CTP News No.9
ユーザーの視点から見たCTP印刷版
全世界のCTPの設置台数は1600台、日本でも80台を越えたようで、CTPの進行は一段と
加速が付いてきた。
印刷機材業界では企業の合従連衡が依然として進行している。これはCTPという金の
卵を巡る思惑が背景にあるのは確かである。しかし、CTPユーザーにとって、それが
本当に金の卵であるかは、おのずと異なったストーリーでなければならない。
つまり、印刷会社にとってはCTPを確実に使いこなし、儲かる投資にする、また、その実行
のタイミングを図るということの方がより重要である。
ここらで今一度、CTPの問題点、「なぜ、いまCTPなのか?」をユーザーの視点で洗い
直してみる必要がある。
大方のCTP業界筋はサーマル印刷版が将来の発展の鍵を握っていると見ているようだ
。
さる三月に開催されたJAGATのセミナー「プレート技術から見たCTP」は大盛況であ
り、ベンダー各社は我が社のサーマル印刷版についてよどみなく講演をした。
何れも今年中の上市を計画しているとのことなので、今年後半からサーマル印刷版ラッシュ
が続くのであろう。これは非常に結構なことである。
確かにサーマル印刷版には将来的に大きな希望を抱かせる技術的な夢が一杯ある。
優れた細線再現、黄色光という限定ではあるが、ともかく確保されている明室作業性
、さらには、現像レスのドライプレート、On Press CTPへの展開と、まさに花咲く未
来である。問題はそれがどのくらい先の未来かということである。
夢のような近未来小説は耳に親しみやすいが、印刷会社から見れば、CTPは間近に迫
った納期短縮、コスト削減を狙った合理化投資なのである。
夢を追って過大な投資をする訳にはいかない。
そこで、少し醒めた目でCTP印刷版の現状を眺めると、すこしユーザーの期待とは懸
け離れたところで、何か仕手株をはやし立てるような、思惑だけが先行している雰囲
気も感じられる。
CTPの問題点を二、三、拾って見た。
数少ないサーマル印刷版
現実に販売されているCTPシステムをみてみると、印刷版の選択範囲が極めて限定さ
れている。これはベンダーから見ても変わらないようである。
ハイデルベルグ社は、昨年六月に発表したばかりのHerkules CTPを98年二月に市場か
ら引き上げた。二、三台のテスト販売をしただけで販売中止をしたので、みな驚いた
。
このHerkules CTPは菊半裁のサーマル印刷版を使用する内装式のYAGレーザーを搭
載した出力機で、一時間に11枚という高速処理が自慢であった。
それがわずか半年後
に適当なサーマル印刷版が無いというコメントで市場から引き上げられた。これは非
常に教訓的である。(フィルム使用のHerkulesセッターは販売されている。)
事実市場で入手できるサーマル印刷版はKPG社の第一世代に属するDITP-830、
加熱処理不要で現像処理が必要という第二世代サーマル印刷版:Horsell社のElectra
DC、Presstek社の現像レスのPearlプレート、それにポラロイド社のPrisma熱転写型
印刷版の四種類に過ぎない。
これでは広範な選択とは言えない。自社システムに最適化された印刷版が無いというのも尤もかもしれない。ユーザーからみても、これでは
サーマル印刷版は敬遠気味になるだろう。
高くつくサーマルのコスト
このサーマル技術に対するもう一つの問題点はその運転コストである。
従来のAr、半導体レーザー搭載CTPであれば、それらのレーザーコストは比較的安く
、信頼性もあり、数千時間という長寿命が期待できる。だからレーザーのメンテは一
年に一回程度で充分である。
それで、これらの交換費用はベンダーのメンテ契約に通常含まれている。それでも購入価格の数%のメンテ費用は必要である。
しかし、830nmとか1064nmの熱レーザーは五ワット以上の大出力が要求され、ユニッ
トの価格も急上昇する。
だいたい五万ドル以上の価格と言われている。CTP出力機の
価格は30万ドル前後だから、レーザーシステムは購入価格の20%程度を占めているこ
とになる。
しかも、光学系全体としてのメンテサイクルは1000時間といわれている。
これらの熱レーザーはガスレーザーと同様に連続使用が原則なので、半年は持たない
ことになる。
それで、一部のベンダーではレーザー回りをメンテ解約から除外してし
て、消耗品扱いにしているとも聞く。
半年ごとに五万ドルというユーザーは流石に少
ないそうであるが、サーマルシステムは高くつき、採算が悪いとこぼすユーザーは多
い。
それで、結果として安くつく銀塩、ホトポリマー印刷版を採用するユーザーも多い。
1600台のCTPのうち、銀塩系印刷版のシェアが約50%、ホトポリマーが20%強という
数字がこれを雄弁に物語っている。
21世紀は何色
このレーザーコストは新たな問題を提起している。
現在CTPとは別の業界では、青色
の半導体レーザーの開発コンクールが進行中である。これはDVDディスクへの展開を
指向している。現在使用している赤色半導体よりも、短波長になれば、優れたフォー
マンスと高い書込み密度が期待されるからである。
出力的には数ミリワットという微
細なものであるが、膨大な数の需要が見込まれるし、数万円の商品に搭載するのであ
るから、価格もそれに対応したものになる。
400から500nmの波長の半導体レーザーが
実用化されれば、銀塩系のフィルムとCTP印刷版にとっては、はるかに有利に機能す
る。
当然、ホトポリマー印刷版に対しても同様の波及効果が期待される。第一、この
レーザーのコストははるかに安く、数万時間という驚異的な寿命を持っている。
これは興味ある問題をCTPに提起する。サーマル印刷版は確かに将来技術としては魅
力的である。
しかし、拡散転写型銀塩系とホトポリマー印刷版に対する極めて有効な
レーザーが開発されるならば、それを搭載したCTPは低価格で提供できる。
今後のCTPユーザーは、一国を代表するような大企業ではない。小規模で、毎日の処
理版数も50枚以下のユーザーを目標にしなければならない。勿論明室作業性のあるサ
ーマル印刷版でのマニュアル機も魅力あるが、購入価格もメンテ費用もかからない
CTPにも十分なビジネスチャンスが期待される。
少々の明室作業性を犠牲にしても、
安いシステムを選択するユーザーは多いだろう。
印刷の21世紀はCTPで幕を開けるのだが、その時は何色なのであろうか?
(記:VMS Japan代表 久米正次)
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