1.1  プリプレス概論

各種印刷物の特性ごとにプリプレスの作業の流れが異なることと、関連する印刷・後加工の項目が異なること、およびそのポイントを理解する。



1.1.1  印刷物の特性

出版、商業、伝票、パッケージなどの印刷物の用途による特性の違いと、印刷物によってプリプレスのシステムが異なってくることを理解する。


1.1.1.1  出版印刷物

◆ 出版印刷物とは新聞、雑誌、書籍などの多ページの印刷物(ページもの印刷物)を指す。
◆ 多量の文字を主体とした情報の伝達では、文章に図版(説明図・イラスト・写真など)などが付随して、つらなったデータ構造をとり、多ページにまたがって処理される。
◆ 書籍のようにページが集って節/章などを構成するものは、ページを最小単位とする版下制作上の構造と、さらにコンテンツから見たテキストおよびグラフィック要素などの関連した構造がある。
◆ 伝統的な書籍の構成要素は、前付け、本文、後付けの3つの部分に分けることができる。目次より前に入る「前付け」には、扉、序文、献辞、凡例、口絵がある。本文は、見出し、文章、注などで構成され、奥付以外の「後付け」には、索引、あとがき、付録がある。
◆ 出版物は、編集者が企画・設計して、それにもとづいて、執筆者・カメラマン・イラストレータなどの専門家が文章・写真・図版の原稿を作成する。
◆ 各種原稿は、文字入力、レイアウト、図版作成などの専門家が加工し、編集者がそれぞれの品質をチェックして、相互のやりとりで仕上げられる。
◆ 文字入力・線画作成・ページレイアウトなどの諸作業をパソコン上で行えば、各種原稿がデジタルデータとして統合的に扱えるようになる。

1.1.1.2  商業印刷物

◆ 商業印刷物とはパンフレット、カタログ、チラシなどの宣伝・広告に使われる印刷物を指す。
◆ 内容は、ビジュアルに訴えることを主眼に、短い文章と図版(説明図・イラスト・写真など)などで構成され、カラー写真を多用する。
◆ 印刷物の目的を考えてコンセプトを立案し、サムネイルによってコンセプトをビジュアル化して、最終印刷物のアイデアをラフスケッチにする。あわせて用紙、印刷加工の仕様を検討する。
◆ 印刷物の仕上がりがわかるように作成されたカンプで顧客の了承を取り、これをガイドにして制作が進められる。
◆ デザインが優先されるため、先行してレイアウトを行って紙面をブロックに分け、それに合わせてテキストやグラフィックを処理するのが普通である。
◆ 制作は、カメラマンやコピーライターなどが作成した写真や文字原稿を、ディレクタやデザイナがとりまとめて進行する。
◆ 校正では、指示通り作業されたかを確認し、写真などは印刷仕上がりを予測する。また印刷/製本や納品の打ち合わせをし、高い印刷品質を求めるときには刷り出し時に立ち合い、確認する。
◆ サムネイルからカンプ作成、プレゼンテーションなどが DTPで処理できると、企画と制作工程とが連続したものとなる。

1.1.1.3  伝票印刷物

◆ 伝票印刷物とは、伝票や帳票などの印刷物を指し、事務用印刷物の一部をなす。内容は、主として文字と罫線で構成され、事務作業の進め方に合わせた様式・形態をもつ。
◆ 伝票には、手書き用途のものと、コンピュータ処理の入出力に用いるものとがある。コンピュータ用伝票(ビジネスフォーム:BF)には、出力用帳票と、入力用のOCR帳票やOMR帳票がある。
◆ 複写伝票は、複写を行う各パーツ間でずれが生じないだけの見当(寸法)精度や、感圧複写紙が不要な部分を複写できないように減感インキを用いて印刷する。これを「減感領域」という。この減感領域の正確な配置、各パーツに文字・罫線等を正しく割り振って制作することが求められる。
◆ ビジネスフォームのデザインは、それを扱うコンピュータ周辺機器に規定された精度の寸法や色が必要とされ、入出力装置の機構に適合するインチ基準で行い、文字や罫線の他にミシンやマージナルパンチなどの紙加工のデザインも同時に行われる。
◆ 複写伝票のパーツ構成に対応したレイヤ(層)構造によって、デザイン制作や版下作成を容易に行えるようにしているDTPソフトもある。


