1冊からの受注生産を可能にする「ブッキング」設立
1999年7月19日
日本出版販売(株)(日販)は,絶版された書籍などを中心に電子化して保存し,読者からの注文に応じて印刷製本し届ける新会社(株)ブッキングを9月に設立する.
これにより,今まで入手することが不可能だった絶版本や小部数しか制作されず入手が困難だった本を,インターネットを通じて注文し,書店でその書籍を受け取ることが可能となる.
ブッキングは資本金5千万円,日販51%,出版社各社49%の共同出資で設立される.現在出版約50社とコンテンツに関する交渉を進めており,その中の数社が出資する予定だという.
オンデマンド印刷で流通の迅速化

書籍はこれまで,注文してから書店に届くまで短くて1週間,長い場合は2〜3週間かかる場合もあり,その流通の遅さが指摘されてきた.しかし,昨今,取次ぎ各社の努力により,在庫がある書籍については4日以内で書店に着くようになった.しかし,商品在庫がない場合は出版社との連絡に時間がかかった上に,結局「在庫切れ」ということで,読者の要求に応えることができなかった.
そこで,ブッキングでは,在庫の無い商品についてはオンデマンド出版サービスを提供する.出版社から原版情報を預かり,電子版下をデータベースに在庫として持ち,電子取次ぎの役を担う.読者が注文した本の電子版下があれば印刷製本して書店へ届ける.この場合も,4〜5日で書店に届けるシステムを目指している.
今回の流通では,ブッキングが電子在庫の作成・管理・運用を担当し,日販が比較的コストのかかる印刷製本や物流を担当する(図1).出版物のデジタル化に関しては出版社の管轄となる.出版社側にスキャナなどの設備がない場合は,ブッキングでデジタル化を受注する.
例えば,出版社に紙原稿(本)しかない場合は,ブッキングでスキャナ入力し,紙面イメージデータをオンデマンド印刷して簡易製本する.レイアウトされた版下データがある場合はそのデータをオンデマンド印刷機へ送り,同様に製本する.
現在のところ,本の装丁や使用するオンデマンド印刷機など詳細はまだ未定だという.
「1冊からの印刷製本」という小部数印刷のため,これまで印刷会社に依頼していた印刷製本は日販で行い,出版販売会社を通じて書店へ届けるという新たな流通を確立していく.
インターネットから発注
ブッキングでは,初年度の在庫点数は約2千点で5年後には3万点を目指している.
今回のしくみでは,検索・発注を書店店頭のほかにインターネットでも行うことができる.ブッキング独自のホームページを開設するとともに,9月開設予定の日販インターネットサイトでは日販の書誌データ140万点との連動により,全ての商品から選べるようになる.これまで同様,読者の書店店頭での注文,出版社への直接注文にも対応する.
読者は市場に出回っていない本を電子在庫の中からインターネットを通じて検索・注文ができる.注文された書籍はオンデマンド印刷システムによりモノクロで印刷製本され,書店を経由して利用者に届けられる.
日販のブッキング企画担当者は,「実際,今回提案している新たな本の流通は,システム構築やデータの管理などの費用から考えると,当面利益をあげるプロジェクトとして考えることは難しい.しかし,出版の現状は厳しい.その中で,すぐに,欲しい本を読みたいという読者のニーズに確かに応えることにより,出版文化の発展に貢献していきたい」と語る.
さいごに
書籍をデジタル的に保存し,必要なときだけ必要部数を印刷することで,出版社は在庫スペースを減らすとともに,商品在庫,返品,配送にかかるコストが削減できる.
これにより,出版社は発行部数の少ない専門書や重版の難しい書籍など,なかなか読者の手に届かない書籍も流通にのせることができるとして,非常に積極的だという
一方で,出版社はすべての本の版下データを自社で管理しているとは限らない.このため,ブッキングを利用するためには,出版社は制作ワークフローや原稿情報の管理,また著者との著作権に関する調整や今後の取り決め,といった制作上の整備をする必要があるだろう.
今回の流通を印刷会社はどう受け取けとっていくか.ブッキングにはオンデマンド印刷の部分を担当したいとアプローチをかける印刷会社もあるという.印刷会社が不要になると悲観してばかりはいられない.
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