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デジタルカメラで写真家の仕事はどうか変わったか

早川廣行株式会社電画 代表/DNJUKU塾長)
※JAGAT主催8月29日「デジタルカメラによる印刷ワークフローの上手な組立て方」より

■写真家からみたデジタルカメラの評価
2002年は後世、真に実用的なデジタルカメラが普及価格で登場した最初の年、業務にデジタルカメラが広く普及し始めた年として語られることになるだろう。1999年9月に登場したニコンD1を皮切りに、業務用レベルの画質と使い勝手をもつデジタルカメラが数多く発売され、徐々にデジタル撮影が定着してきたのだが、2002年に発売された35mm一眼レフデジタルカメラは、実売24万円前後と数年まえからは考えられない低価格と、撮りっぱなしのデータをそのまま印刷にまわしても、十分に満足できる高画質を備えているのだ。

それ以上に評価できることは取り扱いの容易さだ。コンシューマーデジタルカメラと変わらない操作性を備え、ほとんど取り扱い説明書不要の使いやすさはデジタルカメラの普及に大きく寄与している。
デジタルカメラのウイークポイントとされていた、長時間露光や高感度化、シャドー部のノイズ問題等も、実用上問題のないレベルに向上しており、銀塩フィルムに置き換える際の障害はほぼ解消された。
年間生産台数でそれまでの10倍近いマーケッティング計画でもあり、今年以降、写真入稿のデジタル化が急速に増大することは間違いない。

■デジタルカメラに残る課題
現在の業務用デジタルカメラの主流は600万画素の解像度をもつが、35mmフィルムとほぼ同等の画質を備えており、35mmカメラでこなせる業務用途には十分に対応可能だ。
出版・報道を含めた商業印刷物の多くの部分が35mmカメラで撮影されるようになっている傾向を見ると、今後ますますデジタルカメラが普及していくことが予測できる。

広告写真の世界ではまだまだブローニーサイズ以上の中判・大判カメラとフィルムを使用した入稿が中心であり、600万画素35mm一眼レフデジタルカメラでは画質不足と思われている。
昨年から発売されているコダックProBack(1600万画素)や、今年6月から発売された富士フイルムS2Pro(1200万画素)を使ってみると、従来の600万画素機を遥かに超える画質をもち、ブローニーサイズのフィルム同等の使い方が可能であると実感できる。

9月下旬にドイツのケルンで開催されたフォトキナで、各社から1000万画素を超える解像度を備えたデジタルカメラ及びデジタルカメラバックの発表があり、来年度は広告写真業界のデジタルカメラ利用も拍車がかかるはずだ。
現在発売されているシングルショットタイプのデジタルカメラの大半は、受光素子が1枚のマトリックスフィルタによる色分解方式であり、画質の向上は著しいものの、カラーモアレやパターンモアレといった画質上の本質的な問題は解決しきれていない。
この問題解決が行われたとき、生産効率と経済性を要求される分野では(ビジネス分野の大半)デジタルカメラの利用が優先されることになるだろう。

唯一、垂直方向色分解方式のFoveon X3 CMOSセンサーを採用した、一眼レフタイプデジタルカメラ、シグマSD9がフォトキナで正式に発表され、10月下旬から発売されたが、上記の欠点を解消した理想記録方式の実機は理屈どおりの高画質で、343万画素という解像度ではあるが、モアレを嫌うスタジオ撮影などでは能力を発揮するだろう。

■デジタル写真制作者としての品質保証の範囲
撮影現場ではきれいなRGBデータ作成を目指したい。デジタルカメラの過渡期にはCMYKデータを出力するデジタルカメラの要求が、製版サイドから伝えられたりはしたが、写真制作者サイドから見た場合、デジタルカメラは決して立体スキャナではない。被写体を写真制作者の解釈と意図によってどのように切り取り定着させるかというツールであり、その目的の為に如何に使い勝手が良いかが道具として求められている部分だ。写真制作者にとってカメラはあくまでもカメラであって欲しいし、デジタルフォトデータはクリエイティブ作業への柔軟性や画像データとしての汎用性を備えた、RGBデータとしてデータを保持し流通させることが好ましい。

RGBデータのスムーズな流通には、デバイスごとに異なるといえるRGBカラースペースを統一させることが望ましいが、現実に統一することは難しいとすれば、少なくともその素性(プロファイル)をきちんと添付したRGBデータを流通させることが大前提になる。
ピントや露出、フレーミングが適切であることは当然のこととして、デジタルフォトデータ特有の基本条件が整った適正なデータであることが必須である。

1.プロファイルタグが埋め込めこまれたデータであること。
2.使用目的に必要十分な解像度を備えたデータであること。
3.グレーバランスが整ったデータであること。
4.レンジ設定が的確になされたデータであること。
5.必要十分な階調特性を保持したデータであること。
6.色の偏りがプラスマイナス5度以内に押さえられていること。
7.過剰な彩度によって階調が犠牲になっていないこと。
8.過度なシャープネスがかけられていないこと。