1.1.1.4  パッケージ印刷

◆ パッケージ印刷は、包装資材印刷とも呼ばれ、各種の包装材料の印刷のことである。代表的なものに、紙器とラベルがある。
◆ 紙器印刷は、内容物と充填機に合わせたパッケージの構造設計が先に決定され、決定された構造の表面にグラフィックデザインが行われる。
◆ デザイン・版下段階で、仕上がりの立体像を確認する必要があるので、コンピュータで種々のシミュレーション結果をディスプレイ上に表示することが以前から行われている。
◆ CADを紙器印刷に利用する場合は、パッケージの構造や版下作成のデータを利用して、後加工の表面加工用や型抜き用の版作成までCADで行う。プリプレスの部分と後加工の部分とのデータの連動が大きな効果を上げる。
◆ 色ベタやシンボルカラーを正確に表現するために、印刷には特色を使うことが多く、トラッピングや色分解、色再現に注意が必要である。
◆ 紙器印刷は、印刷後表面に加工を施し、打ち抜き、ムシリを行って箱状の容器にする。



1.1.2  プリプレスの特性

プリプレス工程は、より短い時間で作業を遂行しなければならないので、新たなワークフローの設計や分業体制の改善や、そのコントロールが必要であることを理解する。


1.1.2.1  DTPの出現と発展

◆ 伝統的なプリプレス工程の起点は原稿入稿であり、原稿入稿→ 割り付け計算 → 文字入力 →版下作成(アートワーク) → 製版工程 → 刷版工程など独立した長い工程があって、その中でリライト原稿、レイアウト用紙、版下、フィルム、刷版といった中間製品が発生した。
◆ DTPはその技術情報が開示されたオープンシステムであるため、受発注両者で異なるシステムが使われていてもデータの処理が容易となり、受発注の両工程をつなぐと従来の制作ボトルネックは解消される。
◆ DTPの出現は、1985年にMac、LaserWriter、PageMakerなど、DTPに必要な3つの要素が出揃ったときといわれる。
◆ DTPにより、コンピュータ、ソフト、出力機はそれぞれ独立し、異なるメーカーの機器でも、作業目的に合わせて組み合わせられデザイナや編集者、制作担当者など、印刷物作りにかかわる人の間で、文書データがどこへ移動しても扱えるようになった。
◆ DTPは写植/版下とカラー製版という2つの世界を結び付けた。Adobe社のIllustratorというソフトは1988年にカラー処理が可能となり、版下への指定なしに製版専用システムにデータを渡せるので、カタログなどの商業印刷物にもDTPが使われるようになった。
◆ 1990年頃からカラー印刷物のDTP化が盛んになり、出力の見当精度やモアレの問題などが改善され、1992年頃からは生産性でも製版の専用システムに太刀打ちできるようになった。今日ではDTPのデータは基本的には世界の印刷の標準になっている。
◆ デジタルデータから直接多数複製を作るオンデマンド印刷や、デジタルデータを直接刷版に記録するCTP(Computer to Plate)なども、印刷物制作のプリプレス工程がDTPで行われることを前提に発達した。
◆ DTPの生産性を上げるためには、個々の機器や作業用ソフトウェアの改良以外に、協同で作業する環境をネットワークで作り、作業標準を決め、安定したワークフローを築く必要がある。



