顧客がDTPで作ったデータが,そのまま使えないケースが多い.日本において,どのようなデータの不備がどの程度あるかというデータはないが,米国GATFのデジタルファイル問題調査によれば,顧客が持ち込むデジタルデータファイルの57%は,そのままでは処理できないものであるという.
この調査では,1000点ほどのデジタルファイルの内容がチェックされた.その結果,デジタルファイルの問題として多い項目として以下の10項目があげられた.
(2) CTP導入の問題点
CTPはデジタル化の集大成である.現在,その導入のためにはいろいろな課題をクリアしなければならないが,以下にそのポイントを述べる.
1)work flowの選択
CTP 運用においてwork flowをどう構築するかは重要なポイントである.work flow構築の際には単にwork flow を校正する個々のシステムの機能評価だけでなく,既存の設備/組織(人員配置)との兼ね合い,印刷部門とのバランスなどさまざまな観点から総合的な判断をする必要がある, CTP導入のねらい,ターゲット品目,今後の拡張計画などが具体的であれば,work flowもそれに応じた適切なものを検討しやすい.
たとえば,「刷版工程短縮による納期短縮を武器に情報誌関係の受注拡大を図る」という場合と「高精細印刷時の刷版の品質向上を狙いとし,美術本など高品質物をターゲットとする」場合では,work flow構築のポイントも異なってくるだろう. また,従来ラインからCTPラインへの移行を,どういう考え方/計画で行っていくかによって,既存の設備を重視したwork flow にするのか,新たなwork flow システムを導入するのかといった判断は異なってくる.
work flow 構築は単に設備だけの問題ではなく,人員再配置,組織とその機能の再構築,教育などの問題に絡むため,CTP導入に関する会社の指針を明確にし,トップダウンで推進することが望ましい. CTP work flowはデータ形式やRIPの位置づけ,面付けのタイミングなどから大きく以下の2つに分類することができる. work flowのタイプは直し工程の効率,校正(DDCP)と刷版との出力結果保証などに直接関連し,また一度システムを構築してしまうと変更するのが容易でないため,どちらのタイプを選ぶか将来性も加味しつつ十分検討する必要がある
.
(2)「RIP後に面付け」型work flow
頁編集データをRIP処理した後面付けを行うほうしきである. 各種の方式があ
るがCEPSのシステムとRIPシステム系に大別される.
1)CEP系
CEPSをベースにしたシステムで,編集結果はCEPS独自のデータフォーマッ
トに変換して取り込む.
2)RIP系
RIP側の機能拡張により実現した形態であり,基本的にRIPをラスタ処理とス
クリーニング処理(システムによって切り口は異なる)に分け,ラスター処理
後の中間データを面付け処理し出力する. 現在さまざまなメーカーが製品化
を手がけており,これから普及していくと思われる.
3)特徴
CEPS系,RIP系いずれの以下のような特徴がある.
- RIP後のデータを面付けするため,データ修正時に必要な頁だけ再処理,再
- RIPすることが可能(出力までの時間が短縮される).
- 同一RIP処理結果を用いてプルーフ,刷版出力するため出力結果が一致する.
- 頁編集直後にRIPを行うため,PostScriptが早期に発見できる.
- RIP後のデータは基本的にシステム独自であり,接続可能な出力機種が限定
される(自社RIPの対応機種を増やすことに積極的なメーカーもある).
従来はDTPを主体にCTP work flow を構築しようとすると「面付け後RIP」型work flowにせざるを得なく,修正から再出力の作業効率やプルーフと刷版との出力不一致,下版直前のPostScriptエラーなど課題が多かった. しかし,RIP系の「RIP後面付け」work flow が登場し,そうした問題は回避可能となっている. ただし,接続できる機種に制約が生じるため,導入には十分検討が必要である.
なお,注目すべき技術動向として,Adobe 社が提唱するPDF work flowがある.
これはPostScriptの代わりにPDFを用いてwork flow を構築するもので,従来のPostScript ベースのwork flow(「面付け後RIP」型work flow)に較べ,
(a)面付け後データを頁単位で再処理可能(頁単位で差し替え可能)
(b)PostScriptエラーの軽減(PDF化の段階でチェックされるため)など
といった利点があり,なおかつPDFという標準フォーマットを採用しているので機種に依存しないオープンなwork flowが構築できる.
