JAGATトピック技術セミナー案内
特別講演 ワークフロー管理システム その1その2その3
会社の“配線図”を見直して自分らしいワークフローを
印刷市場・技術の変遷と今日的課題

会社の“配線図”を見直して
       自分らしいワークフローを

トピック技術セミナープリプレス解説―

●CTPはデジタルの出庫口

CTPの出現によってアナログ工程であった校正/直し/焼付け工程を含めて、プリプレス工程がやっとフルデジタル化した。デジタル化の最大の評価ポイントは、アナログ工程では排除しきれなかった曖昧さを除くことができることである。

プリプレス工程の全体がフルデジタルで流れるようになったので、工程設計→作業指示→実績把握→変更対応→出力までの管理ワークフローもフルデジタル化すべきであるが、この設計はアナログ時代の管理方法をそのままデジタルにしてはいけない。

アナログ工程の行き詰まりをデジタルによって解消しようとするのであるから、工程管理の設計、作業指示からジョブ情報の収集までもデジタル化を行う。作業指示にあたるところはジョブチケットによる自動処理ステップを取り入れることで、人為的なミスロスの削減を考える。ステップ間では必要に応じて人間が判断する流れになるが、進捗状況はWebに載せて営業がモバイルで見たり、客自身が確認することも考える。自分が送った荷物を1度に25個まで追跡できるFedexの印刷版を構築して、顧客満足を得るサービスが印刷会社でも容易に実現できるのである。

さらに一歩前進させれば、デザイナや出版社が原稿をPJTF(Adobe Portable Job Ticket Format)付きのPDF1.3にしてWeb入稿することで、いちいち印刷会社の営業マンに説明しなくても、例えば入稿データはプルーフ出力で一時中断して返送、OKなら印刷する、部数は何部などをチケットに書き込んで依頼すればよいことになる。

このとき、印刷会社はリモート出力・印刷サイトになり、顧客はWebに常時接続されたコンピュータ上で制作作業を行ない、必要に応じてオフィスのプリンタから出力するがごとく、Web上の(印刷会社の)プルーフマシンや印刷機から"出力"する。印刷機や製本機はプリンタの一つに過ぎないし、顧客はWebにある"何台かのプリンタ"の納期とコストを比較して、希望するところにジョブチケット付きのPDF原稿を投げ込めばよいことになる。CTPはデジタルの出庫口になるということだ。

●PDFはデジタル版下デジタルフィルム(Predictable)

CTPの普及を支える面付け/直し/出力工程のフルデジタル化では、直し/変更の高速化、レンダリング/出力の高速化を実現できるワークフローを組む必要がある。

CTPでは確実に印刷版を作成するためには、フォント保証はフォントをエンベッドした後に校了にすることが必要であるし、色の保証(CMS)やページ面付けの保証も必要である。
DTP工程で完全データを作成する米国型の流れでは、DTP工程でフォントエンベッドを行ない、結果を1ファイルにできるPDFは、印刷会社に渡してCTP工程につなげるデータ形式には都合が良いし、画像のJPEG圧縮を避けたければOPIも利用できる。
しかし、従来日本で行われているように未完成(不完全)ページを顧客から原稿として受取って,直し作業までを印刷側で行うのであれば、アプリケーションのオリジナルファイルを受取って印刷側でインタープリットし、最終的にCEPSと親和性のあるLW/CT(TIFF/IT P1)化する方法もある。これはCEPSが生産機として大量に残っていて、特色対応もしなければならない大手印刷会社の流れである。

しかし、多くの中堅印刷会社のようにPostScript中心の流れは、predictableなPDFを中間フォーマットにすれば、米国型の顧客対応も容易にできる。

安定性の増したPostScriptではあるが、米国においてはpredictable(予見できる)が重視されており、サイテックスが決めたLW/CT形式の中間フォーマットはDTP、イメージセッタの時代になっても絶大な信用を築いており、CEPSをルーツとするシステムには必ず利用されている。

これらはPostScript系のファイルを、自社システムに取り込んで独自の中間フォーマットに変換し、面付け/直し/自社イメージセッタやプレートセッタだけで出力させる製版システムであり、ハイデルのデルタリストやSCREENのRIPedファイルなどもLW/CTが採用されている。PDFがver.1.3になってpredictableたりえるものになり、中間ファイル用途のデジタルマスターと言えるようになってきた。しかしシステムへの実装上は、まだLW/CTの影を引き摺っているものもある。

PDFの中身を見ると、例えばTrueFlowには、@通常のPDF、APrintReadyPDF(フォントをアウトライン化したレンダー後データでPOMを含むレナトスJobのPDF)、BRIPedPDF(LW/CTのPDF)のような3種類のPDFが存在する。Brisqueでは、@文字はLW(線画)変換済み+画像枠無し、A文字はLW(線画)変換済み+画像枠(LW上に)、B文字はLW(線画)変換済み+72dpi CT、C文字はLW(線画)変換済み+高解像CT(画像)の各PDFが存在する。

