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第3回アジア印刷技術情報フォーラム
情報交流会/1998年
タイレポート

タイのデジタル化の試練と課題

Mr.Teera Piyakunakorn
Project Manager of Information Center
The Federation of Thia Printing Industries

●デジタル化の普及はゆるやか

 デジタル技術は急速に広がりつつあるが,印刷産業でのデジタル化の普及はゆったりしている. その理由はタイの印刷業者,経営者が技術のユーザであって,技術制作者でも発明家でもないことによる. 結果としてデジタル技術設備やシステムを導入しようと意思決定した時,たとえば急速な技術変化と同様に,ターゲットとなる顧客の数とか,投資の額,償却時間,必要とされる人材などの多くの要素を熟考しなくてはならない. タイの印刷業の業種や業務などに関して分類すると,デジタル化について以下のような異なったレベルにあることがわかる.

●フルデジタル化はカラーセパレーション業者の一握り

 カラーセパレーション・サービスセンタ業者の多くはバンコク市内にあり,ハイエンドのカラーシステムを独占的に使用している. 初期にこれらの業者はアナログシステムの機械と材料を使っていた. 最近ではデジタル設備が増えて置き換えられているが,作業はしばしば新旧のものが取り混ぜて進められており,フルデジタ化にはほど遠い. 手作業で独創的なアートワークをこなしている工場もあれば,カラーセパレーションセンタでページ制作を手作業に頼っているところもある. しかしその比率は小さく,減少傾向にある.
 現在ではDTPの利用が増えているが,提供されるサービスは,全面的であったり部分的であったりする. たとえば,あるサービスセンターは,フォトスキャニングサービス,ページセッティング,フィルムアウトプット,プレートメーキングをカラープルーフサービスと同様に提供するが,別のところではフィルムの出力のサービス,あるいはデジタルファイルにストックされたフォトスキャニングサービスだけを担当している.
 カラーセパレーショングループの業務範囲はカラープルーフを伴うプレートメーキング制作までである. それらのうち、フルデジタリゼーションに近づいている企業は一握りである. 大半はオフセット印刷に集中しており,生産物はアルミの刷版か,あるいは印刷版を生産するためのフィルム製版である. プレートメーキングは従来方法で行われているが,プレートセッタを採用する傾向が出はじめている. いずれにしろこれらの企業群は,意識するとしないとに関わらずフルデジタル処理への道を歩んでいる.

カラーセパレーションシステムのユーザ
ユーザ
構成比
印刷会社/新聞社
代理店
出版社
その他
45%
30%
20%
5%

●印刷業者はまだカラーセパレーション業者に依存

 タイの印刷業の経営はオフセット印刷に集中している. 印刷業のビジネスと業務は従ってカラーセパレーションビジネスの企業群とライン化されている. 印刷会社は国中に散らばっているが,バンコク並びにその近郊の印刷業が高い比率を占め,その生産能力には差がある.
 タイ印刷業の業務は千差万別である. ある印刷会社はすべてのサービスをカバーしているが,他はそうではない. その理由は基本的に各印刷経営者の興味や専門性に拠る. 完全なサービスを提供する企業は,レイアウトやデザインからスタートして,アートワークの配列をして,カラーセパレーション,プレートメーキング,印刷物の仕上げまで行っている一方専門化している企業は,印刷などの特化したサービスを提供している.
 印刷業のプリプレス能力もデジタル技術とDTPシステムの開発で高まる傾向にある. これらの印刷業ではコンピュータをアートワークに使うのが普通になっている. バンコクとその近郊ではMacが主要な役割を果たしており,地方では規模の小さい印刷会社が多く,PC上のWindowsシステムが使用されている. スキャナについては,プリプレス能力を有する印刷会社では一般にフラッドベッドスキャナが使用されており,一方ドラムスキャナは限られたメンバーで,高品質を要求される場合に使われている. 多くの印刷会社がカラーセパレーションセンタのサービスに依存する比率は高い.

