著作権・所有権の知識と自社のポリシーを真剣に考える時期である
先日掲載した「緊急レポート :製版フィルム廃棄損害賠償請求事件判決 〜印刷会社勝訴!東京地裁、出版側の製版フィルム所有認めず!〜」を受けて読者の方から質問が寄せられました。権利問題研究会の回答と併せて掲載させていただきます。
「緊急レポート :製版フィルム廃棄損害賠償請求事件判決 〜印刷会社勝訴!東京地裁、出版側の製版フィルム所有認めず!〜」を拝読いたしました。印刷会社にとっては重要な判決で、学ぶべきことが多いと思います。当社でも日々このような、悩み、疑問を持っています。そこで、以下のような質問についてご回答いただければ幸いです。(兵庫・印刷)
【質問その1】
同記事の「判決から学ぶべきこと」の最後にデジタルデータについて記載されていましたが、得意先からデータ(Wordや画像データ等)を支給され、それに対して体裁調整や各種加工を施して印刷物等を作成した場合、もともとのデータは得意先の所有なのですが、何らかの手を入れた時点で、印刷物作成における中間財と判断していいでしょうか?
【回答】
ご質問の工程を含む仕事は、カラーやテキストなどがパーツとして得意先から印刷会社にデジタル入稿され、これを印刷会社にて印刷物の体裁に編集してページデータ(製版データ)とし、この製版データから製版フィルムを作成してこれを用いて刷判、印刷する。そして、そのようにして印刷された印刷物を得意先に納品する。以上のような仕事であると思われます。
この場合は、カラーの色分解やテキストの文字入力が得意先でなされているわけですが、その状態のままでは印刷できないのは明らかで,印刷するための道具として製版用データに加工し、さらに印刷フィルムを作成しなければ印刷できません。このような製版データ及び製版フィルムは、印刷会社において印刷に必要な道具、即ち中間生成物として製作し、これを用いて印刷し、印刷物を完成するわけですから、その位置付けは、今回の判決に述べられているところと変わらないと考えます。
したがって、この場合の製版データ及び製版フィルムとも印刷会社の所有物であると考えて差し支えないと思われます。
【質問その2】
以上のような考え方はWeb制作においてもあてはまるのでしょうか? 最近、Web納品後に得意先から「こちらでメンテナンスをするので部品の元データをください」と言われる事があります。「有償になりますが」と返事をすると、大抵クレームになります。
【回答】
製版フィルムの場合も同様ですが、この業務を請け負う際に、どのような契約(書面、口頭を問わず)を交わしていたかが重要です。製作した最終Web画面(最終htmlデータ?)を納品するということであったのなら、製作過程で発生したデータ類は引き渡す必要はありません。そのような状態で、得意先から中間データを引き渡せとの要請があったとすると、それは元の取引契約にはない事項ですから、新たな取引、新たな契約が発生したと考えて然るべきでしょう。その取引に応ずるか、応ずるとして無償にするのか、有償にするのかは、今後の取引等への影響を考慮して判断するしかないと考えます。
【質問その3】
Webでの話なのですが、以前に作成された会社案内等(紙媒体)を提示されて、そこに掲載されている文字(本文やキャッチコピー等)や写真を使用するように指示されることがあります。その場合は「制作した会社の了解を取って下さい」とお願いするようにしています(逆の立場になった時に嫌な思いをするので)。得意先の指示であればいいのでしょうか?
【回答】
「掲載されている文字(本文やキャッチコピー)や写真を使用するように指示される」とは、全体の文脈から判断すれば、どこかの印刷会社で製版された製版データ(文字データ含む)を用いてとの意味であると解釈しました。そうであれば、その得意先と以前の印刷会社との間で、製版データの引渡しがその印刷会社から得意先へ契約上なされていなければなりません。貴社は、その上で得意先からその製版データの貸与を受けてWeb製作を行なうことになります。この製版データの引渡しは当然その得意先の問題です。
一方、以前作成された製版データを使うのではなく、貴社が得意先から写真や文字の提供を受け、デジタル化してWeb画面の製作を行なうのであれば、得意先が以前の印刷会社とWebについてもその業務を委託するという契約を結んでいない限り、その印刷会社との間の問題はほぼないと考えます。ただし、その印刷物にイラストなどが掲載されていて、そのイラストなどを以前の印刷会社が、またはその外注先のデザイン会社が作成していたとすると、それらに関する著作権の問題が発生してきますので、Webに掲載することについての許諾を得なければなりません。
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