Japan Color 色再現印刷'97

 今年の3月にISO/TC130国内委員会事務局より「Japan Color 色再現印刷'97」が頒布された。日本の標準印刷物として,カラーマッチングの際の「印刷見本」としての活用や,データ交換や印刷発注者とのやりとりなどに品質指標として幅広く活用されていくことが期待される。そこで,テキスト&グラフィックス研究会では,TC130エキスパートの山崎雅彦氏に「Japan Color 色再現印刷'97」についてお話を伺った。同印刷物の目的や意義を中心に紹介する。刷版・印刷条件の詳細や測色データについては,文末の問合わせ先までご連絡いただきたい。

 Japan Color 色再現印刷'97とは,ISO/TC130国内委員会の協力を得て日本印刷学会標準化委員会で作製されたもので,Japan Colorをべースに,ISOで定められた規格に沿ってオフセット方式で印刷された175線の印刷物である。Japan Colorとは,95年に日本の代表的な印刷機器,資材を用いて印刷した場合,どのような色が再現されるかを試験・測定し,まとめたもので次の4点が決められている。

  • 標準インキ(Japan Color SF-90)
    C,M,Y,Kのオフセット用インキ
  • 標準用紙(JapanPaper)
    アート紙,坪量128g/u,白色度80%,光沢度75%のもので特菱アート(三菱製紙),OKアート(王子製紙)に相当
  • 標準測色値(Japan Color Value)
    標準インキと標準用紙で印刷した時のべ夕の色。C,M,Y,K,R,G,Bと紙白の8色の側色値(Lab)が決められている。
  • 標準色見本(Japan Color Sample)
    標準インキと標準用紙を用い,標準側色値をΔE6以内で体現化した色見本

印刷物の絵柄

 Japan Color 色再現印刷'97の絵柄は,2種類のカラーチャートからなっている。1つはISO 12642の出力ターゲットであり,もう一つは,ISO 12647のパターンと仮に呼んでいるベタを含む10%間隔の一次色と二次色の網点階調ステップである。主観的な評価に繋がりやすい自然画は排している。  Japan Colorで定められているのは,ベタの色(solid color)のみであり,網が掛け合わさった中間色の基準はなかったので,印刷物の標準としては不十分であったが,ISO l2647パターンにより階調色が加わる事によって,印刷物の色再現領域の重要な骨格部分の色の大半をカバーした完成度の高い印刷色見本が出来たことになる。

印刷条件

 標準印刷物の実際の印刷は,小森とハイデルの2社に依頼した。それぞれの印刷条件の詳細は略すが,ブランケットも印圧条件も室温も湿度も両社の印刷条件は異なっている。印刷には,印刷機の種類,速度,印圧等々さまざまなパラメータがあり,印圧や速度を合わせたとしても,大きな機械と小さな機械ではラインスピードが違い,実質的には条件を同じにすることは不可能に近い。そこで,パラメータの条件を同じにするという考え方ではなく,標準印刷物が刷れる条件が標準の印刷条件だという考え方をとった。したがって,標準印刷物の印刷条件は,印刷会社によってさまざま違ってくることになる。刷り上がった印刷物が標準印刷物と色が合っていれば,そのときの刷り方が規格に適合した条件ということになる。

標準印刷物の利用例

(1)色分解フィルムの仕上がり具合(再現色の状態)をチェックする場合
 色分解を行う場合,コントロール・パッチとセパレーション・フィルムとを,ISOの規格に則って刷版し,コントロール・パッチの部分が標準印刷物と同じ仕上がりになるように刷る。その結果が,セパレーション・フィルムを標準条件で色再現したときの仕上がりということになる。網点%と印刷したときの色再現とが常に一定の関係となるので,色分解の担当者は,それを前提に作業できる。その結果が得意先で気に入られずに修正する場合も,コントロール・パッチが標準印刷物と同じ仕上がりになるという条件を前提に直す。

(2)Proof Print(on-press,off-press)を作製する場合
 プルーフを作製する場合にも,コントロール・パッチを用いて,コントロール・パッチの部分が標準印刷物と同じ仕上がりになるように条件を調整する。プルーフは校正刷りだけでなく,DDCPも最近増えてきているが,その場合には,コントロール・パッチの部分が標準印刷物と同じ仕上がりになるように出力機を調整してもらう。そのときに得られる絵柄の品質が,標準条件で印刷したときの画像品質ということになる。

(3)印刷物を作製する場合
 印刷をするときも全く同じである。ただ,本刷りの場合はコントロール・パッチを入れるスペースがないことが多い。その場合は,校正刷りで標準印刷物に合わせておき,それを校了紙として,印刷現場では目で見て合わせるという使い方をすればいい。校正刷りと同じように仕上がれば,ISOの規格条件で刷った印刷物と言って差し支えない。必ずコントロール・パッチを入れて刷らなければならないというわけではない。

標準化の利点

 まず,絵柄はさまざまであっても,網点面積率が同じ状態であれば同じ色再現になるということがある程度確保できる。仮に,同じ絵柄を何社かの印刷会社で印刷する場合,標準条件が保たれていれば,印刷機の大きさや版材の種類等々が異なっていても,同じセパレーション・フィルムを使っていれば,どこで刷っても同じ仕上がりになるはずである。

 また,標準化=同品質で差別化できない,という意味ではない。カラー原稿,特に透過原稿は,印刷より広い濃度レンジがあるし,ハイキーなもの,ローキーなものいろいろあるので,色分解してセパレーション・フィルムを出力するまでは,主観的な要素がいろいろ入ってきて独自のものが出せる。ただ,刷り上がりの色をどこの印刷会社でも同じにした方がいいし,校正刷りと本刷りとは色が合った方がいい。

 ISO 12647を制定したときには,校正刷りと本刷りの色を合わせるという基本方針があった。したがって,校正刷りやプルーフがJapan Color 色再現印刷'97と同じように仕上がれば,本刷りは非常に刷りやすくなる。校正刷りのところでどこまで協力してもらえるかがポイントになる。校正刷りが,標準印刷物の条件で印刷されれば,本刷りは現状よりもずっとやりやすくなるはずである。ドットゲインの条件もゆるいので,かなり幅のある印刷条件で再現できるはずである。

 今まで標準印刷物が決まっていなかったので,校正の業者や,プルーフのメーカーは何を目標にしていいかわからずに,各々の条件で作成していたのだろうと解釈している。目標が決まれば,それに合ったものを作ればよいだけなので,あとは問題なく普及していくと思っている。

 しかし,すべての印刷物を規格通りに印刷しなければならない,と言うつもりもない。規格通りではクライアントを満足させる絵柄ができなくて,もう少しベタ濃度を上げれば良くなるというケースも当然あるだろう。こういう場合は規格にとらわれる必要はない。ただし,その印刷物は規格の条件から,どこが外れているのかをきちんと認識しておく必要はある。

JAPAN COLOR 色再現印刷'97 頒布価格 単価\12,000(送料,消費税込み)
問合せ先:ISO/TC130国内委員会 TEL:03-3434-4661 FAX:03-3434-0301

(テキスト&グラフィックス研究会)

プリンティングインフォメーション 1997年5月号より

(C)Japan Association of Graphic Arts Technology


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