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外注費においても標準原価を設定することで、cost"ing"という改善行動の結果を数値として評価することができる。
JAGATが提唱している原価管理の仕組みであるPMP(Profit Management for Printers)システムでは、標準原価を軸とした部門別利益管理と業務改善のドライブとなるing思想が核となる。
ing思想とは次のようなものである。
price(価格)、cost(原価)はそれぞれひとつの状況あるいは結果を示すに過ぎないが、そこに"ing"をつけることによって、それらは目標達成への意志と行動を意味することになる。各部門の管理職が部門利益予算という目標に向かって、pricing、costingという行動をとることが企業の組織活性化と利益確保の源泉となる。これをing思想という。
pricing
顧客満足度を高め、信頼を勝ち得ることによって顧客からより高い、あるいは妥当な請求金額を引き出すような営業の努力、行動のこと
costing
現状のコストをどうしたら下げることができるのか、材料の無駄はないか、作業のスピードアップ、ミスの防止はどのようにすれば良いかを考え、改善する行動のこと
こうした考え方にしたがって外注費における標準原価を考えてみる。
工務に外注管理の専任者がいるという想定で、下図のように年間経費が人件費ほかで750万円かかっていて、年間外注金額が1億5千万円である場合、仕入れ額に5%乗せた金額を営業部への社内振替価格とすれば、外注管理に関わる社内コストを賄えることとなる。
協力会社との間で事前に単価の取り決めがあれば、その単価に5%乗せた金額が標準原価(社内仕切り額、社内振替額)となる。理想をいえば管理コストの5%だけでなく、製造部門としての(必要)利益額も加えて設定したい。
一方で外注費には標準原価を設定せず、仕入れ額に一律マージン率を掛けた金額を部門実績(売上、生産高)としている会社もある。この場合、外注管理部門としては、高く仕入れれば仕入れるほど部門実績が増加することとなり、部門の利害と会社の利害が一致しないこととなる。外注費においても標準原価を設定することで、安く仕入れれば仕入れるほど標準原価との差額(部門利益)が大きくなり、それはcostingの成果として部門の貢献利益として評価されることになる。
これは、あくまで理屈の上の話しであって、日々の運用のなかでは標準原価の設定までは難しいかもしれない。しかし、重要なのは、材料にしろ外注にしろ仕入れ原価は、実際の仕入れ額ではなく社内の管理コストを加えたものととらえることであり、その意識を社内に浸透させるためにも管理コストを数値化しておくことには大きな意味がある。
また、営業部が直接、材料や外注の手配を行っている会社もある。この場合は営業部としての仕入れ原価は実際の仕入れ額となる。仕入れコストは一見安くみえるが、仕入れ担当者が部内にいればそのコストは営業部が負担することになる。たとえ兼務であっても必ず管理コストは発生している。
そして、得意先への販売額は、仕入れ額(外部仕入れ+社内仕入れ)に営業部自身の内部発生費用(販売費および一般管理費の一部)を乗せたものとなる。規模や業態にもよるが15%~20%程度が一般的な水準である。規模が小さくなると比率が高くなる傾向にある。
営業部にとっては仕入れ額を抑えるだけでなく、営業部自身の費用を抑える活動(costing)も地味ではあるが大切な取組みとなる。
収益構造の見える化と運用ポイント ―利益確保と次世代MIS構築のために―
開催日時:2012年11月21日(水) 14:00-16:30
会場:東京(JAGATセミナールーム)/大阪(大阪印刷会館 4階大会議室)
収益構造の見える化と運用のポイントを、さまざまな事例をもとに分かりやすく解説します。