8月末のデジカメセミナーでのアンケートでは、回答者全員がデジカメデータによる入稿が増えていることを実感しており、そのテンポは、1-2年で2〜3割に達すると回答した企業が44.8%、5割に達するという企業が31.0%、7割に達するが10.3%であった。つまり42.3%の企業で1-2年のうちに入稿データの半分以上がデジカメデータになるだろう、と答えている。これは非常な速さで写真入稿、あるいは原稿制作の工程が大きく変化をすることを意味している。
●2002〜3年はデジカメのエポックメイキング
画像データは、製版部門で作られるもの、分解データ化はスキャナーで行なわれ、データはCMYKであることが製版・印刷の疑うことのない常識であった。各社の営業入稿マニュアルには写真データはCMYKモードで4色分解されたものが条件である、となっているに違いない。このような常識が過去形になるのも時間の問題といえそうだ。
「2002年は後世、真に実用的なデジタルカメラが普及価格で登場した最初の年、業務にデジタルカメラが広く普及し始めた年として語られることになるだろう。」とうのは(株)電画代表でありDENJUKU塾長の早川廣行氏である。いままでは、デジタルカメラに高い関心をよせ、高額な投資ができる一部の写真家やスタジオでの使用に限られていた。また銀塩フィルムとの品質の差が二の足を踏ませていた。しかし「デジタルカメラのウイークポイントとされていた、長時間露光や高感度化、シャドー部のノイズ問題等も、実用上問題のないレベルに向上しており、銀塩フィルムに置き換える際の障害はほぼ解消された。」(同氏)として、年間生産台数でそれまでの10倍近いマーケティング計画もあり、今年以降、写真入稿のデジタル化が急速に増大することは間違いないという。
●デジカメのハード環境は整った
従来、出版・報道を中心した商業印刷の世界の多くが35mmカメラで撮影されており、この分野では急速にデジタルカメラに置き換わっていくであろう。現にスピード優先の報道にあっては、現像・分解がいらないことは大きなメリットであり、ほんどがデジカメに移行してしまったといってもよい。
ところが、広告写真の世界ではまだまだブローニーサイズ以上の中判・大判カメラとフィルムを使用した入稿が中心であり、600万画素35mm一眼レフデジタルカメラでは画質不足と思われているようだ。
しかし、9月下旬にドイツのケルンで開催されたフォトキナにて、各社から1000万画素を超える解像度を備えたデジタルカメラ及びデジタルカメラバックの発表があり、いよいよ最後の牙城?であった広告写真業界でもデジタルカメラ利用の拍車がかかるはずだと早川氏はいう。そう考えると、印刷会社への画像入稿にデジカメデータが一挙に増える可能があり、冒頭の予測アンケート結果の裏づけとなる。
●一変する写真家と製版・印刷の責任範囲
デジタルは時代の流れではあるが、新たな課題がある。いったい誰が写真の品質を保証するのか、正しい(狙い)の色をどう決定するのか。これをハッキリさせる必要がある。どこかのコマーシャルではないが、カメラのシャッターを切っただけで仕事は終わらないとすれば、写真家の責任範囲はどこまでになるのだろうか。早川氏は、写真制作者の品質保証範囲として印刷工程に渡されるデータが備えているべき条件として次ぎのような項目を挙げている。
1.プロファイルタグが埋め込めこまれたデータであること。
2.使用目的に必要十分な解像度を備えたデータであること。
3.グレーバランスが整ったデータであること。
4.レンジ設定が的確になされたデータであること。
5.必要十分な階調特性を保持したデータであること。
6.色の偏りがプラスマイナス5度以内に押さえられていること。
7.過剰な彩度によって階調が犠牲になっていないこと。
8.過度なシャープネスがかけられていないこと。
現実がどうかは別にして、後工程への配慮と写真家としてのポリシーを考慮した項目であろう。しかし、銀塩フィルム環境で現像所が果たしている写真家へのサポート(写真の色作り)が一切なくなるデジカメの世界で、写真家がそのすべてを自己の責任として、上記のようなデータ作り後工程に回せるのであろうか。早川氏も「もしも写真制作者や撮影現場におけるオペレーターが、品質保証能力を持たない場合は、今後登場してくるデジタルカメラの性能アップを考慮した上での話となるが、RAWモードで撮影し、必ず参照カットとしてマクベスチャート等、素性のはっきりしたチャートを写し込んだカットをつけ、何も手を加えずに後工程に渡すことをお勧めしたい」といっている。ただし、その場合は「後工程での製版技術者が的確な現像&画像補正技術を持っていることが前提になることは当たり前である」と付け加えている。
写真家、製版・印刷ともに新たな領域への踏み込みとなるため、何が最適であるかの結論は直ぐには出ないが、現実には渾然一体となって進むことになろう。とのようなデータであったても画像データの多くがRGBの世界になることは確かである。
では受入れの製版・印刷現場はどうであろうか。スキャナーでCMYKの画像ノウハウを構築してきた現場としては実に心もとない現状である。前述のアンケートでも、デジカメデータ入稿への不安について「デジタルカメラそのものへの知識不足」(48.2%)、「色校正時に比較する物がない」(44.8%)、「自社内にRGBをハンドリングするノウハウがない」(34.5%)といった根本的なレベルの内容が多い。製版・印刷会社にとってデジカメはまさに黎明期である。もちろん早くからデジカメに取組み多くのノウハウを積んでいる会社もあるが・・・。
●カラーコミュノケーションの再構築
現実にはデザイン性の高いものは、写真家→製版・印刷の流れではなく、デザイナーや広告代理店が間に入っており、ワークフウローが複雑になる分、要注意である。正しいCMS技術とRGBデータ処理知識を持たないアーチディレクターやデザイナーにはレイアウトをする以上の画像処理は加えないルールで、製版・印刷会社での処理に任せるのもひとつであろうという。デザイン担当者の力量を見極める必要がある。
新しい画像作り環境に向けて相互の伝達内容やルールを確認しつつ、CMSをベースにしたデジタル時代にふさわしいカラーコミュニケーションに転換する必要がある。そのためにはデータを受取る製版・印刷にとってスキャナ技術を研究したごとくデジタルカメラによる画像生成について多くを学ぶ必要がある。時代はスキャナからデジカメへ、CMYKからRGBへという大転換期にさしかかった。
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