1.1.3  原稿データ作成

原稿作成・編集・デザイン作業の主要機能と、印刷発注者や編集側のプリプレス工程の電子化により、標準作業を確立しなければならないことを理解する。


1.1.3.1  原稿作成のデジタル化

◆ 印刷原稿には文字(数値を含む)、線画(図形=2値画像)、写真原稿などの画像原稿(多値画像)がある。ファイル名の間違いが起きにくいように、命名規則を作っておくのがよい。
◆ 文字原稿の原稿整理は、組版の前にコンピュータ処理しておくとよい。原稿作成段階で、見出し指定もテキストデータ内に行うと、後の編集工程の負荷を軽くできる。
◆ ワープロソフト入力の注意点は、データを保存するとき、文書形式ではなくテキスト形式にした方が後処理はしやすくなる。入稿時は、ハードコピーを添付した方がよい。またユーザー外字は、ハードコピーに記入する方がミスは少ない。
◆ 線画原稿はドロー系ソフト、CADソフトなどを利用して作られる。ドロー系ソフトでは平網フセや色分けも、線画作成と同時に行える。CADソフトでは、印刷用に要素の追加/削除をすることがある。
◆ フィルムあるいは印画紙で入稿される写真原稿は、原稿入稿時に画像の再現要望と画像処理内容を確認する。
◆ 画像データで入稿される場合は、どのようなデジタルカメラやスキャナによって処理されたものか、またそれぞれの交換形式(データフォーマット)や圧縮について確認する。


1.1.3.2  編集者への原稿データの受け渡し

◆ 文字、写真、レイアウト指定データなどの印刷原稿のパーツ(部品)データは、適切に管理されないと受け渡しの際にミスの元となる。
◆ 原稿がデジタル化されると作者(著者、イラストレータ、カメラマンなど)とデザイナや編集者などの間で、データの互換性に関して常に確認・統一が必要となる。
◆ 使用するコンピュータ、データフォーマット、データの保存の仕方、通信の方法についてのルールをあらかじめ決め、伝票などにも表記しておく。
◆ 例えば、文字コードについては、データとしての読み書きができても、思わぬところでレイアウトのズレや文字化けが起こらないように、あらかじめ実際の環境でテストしておくことも必要である。
◆ お互いに協調的な関係を築くためには、なるべく公に標準化され、一般に広く使われているコンピュータ環境やデータフォーマットを採用することが重要である。



1.1.4  分業からワークフロー設計へ

◆ 従来のプリプレス工程は工程ごとの分業/外注が行われたため、各工程間の受け渡しごとに確認の「校正」を行っていた。デジタル化してシームレスなワークフローになると、文字入力、線画作成、画像処理、ページレイアウト、流し込みなどの諸作業の分担に合わせて、責任範囲を決めておく。
◆ 編集者は、出版物の設計に責任をもち、全体の進行・管理を行って、編集作業を通して印刷物を統一感のあるイメージに仕上げる。
◆ 編集者は、文章量のバランス、文体、用字用語、表現が適切であるか、図版類や写真原稿が揃っているかなどのチェックをして必要な修正の指示をする。
◆ 完成したページのデータをイメージセッタやCTPに渡す前には、ページに貼り付ける画像データや線画データ等がすべて揃っているか、また、データの解像度やデータ形式が適切なものとしてセーブされているかをチェックしなければならない。
◆ 使用するソフトウェアやそのバージョン、データフォーマットなどについて、関係したところが1つの作業システムとして合意する必要がある。


