1.2 印刷企画と編集
わかりやすい印刷物を効率的に作成するには、伝統的ノウハウを継承しなければならないことを理解する。
1.2.1 紙面の設計
印刷物という大量生産される媒体の企画は、印刷でできる表現の可能性を引き出すことと、印刷の生産性を損なわないことのバランスの上で行われることを理解する。
1.2.1.1 印刷物の大きさ
◆ 紙の寸法はJISでA判、B判、四六判、菊判その他の原紙寸法の規格と、A列とB列(A4やB5など)の紙加工仕上寸法(判型)の規格がある。A列とB列それぞれ0〜10番まである。
◆ 仕上寸法がA5の書籍やカタログなど、A列本判では入りきらない場合は、ひと回り大きい「菊判」の紙を使う。B判の場合も同様に、ひと回り大きい「四六判」の紙を使う。
◆ ページの大きさとなるのは仕上寸法であり、一般に倍判/全判の長辺を2分割していくのが原則で、短辺と長辺の比率は1:√2である。A5は原紙を4回分割したもので、サイズは210×148mmで、原紙との関係はA判16どりである。
◆ 規格外の仕上寸法も多く使われ、新書のサイズは182×103mmで、原紙との関係はB判40どりである。特殊な寸法は紙の無駄となるので、変形サイズでも、例えばAB判のサイズが257×210mmであるように、原紙や印刷を考えて決められたサイズがよく使われる。
◆ このほか148×100mmであるハガキなど、他の規格や慣例的に決まっている寸法に則って印刷物は企画される。
1.2.1.2 用紙の選択
◆ 最終的な画像品質は、印刷や用紙などの条件に大きく左右される。
◆ 印刷物の発色は紙質の影響を受ける。印刷面の光沢を望むときにはアート・コート系の用紙を使用する。また、カラー印刷物の彩度が高く感じられるのは、アート・コート系の用紙である。
◆ 印刷物の発色には紙の白色度が大きな影響を与える。表面が粗く乱反射を起こす紙は、印刷物の濃度が低くなることが多い。
◆ 上質紙の本文用紙は四六判で55〜90kgぐらいのものが使われる。
◆ 色上質紙は扉や見返しによく使われ、同じ名称でもメーカーによって色合いが違う。
◆ 色上質紙を分類する厚さの種類は特薄とか特厚という名前で呼ばれ、連量表示とは違う。
◆ 表紙用には紙自身に模様の入っているファンシーペーパーが使われることがある。
◆ ファンシーペーパーは、寸法としては四六判だけ作っているものが多く、連量も限定されている。
◆ 紙質は淡いクリーム色の上質紙の方が、裏ヌケが目立たないので好まれる。上質紙より少し白色度が落ちる値段の安い中質紙を使う場合もある。
1.2.1.3 ページものの様式
◆ 原稿指定や制作の作業に先だって、どのような本にするかを計画するのが造本設計である。
◆ 本文の組見本を作りながら、仕上寸法である判型を決め、縦組、横組などの組方向を決め、その中で余白を除いた版面を決める。
◆ 判型と判面の間には章/節を表す「柱」が入る。また縦組では頭注、脚注など余白部分に組み込まれるものがある。これらの組み方のスタイルも決めておく。
◆ 判型、組方向、本文文字サイズ、行間、1行の字詰め、1ページの行数は相互に関係しているので、目的に合わせてそれらのバランスを見つけるのが紙面の基本デザインで、エディトリアルデザインの一部である。
◆ エディトリアルデザインとは出版編集における視覚表現の計画および技術をいう。企画および編集方針に従い、一貫した外装および内装の視覚演出構成を行う。出版物の最終的な視覚表現のすべてに責任をもち、レイアウトおよびブックデザインに関して一貫したデザインポリシーをもたねばならない。
◆ エディトリアルデザインの扱う要素は、組み文字の視覚化技法であるタイポグラフィ、描き文字であるレタリング、写真、美術絵画、イラストレーションなど表現のすべてにわたる。
◆ エディトリアルデザインの作業は組版、印刷、製本を経て完成するもので、イメージを作るだけでなく設計図としてデータ化しなければならない。DTPの使用はこれらの明確化に役立つ。
1.2.1.4 ページものの印刷企画
◆ 書籍を企画する際には、内容的な仕様のほかにも、印刷方式、印刷サイズ、判型、印刷用紙、色数、製本形式、つきものなどの仕様を決めなければならない。
◆ 判型は、極端な変形判では紙どりの都合が悪くなる場合があるので注意が必要である。輪転印刷機は変形判印刷には不向きである。
◆ 製本では、印刷物の外観を左右する重要な要素としてジャケット(カバー)やオビ、函などがある。これらの制作費用や制作日数もみておかねばならない。
◆ 完成期日からプリプレスや印刷製本に要する日数を逆算して入稿日や編集スケジュールのめどをつけ、印刷見積りをとり、発行部数や収支を計算する。
1.2.1.5 版面の設計