このように、PDFはワークフローに合せた仕様でシステムベンダーが使えるため、製版から見るとデジタル版下・デジタルフィルムたりうるものにもなる。

●ワークフローは時空を超えて

CTPワークフローシステムは、デジタル化した面付け以降の工程をいかにスムーズに流し、Pre-Flight→Preview→RIP→Proof→hold/OK→Recordingなどの工程効率を上げるかであり、グラフィックアーツの中におけるIT戦術であるといえる。

そして、デジタルワークフローが突きつけたもう一つが、企業としてのIT戦略をどう構築するかある。これからは新たに、「営業窓口は客別Webサイトに、顧客はリモート先のDistillerに、校正は客別HomePageを顧客が参照」するような仕組みを求められたり、CMS(カラーマネージメントシステム)で、印刷機械の色を反映したプリンタ校正は客ごとのFTPサイトからダウンロードしてリモートプリンタ出力して確認し、納品はリモート先の印刷機/後加工機になるような姿も描ける。そして米国 Kinko's社のKinkonetはこれに近いものを実現している。

IT戦略の構築で、今まで実現できなかったような超速システム/超オープンシステム/超パートナーシップを指向して、デジタルならではの、次のような大きなワークフローでE-時代の勝組みになることも可能になった。

○時空を超えたワークフロー
  ・Webサーバーから素材の取得
  ・Web/グループウエアで原稿制作
  ・DTPでページの完成
  ・PDFでジョブチケット付きリモート入稿、面付け・出力
  ・CTPとCIP3でリモート先の印刷・後加工
○時空を超えた保証
  ・PDF(フォント埋め込み)でページの保証
  ・CMSで色の保証
  ・ジョブチケットでミスロスなく自動処理
  ・顧客はWeb/グループウエアで校正を認証
○時空を超えた進捗管理
  ・顧客には空情報とスケージュール提示
  ・リモート先の自社営業には空情報とスケージュール提示
  ・自社工場にオープンでリアルタイムな情報提供
  ・パートナー業者にオープンでリアルタイムな情報提供
  ・工程設計→作業指示→実績把握→変更対応→出力のワークフローの自動化

●E-時代を配線図を描くCIOの役割り

E-時代の勝組には会社の“配線図(IT戦略)”を描くCIO(最高情報執行役員)がキーマンになる。会社の技術戦略は従来の発想を切捨て、IT(情報技術)をテコにした新たな発想と実行力があるCIOが求められる。E-ビジネス/EC(電子商取引)が視野に入ってくるが、e-ビジネスを提唱したIBMは「ビジネスチャンスは企業規模、組織、成り立ちに関係なく、平等に機会があり、eはビジネスの再生(再発明)でなく、インターネットの力でビジネスにテコ入れを行ない、新しい次元に移行にすること」と訴えている。ECも単に電子マネーのことではなく「全ての経済行為を電子化すること」であるから、社内から始めておかなくてはならない。

IT戦略を建てるとは、このような最新の情報システム技術を理解し、ネットワークを利用してデジタル情報をいかに利用してビジネスチャンスを作り、また社内においては業務や生産の効率をいかに上げるかの方策を策定することである。

MACなど制作工程のネットワーク化の次のステップは、旧来のオフコンやパソコンの単体利用による業務管理システムをLANとデータベースシステムによるイントラネット化など、オープンなシステムへのステップアップである。この上に「サービス開発」などのIT戦略(ネット上に何を載せてどう経営資源化するか)が載るようになる。

顧客開発や顧客サービスを検討する段階では、イントラネットの構築による情報の共有化、並行処理などによる業務の効率化と平行して、新たな顧客開発や顧客からの仕事をとるためのサービスなどを実現しようとする必要が出てくる。SCM(サプライチェーンマネージメント)やSFA(セールスフォースオートメーション)、Webコマース、エクストラネットやアウトソーシングなどを、自社のIT戦略とどう結び付けるのか。また情報の共有化やデータ活用技術である、ナレッジマネージメントやグループウエア、データウエアハウスやデータマイニングとone to oneマーケティング手法、SGML/XMLなどをどうビジネスに結び付けるのかは、経営的な視点と深いデジタル技術の知識からCIOが判断しなければならない。しかし実現には次のような壁がある。

・近代的な企業になるためには情報活用技術(IT)とはどのようなものなのか…?
・E-時代に向かうのに、我が社には何が足りないか…?
・IT戦略というが、何を考えればよいのか。わが社のCIOは…?
・顧客開発、顧客サービスというが、何を検討すればよいのか…?
印刷会社が、経営戦略的な立場から一般社会のデジタル化をきちんとキャッチアップし、早く近代的な企業に脱皮するためには、デジタルインフラ上にオープンな会社機能を載せていくというステップに進むことが、避けてと通れない道筋である。

このためには、経営企画室と情報システム室の2つを掌握して経営判断できる役員(つまりCIO)と経営と技術に明るい各担当スタッフのコンビを作ることが、ぜひとも必要で、この段階にくると技術スタッフだけの手に負える仕事ではなくなる。

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