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1997年アジア印刷技術情報フォーラム
情 報 交 流 会

日本におけるプリプレス技術
印刷資材(インキ・用紙)の現況

塚田益男
社団法人日本印刷技術協会・最高顧問
錦明印刷株式会社・代表取締役会長
現在東京都印刷工業組合・理事
全日本印刷工業組合連合会・顧問
通商産業省中小企業近代化審議会・委員

1.プリプレス技術の現況

1. カラー分野の4つの方法

  1. 日本におけるDTPシステム導入運動は, 1993年の中小印刷業の第4次構造改善計画から始まった.
  2. チラシ, パンフレット, 端物印刷など簡単な印刷物には普及し始めている.
  3. 出版物やカタログなど, 頁物印刷物や文字訂正の多いものはCEPSが, まだ使われている.
  4. 日本では漢字を使うため, 文字組ルールが出版社ごとに異なっており, PS(ポストスクリプト)対応の組版ソフトがない. 従って, フォントメーカーが提供する専用ソフトを使わなくてはならない. この場合は1か2のシステムを使用する. 1997年中にはPS対応ソフトも開発され,解決されるだろうが, その場合でも汎用コンピュータは使えず, 専用のワークステーションを使うことになる.
  5. デジタル校正はカラーマネージメントの良いものがないこと, A2サイズ出力ができないことなどで, フルデジタルDTPの障害になっている.
2. DTPシステムの問題点
  1. Mac の新製品投入が早すぎる. 中小印刷業者にとって資金的に困難.
  2. 周辺機器についても新製品の出現が早すぎる.
    入力機
    モノクロ, シリンダ・タイプ, フラッドベットタイプ, 版下読取 スキャナ, ハイエンドスキャナ, ローエンドスキャナ・・
    出力機
    出力用スキャナ,メージセッタ, プレートセッタ, ローエンド, ハイエンド

  3. スキャナオペレーターやDTPソフトオペレーターのオペレーション教育が大切だが, 費用と時間がかかる.
  4. DTPシステム全体のオペレーションにはネットワークとサーバが不可欠だが, ネットワーク全体を管理する専門技術者が全く不足している. 教育機関も教育方法も現在はできていない.
  5. グラフィックデザイナーやユーザーが持込む, MOやCD-ROMなどはプレフライトチェックが必要だ. 現状では90%以上がそのままでは使えない. 今後, データの受取りについてルールが必要.
  6. デザイナーやユーザーが印刷会社でデザインやレイアウト, 編集したデータを欲しがることが増えてきた. そのためにはデータのコピー, タグコードをはずしたりすることが必要になる. そのため, ユーザーと印刷会社の間でコスト負担と技術料負担についてルールを作る必要がある.
  7. 次第にWindows OSを使った入稿が増えてくる. MacとWindowsの互換ソフトが必要だ.
  8. デジタル校正は前述したように不可欠の条件だ. メーカーの努力に期待する所が大きい.
  9. 官公庁・出版社を中心にワンソース・マルチメヂィアの要求が出始めた. PDF, Acrobatなど新しいソフトの位置づけが必要になる.
これらの諸問題は50人以下の印刷企業, 30人以下のプリプレス企業では解決が出来ない. 有能な小企業者を除いて, 業界の再編成が自然淘汰の形で行われる. このことこそがDTPが印刷産業に与える大問題である.

2. 印刷インキの現況

1. 1996年の生産、出荷

1996年のインキ生産量

1996年のインキの出荷量

生産量=国内消費量 + 輸出 475,837t
出荷量=国内消費量 + 輸入 461,347t (国内456,670t)
輸入 4,677t (1%)
輸出 19,167t (4%)
  1. 日本は幸なことに印刷インキについては, 有能なメーカーが数社あって, 自給が可能である. 生産量対比の輸入量は1%, 輸出量4%でともに小さい.
  2. 枚葉印刷機が主流の10年前までは, 印刷物製造コスト全体の中でインキのコストの比重は小さかったので, インキの価格は余り問題にならなかった.
    最近は,オフ輪が主流になり競争が厳しくなったので, 印刷価格が下がってしまった. そのためインキのコストの比重が高くなり, 問題になり始めた. 今後インキの価格の国際競争力が問題になる.
  3. 日本製インキの品質, 供給力については満足.
  4. 残肉, 空き缶について環境問題が発生しつつある.
2. 品目別出荷量の構成比, 前年対比伸び率(一般インキのみ)