◆ 書籍の版面とは、1つのページの中で文字組が占有する部分のことで、本文部分の各ページの版面は同一である。また、左右両方のページを1つの図版として捉えるため、判型に対して版面が中央に位置していることは稀である。
◆ マージンと版面の取り方には諸説あるが、判型に対する伝統的な書籍の体裁はノドあきが一番狭く、次に天、小口、地の順となるのが一般的である。
◆ 版面の内側で基本組体裁に必要な値を決める。まず組方向や段数、書体を決め、多段組の場合には段間を設定する。次に行長や字詰めを決める。
◆ 行長や字詰めと相互に関連しているのは文字サイズである。可読性という点で横組よりも縦組の方が行長を長くとることができる。
◆ 行と行の間は一般に文字サイズの25%〜100%程度あける。文字サイズと行間を足したものが行送りである。
◆ 視線の移動を容易にするために、行長が長いほど相対的に行間は大きくとる。
◆ 一般に判型が大きいほど余白の比率は大きくなる。小口の余白は製本のズレが目立ちやすいのであまり小さくできない。
1.2.1.6 デザインの定石
◆ レイアウトデザインの役目は、図像の配置・組み合わせによってある印象を演出することである。
◆ ページ内では図形や図形の位置関係によってある力が働き、何らかの心理的効果をもたらす。安定感、不安定感、動き、流れをレイアウトによって作り出すことができる。
◆ 配置が無秩序になると、印刷物の意図が明確でなくなる。曖昧で散漫な感じはデザイン表現の効果は出てこない。
◆ レイアウトは偶然に頼るのではなく、グラフィックデザインの系統的な展開法を学んで活用する必要がある。
1.2.1.7 グリッド
◆ 活版印刷の時代の画一的な紙面レイアウトに対して、非対称なグリッドをベースにした印刷紙面制作の考え方がバウハウスとともに出現し、デザイナが最初にレイアウトを作成するという流れが生まれた。
◆ グリッドはデザインを簡単に反復できる機能をもち、作業者が異なったり、作業する時間が異なっていても複数の紙面を同じように見せることができる。
◆ 同じ考えのグリッドを元にすれば、サイズや印刷様式、色などが異なる多様な印刷物において、1つの会社の「コーポレートアイデンティティ」を維持させることができる。
◆ グリッドをベースに、本文テキストとイラストや写真、見出し文字を整列させてかっちりしたイメージにすると同時に、一部を強調して読者の理解を助けられるのである。
1.2.1.8 タイポグラフィ
◆ タイポグラフィは古くは活版術のことであるが、広く印刷における文字組の視覚効果や体裁の総称として使われている。
◆ タイポグラフィはグラフィックエレメントとしてテレビや映像メディアにも生きる技法である。
◆ 欧米ではタイポグラフィが書体の歴史的な発達や、書体デザインの知識を含む。日本でも縦・横組、和欧混植、かな混植など伝統的慣習的なスタイルが確立している。
◆ もともと正方形の漢字書体を縦にも横にも組むものとして日本のタイポグラフィは発展したが、DTPソフトによっては過去のノウハウが必ずしも継承できないこともある。
1.2.2 編集校正知識
◆ 出版編集の実務は、情報を理解しやすいように整えることである。その規則は、例えば科学関係の記号、活字、用紙、判型、校正記号などのように標準化されているものがある。
◆ 印刷物が使われる学校などの場、あるいは出版社で、長年の経験の集積として慣習的に標準化されている編集規則もある。
◆ すべてに規準があるわけではなく、実務の各レベルにおいてそのつど参照することが求められる。また、何らかの事情で規則に修正・変更を加えることも必要となる。
◆ 編集校正の規範となる書籍は一般にも市販され、出版社はもとより、官庁・学校・企業の広報室などで利用されてきている。
◆ 以上をふまえて、制作のディレクションをすることが編集の基本的役割である。
1.2.2.1 原稿整理
◆ 原稿の表記の様式は、著者の思想および感情の表現の一部である。また1冊の本の中での表記形式の不統一は、読者が内容を理解するときに混乱を起こす。
◆ 原稿整理での表記の統一(形式的整理)は、第一に著者の意向を尊重して執筆方針を読みとって作業を進め、その中での未整理の部分、不統一の部分を正す。
◆ 表記について、あらかじめ著者との間に「執筆要項」を作成してそれに従って作業する場合もある。
◆ 出版社単位あるいは雑誌媒体ごとなどで、原稿表記についてルールを整理して明文化したハウスルールを作っている場合もある。
◆ 文章については、文体の統一、漢字の使用範囲、漢字の字体、かなづかい、送りがな、引用文の表記、ルビをどうするか、などを決める。意図的に旧かなづかいがされている場合もあるので、その原則を知っておく。
