デジタル化の次にくるもの

(以下の内容は,1998年2月4日に行われた Page98 オープニングセッション 「デジタル化の次にくるもの」におけるミルス・デイビス氏による講演の要約である)

デジタル化の次はビジネスの質が変わる。ビジネスの効率性を高めることは当然で,新しい能力も持ち合わせなければならないし,仕事も新しいやり方が必要になる。ビジネスに関する全体的な体制の再構築が必要になる。

デジタル化の次は,印刷・出版,そしてあらゆるメディアのコミュニケーションがe-ビジネスになる。「e」とは,電子的にすべてのビジネスを行うという意味で,インターネットが典型的な例だが,印刷はサービス業になり,ネットワークを通じて受注し,折衝し,サービスを提供することになる。

重要なのはプロセスの変化である。雑誌や書籍,カタログのコンテンツは一回だけ使って終わりではない。デジタル化されたコンテンツが柔軟性をもってリサイクルされると経済的であり,そのための管理をしなければならない。

この新しい状況下では,まずはネットワークがあって,どの会社のビジネスもすべてオンラインになり,コンピュータを通じてインタラクティブなサービスをすることがベースになる。
グラフィックアーツは伝統的に職人が行っていたが,工業になり,今はサービス業になった。この次は情報サービス化していく。

このサービスの本質は「インタラクティブ」で,サーバが使われ,プロセス全体を高速化し,体系立った形で監視する。この機動力を持たなければ時代に遅れる。受注して1カ月後に納品するようなケースはなくなり,もっと作業時間を短縮し,即刻サービスを顧客に提供しなければならない。

標準化も進んでいく。コミュニケーションについても,電子商取引,業務の打ち合わせも,コンテンツも標準化している。そして,いろいろなデータベースと対話ができる。

21世紀に向けての戦略

このインパクトを予想すると,北米で3年の間に商業印刷物の2/3がネットワーク化され,EDI(電子商取引)を使うことを含めてe-ビジネスワークフローで行われるようになるだろう。
アメリカの7年前を振り返ると,それ以前は版下作成していたのが,ディスクに変わり,その後ディスクはなくなり,直接ネットワークから仕事がくるようになった。そしてすべてのメディアがネットワークに基づくメディアになる。印刷するしないにかかわらず,業界の利益の50%以上が,インタラクティブなサービスからもたらされるようになるだろう。

これによって,トップ20%の企業が,残りの80%の企業に比べ5倍以上パフォーマンスがよくなる。つまり,トップ20%は儲けても,それ以下はぎりぎりで生き延びることになる。
トップ企業は,早い時期から新しいテクノロジーを導入し,業界の模範となっている。全体的なソリューションを導入し,パフォーマンスのメリットを享受しており,トップ以下とのギャップはますます大きくなる。トップ企業についていくには,デジタル化とビジネスの再編成をしなければならないし,できないなら別の業種に転換したほうがいい。

競合他社に比べて,5倍パフォーマンスを上げるには3つの段階をクリアしなければならない。第1段階は新たな効率を得ること,第2段階は新しい能力をつけること,第3段階は新しい関係作りである。

3つの段階

第1段階は,何か新しいことをすることではなく,ビジネスの方法を21世紀に向けて経済性が上がるテクノロジーに合わせる段階である。プロセス・リエンジニアリングによって,リストラをしなくければならない。

第2段階では,体系的な新製品,サービスの革新,新たな能力を構築する段階である。価値の源を発見する能力が必要である。製品やサービスの取り扱い範囲を拡張することで,技術,メディア,コンテンツ,情報,コンサルテーション等のすべての領域で成長することができる。新しい価値の源泉を成長させるには,新しい能力の開発と,どうやってそれをパッケージングするかが重要になる。

この場合モジュール化するという考え方がますます重要になる。自分の業務と他のいろいろな機能を組み合わせて統合していく。その際にどれが基幹業務になるのか,どれが違うのか判別できなくてはいけない。一番優れたものを基幹業務とし,そしてトータルソリューションを顧客に届けられなくてはいけない。必ずしもすべてのパーツを自分で構築する必要はない。

第3段階では,価値のリーダーシップを維持できるような形でビジネスをデザインする。ネットワークの世界の法則として,顧客との関係がより親密になり,相互運用性をもつことが必要になる。自社のシステムと顧客のシステムが,お互いのネットワークからみると,ひとつのノードであるような関係を作り,これにより多様なサービスが届けられる。

つまり,印刷物を売り込むだけでなく,お互いのインフラを連結して,価値,コストのメリットが双方にあるように考える。社内の関係だけでなく,自社とサプライヤーの関係,そして顧客との関係をマネジメントすることが必要である。さらにサプライヤーのさらに先,顧客のさらに先との関係を考える。
従ってネットワークを介して企業は拡大していき,本を制作する際はEDIを介して出版社と印刷会社をリンクし,また紙業者をリンクする。

誰もこれから市場で起こることを予測することはできない。その中での必勝法は,競合他社連合より早く対応することである。そのためには自分の陣営のビジネスをリンクし,情報を共有化することで,より迅速に対応し,不必要なコストを削減することである。

※上記内容の詳細は,JAGAT 機関誌 「プリンティング・インフォメーション 1998年 3月号」をご覧下さい。

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