現状は対応アプリケーション/機種がほとんどないが,近い将来普及する可能性がある.
2)Proof
CTPのワークフローの中では,デジタルデータのチェック,すでに出来上がっている網フィルムのデジタルデータ化,校正,検版,大量なデータの保管など,いろいろな課題があるが,最も大きな問題が校正のやり方である.
日本において,どのような目的の校正にどのような方法がもちいられているかは,図4の通りである.
図4 カラープルーファーとその用途
| | | | | | | |
| 保有機器 | 保有 社数 | カンプ | 色校正 | 文字 校正 | 面付け 校正 | 校了紙 | 無回答 |
カラー出力機 (印刷網点) | 49 | 19 | 40 | 18 | 15 | 25 | 3 |
カラー出力機 (疑似網点) | 104 | 84 | 45 | 45 | 8 | 18 | 3 |
カラーインク ジェット(A1以上) | 42 | 28 | 8 | 15 | 15 | 4 | 1 |
モノクロインク ジェット(A1以上) | 12 | 4 | 1 | 10 | 0 | 1 | 0 |
ケミカルグループ (アナログ) | 98 | 13 | 78 | 45 | 20 | 41 | 3 |
検版装置 (網フイルム検版) | 21 | 1 | 11 | 15 | 3 | 9 | 1 |
オフセット 平台校正機 | 69 | 2 | 64 | 18 | 14 | 37 | 1 |
本機校正機 (オフセット印刷機) | 63 | 2 | 58 | 9 | 10 | 29 | 1 |
しかし,これらの出力機で得られる仕上がり品質は,最終印刷物とは違う材料や技術で作成されるために画質が異なってしまう. これを避けるために,校正刷りに印刷機械(本機)を用いることも多くなった.
CTPシステムの中で使う校正設備は,各種のカラー出力機やDDCPであることが望ましい.
自社でデザインから手がけている会社の場合には,社内のデザイナと話し合い,調整しておけば,安いカラー出力機を使って仕事を進めることができる.たとえば,100名規模の印刷会社で,News Paper Insertの仕事が90%以上を占めている会社では,Insertのデザインを自社で行っているので,校正は,Epsonから出されている25万円のInk Jet printer3台で,色校正を済ませている.また,150名規模の印刷会社で,News Paper Insertよりも高い品質のパンフレット,カタログを印刷している会社では,網点を使うDDCPを用いている.この会社も,自社にデザイナを抱えているので,DDCPで色校正を済ますことができる.しかし,多くの印刷会社では,顧客からWet inkを使った校正刷りを求められるので,Flat-bed proof printing pressや4Color Offset Printing Press で校正紙を作らざるを得ない.
本機校正は,本番の印刷と同じ機械を使用するのであれば,コストを除けば理想的な方法であろう. そして本機校正は,これ一枚を見れば,文字・画質・レイアウト・面付け・インキの流れによる発色の遍りまでも点検することができる.
しかし,すべての印刷物の品目において,印刷インキと本紙による校正刷りが必要であるというのも現実的でない.これらは顧客の要望に応じて,校正を作成する手段を複数用意して,仕上がり品質とコストのバランスを選択できるというのが,本来の技術からのアプローチであろう. 最善の解が本機校正であるとして,次善の解はDDCPや高速大サイズのデジタル出力機を使用して,校正すべき項目を複数の分離し,それぞれの出力機の特性に合った項目に点検をすることである.
ここでの考え方は,印刷原稿が入稿したところから,印刷版が出力されるまでの生産工程の各段階において,文字や画像やレイアウトを必要十分な方法で点検しながら,パーツを順次完成させていくというものである.
図5(印刷制作における校正要件)はこの時,最低限必要な出力機の仕様を明らかにするための整理をしたものである.つまりパーツごとに点検すべき内容と,これを表示出力すべき要求仕様を整理している.
実際に校正用に出力機を選択するときには,生産工程と点検校正のステップに合わせて,現実に利用可能な出力機を選択することになる.