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デザイン・制作スキルとセンスは慣れだけでは向上しない
〜技能を支える知識を持ってこそプロである〜


●技術の変化が技能と知識の持ち方を変えた
印刷物は基本的に文字と画像の2大要素によって表現されていることは周知のとおりである。印刷のプロとしてはこの2大要素をいかに上手く表現し、再現し、的確に伝えるか、これが基本にして最大のサービスであろう。

活版全盛のころは、一般的には文字による表現が多く、写真への関心は相対的に低くかった。ところがスキャナの開発、ダイレクトスキャナからCEPSへと発展するなかで、カラー画像への関心は一挙に高まった。一方、文字は活版の「重さと量」から解放され、手動写植、CTS、電算写植、電子組版といった変革の中で、書体開発とりわけビジュアル重視の書体が多く誕生し、画像に負けず劣らず話題を提供した。結果、商業印刷のパンフレット、カタログ、チラシ、出版印刷の週刊・月刊雑誌の世界はビジュアル化、カラー化が促進され、華々しい高度成長を遂げた。製版・印刷業界では「文字と画像の統合」が合言葉になった。

ところが、実際に文字と画像が統合され始めた時、社会情勢は一変した。バブル経済の破綻以上に、新しいデジタル化の波、いわゆるDTPの台頭が大変革をもたらすことになった。これは工程統合ということだけではなく制作体制自体のボーダレス化を生み、組版・レイアウトの作業分担が曖昧になった。技術のオープン化、統合化が進んだ半面、工程ごとの専門家がしだいにいなくなり、クライアントからクレームが噴出した時期もあった。その後、パソコンのOSの向上、組版・レイアウト・画像レタッチソフトの改善によってDTPは主流システムとして定着、市民権を得るに至った。しかし組版・レイアウトの問題が解決されたかというと、現実はそう簡単ではなさそうだ。

●だれもが道具は手に入れたが・・・
一般の人が文字を入力し、そこそこのレイアウトに仕上げることは、パソコンと適当なソフトがあれば可能である。プリンターの普及台数からみて社内文書や報告書など、印刷会社の手を経ない印刷物は年々増加しているであろう。

一方、印刷会社の手を経て印刷される印刷物の工程も多様化し、文字あるいは組版・レイアウト、画像に対して、誰が責任(最終判断)を持つのかが曖昧になりがちで、作業自体もどこまでやるかが不明瞭であったりする。誰もがパソコンのハードとソフトを入手できる環境で、テキストはとりあえずデジタルであることから、組版ソフトのデフォルトに流し込めば形はできる。しかし、それではいくらプロユースソフトを使用しているとはいってもプロの仕事とはいえない。

編集者でありエディトリアルデザイナーの大西哲彦氏は、「DTPほど担当者の力量がそのまま反映されるシステムはない」という。ソフトに対するスキル不足、組版・レイアウトの知識欠如がそのまま外へ出てしまう。工程統合された分だけ、統合知識と新しいスキルが要求されている。ソフトが高度化すればするほどスキルを上げるためにはしっかりした基礎知識が必要であるという。印刷側にとって知識不足は、著しい効率の低下とクライアントの不信を増幅するという最悪のシナリオに繋がる。

●コンピュータをコンピュータとして効率よく活用する
内容、読者対象、発刊コンセプト、判型、ページ数、経費などを考慮した最適な誌面レイアウトの設計、効率のいい基本版面、マージンの設定など実用に則した基本フォーマットを数多くストックしておくことは、提案への応用、サンプルの作り易さ、ひいては作業効率のアップにつながる。また禁則処理の適応範囲の設定あるいは優先順位、約物の適応基準の整理など社内ルール(標準)を明確にすることによって、クライアントの要求度合いが(社内ルールに照らして)どの程度かを掴むことができる。

要求度合いに対応した組版を行えば基本的な齟齬は解消されるはずだ。現実には組版には細かいルールやこだわりが結構多いことも確かだが、自社の一貫した考え方による原則例をクライアントに明示することができれば、必ず効率をあげることができる。もちろんクライアントにしっかりしたハウスルールがあるところには、それに沿った対応が必要なことは当然である。

●印刷人としてのスタンスをどう考えるか
プロの技が組み込まれたソフトがあればそこそこできてしまう時代であることも事実だが、一方でDTPシステムを持ちながらも、最も多い外注がデザイン、レイアウトであることも事実である。レイアウトにはセンスが必要であり、画像を扱うのは一般の人にとっては負荷が大きいようだ。画像に比べ、テキスト部分については、担当者が入力をして、手元で仕上げたいという傾向が強い。ところが、ここにも大きな陥穽がある。

クライアントのテキストが印刷データとしてどれだけの完成度をもっているかである。約物が正しく使用されているか、近似な文字、記号などの誤入力がないか、適切な文字の大きさと書体選択がなされているか、など印刷物にするためのフィルターに掛ける必要がある。それを単にクライアント原稿だからと逃げることもできるが、印刷結果は歴然であり、最終的には印刷会社の力量評価にもなる。DTPでは、ある部分の分担責任だけでいい印刷物、効率のいい作業にはならないのである。

文字も画像も原稿作りへと遡り、関わりをもたなければ、品質保証のできるワークフローは作れない。作業は別々であっても前後工程への共通認識、知識の共有が必須となる。

●スキルとセンスは慣れだけでは向上しない
何よりDTPソフトのスキルアップには、経験という慣れも重要だが、ソフトに組み込まれた機能を理解する知識、表現された結果との整合・不整合を整理・分析する能力をつけることでソフトの癖や限界を知ることができる。結果オーライではない合理的で効率的なデータの作り方ができるはずである。またレイアウトなど視覚的センスというのも単に好き嫌いの問題ではなく、文字の成り立ちや日本語、欧文のもつ長い歴史と技術の変遷から生まれた視覚伝達の方法論の上に立つものだ。組版ルールも情報伝達で最も重要な誤解のない伝え方から工夫されたもので、単に見栄えだけではない。こういった知識の背景を知ることで、その考えを改良しながら今に活かす知恵をもつのがプロの印刷人といえるだろう。


【関連講座】
●JAGATでは、デザイン色彩クロスメディア画像処理など、実務に直結したプロのための基礎知識「セオリーシリーズ」セミナーを開催し、好評を博しております。

本シリーズの中の
DTPオペレーションに必要な組版・レイアウト知識〜上手なページ誌面の作り方〜
では、タテ組とヨコ組、書籍と雑誌などの分野に分け,美しいレイアウトの骨格である文字のあつかいを2日間で学んでいただきます。
*本講座は7月に開催致しましたが、予想に以上に参加希望者が多く、定員オーバーとなり、多くの方にご迷惑をお掛けしました。8月27日、28日に追加開催が決まりました。
*なお本講座は、QuarkXpressやInDesignを事例としますが、組版ソフトのオペレーション研修ではありません。

 

 

 



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