足元の技術革新が先決

2〜3年前は,DTPの次は何だ?,という話題が盛んで,企画面ではCD-ROMやホームページなどマルチメディア化が採り上げられ,デザイン面では主としてホームページとそこに登場する新しいオーサリングツールが採り上げられ,印刷の面ではオンデマンド印刷などが採り上げられた。しかしこれらだけでは次の大きなビジネスへの展開の第一歩とはならなかった。

これらは情報が提供される際の「見かけ上」の新しさは与えても,情報を整理して送り出す仕組みを抜きに語っているからである。別の観点からいえば,かつてマニュアルなどの大量ドキュメント業務のシステム化をするために,レイアウト/出力から次第に前工程に溯って,文書管理システムや,汎用のデータの交換方法であるSGMLが検討された。

このような情報の準備をするところ技術は,印刷物の企画デザイン制作の側からすると苦手な分野であり,事実あまり関心を呼ばない。従来はこのような枠組みは発注者である客の側に構築された,そこから印刷用に切り出されたデータを起点に印刷の仕事が始まるのであった。わずかに「データベースパブリッシング」的自動処理を提案する会社が,顧客のデータ管理の枠組みにかかわった程度である。 2〜3年の試行錯誤を経た現在,多くの人が冒頭のテーマに取り組んで,さほど実りがなかったものの,技術をめぐる状況は大きく変化した。基盤となる技術が進歩したのではなく,コンピュータ処理の裾野のレベルが向上したのである。

例えば,インターネットという「サイバースペース」の先に,仮想3次元空間にいろいろな物を配置して動かしてみせるバーチャルリアリティは,掛け声の割には応用が進まず,ベンチャー企業も次々とつぶれていったが,TVのような2次元の動画処理のデジタル化はめざましく,MPEGはアマもプロもインターネットなどオンライン用も安く安定して使えるようになった。

社会のインフラとしてのデジタル放送が騒がれるほどで,結局「サイバー」ではなく,既存のビデオの利用拡大である。印刷の世界もそれに近いものがあり,冒頭のニュービジネスが伸び悩んだのとは裏腹に,ロットリングやアクリル絵具の世界から,3D,ペイント,モーフなどデジタルの効果のための「色の道具」が非常に一般化した。

要するに大風呂敷な話に乗る前に,足元の技術革新に対応しておくことが先決なのである。編集/制作の自動化を進めようとすると,印刷から一歩溯った文書管理システムがインフラになる。さらに画像の扱いの自動化を進めようとすると,CMYKから一歩溯った汎用な色管理のシステムをインフラとして持たなければならない。これは上記の「色の道具」のデジタル化に対応するためであると同時に,カラーも含めた自動処理のためにも必須になろうとしている。
(テキスト&グラフィックス研究会会報91号より)

(C)Japan Association of Graphic Arts Technology


JAGAT HOMETOP