◆ 用語については、外来語の表記、外国の国名・地名・人名、学術用語の表記、などを決める。
◆ 組版については、繰り返し符号、かぎや括弧および句読点、年月日、数詞、単位記号、括弧と句読点の関連、などの組み方原則を決める。
◆ 書籍全体では、見出し、注、文献のあげ方、索引のオーダー、改丁・改ページ・改行・追い込み・追い出し、行あき・字下がり・文字サイズを下げるところ、などを決める。
1.2.2.1.1 校正支援ツール
◆ 新聞社や文芸出版社の多くでは、古くから自社の表記ルールを制定し、用字用語の統一を行ってきたが、情報がデジタル化され、印刷物だけでなくWebや放送などさまざまな媒体で情報発信する機会が増える中、人手による校正・校閲だけでは、精度だけでなくスピードやコスト面でも大きな限界がある。また、日本語の言語特性から、表記のゆれや不適切な言いまわし、省略語やカタカナ語の乱用など、文章校正・校閲は複雑な処理が必要である。そのために有効とされているのが、日本語入力ツール上で利用する日本語変換のための専用辞書や文章校正支援ツールである。
◆ 日本語仮名漢字変換ツールは、一般に形態素解析の技術を利用して、文章を品詞ごとに分解し、最適な日本語になる変換を行っている。
◆ 新聞社や出版社などでは、自社の表記ルールや用字用語規則をデータベースとして登録し、記者やライターが日本語入力を行う際に、変換候補の優先順位の変更や、変換候補に掲示しないなどの機能を使用して、表記のゆれや用字用語の統一を行っている。
◆ 代表的な日本語入力ツールであるATOKには、正しい日本語を入力するため膨大な単語の集合である「標準辞書」と、この単語は使用したくないという「抑制辞書」ファイルがある。また、この単語は別の単語に置き換えたいという「修正用補助辞書」というものがあり、これを別々のファイルとして管理している。ユーザーは、抑制辞書ファイルと補助辞書ファイルをうまく使うことで、表記ゆれや間違いが起きないような入力環境を作ることができる。
1.2.2.2 記号・約物・省略語句
◆ 約物とは、文や語句を区切ったり、省略・強調したり、また記述を代用させるために用いられる句読記号、括弧類などである。
◆ 句読記号は、文の終止や文中での語句の区切りを示し、文章を読みやすくするために用いる記述記号で、句点、読点や疑問符、感嘆符がある。また横書き用のものとして、ピリオド、コンマ、コロン、セミコロンなどがある。
◆ ピリオドは、文の終止および文や語を省略した場合などに用い、アポストロフィは、単語の一部の省略や、所有を表すのに用いるなど、それぞれの句読記号について用法上のルールがある。
◆ 括弧類とは、文または文章の中で語句や文を区切るために用いる記述記号で、文の一部について詳しく説明をする、あるいは本題とは離れた参考文に用い、多くの種類がある。
◆ 記号には、%、$など単位を表す記述記号、kHzのように欧文を省略した省略単位記号、その他(
◆、#、@、/など)のシンボルがある。
◆ 英単語を略した単位記号kgの前には語間空白が入るが、%の直前とその前の英数字との間にはアキを入れないなど、組版の約束は記号ごとに異なる。
◆ 省略語句の用法は和欧混植組版に共通である。語句の省略はすでに固定化されたものがあり、自己流は通用しないものである。
◆ 省略単位にはkgのようにピリオドをつけないが、月名や曜日を省略した場合には、必ずピリオドをつける。
◆ 単位を表すポンド(pound)はlb、オンス(ounce)はozなどと省略し、複数でもsを付けない。
◆ 午前、午後を表すa.m.(ante meridiem)やp.m.(post meridiem)は、基本的に小文字を使い、ピリオドをつける。
◆ mm、kgなどの単位表記は、立体の欧文小文字で表記し、全角は使用しない。
◆ 文を区切ったりつないだりするための欧文約物にはそれぞれの使い方や意味の強さが決められているので、原則にあった使い方をする。
◆ このほか数字表記においては、数学記号、アラビア数字、ローマ数字など数字の表記の用法および規則、年代、日付、時間などの表記規則をふまえて原稿整理する。
◆ ローマ数字の大文字は、I II III IV V VI VII VIII IX Xなどを用いた数字で、欧文文字を使用して組む。
◆ 時計文字は、ローマ数字に似ているが異なるものであり、T U V W X Y Z [ \ ]などを用いた数字で、全角合字で組む。
◆ アラビア数字は、1 2 3 4 5 6 7 8 9 10などを用いた数字で、欧文文字に属している。欧文では、数字はそれぞれの書体とともにデザインされている。アルファベットと数字は同じ書体を使って組むものである。
1.2.2.3 校正記号
