プリント! プリント! プリント!

2000年1月31日



―カラープリンタを使う―

 ここ数年の間に,カラープリンタ市場が驚くほど大きな変貌を遂げている。パソコンやデジタルカメラのオフィスや家庭への浸透に伴って,コンシューマ向けの低価格/高画質のカラープリンタが隆盛を極める一方,DTP後のワークフロー整備へ向けて,校正用やオンデマンド向けのカラー出力機の利用が増大している。この状況の背景には,ネットワーク利用の拡大に伴うオンラインパブリッシングへの展開やCTP導入への流れがあるのだが,デジタルのワークフローの確立という視点からみれば,コンシューマもハイエンドもすべては同じ方向へ向かっているといって良いだろう。
 一方,今後の経営戦略のなかで,マルチメディア事業や情報処理事業などを掲げる企業は急速に減りつつある。数年前まで,CD-ROMの企画・作成や情報処理業務は,印刷産業にとって次代の事業拡大の目玉として意識されていた。しかし,その夢は全体としてはしぼんでしまった。

1. プリンタを選ぶ前に


 価格はもちろん,出力方式から出力サイズ,速度,色調,インタフェイスまで,さまざまな特徴をうたう各社のプリンタをどうやって見分ければ良いのだろうか。このような視点は,印刷機と同じように,初めから何らかの校正機が据え付けられているような環境では,あまり必要のないことであった。
 しかし,プリンタに限ったことではないが,これから先,多様化する需要にこたえながら,効率的かつ最適なワークフローを作り上げるには,ユーザ自らプリンタを比較し選択する眼力をつける必要がある。校正用なのか,それともオンデマンドプリンタとして使うのか。プリントアウトをいつどこで,どこの誰に見せるのか,必要なのは速さか,画質か,それとも大サイズが必要なのか。そして,それはなぜか,クライアントは何をどの程度要求しているのか,といったことを,製品カタログを見る前に十分検討しておかねばならない。
 むろん,こうした使用条件は,それぞれの仕事の内容に応じてさまざまであろう。具体的なポイントはユーザごとに異なる。だからこそ難しいのだが,最も基本的なポイントをいくつか考えることはできるだろう。

(1)色の知識
 第一に必要なのは,カラーを扱うのだから当然だが,色の知識である。これはカラーマネジメントのことだけをいっているのではない。カラープリンタというと,すぐにICCプロファイルがどうこうといった話になってしまうが,パソコン画面で表示している色が,プリンタのどのような機構を通して,どのように紙の上に再現されるのかというデジタルで色を扱う基本について,きちんと理解しておくことが大前提である。これは,今まで現場のプロが色を見て判断していたノウハウをどのように受け継ぐのか,あるいは別の方法を考えるのかという選択条件を考えるためにも必要である。色を見るという行為を改めて明確に意識化して,ワークフローに組み込まねばならない。

(2)コンピュータの知識
 第二に必要なのは総合的なコンピュータの知識である。プリンタというと,すぐ色と画質の話になるが,使う時には現場のパソコンに接続しなければならないし,サーバやデータベースと合わせて使うこともあろう。PostScriptを扱うならRIPをどうするかという問題もある。
 こうしたことは,プリンタを購入すれば真っ先にやらねばならないことのはずだが,従来は,制作システムが先にあって,プリンタは別に,そこに接続するのだと漠然と考えられていた。
 しかし,フルデジタルとは,いい換えれば最初から出力込みでシステム構築を考えなければならないということである。特定のプリンタに合わせた固定的なシステム構築をするのではなくて,柔軟な生産体制を作るためには,最初から出力のことを考えておかなければならない。まして,印刷において出力は生命線である。いかに効率良く最適な状態で出力機を使うかを第一に考えて,システム構築を図ることが絶対に必要な条件であり,そのためにはコンピュータやネットワーク,データベースなどの総合的なデジタル関連知識を総動員しなければならない。

2.プリンタの種類


 現在のカラープリンタで主に使われている方式はレーザとインクジェット,およびDDCPなどのハイエンドプリンタで採用されている昇華転写型などである。以下に,カラープリンタの種類と特徴について簡単に触れるが,インクジェットやレーザとは,ごく基本的な方式による分類であることを忘れてはならない。現在のカラープリンタの隆盛は,各メーカーのたゆまぬ技術開発によるもので,各社それぞれが独自の技術的工夫を施している。ここに記した特徴はあくまでも原理的なものであることを理解していただきたい。

(1)レーザプリンタ
 レーザ光でドラム表面を走査し,レーザ光のオンオフによって画像を形成する。オンオフの間隔とレーザ光の走査との同期や,ドラムの回転機構に正確さが必要である。原理的にはドラムの回転する割合によって解像度が決まる。