1996年のインキの品目別出荷構成比

 
1996年構成比伸び率
全体 100.04.3
平版 31.5 7.1
凸版・凸輪3.4−4.0
金属印刷11.41.9
出版グラビア6.4 −9.2
特殊グラビア30.93.7
ゴム凸版6.3 −0.2
その他10.117.5
  1. 伸びが目立つのは平版, 特殊グラビア,その他.
    その他はスクリーン印刷,特殊印刷に属するインキだがシェアは小さい. 特殊グラビアは軟包装用である.一般印刷の主流は何と言っても平版である.
  2. 平版7.1%の数字を見ると日本の印刷産業は成長上昇局面にあるように見える. 事実,1993年3月より生産量はプラスに転じ,一般経済界がバブル崩壊後の不況で苦しんでいるのに平版インキだけは回復が早かった. 印刷需要は早く回復したということだ.
  3. 問題は出荷された平版インキの内訳である. 内容は発表にならないが, 平版インキにはオフ輪用ヒートセットインキと枚葉印刷用インキの二種類がある. 生産量はオフ輪用65%, 枚葉用35%と推量している. オフ輪用インキの成長率10%, 枚葉用インキの伸び率1%前後であろう.
  4. オフ輪は大手・中堅印刷会社に集中している. 主たる仕事はチラシ,カタログ,パンフレット,雑誌などである. 枚葉印刷機は中小印刷界に集中している. この方の伸び率は1996年で1%前後であり, 不況期に入って7年経過したが少しも回復しない.
  5. それでは大手・中堅印刷会社が受注増に比例して経営内容が良くなったのかということだが, 事実は全く逆である. オフ輪の増設により,供給が需要を上回り,過当競争が生じ,この10年間で印刷価格は50%以下に下がってしまった.
  6. 枚葉印刷機の伸び率は小さいが安定しているのかというと総出はない. オフ輪が合理化され, 中ロット(20,000部前後)からオフ輪で印刷するので,枚葉印刷の市場が小さくなると同時に, 価格も20%近く下がってしまった. 枚葉印刷中心の印刷経営も不安定になった.

3.印刷用紙の現況

印刷用紙の出荷
(情報用紙・包装用紙・衛生用紙・雑種紙・板紙類は除く)

1996年(千t)前年比(%)
印刷用紙全体8,9241.6
非塗工印刷紙3,176−5.6
微塗工印刷紙1,28414.3
塗工印刷紙4,0774.5
特殊印刷紙387−1.5

紙,板紙の輸出入

1994年(千t)比率(%)
生産量28,518100.0
輸入量1,4265.0
輸出量1,0343.6
1人当り消費量231.2Kg

日本の印刷界における印刷用紙

  1. 輸入5.0%, 輸出3.6%に見られるように日本において紙の生産は自給ができる. 幸せなことだ.
  2. 約2年前に製紙メーカーはチップ輸入価格の急騰を理由に,用紙価格を30%以上も上げたが,現在は高い水準で落ち着いている. しかし, 価格上昇は主として中小印刷業に対してで新聞,出版界や大手印刷界には大きな影響はなかった. 中小印刷企業の競争力はこの面でも大きなハンデキャップを背負っている.
  3. アジア各国の製紙メーカーの供給力, 競争力がもっと強くなり, 日本のメーカーと競争関係になることが望ましい. そのためにはサイズ, 品質, 品揃え, 流通などに努力されるよう期待している.
  4. 紙(板紙を除く)出荷量の年次別伸び率(図4)

    * 基準年1990年(日本のバブル経済のピークの年)

      1990年100.0% 1994年101.4%
      1991年103.8% 1995年107.2%
      1992年101.7% 1996年108.5%
      1993年99.3%

    紙の出荷量はバブル経済の崩壊,その後の不況で受けた被害は小さい. 1992, 1993, 1994年の3年間に少々伸び悩みが見られたが,他産業から見たら全く問題にならない. むしろ1995年からの伸びが大きいのに驚く.