◆ 原稿整理を行うときの表記の基準に照らし合わせて、ページが組版された状態のチェックをし、校正記号を使って修正の指示を入れる。
◆ 文字校正の記号および意味はJIS Z 8208として定められている。ゲラへの校正記号の記入の仕方は、これに準じて行う。
◆ 校正記号を用いる理由は、長々と説明文や注釈をつけることを避け、正しく簡潔に意志が伝達できるようにするためである。
◆ 赤字は入力、編集、内校正、赤字引合わせなどの担当者が正確に作業できるように、きれいかつ丁寧に入れる。
◆ 赤線が交差、接触、折れ線になるのは避け、また誤字の箇所からなるべく近くの余白まで赤線を引き出す。
◆ JIS Z 8208:2007で印刷校正記号が改正された。
◆ 文字校正の記号および意味は、1965年にJIS Z 8208として定められ、2007年にJIS Z 8208:2007として改定されている。ゲラへの校正記号の記入の仕方は、これに準じて行う。
1.2.2.4 印刷・出版に関係する法律
1.2.2.4.1 知的財産権
◆ 知的財産権は大きく「知的創造物についての権利」と「営業標識についての権利」の2つに分けられる。「知的創造物の権利」は主に著作権、営業秘密、特許権、実用新案権、意匠権があり、「営業標識の権利」は商標権、商号、商品表示・形態等がある。これらの権利には、対応するそれぞれの法律があり、印刷物と密接なのは「著作権」や「商標権」である。
◆ 知的財産権の世界的な取り決めは1886年のベルヌ条約に始まり、1996年のWIPO新条約と推移してきた。WIPOは知的財産権を扱う国連の専門機関である。
◆ 著作権は、作者や制作者に認められた独占的権利である。独占的権利には複製権、翻案権、公衆送信権などがある。
◆ 著作権は著作者に認められる。また、著作権は譲渡が可能であり、譲渡したとき元の著作者を「原著作者」といい、譲渡された方を「著作権者」という。
◆ 著作権は社会実態に沿うように、ほぼ毎年なんらかの改正が行われている。
◆ 画像、イラストを含むDTP制作物はデジタル化され、簡単にコピーできる状態にあるため、デザイン、印刷会社とも著作権がどこに帰属しているのかを明確にして、トラブルを回避できるようにしておく必要がある。
◆ 国内における著作権は無方式主義をとっており、届け出る必要はなく創作時点で権利が発生する。
◆ 著作権の保護期間は死後50年であるが、法人著作は公表後50年となる。ただし映画については公表後70年である。
◆ 著作者人格権は著作者に与えられた権利で、公表権、氏名表示権、同一性保持権よりなる。また著作権と異なり人に譲渡することはできない。
◆ 著作隣接権は著作物等を伝達する者に与えられた権利である。
◆ 著作物の種類は、文章など言語の著作物、音楽の著作物、舞踊・無言劇の著作物、美術の著作物、建築の著作物、地図・図形の著作物、映画の著作物、写真の著作物、プログラムの著作物などのほかに、二次的著作物として翻訳、編曲したもの、編集著作物として百科事典、辞書、新聞、雑誌、詩集などの編集物、データベースの著作物などがある。
◆ 商標は商法で定める商号とは異なり、商品やサービスにつけられる。商標は特許庁に届け出て認可されることで、商標権者はその商標を独占的に使用することができる。
◆ 商標には商品につけられた「商品商標」とサービスにつけられた「役務商標」がある。また企業名のイメージロゴも登録可能であり、商品グループに対しても商標登録が可能である。
◆ 商標の種類は、文字、図形、記号およびそれらの組み合わせがあるが、それ以外に立体も登録可能である。ただし、匂いや味、音は登録できない。
◆ 登録は特許庁が定めた「商品と役務の分類の区分」に従って行う。
◆ 保護期間は登録の日から10年であるが、更新することができる。また登録後3年以内に商品および役務として使用しないでおくと、不使用商標として取消しの請求を受ける恐れがある。
1.2.2.4.2 個人情報保護法
◆ OECDでは1980年に「プライバシーの保護と個人データの国際流通についてのガイドラインに関する理事会勧告」を出し、個人情報の取扱いに関する8つの原則を示した。
◆ OECDの理事会勧告を受けて、2005年4月1日に個人情報保護法が完全施行となった。
◆ 個人情報保護法は、個人情報の有用性を配慮しつつ、個人の権利、利益を保護することを目的としている。
◆ 個人情報保護法では、国や地方公共団体の責務以外に、個人情報取扱事業者の義務などを定めている。
◆ 個人情報取扱事業者とは、名簿やDMなどを取り扱う専門事業者のみを指すのではなく、5000人以上の個人情報を過去6ヶ月の間に取り扱った事業者はすべて、個人情報取扱事業者に該当する。この個人情報には自社の従業員も含まれる。
