電子文書化のマイルストーン

従来は電子文書ファイルは,それを作ったアプリケーションソフトでないと開いたりプリントできず,同じアプリケーションでもバージョンが変わると開けないことがあった.つまり電子化された文書はごく狭い環境の中でしか有効でなかった.ところがAcrobatを経由した文書は,それを作成したアプリケーションと切り離しても表示/印刷ができ,ちょうど紙にプリントした文書がどこでも見られるように,長期間保存しておいても再利用できるようになる.

もともとPostScript/EPSファイルはこういった装置独立を目指したのだが,実際はフォントの有無などに引っ掛かってプリントできないとか,プリントが遅いなどのために,日常の事務処理の中で使うには重すぎた.だからAcrobatはPostScriptの「敗者」的部分で「復活」を約束する技術であるともいえる.これでフォントの有無を乗り越えて対処でき,汎用技術の地位を獲得するだろう.

文書をAcrobatのPDFファイルにする操作は,紙にプリントするのと殆ど同じ作業のレベルなので,Acrobat化は特定の業者が行うものではなく,文書を作る人すべてが手がけることができる.無料のAcrobatReaderが提供されるので,PDF文書ファイルのページを単純にめくるだけなら無料だが,業務の流れの中で効率的に電子文書を参照するには,ちゃんと文書のデータベースや管理のシステムを作らなければならない.

それがあって初めて,その中のユーザインタフェースの局面にAcrobatを採用するということになる.AdobeにとってAcrobatの主な狙いは,オフィス内のWindows95/マイクロソフトOFFICEのように,Acrobat Exchangeが企業に大量採用されて,企業内で紙の流通なしにビジネス処理が行われることだろう.

当初から画像圧縮することで大量蓄積や通信での利用に便利に考えていたが,そうこうするうちに時代がインターネットになってAcrobatには追い風になった.

文書を伝送して遠隔地で再生する需要が急速に増え,印刷物を運ぶのではなく,ファイルを運んで目的地でプリントする「ディストリビュート&プリント」や,必要な時に必要なページだけを印刷する「オンデマンド印刷」にPDFが向いているのである.

マルチメディアから考えるとAcrobatのオーサリングは過渡的なものかもしれないが,現状の印刷物制作とともにPDFファイル納品ができることで,Acrobatは社会的な電子文書化へのマイルストーンであるといえる.

(通信&メディア研究会会報 1997年6月号より)

(C)Japan Association of Graphic Arts Technology


JAGAT HOMETOP