●プリプレス能力を持つ印刷会社はデジタル化

 プリプレス能力を持つ印刷会社はフルデジタリゼーションに近づいている. 仕事の特質は一般にコンピュータトウフィルムであり,現在はアウトプットのかなりの比率をまだサービスセンタのセパレーションに頼っている. 一般的に仕事内容はシングルカラーや簡易カラーであり,ぺージセッティングは手作業で処理される. しかし複雑な仕事や精細を求められる仕事は,カラーセパレーションセンターが必要とされている。印刷会社でのイメージセッタの採用はかなりのレベルまで確実に広がっており,誤りやミスの予防にデジタル設備によって行うページセッティングやプレフライトチェックが活用されはじめた. 印刷会社のプリプレス分野では一般的にDTPの標準ソフトが使われている。高い能力と効果を上を持ち導入しやすい価格であるとともに,実用性があり,操作しやすいからである.

●顧客対応のため印刷業者はプリプレス能力を持つ傾向

 一般の印刷会社が結果としてプリプレス能力を持つ傾向にある. なぜなら,顧客は実際の印刷物を手にする前に完璧な見本あるいはそれに近い見本を求めるので,顧客が満足できるようにチェックしたり,修整したり,改善できる仕組みが必要だからである. カラーセパレーションセンタに出される仕事は確実に減っている. 明らかに,プロの印刷物の需要はこの数年減少している. これはアジアの経済危機の影響にもよるだろう.
 プリントオンデマンドシステムが実用の段階に入ってきた. 多くの印刷経営者は生き残るために,特定客のニーズに合わせたサービスの提供ができるよう,生産設備の見直しを真剣に考えはじめた. 印刷業者がデジタル印刷システムについて導入の検討と意思決定をする時期になったといえる. 現在すでにタイではデジタル印刷システムが2台,2台ともバンコクに導入されている. そのような投資が一般の印刷業者間の評判になっているが,これが印刷工程の変化と見直しを引き起こすと思われる.
 なぜなら一般の印刷業者は適切な見直しが現状のプリプレス能力に加えられるなら,プリントオンデマンドサービスはかなりのレベルまで普及するだろうという意見が多いからだ.  結論として,タイの印刷業者,オーナーは今後もっとデジタル技術を用いるだろう. その理由は上記の印刷業者が印刷産業の中で最大の業者群だからである. それゆえトータル投資額は最大となろう. カラーセパレーションセンタに依存しない,独立したプリプレスシステムが成長しており,この印刷業者がフルデジタル化してゆくという観点から,よりコンピュータトウプレート活用が普及すると帰結できる. デジタルカラープルーフがより受け入れられ,コンピュータトウプレートによる仕事が徐々に広がってゆくだろう.

バンコクと地方の印刷サービス供給事情
供給サービスの内容バンコク地方
印刷のみ
プリプレス+印刷
50%
50%
80%
20%
ハイエンドプレスシステム
DTP
20%
80%
2%
98%

●大判印刷業者がデジタル技術を活用

 オフセット印刷を行う印刷会社に加えて,デジタルテクノロジーを活用するその他の印刷ビジネスがある. たとえば広告業者にサービスを提供する,大判印刷業者である。かつてこの業者群はシルクスクリーンの印刷サービスを供給していた. 現在ではインクジェット印刷の効果はより向上して,様々な素材に印刷できるし,耐久性も長い。次第に顧客はこの種のサービスを多く活用するようになった. なぜなら現在コンピュータに直接アタッチできるのはデジタル化されているからだ. この種のサービス業者はそれほど多くないが,かれらはその技術をオフセット印刷システムに部分的に適用できる. たとえばプリプレスシステムのワークファイルは同一言語なので,デジタルシステムを使ったプルーフのような分野に適用できるし,同様に印刷サイズが大型印刷機と同じなので,デジタルプルーフ設備が現在より大きいサイズに供給できない分野にも適用できる. 以上述べた印刷サービスに関する需要が現在はある.

大判印刷サービスの現状
システム
構成比
インクジェット
静電気
その他
85%
10%
5%

●ハードの課題:デジタルは生産性が低い?