◆ 「個人情報保護法」は、第1章で目的、定義、基本理念を規定し、第2章と第3章では国や地方公共団体の責務や施策を規定している。第4章から第6章が個人情報取扱事業者を対象とした義務などを定めている。
◆ 「個人情報保護法」で定める「個人情報取扱事業者」は「個人情報データベース等を事業として使用している者」としているが、「個人情報の保護に関する施行令」でこの「事業として使用している者」とはビジネスであるかどうかは関係なく、個人情報を使用している者のことである。
◆ 個人情報はさらに個人データ、保有個人データというように、全部で3種に分類され、それぞれ個人情報取扱事業者の責務が変わることに注意する必要がある。
◆ 「個人情報保護法」により「個人情報取扱事業者」の義務などが明確になったが、金融、百貨店、印刷会社など、それぞれの業種により、個人情報の内容や取扱い方などが異なるため、各団体では具体的な実施のための規準ともなるガイドラインを定めている。
◆ 「個人情報保護法」の施行より、印刷会社も含め企業としては「従業員の個人情報」や「得意先の個人情報」が流出しないように管理しなければならない。
◆ 印刷会社では、クライアントから名簿を受注するなどして、個人データを預かる場合も多いので、個人情報の取扱いに関するマニュアルを作り、個人情報が外部に漏れないように厳重な管理と従業員教育をしておかなければならない。また、苦情や問題が発生した場合の窓口と責任者を明確にしておく必要がある。
◆ 名刺や配送伝票などは個人情報であるが、利用目的は周知のことであるので、別の目的に使用しない限りは利用目的の通知や公表、明示をする必要はない。
◆ 「センシティブ情報」とは、機微情報とも呼ばれ、社会的差別を生む原因ともなる情報のことで、思想、信条、人種、民族、身体などの個人情報のことである。
◆ 名簿などを外注委託する場合は、業務委託契約書を締結し、秘密保持義務を課する必要がある。
1.2.2.4.3 ソフトウェア使用許諾契約書
◆ アプリケーションソフトが商品として流通するときには、「アプリケーションソフトの複製物の売買によるもの」「アプリケーションソフトの使用許諾契約によるもの」「アプリケーションソフトのリース契約によるもの」という3つの形態がある。
◆ DTPアプリケーションを使用するにあたっては、ほとんどが「アプリケーションソフトの使用許諾契約によるもの」である。
◆ 一般にアプリケーションソフトウェアを購入するというが、実際にはアプリケーションソフトウェアをインストールする時に画面表示されるソフトウェア使用許諾契約書に対し、「同意」のボタンを押すことで、初めて契約が成立し、使用できるようになる。売買契約とは全く異なることに注意しなければならない。
◆ 使用許諾契約はライセンス契約の一種であるが、売買、請負、賃貸借などの契約と根本的に異なる。バックアップコピーについても契約内容によって決まる。
1.2.2.4.4 インターネットにおける著作権
◆ インターネットにおける「公衆送信権」は、著作権法弟23条の1項で、「1.著作者は、その著作物について、公衆送信(自動公衆送信の場合にあっては、送信可能化を含む。)を行う権利を専有する。 2.著作者は、公衆送信されるその著作物を受信装置を用いて公に伝達する権利を専有する。」と定められている。
◆ 「送信可能化」というのは、インターネットサーバにデータを置いて、アクセスがあれば閲覧できる状態にあることを指す。
◆ 「権利を専有する」というのは、著作者の承諾なしに他人が勝手に人の著作物をインターネット上で公開してはならないことを指す。
1.2.3 漢字の字形
1.2.3.1 文字の形
◆ 文字データを異なるプラットフォームで出力すると、文字化けではないが文字が一致しない場合がある。この問題をつきとめるには、「字体」「字形」「書体」「フォント」の区別など、文字の同異判定の基準を確認しておかなければならない。
◆ 「字体」は筆画の組み合わせによる骨格のことで、抽象的概念といわれる。
◆ 「字形」は視認できる文字の形そのものであり、肉付きにあたる。
◆ 「書体」は筆画デザインポリシーであり、同じデザインポリシーのもとに太さの違いなどのバリエーションをもつファミリを形成する。
◆ 「フォント」は字形をデジタルデータとして記憶媒体に格納したものである。その時の文字は一般に「書体」単位で用意される。
1.2.3.2 異体字
◆ 異体字とは、「ある基準とする文字」に対する字体のバリエーションを言う。その基準とは正字体におかれることが多いが、漢和辞典においては見出し文字である親字のバリエーションをいう。
