しつけ」を持っている企業も多くありますが、ここでは時代に即した大切な「しつけ」のお話を二つしたいと思います。
一つは、仕事は常に「お客様とそのまたお客様(エンドユーザー)」の立場に立って考えるクセをつけることです。仕事が始まり、一生懸命になればなるほど、目の前の事象にとらわれ、本来の目的や役割を忘れがちです。どんな小さな作業であってもお客様とのつながりを意識して行動するクセをつけることが大切です。お客様第一の発想を持つための「しつけ」を入社日から始めてください。
二つ目は、「情報管理の重大さ」です。印刷会社は日々膨大な情報をお客様とやり取りをしながら加工処理をしています。これらの情報はお客様の大切な企業資産であることをしっかり教えてください。情報のやり取り、情報機器の使用・保管、コピー、損紙1枚に至るまで、企業ではルールに従って管理されていることを、繰り返し叩き込んでください。
情報機器に慣れた新人は臆することなく操作はできるでしょう。しかし、学生時代の常識ややり方をすべて白紙に戻し、新しい社会人としての常識を身につけなければなりません。この「しつけ」は早い時期に周知徹底しましょう。
以上の2つの「しつけ」を、別の言葉に変えれば「マーケティング思考」と「コンプライアンス」ということになりますが、この「しつけ」が実を結ぶためには、先輩、上司そして経営者の言動、社内風土がすべてであるともいえます。新入社員の「しつけ」は我が身を律することであり、先輩、上司の指導力教育でもあるのです。古きも新しきも未来に向けて共に学び、共に成長しましょう。
JAGATも新入社員のためにたくさんの教材を準備しております。ぜひご活用ください。

(JAGAT CS部 杉山慶廣)