CAPの構築を急げ

製造業においては設計から工場管理まで、コンピュータとネットワークを使ったFA/CIMシステムが浸透し、事務処理においても大幅な省人化とともに品質やサービスの向上がされつつある。これに比べて、印刷産業は顧客満足度の向上や、Time to market という点での進歩がまだ少ない。
21世紀に向けてモノ作りの環境は情報技術(IT)によって激変しようとしている。いままで個別の領域ごとに行われていた改善が、オープン化ネットワーク化という技術的な変化によって融合できるようになったからである。
印刷物制作工程もデジタル化であらゆる要素を統合的に扱えるようになり、CIMの新しいアプローチが可能になった。

来る12月16日に行われる1998年度JAGATトピック技術セミナーの特別講演では、「時代は今、デジタルエンジニアリング」と題する特別講演を予定している。
そこでは、 ITを活用して、いかに早く正確に顧客の求める機能やコスト情報を伝え「ベストなモノを設計し、ベストな作り方で、しかもベストなタイミングで作る」という目標達成のための製・販・技を一体化した仕組みについての話を聞くことになっている。
ここでは、製造業一般のCIMの考え方と対比しながら、印刷物制作システムの現状を整理してみたい。製造業一般のCIMについては、オーム社「CIM概論」(人見勝人著)を参考にした。

CIM化とは生産システムのフレキシブル化

製造業は、設計機能、製造機能、管理機能、経営機能を持っており、それぞれの機能を自動化する努力がなされたきた。それが、CAD(Computer Aided Desgin:設計機能)、CAM(Computer Aided Manufacturing:製造機能)、CAP(Computer Aided Planning)、OA(Office Automation)である。
従来、各機能の自動化はそれぞれ別個に進められてきたが、CAM,CAD,CAPを共通データベースで融合化したシステムがFA(Factory Automation)であり、狭義のCIMである、というのが一つの見方である。
CIMがめざすものは、大量生産の自動化(FA)ではなく、コンピュータを中心とした生産の自動化によって、生産システムに柔軟性を持たせ、多品種少量製品を短納期・低コストで生産することである。システムの性格の観点からみればFMS(Flexible Manufacturing System)である。オンデマンドでの印刷物作りは、印刷産業におけるFMSといえる。

DTPはCAD

CADは、コンピュータを利用して製品設計を自動的 ・対話的に行うものである。広義のCADは、工程設計(手順計画ともいう)とレイアウト設計(生産ラインのレイアウト)を含める。
製品設計を印刷物製造に当てはめると仕様設計に当たる。「どのような物を作るか」を作業指示書や原稿に指示、指定として書き表すことである。
工程設計とは、その印刷物をどのような工程、機械を通して作っていくかの計画である。

デジタルとアナログが混在している現在のプリプレス工程では、どのような工程設計をするかは、生産効率、品質を左右する非常に重要な計画である。米国の調査では、この工程設計にはデジタルの知識・経験を持った専門家とアナログの知識・経験を持った専門家のペアが当たるのが最適であるという結果が出た。
レイアウト設計は印刷産業での意味は設備計画が近いものとなり、CADからは外されることになる。

DTPは、WYSIWYGによって仕様設計をしながらその結果をデジタルデータとして作成しているから、CADといえるだろう。
製造業一般における製品設計でも、全く新らたな部分は少ないし、全てを新たに設計すればコスト高になる。したがって、CADの運用においては、多様な部品をできるだけ標準化し、その部品を組み合わせて第一段階の設計をし、それで不十分な場合に修正を加えるという方向が目指されている。
DTPによるプリプレス作業でも同様である。デザインが売り物の場合は別にして、版下レベルのデザインをDTPのオペレータが1点1点していてはペイしないだろうし、過重労働になりかねない。
テンプレートをいくつか用意し、最も適する物を選んでデータを流し込むという作り方にしていくべきだし、新聞広告制作などでは自動組版が現実になっている。

印刷のCAD/CAMシステム

CAD/CAMシステムとは、製品設計のために作られたCADデータを、その製品を加工する自動化設備の制御に使うことができるシステムである。製図作業が不要となり、大幅な効率向上と制作期間の短縮が達成される。
DTPとCIP3は印刷のCAD/CAMシステムといえる。面付け情報や各ページの画像面積などの設計情報で印刷機械のインキ量を制御するからである。

IPEX98では、製本関係への応用は見られなかったが、それは、定期物の製本加工仕様は仕事が決まれば自ずと決まるし、各種製本機械も主要な仕事については、ボタンひとつでリセットできる。また、作業伝票を見て作業が行われているような状況では、現状に対して脱技能化、能率向上、品質安定などのメリットは感じられないだろう。
生産管理情報がネットワークで行き来するようにならなければメリットが出ないのかもしれない。

印刷物生産システムで進んでいるCAM

CAMとは自動化された生産機械とマテハン設備を組み合わせ、その全体をコンピュータコントロールする機能である。CAMはメカニカルオートメーション、数値制御オートメーション、そしてコンピュータ制御オートメーションへと進化してきた。 各段階の差は自動化された生産機械の機能の進化とコンピュータ利用の差である。

メカニカルオートメーションの段階では、生産機械は自動化されているが単能化した専用機である。同じ製品を大量に作るのには威力を発揮するが、多品種少量の製品を連続的に自動的に生産する機能は持っていない。
数値制御オートメーションに使われる自動生産機械はNC(Numerical Control)機械で、加工条件等を入力したテープで仕様の異なる加工を自動生産することが可能になるという柔軟性が加わった。

次のCNC(Computer Numerical Control)、いわゆるマシニングセンターを使ったコンピュータ制御オートメーションでは、従来、別々の工程、機械で行われていた複数の加工を一つの機械で連続的、自動的に処理できるようになった。マシニングセンターが、加工する道具を自動的に交換する機能を持ったことによって実現したFMSである。
従来の印刷、製本システムでみると、各設備には相当広範な範囲でプリセット機能が組み込まれており、上記の数値制御オートメーションの中心になるNC機械のレベルに達している。
FMSを実現したCNC機械は、印刷では新しい仕事の版の作成と生産機械への脱着というマテハン作業をなくしたQM-DIや、画像を物理的に固定した版を使わずに、連続的にヴァリアブルデータの画像形成を行い後加工までをインラインしたデジタル印刷機を当てるのはこじつけすきだろうか?

遅れている印刷業のCAP

このように、印刷物生産システムのCAD,CAMはかなり進んでいる。問題はCAP、管理情報の流れのコンピュータ化である。
製造業一般でも、多種少量生産を行う工場の日程計画作成は難しく、大量生産向けに開発された各種手法やコンピュータシステムは機能しにくい。したがって、現場における生産の状況を各現場の端末から直接捉えてオンライン・リアルタイムに把握できるようにするとともに、動的日程計画を立て、オンラインリアルタイム方式で生産現場に指示するようなシステムが採用されている。
しかしながら、印刷産業一般の生産管理(大日程計画、工程管理、品質管理、原価管理)は、まだ、バッチ処理が普通である。
また、FMSでは、企業全体の情報ネットワークを結合することになるが、そのためには、現状でメーカー、企業によって異なる各種機器の制御の標準化が不可欠である。CIP3はその標準化をめざしている。印刷物生産システムのCIMに向かって、現状ではCAPの実現とCAD,CAMとの融合化が最も大きな距離を残している。

(出典:プリンティング・インフォメーション1998年12月号より)

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