◆ 正字体とは、その国が定める「正しい字体」のことで、古くは、漢字は中国、清の時代に作られた「康煕字典」に掲載されていた字体を正字体としていた。
◆ 当用漢字や常用漢字で生まれた新しい字体はそれまでの康煕字典体に対し新字体といわれ、これと対照して康煕字典体は旧字体と呼ばれる。
◆ 正字体とバリエーションには、俗字、同字、本字などがある。
◆ 国字は日本独自に生まれた字体で、「康煕字典」にはない、「峠」などである。
◆ 漢字の古い形として「説文解字」などの古文、籀文、大篆を楷書形に改めたものを古字という。
◆ 人名用漢字は、戸籍処理や住民情報処理を行うときの指針であり、同じ字義でも字画の違いのような字体の「ゆれ」が認められないものがある。
1.2.3.3 中国の字形(簡体字と繁体字)
◆ 簡体字(かんたいじ)、簡化字(かんかじ)は、中華人民共和国で制定された簡略化された漢字の字体体系をいう。字全体が簡略化されたものだけを簡体字といい、偏や旁など一部が簡略化されたものも含めて簡化字という。
◆ 簡体字は、1956年「(第1次)漢字簡化方案」が国務院から公布され、1964年に「簡化字総表」としてまとめられた。中国やシンガポールで使用されている。
◆ 簡体字は、草書の要素を多く取り入れたものである。
◆ 簡化字総表で規範されている簡化字数は、偏旁(へんぼう)に使用できない簡体字350字(第1表)、偏旁に使用できる簡体字132字と簡化偏旁14個(第2表)、第2表を適用した簡体字1,753字(第3表)であり、総数は2,235字になる。偏旁とは、漢字の字体を構成する要素の一つで、左右上下内外の部分に分解できる要素をいう。
◆ 繁体字(はんたいじ)、正体字(せいたいじ)は、日本でいう「新字体」に対する旧字体に相当する。
◆ 繁体字は、中国語において中華人民共和国の一連の「文字改革」政策による簡体字(簡化字)に対して筆画が多い漢字の字体を指している。主に台湾、香港、マカオで使用されている。
1.2.4 組版
文章読解の妨げにならないように文字を配列する技術が組版である。DTPではワープロに比べて、紙面設計や使用フォントに関連して多様な組み方ができ、紙面に表情をつけることを理解する。
1.2.4.1 和文組版処理
◆ 和文組版処理は、字間の調整を行うスペーシングと、禁則処理の2つに大きく分けられる。
◆ 禁則処理は、行頭や行末に来てはいけない句読点・括弧類などの約物や、単位などの記号を適切に処理することをいう。
◆ スペーシングは、約物が連続して現われる場合の間隔調整や、和文中に英単語が入る場合にアキを入れるなどの処理を行う。
◆ 禁則処理などで生じた行中の空間の過不足を目立たぬようにするため、再度スペーシングで約物まわりや字間に案分する。この両者がバランスよく行われるのがよい組版である。
◆ 組版の揃え処理には、行頭揃え、行末揃え、欧文組版に多い中央揃え、日本の組版に多く使われ頭末揃えともいう均等揃えなどがある。均等揃えは一定の長さの中で字間を調整して揃えるものである。
◆ インデントは指定された行以降の字下げ処理を行い、テキストの行頭には空白文字が入らずに、各行頭から一定の隔たりをもって文字が組まれる。
◆ 分離禁止は、連数字や3点リーダー、2倍ダーシ(ダッシュ)などの約物群が、途中で2行にまたがることを禁止することをいう。
◆ 日本語組版の基本的アルゴリズムは、JIS X 4051「日本語文書の組版方法」に規定されている。
1.2.4.2 フォントと組版
◆ 和文書体の活字は正方形の中に作成される。漢字の大きさは活字の四辺の中にあり、それをボディサイズとした。
◆ 写植においては、文字形状をデザインする領域の外側に、活字のボディを外枠(仮想ボディ)として想定し、計算上の文字サイズとしている。JISでは、外枠という。
◆ 写植においては、外枠の内側に実際の字形の外周を結ぶ領域があり、これを実ボディと呼ぶ。JISでは、字面という。字面の大きさは書体デザインによって異なる。Type1では個々の文字について字面をバウンディングボックスとして表す。
◆ 欧文の字形の左右には、デザイナがサイドベアリングというアキを意図的にもたせている。字形の横幅にサイドベアリングを加えたものが送りとなる。欧文組版はこの送りを基準にして行われる。
◆ 活字でも写植でも漢字はすべてボディサイズが正方形なので固定ピッチフォントという。
◆ 欧文は同一文字セット内ではボディサイズ(高さ)は一定であるが、各文字の幅(セット幅)が異なるため、送り(エスケープメント)が異なる。これをプロポーショナル(ピッチ)フォントという。
◆ 欧文の行の送りは、文字の高さであるボディサイズに、上下方向の間隔であるレディングを加えたものと定義される。
◆ 各文字の固有の幅よりも送りを詰めて組むことをカーニングといい、くい込み詰めと呼ぶこともある。