 デジタル技術をタイの印刷産業に適用しようとすると,まだ問題点と障害がある。すなわちハード,ソフト,ヒューマンウエアにおいてである. ハードについては,タイの印刷経営者は技術の利用者であって技術の発明者やオーナーではなく,設備とアタッチメントの値段が高いことが,投資の意思決定を左右する大きな要因になっている. また機械や設備の調達は国内の供給業者によって行われねばならない. この業者はハードメーカーの子会社でも販売支店でもない. それゆえ生産性やビジネスに関する知識がなく,アフターサービスもそれほどよくない. このことが印刷業者に「デジタルは生産性が低い」という否定的なインパクトを与えている. 概してハードは精密で陳腐化が速く,償却期間前に時代遅れになってしまう. ハードのアップグレードは印刷業者やオーナーが費用がかかるためいやいやする意思決定なので,ソフトのアップグレードよりも難しい.

●ソフトの課題:言語システムのモデファイ

   ソフトのメイン課題は印刷の重要な要素である言語システムである. 新しいソフトは常にタイ語を受け入れるようにモデファイしなくてはならない。この専門家が少ないため,時間がかかる.
 タイにおいて人的問題がデジタル技術を印刷産業に導入する上で難しくしているもう一つの重要な要因である. タイのユーザは一般にデジタル技術に関して深い知識や理解をもたない. 結果的には機械と設備,同様に陳腐化したソフトウエアが最適な成果を上げるように利用できていない.
 結果として印刷業者,オーナーはかれらの社内スタッフが複雑で高い機械や設備を扱うことがてきると確信できず,導入選択に時間を掛けようとしなくなる. この問題を解決するには教育機関に特別教育を提供して,卒業生がデジタル技術の進んだ教育を受けられるようにする必要がある. いずれデジタル技術に関する優れた知識と理解を印刷業者が得て向上するようにならなくてはならない.

●テレコミュニケーション・システムのレベルアップがベース

 標準以下のテレコミュニケーションシステムがデジタリゼーション追求に大きな影響を及ぼしている. 現在,タイのテレコミュニケーションシステムはアナログである. しかし政府はデジタルシステムへ変更,改善しようとしており,もう数年で実現するだろう. 現在の通信伝送ケーブルは低速度システムだ. データ,情報の中間伝送はまだ通常のcourierでカウントされる. テレコミュニケーションシステムはコスト削減,時間短縮を改善する要素であり,多かれ少なくかれフルデジタリゼーションを加速してゆくだろう. もうしばらくするとインターネットが立ち上がり,タイでポピュラーなものとなるだろう. デジタルメディアを形成する中で,インターネットメディアを開発できるように印刷メディアを改革することに関心が集まっているが,テレコミュニケーションシステムが改革のベースである.

●フォント標準化の基本計画を作成中

 品質管理システムはタイのデジタリゼーションに影響する問題である. まずタイ語フォントについてはコンピュータが利用されたが,異なったプラットフォームのタイ語フォントでは相当エラーが出て時間がかかる状態で満足いくようにtransferできない. その理由はタイ語フォントの開発者間の協力とコミュニケーションがなく,reference tableの異なったsetセットを使用しているからである.
 ナショナル・エレクトロニクス・コンピュータ・テクノロジー(NECTEC)は現在あらゆるプラットフォームが同一のreference tableを使える,フォント標準化の基本計画を作成中である. 近い将来は,ユニコードを使えば,この問題は解決されるだろう. カラーもまた品質の上で問題になる要素である. デジタルカラーマネージメントはタイの印刷産業ではポピュラーではない. 現在,カラーに関して個人的な判断を用いている. デジタルマネージメントカラーの世界標準はほとんど理解されていないし,まじめにカラー問題を解決しようという関心はきわめて少ない. 明らかなのは,タイの印刷業者と作業者は根本的に反省して,教育を受けなくてはならないことである.

● デジタル化の可能性は育ちつつある

 タイのデジタリゼーションは総合的な観点からすればある段階まで進んだといえよう. ゆっくりだが,よい可能性が育ちつつある. 国内の印刷マーケットは十分に大きく,一方で輸出のための生産には伸びる余地がある. 未来へのワークシステムをフルデジタリゼーションへ発展すること,印刷産業は関連するさまざまな政府機関から全面的な協調を得ながら業者間の協力を高めてゆくなど,ビジョンを断固として進めることによりこれまで述べた課題の達成が速められるだろう.
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