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トピック技術セミナー 講演要旨
情報発信、クライアントの意識変化
JAGAT客員研究員
有限会社ゲイン 代表取締役社長 杉山 伸一 氏
1.印刷業界の現状
現在の印刷業界には大きく2つのテーマがあります。
「業界内での生存競争」と「クライアントとのデジタル・ワークフロー構築」です。
前者は、1990年を境に供給過剰・競争時代に入った印刷業界の宿命的なもので、納期短縮と価格競争が主な争点になっています。利潤が高かった仕事や継続受注をしていた仕事ほどそれを維持、確保するのが難しい時代になっています。
企業努力で生産性の向上や製造原価の低減を実現した上での納期や価格への反映であれば問題はないのですが、競合の見積もりに合わせるために無理を強いられる場合が増えているのが現実です。
後者は、全社会的なデジタル化の流れの中で情報発信者の「印刷」というより「情報伝達のメディア」に対する意識の変化に根ざしたテーマといえます。企業も印刷業界と同様、場合によってはそれ以上に厳しい生存競争の環境下で日々努力をしているわけですが、その企業努力のひとつにデーターベースやネットワークそれにインターネットを駆使した情報発信の合理化や情報の共有化のテーマがあります。さらにその延長線上に紙メディアでの納期短縮やコストダウンの要求がついてくるわけです。
当然企業側(クライアント)は自分の努力に対応できるパートナー、それも情報発信のデジタル・ワークフローを構築できるパートナーを選択することになってきます。ここでは「システム対応力」が要求されますが、印刷業界にとっては比較的不得手なテーマであり、人材の育成、確保に関わるテーマでもあります。
前者、後者に関わらず、印刷業界において企業の実力が試される厳しい環境になってきたと言えるでしょう。
以下、後者のテーマに焦点をあてクライアントの視点から印刷業界がとるべき対応について述べます。
2.本格化するデジタル化の流れの中で
デジタル化の流れは全ての業界に起きている現象で、もう誰にも止めることのできない大きな流れになってしまいました。DTP、電子カタログ、電子文書管理・配布、電子商取引、インターネット、XML、デジタル放送、モバイルなどなど、身近に聞こえるものも、またどこか別世界のものとしか思えないものまで、最近耳にされる機会が増えたのではないでしょうか?
これまでの印刷業界でもいろいろなデジタル化の波はあります。電算写植、CEPS、DTP、CTP、オンディマンド印刷などです。しかし、これらはあくまでも印刷業界内の出来事に過ぎません。つまりデジタル化は、個々の領域の既存プロセスを電子化し、作業効率をあげ、品質を安させるのに役立つ形で広がってきました、周りの変化とは一線を画す形で独自に発展をしてきたのです。そういう発展形が許されるビジネス環境であったとも言えるでしょう。
ところが、最近のデジタルをベースとする技術革新は、「みんなの技術」つまりオープンで標準的なものを目指し、結果的にビジネス環境のボーダーレス化を促しています。
印刷業界に対しても業界内だけの閉ざされたビジネス・プロセスを許さない状況を作り出しています。
3.企業、個人にとって身近になった印刷
イメージセッター、CTP、デジタル・オフセット印刷機などは印刷業界特有の技術革新の賜ですが、それ以外の技術要素にはかなり汎用的な技術が採用されています。コンピューター、データーベース、ネットワークはもとより、デジタル・カメラ、画像圧縮(例、JPEG)、PDF、DTPソフト、カラープリンタなどです。この汎用的な技術の浸透と応用により企業内印刷やSOHOでの制作へと広がりを見せています。
また、最近のホームページを見るとわかりますが、以前と比較して情報量の豊富さとデザイン、表現方法の高度化が伺えます。ホームページの構成要素は、画像、イラスト、テキスト、図形など印刷物となんら変わりはありません。場合によってはアニメや動画、インタラクティブな機能など印刷では持てない要素まで組み込まれます。
印刷会社によるホームページ制作は盛んに行われていますが、内制化のケースも多々あります。企業にとってイントラネットやインターネットのホームページは印刷物制作の疑似体験をできる場になっているのです。
企業の生き残り策として情報システムの構築、ホワイトカラーの生産性向上が議論されますが、一人一台のPC、マイクロソフト・オフィスやロータス・ノーツなどのツールを使った書類作成、プレゼン資料作成などが飛躍的に増加すると報告されています。
4.クライアントの奥で何が進行しているのか
デジタル化が進んでいるといっても印刷物の量が減っているわけではありません。2000年を過ぎても印刷需要は漸増する見通しがあります。その種類も豊富で、営業スタイルも従来どおり細めに顧客をまわり印刷物の受注を行うことも大切です。
しかし、クライアントが印刷物を情報システムからのアウトプットの一種とみなす場合は、状況は一変します。そこには、情報データーベースや製品データーベースが存在し、企業内の各種システムと連動しています。当然、ホームページとも連動してきます。
そこで実現されるアプリケーションは、社内情報の共有化、受発注業務や物流業務との連動、外部への情報発信、オンラインショッピング、電子商取引、それにワントゥワン・マーケティングへの展開等多岐に渡ります。この場合、印刷物の制作工程も彼らのワークフローの一部に組み込まれてきます。
こういった企業側の動きは、従来の印刷物を発注する部門や担当者とは別のセクションで企画され、開発されて運用されるケースが多く見られます。そして、当然のことながらシステム的な要件に関しては、コンピューター・ベンダーやシステム・インテグレーターに相談をして開発を進めていきます。問題はここからです。従来は、企業側のシステム開発と最終的な印刷物制作の工程は分離しており、印刷関連は印刷会社への図式がありました。しかし、技術革新によって、プリプレスや印刷、特にオンデマンド印刷などは、彼らの中でもハンドリングできるようになってきていることです。これは、「システム化、データーベース化=内制化の進展」につながることを意味します。
ややもすれば、このような動きを見過ごすケースがあります、そしてある日突然、従来の印刷受注が別へ流れてしまうということにもなりかねないのです。
5.クライアントの意識の変化
印刷物制作に関してクライアントは、システムからのアウトプットという認識を持ち始めています。企業内のPCからプリント命令をだすとネットワークに接続されているプリンターから書類が出力されてくるのと同じように、チラシもカタログも情報誌もプリント命令で印刷物が出てくることを願っています。
クライアントは一企業として、止まることのない技術革新と常に変化するビジネス環境に適応するために企業努力を惜しみません。その結果が、印刷物制作にも大きく影響を与えているわけです。
印刷業界もこのような企業の動きをできるだけ早く察知し、デジタルワークフロー構築のパートナーとして、それに印刷のプロフェッショナルとして、輪の中に入り込む努力が重要な課題なのです。
クライアントの意識変化は想像以上であると肝に銘じるべきと考えます。
(C)Japan Association of Graphic Arts Technology
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