無意識から意識へ

〜「21世紀の経営課題」はじめにより〜

1980年代後期より約10年にわたって行ってきたJAGATの21世紀委員会のさまざまな検討や議論を踏まえて,21世紀の経営課題を一言でいうとすると「無意識から意識へ」ではないだろうか。この10年の変化は日本の戦後史でも大きな転換点となり,過去の常識が変わりつつある。21世紀に向けて,印刷産業が依って立つ技術も,日本のビジネス環境も,再構築されようとしている。
このことの理解は従来の常識からは困難なのである。誰もが同じレールの上を走っていた過去の常識で考えると,現在直面している再構築も季節の変わり目の衣更えのように皆同じように行われるように思える。しかし,常識が変わるというのは,再構築の結果は皆同じようにはならないという意味である。
同じ発想が起こるのは,従来は同じ文化,同じ商習慣,同じ技術という金太郎飴的環境に皆がいたからである。同じ環境では無意識で済むことが多くあり,鳥の群れのように自分の周囲のものの動きをみて,同じように行動すれば餌にありつけ,身が守られたのである。これは効率的であり,リスクが少なく,おかげで皆それなりの成長ができた。
ところが今日では様々な分野で,バブル崩壊から,リストラを経て,ビッグバンへと,課題の所在は過去は無意識によしとしていたところそのものへと向かっている。不動のものと思えた基幹産業もグローバルな波に揺さぶられている。

一方従来から多様化を重んじ,新規分野で冒険することをものともしないアメリカは,こういった時代に適合してきた。1990年代中葉はたいへん勢いづいていて,特に情報分野で様々な試みが実を結んでいる。これによって日米の格差が拡大する方向にあり,どのように対応するかも課題である。日本における多様化はアメリカと同じではないにしても,情報技術のインパクトを無視して21世紀を考えることはできないであろう。
今まで日本では馴染み難かった多様化やそこでの自己責任という要素を経営に取り込むためには,従来無意識で看過していたことを意識的に検証し,自分のビジネスモデルを自分で構築しなければならない。このような観点で過去の21世紀委員会の報告書を振り返り,過去の業界の固定概念や常識を,なるべく客観的に問い直した。

21世紀委員会報告書の構成は,第1章に過去に掲げた夢と,下降する現実の中で亡霊のように今も残っている業界内の期待感をアンケート調査した。第2章では頭打ちになった印刷産業の現状を,生産面とサービス面に分けて分析した。第2章の2.4では,印刷企業の現在の取り組みの中に見られる個々の矛盾の例を挙げた。取り上げた理由は,21世紀の経営戦略としては,このような事柄は整理してあたらなければならないという意味である。
これからの道筋は個々の企業の置かれた情況ごとに多様にならざるをえないが,共通項となる要素をまとめて第3章とした。これがこの報告書の結論的提言である。
また,以上の作業をする上での参考とした,ヒアリングの概略や,JAGATの出版物を,資料として巻末に再掲載した。



21世紀委員会報告書 最新版
「21世紀の経営課題」 1998年8月発刊

「21世紀の経営課題」は下記にその要旨を掲載しておりますので,ご覧ください。



◇ 21世紀委員会 報告書 シリーズ(各5,000円)

  • 「メディアビジネスの刷新と改革」(1997年)
  • 「メディアビジネスの転換期」(1995年)
  • 「生き残るか? 21世紀の印刷産業」(1993年)
  • 「CSのための生産システム最適化」(1992年)
  • 「融業化する印刷のリストラクチャ」(1991年)
  • 「印刷産業の生産戦略」(1990年)
  • 「印刷産業の情報化・ソフト化への展望」(1989年)(絶版)

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