◆ 字間スペースと語間スペースを一律に調整する機能をトラッキングという。
1.2.4.3 組版と約物
◆ 日本語文書に出現する漢字は全角固定ピッチが原則であるが、ひらがな/カタカナは欧文と同じように可変ピッチ処理をすることがある。
◆ 記号類、約物類、しるし物などは固有の幅をもち、前後の文字との間隔や連続して出現したときの扱い方、行頭行末での扱い方など、さまざまな規則により調整が行われる。
◆ 追い出し/追い込みなどの処理の結果も反映して、記号/約物のある場所で行ジャスティファイのための空間調整をしなければならない。
◆ 句読類は縦組みと横組みで使い方が異なる。一般に「、。」は縦横両方で使う。「、.」は使用しない。和欧混植や数式の多い文章では、「,.」を使うのが適切である。
◆ 連続する2つの文字が別の行にまたがってはいけない例として単位記号と数字の関係がある。
1.2.4.3.1 柱
◆ 柱とは、本文の周囲のノドあき以外の余白すなわち天、地、小口に入れる書名、章名(見出しの一種)をいう。
◆ 柱に使用する文字サイズ、柱と本文とのアキについては、ノンブルに準ずる。使用する書体は、本文と同じか、ウエイトが本文と同程度のものを用いる。ウエイトが本文より重い書体は避ける。
◆ 柱の形式としては、奇数ページのみに見出し項目を入れる片柱方式と、奇数ページと偶数ページの両方に別の柱文を入れる両柱方式がある。これらの方式は、原稿の構成、内容によって判断する。
◆ 両柱方式の場合、偶数ページには大きい見出し項目、奇数ページには小さい見出し項目を入れる。
◆ 横組みでは、大見出しの上にくる柱は省略することがある。
1.2.4.3.2 ノンブル
◆ ノンブルは、紙面の表から1ページとして起こす。
◆ 前付けと本文のノンブルはそれぞれ書体を変えて1ページ起こしとする。
1.2.4.3.3 字取り組み
◆ 文字組版ソフトやワープロソフトなどには、「字取り組み」という組み方がある。字取り組みとは、決められた組み幅に文字を均等に分割配置することをいい、人名簿などの姓名、一覧表などでの項目名など、字数がさまざまなものを一定の組み幅に揃えて組むときに用いられる。
◆ 字取り組みでは、アキの総量を字間数(字数−1)で割った値が、個々の字間アキ量となる。
◆ 組み幅は最大字数によって決められることが多いが、伝統的には5・7・9・11字取りなど、処理の便宜上から一般に奇数字取りが行われてきた。これは、字間アキ量に端数が出やすい字取りが避けられてきたためである。たとえば、7字取りでは人名が6字の場合に5分アキを生じるが、その他の2字から5字については半角アキや全角アキの処理になる。
1.2.4.4 和欧混植
◆ 欧文では、文字はベースラインに揃うように設計され、また、アセンダライン、キャピタル(キャップ)ライン、ミーンライン、ディセンダラインという基準線をもつ。
◆ 和文では、フォントはセンタラインしか基準線がないので、欧文と和文をどう揃えるかは難しい問題となることがある。
◆ 欧文フォントは、xハイトやディセンダが一定しないので、不用意に和文中で用いると、サイズが異なって見えたり、段差が目についたりすることがあるので、バランスのとれた書体選択をしなければならない。
◆ 和文間に欧文が組まれると、和文文字と欧文文字との間が見た目に接近しすぎるため、本文に使用している文字サイズの「3分アキ」スペースを、標準値としてあける。
◆ 和文組版の字送りはベタ送りが標準で、欧文は文字ごとのセット幅が異なり1行の行長に端数が生じるため、和欧文混植では行中のどこかでアキのバランスをとって調整しなければならない。
◆ ジャスティフィケーションとは、行長いっぱいに右端、左端を揃えて組む方式で、語間などアキのバランスを調整して処理する。行頭/行末揃えともいう。
◆ 欧文組版では、ジャスティフィケーションは、@単語と単語の間のスペースを1行中で調整する、A1つの単語の字間をベタ組みではなく少し空けて調節する、Bハイフネーション処理をする、の順序で行う。
◆ 欧文組版では、文字ごとの字幅が異なるため、ジャスティフィケーションを行う場合はいろいろな制約がある。標準語間スペースは3分(1/3 em)が適切とされているが、ジャスティフィケーションの結果、語間スペースは行ごとに異なる。
◆ 欧文組版形式の一つに、ジャスティフィケーションを行わないラグ組みがあり、一般的に本文組みの場合は、左揃えまたは右揃えの形式がある。
◆ 長い英単語が行末で収まらない場合に、単語を正しい位置で分けてハイフンをつけ、次の行に残りを送り出すことをハイフネーション処理という。
