印刷白書['95→'96]
=New Stage=
1999年5月10日
第1章 '95年の印刷産業を振り返る
@1995年の印刷産業は、一部に景気回復の兆しが見えたものの、資材物が低迷し全体の足を引っ張った。95年も4年連続のマイナス成長に終わった模様。加工高は何とか維持したが、固定費の削減ができず収益性は悪化している。
A印刷産業の現在の状況は、平成不況のみからくるものではない。基本的には印刷市場と印刷産業の成熟化があり、その上に技術革新にともなう市場の変化、融業化の流れ といった動きが重なって起きたものである。
B「オフ輪市場の伸びと枚葉市場低迷」という流れは、1993年頃から明確になり、今後の流れの一つの基調になるだろう。
C1995年における環境変化の 最も大きな動きは、コンピュータ利用の広がりと通信の発達によって、「情報伝達」をめぐるあらゆる環境が加速度的に動き始めたことであ る。基本は、コンピュータが「計算機」から「コミュニケーションの道具」に変貌したことである。
Dこの基盤の上に電子媒体の躍進があり、紙媒体も情報の多様化、細分化ニーズにそって多品種化したり、作り方の変化をもたらしつつある。また、紙媒体と電子媒体を融合させた情報伝達の方法も試みられるようになってきた。
E他産業に属する企業で、印刷を事業として展開している企業が増え、その金額規模は全体の10%程度になっているとみられる。
印刷物の輸出入は1%に満たず、印刷需要の海外流出規模もまだ小さい。しかし、世界の動きが日本の印刷需要や印刷産業により直接的に影響を与えるようになってきた。印刷産業は、融業化、国際化といったより大きな流れと深く関わりを持つようになった。
第2章 '95年の総括と'96のキーワード
@.'95年の総括
印刷産業はサバイバルの時代に入った。それは平成不況だからではない。.印刷産業が完全に成熟期に達しているからである。今後、従来の紙と印刷の市場は、名目GNP並みの成長がせいぜいである。
一方、マルチメディアの環境は整いつつある。新たな電子化の幕はきって落とされた。電子媒体はそのパワーを急速にアップし、印刷の補完的位置から紙メディアと肩をならべ、さらにその強みの部分では確実に紙媒体に置き換わりつつある。印刷産業にとって、マルチメディアは議論を越えて実現する時期となり、その事業領域を再構築するチャンスが到来した。
A.'96年のキーワード:「ニューステージ」
* 印刷と印刷産業は新しいステージを迎えようとしている。
競争の場は、オープンで、グローバルな場となり、武器はデジタルとなる。戦いの焦点 は、情報、メディアという新しい事業領域の開拓、獲得である。新しいステージとは印刷概念の変わるステージでもある。印刷産業の当面の共通課題は,「紙媒体の活性化」と「各種媒体のリンク」である.
「紙 媒体の活性化」とは、「FA」と「オンデマンド印刷」の実現である。「メディアのリンク」とは「クロスメディア」「ワンソースマルチユース」といわれるような、紙媒体と電子媒体を融合させた情報伝達方法である。
印刷は、「one to multi」モデルに「one to one」モデルを加えるときである.
「one to multi」モデルは,ひとつの情報をひとつの工場で大量に作り,必要な場所に配送していくシステムである.「one to one」モデルのひとつの要素は「オンラインデリバリ」である.
このモデルは、コンピュータが単なる計算機からコミュニケーションの道具となり、企業内情報の共有化と有効利用の環境が進むとともに必須のものとなるだろう。このとき、印刷の概念はまさに「ニューステージ」を迎えることになるだろう。
* 専門特化とネットワーク・コラボレーション
今後の印刷産業の構造は、工程分業ではなく品目毎の専門分野での棲みわけをベースとした構造に変わっていく。
印刷産業に対する評価のステージはかなり変わってきている。企業がいろいろな知恵を集めて研究活動あるいは事業化をする上で、印刷会社を入れておくとプラスだということが囁かれはじめている。新しいステージに挑戦しようとする印刷会社にとってはチャンスである。印刷産業は同業者間、クライアントの間に「コラボレーション」の関係を広げ、深めていくことが必要になってきた。
* 知恵の勝負
「ニューステージ」では、道具ではなく「知恵」の使い方が勝敗の分かれ目になる。デジタル技術といっても、単にDTPをもっているくらいのことは優位にはならない。
道具が同じであってもプロとしてどれだけ作り方に差を出せるのか、出力についてどんな方向にどれだけ展開できるかなどの知恵、ソフト力が問われている。
知恵やソフト力の競争では、規模の経済性ではなくスペシャリティが問われることになる。印刷産業は、まず最初に自らの持つスペシャリティについて見つめ直す必要がある。ソフト力の競争の世界では、それぞれに特化した企業が大手企業を制することも出てくるだろう。中企業ないしは小企業がその強味を十分に発揮できる世界である。
これからは、ニューステージにふさわしい知恵の出し方と知恵を出せる人材が集まり活躍できる「ステージ作り」ができるか否かが勝敗の分かれ目になる。その決着は意外に早いかもしれない。
(最新版のご案内はこちら)
(C)Japan Association of Graphic Arts Technology
|HOME|JAGATについて| |