シーボルトSFより Microsoft解禁
報告 その2
SYEBOLD SF ではキーノートスピーチに、Bill GatesやSteve Jobsが登場したことが話題になったが、これは会議の本質とはすこしずれている。主催者の元々の予定にはなく、あとで追加されたものであることは、これらのキーノートが3〜4日目に入ったことでわかる。
主催者が初日に設定しなかったのは、いまさらという感覚があったからだろうが、DTP/出版の世界ではアップルの行方の話題をはずせないらしい。
聴衆は公称5000人で、実際各3000人ほどが集まっていただろうか。特にJobsの話は報道だけでも数百人いたように思えた。各キーノートの内容は特別なことはなく、この間いわれていることの繰り返しであったが、DTP関連の人にとっては新鮮であったかもしれない。
Bill Gatesの登場は5年ぶりで、前回はIBMとアップルの蜜月時代で、ともにOpenDocをやるという話に怒っていた。OpenDocはまだ実現していないが、OLEはすでにある、というのがBillの言い分だった。今日OLEはActiveXと名前を変え、インターネット上でも飛び交っているが、OpenDocは壮大な構想であったが今年これからの開発を中止させられてしまった。
この事に象徴されているように、Microsoftはこつこつと技術の蓄積をし、また広いパートナーシップを結んでいて、今年はアップルとも関係をもった。そのせいか大きな拍手で迎えられた。Billの話から受けるMicrosoftの印象は、決して突飛な技術で人を驚かせようといものではなく、非常に地味で堅実な行き方をしている。今後10年間くらいのスパンでは考えているようだった。
焦点はWeb上でたいていのことができてしまうようにすることで、それをライフスタイル化と呼んでいるうようだ。Webのライフスタイルについては、Sun系JavaのNC陣もいっていることだが、NCとMicrosoftが異なるのは、ローカルディスクも重要な意味があるとしている点である。
WindwsNT5.0のデモにはアドビの人が出てきて、Plug&PlayとOpenTypeを見せた。NT5.0から含まれるOpenTypeは、TrueTypeとType1を包含するフォントフォーマットであり、ATMなしにかつての両フォントを区別なく扱えるようになる。また通信用にコンパクトであるとか、文書に添付するのに向いているとか、DTPのフォント問題はもはやなくなるといえる。ただし日本語対応に関してはいまだにグレーである。また5.0では各国語が混じって使えるようになる。
9月末にリリースされたばかりのIE4の紹介には、ビデオでwired誌がダイナミックHTMLの面白さを熱ぽく語っていた。あのけばけばしいグラフィックがモーションになるのである。これにMicrosoftがどれだけ関心をもっているか知らないが、DTP向けのアピールであろう。両デモともさりげなくやっていた割には、アップルファンが親友に裏切られたような、もう諦めるしかないという気にさせる戦術を忍ばせたものであった。
他のセッションで参加者にWindowsを使っているかどうかを聞いたときに、相当数のユーザがMacとの併用をするようになっていた。その理由は、必ずしも機能のよさではなく、いざという時の保険として、という態度である。アメリカでは意外にMacユーザあってもアップルに対する意見は厳しく、特にオープン化に逆行する互換機を締め出す決定には、ジャーナリズムもSEYBOLDのスタッフもJobsには喧嘩腰の記事の書き方をしている。
SEYBOLDの展示会場ではベンダーの変化が表れており、南北2ホールのうち北ホールの入口正面がCompaq、その右がIntel、左がDigitalと、まるで戦争の布陣のようになっていた。その奥で昨年はPowerComputingが人を集めていた場所には、最高速のMacより数倍早いNTマシンをインターグラフが出品し、DTPの主要ソフトをバンドルして売っていた。
アップルが特別なゾーンを設けることはなく、今年から始まった SGML OPEN のゾーンなどはPCばかりである。北ホールの人の入りが悪いわけではなく、もうPentiumのそばには近づけないというようなアレルギーは感じられなくなっている。
Steve Jobsはアップルを大転換させつつあるので、報道陣も目が離せない。参加者にとっては、Jobsが8月6日行った爆弾宣言「アップルが勝つにはマイクロソフトが負けなければ、という観念を改めなければならない」で目から鱗が落ち、上記のような状態が生まれたのであろう。
Jobsのスピーチの中心は、新しい役員の顔ぶれを紹介して、アップルの今後の経営への安心感を強調していた。新製品はColorSyncのバージョンアップ以外にないので、新しいモニターのキャリブレーションのデモをJobsがしていたのは少し寂しかった。
Jobsはグラフィック分野に傾注していくことを約束し、そのキーアプリケーションの供給者であるアドビ、クオーク、マクロメディアの代表を壇上に呼んで、結束を強調していた。この3社の話の中で、アドビはMac向けとWindows向けの売り上げ比率が半々、クオークは6対4でMac向けが多く、マクロメディアも半々と、だいたいベンダーは半々になっていることがわかった。ただしサーバやRIPはNTへ傾いてしまっている。
いったいラプソディはどこへ行ったのかと思うほどJobsはMacOS8の話しかせず、その限りにおいては当分Macユーザは現状維持ができるということだろう。MacOSがなくならないにしても新製品開発がなければ競走上極めて不利になるのは明らかで、アップルはJobsが来る前よりもいっそう危険な瀬戸際に来ていると見る人もいる。
PowerMacが出たのが1994年、同じ頃のPentium/Windows95からNTと本格的32ビット時代に入って、今はCPUは次世代の64ビットのことが話題になりだしているのに、PowerPCは次ステップの開発の話はないし、アップルのOS側にもその話はない。それでは2年後のインテル/HP/DECの64ビット時代にアップルは取り残されるのは目に見えている。
これからの新しいソフトを開発しようとする者にとっては、MacOSなのかラプソディなのか、またアップルが今後どのような方向を目指すのかロードマップがはっきりしないので、ビジネスプランがたたない状況である。だから近い将来の開発はNTでするしかない。ただしMacOSは安定するようなので、今のアプリケーションがすぐに使えなくなることもない。すでにアプリケーションはWindows版が先にリリースされる例が多くなり、グラフィックスの環境はMacとWindowsが混在したシステムにならざるを得ないことが、参加者には認知されたと思う。
次回はWEBの変化をとりあげる予定。
1997.10.15 小笠原 治
(C)Japan Association of Graphic Arts Technology
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