1.1.4.1  一般的な制作の分担

◆ 出版印刷物では、エディトリアルデザイナが判型、段組、文字サイズ、字詰め、行間等の印刷物の基本的なレイアウトや造本設計を行う。各ページの作業では編集者が見出しをつけるなどをする。ビジュアルな雑誌では各ページのレイアウトもデザイナが行う。
◆ 商業印刷物や紙器ではAD(アートディレクタ)やCD(クリエイティブディレクタ)が全体の進行・管理を行う。パンフレットやビジュアルな雑誌、カタログの場合はデザインを先行し、デザインに合わせて写真や文章を用意する。
◆ デザイン工程がデジタル化すると、デザイン段階で、仕上がりに近いイメージができ、発注者は早期から総合的に検討するので、色校正後の修正作業を減らすことができる。
◆ カンプがデジタルで作られると、カンプに使用された文字、線画、写真の位置データはそのまま出力でも利用できる。カンプ段階でプリプレスの制作工程を踏まえたカンプを作れば、作業の重複を減らして、大幅な工程の圧縮ができる。
◆ 電子化した編集・デザイン工程からプリプレス工程へページメイクアップしたPostScriptデータが入っていく際には、画像などについて別途スキャンやレタッチ処理が必要な場合もある。デジタルデータは、原稿受け渡し時点では目で見ることができないので、データの形式とともに、画像修正など要求内容に十分注意する必要がある。
◆ プリプレス処理の専門業者は、面付けやトラッピングなど印刷以降の工程のための加工をしてフィルムやCTP(刷版)出力する。
◆ DTPでは、カンプ作成段階やページメイクアップ段階で、カラープリンタの出力やCRT上で印刷物の全体像がつかめるので、早期に修正を行って、後工程の色校正を減らすワークフローに変えた方が、全体の効率が上がる。
◆ このようにデジタルシステムに仕事の流れを適合させれば、従来のような原稿段階での不備や、イメージの食い違いによる修正といったボトルネックを解消し、データが逆戻りしない直線的なワークフローが組める。


1.1.4.2  ページネーション

◆ ページネーションとは、ページを構成する要素をすべてデジタル化して、コンピュータで自動的にページをレイアウトすることを指す。
◆ ページネーションでは、紙面の座標エリアに文字・図形・画像データを電子的に割り付ける(マッピング)。ページネーション段階では、各種データの割り付ける位置を示すページジオメトリと呼ぶデータが作成され、これはマスターページやテンプレートなどのデータとして再利用できる。
◆ ページネーションは、造本設計や基本組体裁や個別ページのレイアウト作業と同じであり、割り付け指示から集版までをカバーする。デザイナや編集者、印刷会社の組版・製版の担当者などがかかわる。


1.1.4.3  バッチ方式と対話方式

◆ ページの基本デザインに従って、各ページを実際にまとめていくページネーションは、自動レイアウトをするバッチ方式と、画面に対して貼り付けの指示を個別にしていく対話方式がある。
◆ マニュアルなどの分野では、かつての電算写植やTeXのコーディングによるページネーションのように、あらかじめ一括した指示(スクリプト)を作成して所定の場所に文字や図版を自動的に割り付けるバッチ処理は、長文の制作が効率的に行える。
◆ DTPによるページネーションの主体は、オペレータが画面を見ながら文字を流し込んで割り付けるWYSIWYGによる方法である。これはレイアウトの細部のコントロールが行いやすい。
◆ 大量ページ処理に向いているのはバッチ処理であり、デザイン的作業や修正に向いているのはWYSIWYGである。


1.1.4.4  プリプレスと印刷・後工程の関連

◆ プリプレス工程で作る刷版製版のための出力データは、印刷、後加工を想定して作らなければならない。従来はプリプレスの後方工程に行くほど、印刷などの工程の専門的な知識を必要としたが、DTPのように最初からカラーを含めて統合的な処理をする場合は、プリプレスの後方工程との打ち合わせが先にされていないと、後方工程の負荷が軽くならず、全体の効率が改善されない。
◆ 集版工程の途中までは、作業はページ単位で行われるが、最後にはページ単位で仕上げたフィルムを、印刷機にかける刷版のサイズに合わせてまとめあげる面付けまたは殖版をする。
◆ ページものの面付けは、製本の綴じ方や折り方などの仕様によって、面付けの順序や各ページの貼り込み位置や向きが変わる。
◆ 通常のプロセス印刷インキでの発色が困難な場合は、特色版を作る必要がある。
◆ あらかじめデザイン段階で均一な発色が困難なレイアウトは、避けなければならない。印刷時にインキの濃淡ムラであるゴーストの発生につながる。
◆ 紙器やラベルでは用紙を効率よく使用するために、密集した面付け(殖版)が必要である。
◆ プリプレス工程では、造本、印刷・後加工の仕様に適合するように、作業の設計を行う必要がある。

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