  5. 印刷用紙の品目別伸び率(表1)を見ると, 非塗工紙と特殊紙がマイナスである. 非塗工紙の内訳は上級紙,中級紙,下級紙,薄葉紙であり, 特殊紙とは色上質紙,その他特殊紙である.特殊印刷紙の構成比は小さいからマイナスでも問題にならない.
    非塗工紙の用途は殆どが出版物や学校用品である. これらの紙を使用するのは主として中小印刷界であり, 文字物印刷物が多い. 中小印刷界の困難がこの表から読みとれる.
  6. 微塗工紙と塗工紙の伸び率が高い. 雑誌, カタログ, チラシ,パンフレット, ポスター, カレンダーなど, 主として大量印刷, カラー高級印刷物に使用される. ポスター, カレンダーを除くと殆どがオフ輪で印刷される.
  7. これらの印刷物はインキの項で見たように伸び率が高い. 大手・中堅印刷業を中心に受注されている.
  8. 雑誌, カタログの受注は特に大手3社(大日本・凸版・共同)が強い. 用紙価格の仕入れが, 大手と中企業とでは7%から10%の格差があり,大手が受注面では絶対に優位である.

4. 21世紀における印刷技術の焦点 ―― CTP

CTP(Computer To Plate, Printing, Publishing)
CTPに関する技術的関心は単に日本だけのことでなく, 世界的に大きな関心事になっている. プリプレスがフルデジタルになれば,そのデータを版に直接出力するのは当然のことだ. フィルムレスの 印刷技術になるコスト低減になる. 私はCTPをもっと積極的に評価しており, 印刷の究極の姿だと考えている.

理由は次のとおり

  1. オンデマンド印刷システムを誕生させた.
    CTPの定義の中でcomputer to printingとpublishingはオンデマンド印刷として, 新しい電子的印刷を誕生させた. 全く新しい印刷サービス業が生まれ, 全く新しい印刷市場を開発するのだろう.
    可変データ印刷システムは 1〜300枚の印刷用途に, DI(Direct Imaging)システムは300〜2000枚の用途に使われるだろう. ただし,一部の印刷会社がビジネスをはじめた所だが, 市場の大きさ,成長性などについてはまだ全く未知数である. 勿論,モノクロのシステムは一般ユーザー内で使われ, カラー印刷のシステムは印刷会社で使われるだろう.
  2. CTP(computer to plate)は既存の印刷産業の構造を変えようとしている. フルデジタルになることにより, 企画, デザイン, プリプレス, 印刷という従来は分離していた業種の壁がなくなった.
  3. 印刷物生産の各機能はISDNのネットワークで結ばれる.営業, 企画(広告,出版), デザイン, プリプレス, 印刷, フィニッシュワークという各種の機能は,自社の中にあろうと, 独立した経営体であろうと, 自由にネットワークで結ばれる社会になるだろう. そうなれば, 印刷経営の経営思想も, 営業形態も, 労務管理思想も, そして従業員の就業思想, 形態,すべてが変ってしまうだろう.
  4. CTPは印刷産業の新しい構造を創るという意味で, 究極の姿になると考えている. その時には多分, 印刷という分類を越えた新しい名称の産業になるだろう.
  5. CTPによる究極の印刷産業は簡単にはできない. 10年の歳月が必要だろう. 次のような課題を一つずつ克服しなくてはならないからだ.
    • プリプレス工程をフルデジタル化する作業を行うこと
    • プレフライト・データ・チェック機能を確立すること
    • デジタルカラー校正(A2 size以上)ができること
    • ポストスクリプトデータを使った印刷直前のデータとOKシートのデータとを照合できるシステムを確立すること. このシステムは各部門間をネットワー クで結ぶこと
    • ISDNのネットワークを印刷産業の中で自由に使えるインフラができること

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