レンチキュラー印刷、立体印刷を再考する

掲載日:2014年10月23日

レンチキュラー印刷の起源を調べてみると、1960年(昭和35年)に発売され大ブームとなった「ダッコちゃん」に使用されていたそうだ。

あまりのブームで偽物がはびこる事態となったが、本物のダッコちゃんは、角度によって目を伏せる(ウィンクしているように見える)という違いがあるため、それが真贋を見分ける目安となった。角度によって違う画像を見せる仕組みが、今で言うレンチキュラー印刷とのことである。

1960年と言えば、前回の東京オリンピックや新幹線開業よりも古いため、Youtubeでダッコちゃんの映像を探してみても、ほとんど出て来ない。ダッコちゃんの画像はと思って検索するとこちらはたくさん出てきた。両目をあけているものや伏せているもの、ウィンクしている画像がたくさんある。

レンチキュラー印刷の原理は、印刷物の表面にカマボコ型レンズシートを組合せることで、角度によって異なる画像を見せ、立体的に見せたり、アニメーションのように動く画像を表現したりするものである。両眼視差を利用する方法であり、現在の裸眼立体視ディスプレイの原理もこの延長上にあるもののようだ。

50年以上前の人形にも使われていた技術ではあるが、今でも最新の要素が注ぎ込まれている。つまり、再現するための環境であるレンズシートや印刷技術、表現するためのデザイン、画像生成技術などが、現代的に著しく進化している。レンズシートの製法や精度、オフセット印刷の線数、デザインのソフトはデジタル処理となり、網点生成までカバーされている。網点の歪みや微細なモアレ対策も補正される。
その結果、表現されるイメージ、立体感、インパクトなども高度に進化しているというわけである。

3D印刷と言うと、以前ならレンチキュラーや何らかのレンズシートを使った立体画の印刷を指す場合が多かったのだが、最近では3Dプリンターで立体物を製作することと紛らわしいことになっている。
印刷ならではの技術・手法で、比較的低コストで大量生産が可能であるレンチキュラー印刷、立体印刷を再認識してみたい。

(JAGAT 研究調査部 千葉 弘幸)

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