SGMLの逆襲
SGMLはISOの規格になってから10年強を経て,公的で基幹的な文書システムとしては地位を確立している.しかし,この10数年間にSGMLでビジネスをしようと考えた人が多くいた割には,民間への浸透は思わしくなく,それほどビジネスは活発でなかったように思う.
民間で使われているのは,ビジネスが国際的になって広く大量な文書交換が必要なところとか,公的な規制を強く受ける業界などである.こういうところは専用のソフトを開発する傾向にあるので,SGMLの簡便なソフトが登場する土壌とはならなかった.
SGMLの規格そのものも,最初は大型の汎用機を扱っていた人たちが仕様を決めたので,非常に柔軟で汎用なものになったのだが,逆にまともに取り組もうとすると重過ぎることがあった.例えばSGML規格にあわせたテクニカルレポートという利用ガイドが発行されていて,DTDの見本のようなものがいくつも手に入るが,それらはとてもパソコンで動くようなものではない.要するにこの10年間に,パソコンが非常に普及し,PCユーザが増えたにもかかわらず,PCユーザがSGMLに取り組む場合に参考となるものは非常に少なかった.
民間では,学術論文などがSGML化するのが始まりであったと思う.それらはテキストを扱う人の理解度が高かったから,たいしてツールもなかったのに,TeXやフリーソフトの組み合わせで取り組んでいたのは周知の通りである.PCユーザにはこれしか方法がなかったので,かえってこれがSGMLのイメージを固めてしまったきらいもあった.
しかし1994年頃からのWEBの興隆により,期せずしてHTMLのようなタグでコントロールする方法が広まった.WEBで扱うデータ量が多くなるにつれて,作業の自動化のためにSGMLで原稿管理しデータベース化することが大いに議論されたのが1995年頃である.しかしHTMLのためにSGMLデータベースを作るのでは荷が重過ぎて非現実的であるとして,WEBの世界でのSGML熱は急速に醒めていった.
とはいえHTMLでは貧弱すぎるので,HTMLの拡張が百家争鳴の状態になった.特に情報提供側はブラウザのネットスケープとマイクロソフトが別の動きをするのを警戒していたので,結局SGMLを共通の基盤として,PCレベルで十分扱いやすい仕様のものを目指すXMLが登場した.これはHTMLの拡張にともなう独走が起こらないように,SGMLの開発に携わっていた人々がブレーキをかけるという形で提案が行われた.
今はブラウザの2社がともにエディタを努める形でXML規格化が進み,実装についてもマイクロソフト/IE4やネットスケープ/オーロラへの採用など,順調な滑り出しを見せている.このような利用者の身近なところにXMLが出現することによって,この種のマークアップしたデータは情報を柔軟に加工できることが一般企業にも理解されるようになるだろう.XMLがSGMLに取って代わるのかどうかはともかく,SGMLの意図したことが現実に機能するようになりつつあるといえる.
(テキスト&グラフィックス研究会会報70号より)
(C)Japan Association of Graphic Arts Technology
JAGAT HOME/
TOP