Adobeの苦悩は業界の苦悩
SEYBOLD SF PUBLISHING 98 会議報告 その2
成長を続けてきたDTPであるが、プリプレスの機器が飽和し、また業界再編成を起こし、ついにoff-the-shelfソフトにも影響がでてきた。DTPも飽和の時代になったのである。SEYBOLD SF に先行する8月18日に、QuarkがAdobeの株を買い占めたい意向を発表したことが話題になったので、9月2日には Adobe vs Quark に関して特別セッションが設けられた。両当事者は参加しないもので、特に結論はなく、雑談的なものではあったが、野次馬事では済まない問題が浮かんできた。
事の経緯はAdobeの地盤沈下にあり、Adobeのピークは1995年頃に溯り、今は株価も半値以下で、レイオフも始まる。Quarkの Tim Gill は展示会のCompaqのステージに現れて話していたが、自分はお金のことよりもバイナリやhexの方が楽しいといいながらも、Adobeの価格が下がったから起こったことだといった。
PostScriptはハイエンドのイメージセッタなどでは使われているものの、普通紙プリンタでのライセンス商売は下がって行くだろう。ハイエンドではハーレクインが競合として健闘している。AdobeはAcrobatでオンラインの世界に出ようとした。またPageMillというWEBツールも試みたがDTPのようには成功していない。
PostScriptやCMYKの技術はWEBでは通用しない。遅れ馳せながらAdobeはW3CにPostScriptやPDFに近いベクタグラフィックス言語PGMLを提案しつつあるが、この分野はマイクロソフトとの競争もあるし、前途多難であろう。
Quarkはハイエンドで95%のシェアがある。AdobeのPhotoshopやIllustratorも同様だが、PageMakerは広く使われていても、ハイエンドでは少数派でしかない。つまりこれらのソフトで市場は飽和したので、今までの成長神話が通じなくなったのだ。両社とも人数も増え組織は肥大化したが、そこでの投資に見合う成長は期待できない。このジレンマが今回の背景にある。
両社ともDTP分野のパイオニアであり、気合いを入れて事業をしていることが今日のにらみ合いの技術的膠着状態をもたらした。パネラのWalter Shild は、WEBパブリッシングに向けた技術革新が停滞していて、コーポレートパブリッシングの市場では両社への欲求不満が高まっているといった。Walter Shild は、今回のショック効果で革新が進むこととともに、さらにオープン化することを望んだ。
特にQuarkの技術開発はマーケティングに基づくというより、Tim Gill の考え方からくる点で、変わった会社になっていることを多くのパネラが指摘した。Timは以前はSGMLは嫌いだといっていたが、今はXMLにはかかわろうとしている。これはQDMSのようなアセット管理を手がけはじめたからであろう。しかしQuarkは金の余裕もあり、指向がはっきりしていて、XMLには力を入れないだろうという意見もあった。
Quarkユーザで現状に不満を持っている人は、競争状態がある方がよいという。印刷出版関係者は、もっとWEBへの取り組みをしたいので、printとWEBを統合して扱いたいが、両社の現状の製品がその役にはたっていない。だから両社が一緒になっても、その解決にはならず、ひいては買収はうまく行かないという意見が支配的だった。会場の参加者に聞いたところ、QuarkがAdobeを買うことを希望する人はいなかった。
また、AdobeのphotoshopとIllustratorはよいが、PageMakerは前2者と調和的に使えていない。PageMakerはAdobeの思惑通りにはいかなかったのではないか。だからK2開発なのであり、K2のデモは衝撃であり、来年ほとんどの人はK2を買うだろうと言われた。ただ、Quarkは金があり地位も揺るがないが、Quark自身は非常に警戒していて、Adobeを買収して競合を避けたいのではという意見もあった。
議論は合併するかどうかよりも、両社がWEB革命のチャンスを逃したことに焦点が移っていった。両社は今までと違うことをしないと、写植製版メーカーが傾いたように、両社も傾くだろう。しかし今の開発能力で違うことをするのは難しい。なぜならWEB対応プランが出ていないからという。
印刷を捨てることはできないが、WEB対応は遅すぎるという意見が支配的だ。出版系の人からは、AdobeがXMLに取り組むことに期待しながら、両社が逃したチャンスの大きさが語られた。Adobeの対web失策は、グラフィックの人たちのWEB取組みの失敗をも意味している。PrintとWEBの技術の亀裂は大きく、今がのっぴきならない時点である。
Adobe依存では遅れてしまうということを痛切に感じさせられたとともに、Quarkの仕掛けによって、かえってK2が着目されるという皮肉もあった。
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