(2)インクジェットプリンタ
 小さなノズルからインクを噴き出して定着させる。ノズルを備えたヘッドが横に動いて印字し,それが元に戻ると紙が縦に送られて,次の部分に印字することを繰り返す。サーマル方式とピエゾ方式が多く使われている。
@サーマル
 熱によってインクの中に泡を作り,泡の圧力によってインクを噴き出す。キヤノンはバブルジェット方式では先駆的な技術革新を行ってきた。1200dpi,A3ノビ対応のF8500などの製品がある。ノズルの密度がプリンタの基本的な解像度を決定するが,複数のインクの粒を単位として使うバリアブルドット方式によって,階調を表現する方式も行われている。
Aピエゾ
 電圧によって変形する結晶=ピエゾ素子を使う。ピエゾ素子に電気を通すと変形し,圧力でインクを押し出す。電圧のかけ具合をコントロールしてインク粒の形や大きさに変化をつけられる。対応周波数やノズルの密度が高く,出力速度も速く,インクの種類にも幅がある。

3)その他
 カラープリンタ市場ではレーザとインクジェットが大きなシェアをもつが,高品質を求める印刷業界では別の方式も使われている。
 昇華転写型は固形インクを熱して気体にして印字する。温度調整によってインク量をコントロールでき,事実上の連続階調を実現する。昇華型では,インクをコーティングした専用紙を使う。昇華型と似た方式に熱転写型がある。また,ソリッドインク方式は,固形のインクスティックを溶かして転写ドラムに吹き付け,それを紙に転写する。

3. 校正


 印刷における校正では,従来からデジタルプルーフ(DDCP)が使われている。DDCPにはレーザや昇華型,インクジェット,その他の方式が採用されている。一方で,カラープルーフという高度な要求に適応するため,各メーカーとも高度な技術を投入しており,上述のカラープリンタの各方式の一般的特徴を,そのまま当てはめることはできない。その上,DDCPはもともと(つまりデジタル化やCTP化以前から)印刷をターゲットとした仕様を求められており,従来の印刷のワークフローのなかにしっかり組み込まれているシステムといって良い。従って,画質がどうこういう以前に,カラープリンタを簡単にDDCPに置き換えて,カラープルーフに使うことは一般的には難しいと考えられる。
 だが,実はここに落とし穴がある。つまり,DDCPの考え方自体が,従来の校正のイメージに縛られて,近年のカラープリンタの目覚ましい機能向上についていっていない側面を無視できない。
 インクジェットプリンタが脚光を浴びているのは,コンシューマ向けの製品が大きな技術革新を遂げて,プロも利用できる高画質,大サイズの製品が現れつつあるからである。従って,上記のように,何のためにどういう場面で使うのか,クライアントの要求はどういうものかを改めて捉え直すことで,カラープリンタの利用は大きく広がるに違いない。

4. プリントオンデマンド


 数年前にオンデマンド印刷機が出現した時は,“オンデマンドプリンティング”という言葉が大きな話題となった。しばらく話題から遠のいていたと思ったら,今度は“プリントオンデマンド”という言い方で話題になりつつある。技術革新はある時,突然大きく進むが,それが市場に受け入れられるまでにはタイムギャップがある。その典型だろう。また,ほんとうに新しい技術革新は,いきなり一斉に受け入れられるのではなく,受け入れられやすいところから,じわじわと浸透するという例でもある。登場した当時は,技術の新しさばかりが注目されたが,現在はどのように利用するかに視点が移っている。
 粉体トナーを使う電子写真方式のXEIKON(サカタインクス),Chromapress(日本アグフアゲバルト,)など,それぞれ新しいラインナップをそろえて多機能化をアピールしている。Chromapressシリーズは,つい最近シール・ラベル,パッケージ業界向け片面5色のChromapress 32Siを発表,XEIKONのDCPシリーズもeXpert,eXpert Plusなどの新製品を投入した。
 現在,オンデマンド市場で注目されているのは何といっても出力サービスの側面である。Macintoshからのイメージセッタ出力で始まった出力サービス分野だが,現在では大判のカラープリンタやオンデマンド出力サービス分野が主流となりつつある。これはメーカーや出力センターだけでなく印刷会社にとっても魅力のある市場である。岡田印刷オノウエ印刷ニチデンプリコなどは,製版/印刷のノウハウを生かしたオンデマンドサービスに参入している。現在は,デジタル印刷機とカラープリンタは技術的には区別されているが,オンデマンドという利用面では,事実上一続きのものと捉えられつつある。この傾向は,カラープリンタの機能向上とネットワークインフラの整備によって,今後ますます拍車がかかるだろう。
 (テキスト&グラフィックス研究会)

(プリンターズサークル 1999年12月号より)

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