以上が撮影現場から後工程に渡されるデータが備えているべき条件であり、写真制作者として最低限の品質保証範囲だと考えられる。

もしも写真制作者や撮影現場におけるオペレーターが、品質保証能力を持たない場合は、今後登場してくるデジタルカメラの性能アップを考慮した上での話となるが、RAWモードで撮影し、必ず参照カットとしてマクベスチャート等、素性のはっきりしたチャートを写し込んだカットをつけ、何も手を加えずに後工程に渡すことをお勧めしたい。
もちろんその場合は後工程での製版技術者が、的確な現像&画像補正技術を持っていることが前提になる。

■写真制作者はデザイナー・製版者へ何をどう伝えるべきか
前述の条件を備えたRGBデータを、後工程であるデザイナーや製版技術者に渡す場合、正しいCMS技術とRGBデータ処理技術をもった製版技術者であれば、何も言う必要もないはずだが、伝達事項として通常の入稿基準に準じた申し送り書をつけた方が誤解が少ないだろう。デジタルカメラのデータを入稿する場合の参考基準としては、以下のような項目が考えられる。

撮影したカメラの種別、使用した画像処理ソフト、画像フォーマットの種類、作業カラースペース(タグとして付けられているプロファイルのカラースペースが異なる場合は、そのカラースペース)、プロファイルタグの有無(原則としてRGBデータにはカラースペースのプロファイルタグを埋め込む)、出力許容サイズ、解像度、シャーネスの有無、RAWデータの有無、など。
RGB出力でかまわないのでプリンタによる色見本(プルーフプリント)を添付することは、極めて有効なはずだ。

デザイナーにRGBデータを渡す場合は、製版技術者に渡すのとは別な配慮が必要になるかもしれない。
デジタル写真制作者やデジタル製版にたけた製版技術者に比べ、デジタルフォトデータのハンドリング技術やCMSの運用に無神経・無知識なデザイナーが少なくない現状では、レイアウトする以上の画像処理は加えないことを申し送る必要がありそうなのだ。もちろん正しい知識を持ったデザイナーに渡す場合は、製版技術者への配慮と同じで良い。

前述したが餅は餅屋であり印刷を前提にした製版技術は製版技術者に勝るものはないので、デジタルカメラの素のデータであるRAWデータ入稿は、チャートを添付したり努力目標であるプルーフプリントを添付してあれば、最も美しい印刷物が出来上がる可能性を持っている。

■商業写真家の仕事とスタジオビジネスの行方
デジタル時代といわれながらデジタルカメラの導入が、最も遅れていたのがプロ写真家と呼ばれる職業の人たちだ。
業務用途の写真撮影にデジタルカメラが使われることで、ポジフィルムに美しい写真を定着する技術を売り物にしていた人々の手から、様々なプロではない一般の人々の手に、それらの写真の製作がゆだねられるチャンスが拡大していくだろう。
イメージカットと呼ばれる写真は、目的にあったイメージが捉えられた写真であれば、特に特別注文による製作物である必要はないので、ストックフォトの利用が盛んに行われている。

そのストックフォトの写真提供者はもちろんプロ写真家だったのだが、最近はアマチュア写真家の提供も増えており、高画質デジタルカメラによるストックフォトライブラリーが増えれば、急速に増大することが予測される。
風景や風物、自然等のジャンルではプロよりもよほど質の高い写真を提供するアマチュア写真家が多いし、可能性が高いのだ。
インターネットによるギャラリーの開設も手軽になり、ネット上での必要とする写真検索も非常に楽になっている。このままこの傾向が進んでいけば、商業印刷物に使用するイメージカットは、インターネット上で検索・利用する形が当たり前になり、オーダーメイドで写真撮影を依頼する形態は過去のものとなるのも、そう遠いことではないかもしれない。

一方、製品写真等の被写体が特定されるものの撮影は、撮影技術の普及によりクライアント(依頼主)サイドでこなされる率も増加しているが、大量に撮影することで単価を下げる商品写真撮影工場の増加も予想される。
インターネットの普及によりネット上のアーカイブ(データベース)からダウンロードした時に課金するが、撮影料は無料といった商品撮影ビジネスも、一部では始まっている。

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JAGATでは、デジタルカメラのデータ入稿は印刷工程を大きく変えるキーポイントであると考えています。なぜなら製版機器の代名詞であったスキャナによる作業周りにいろいろなノウハウを構築してきました。そのスキャナにとって変わる勢いで台頭しているのがデジカメです。そしてデジカメデータは、基本的にRGBデータであって従来得意としてくたCMYKではありません。この2つの現象を考えても印刷にとって大転換であることがわかるでしょう。これはフルデジタル化への仕上げの部分でもあります。新しい時代のステップを上がるためにもデジカメは避けて通ることはできないおでしょう。

■関連セミナー
JAGATではデジタルカメラを基本から学んでいくための講座「印刷会社のためのデジカメデータ入稿基本講座」を11月26日、27日に開講致します。また、現在「実践・応用講座」も企画中です。ご期待下さい(JAGAT商品企画グループ)。


 

 



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