◆ ハイフンは4分記号を使うのが原則である。各書体にセットとして組み込まれおり、xハイトの中央に位置する。ハイフンの位置はどこでもよいわけでなく、各国語別に異なるので各国の辞書を参照する。
◆ DTPでは、最近意味不明の3分くらいのダーシュが入り、ダーシュかハイフンか区別がつかないことがある。また、ハイフンと2分ダーシュの混同が目立つが区別する必要がある。
1.2.4.5 縦組み組版
◆ 縦組みは、日本語組版において、文字の中心を縦方向に揃えて並べて版面を構成することである。
◆ 和文書体は、基本的に各文字が正方形なので、同じ活字で縦組みと横組みを使い分けることができるが、英数字などを組むときは注意しなければならない。また、中黒や読点、括弧類の扱いには注意が必要である。
1.2.4.6 書体デザイン
◆ 書体とは、統一的な理念に基づいて制作された1組の文字または記号のデザインをいい、タイプフェース(typeface)と同義である。
◆ フォントとは、表示や印刷などの具体的な表現に書体を利用できるように、文字形状データの集合を記録媒体におさめたものである。実際には流通や実装の単位となっている。同一の書体について複数のフォントがあり得る。
◆ 書体のデザインやフォントの提供は、フォントファミリ単位で行われることが多い。フォントファミリとは、ある書体のバリエーションの集合をいう。1つのファミリの中には、太さ、字幅、傾きなどのバリエーションがある。実際に使用する場合は、ファミリの中の特定のフォントを指定する。
◆ 欧文フォントは、縦方向の高さをボディサイズとし、この仮想ボディの内側のアセンダとディセンダの間にデザインされる。文字幅は個々の文字のデザインによって異なるので、行長やレイアウトの尺度の目安として、和文フォントの全角に相当するemが使われる。enはemの半分である。
◆ 小文字xの高さをxハイトといい、小文字のサイズの目安とする。同じポイント数でもxハイトの大きいヘルベチカ(Helvetica)は大きく見える。同じポイント数でも見え方は書体によって著しく異なる。
◆ 和文書体は中国の伝統的「書」に由来する筆書系、伝統的活字書体、庶民文化に由来する江戸文字、写植以降非常に増えたディスプレイ書体、日本独特の仮名書体など、多様なルーツがある。
◆ 欧文書体は、古くはローマ時代の碑文を規範に、グーテンベルクの中世後期の活字から、その後イタリアで作られたローマン書体以降を経て、印刷技術や出版の発展に伴って、印刷物の用途に合わせて可読性、美術性、新規性などを工夫して多くの書体が開発されている。
1.2.4.7 日本の書体分類
◆ もとは中国の北宋・南宋の時代に、起筆、終筆、太いタテ、細いヨコの形状を整理・デザインしたのが宋体で、明の時代に日本に入ったので明朝体と呼ばれている。筆の筆法を最も多く残しているのが楷書体で、明朝体のかな書体もこれと類似したデザインである。行書体、草書体、隷書体は筆書体であるが、行書および草書ははっきりした字体基準はない。
◆ 日本で最もポピュラーなのは名刺や案内状に用いる楷書体のデザインは、中国の唐代に頂点に達した書家の文字をベースにしたものである。
◆ 西欧ではサンセリフに分類されるデザインを日本で活字化したのがゴシック体である。タテ/ヨコのステム幅の比率が近いデザインで、ハライ部も等幅線となり、線分のデザインは整理され、起筆、終筆、曲折が角ばっていて、一般にウロコ(セリフ)はない。
◆ 角ゴシック体をベースに、筆法や画数の判別がつかないほど線分のパターンが単純化されて、起筆/終筆の区別がなくなり起筆、終筆、曲折などの部分が丸みを帯びたものが丸ゴシック体である。
◆ 江戸時代に起源をもつ日本独自の漢字文字文化に由来するデザインに勘亭流、相撲、ひげまたは寄席などのディスプレイ書体があり、一般に江戸文字と呼ぶ。通常文章表記には使わないので、楷書などの伝統書体とは区別される。
1.2.4.8 テキストの流し込み
◆ テキストデータにフォント指定を行い、組版を行うことを、テキストのフォーマティングとか流し込みという。
◆ 組版とフォントは別の「ソフト」ではあっても、タイポグラフィ上は関係している。フォントは組み方や使われ方を想定してデザインされているので、用途にふさわしいフォントを選ばなければならない。
◆ 2バイトの漢字コードに含まれる欧字、数字、記号は前後関係から適切な1バイトのコードにして適切なフォントを使うようにしなければならない。
◆ パソコンなどのプラットフォームやDTPソフトによって、1バイトと2バイトのコード系に何を割り当てているかが異なることに注意する。
◆ 半角欧字/半角カタカナや倍角などのフォントは、初期のワープロの制限された機能からやむを得ず用いられたもので、印刷物に使うときには別のフォントに置き換えて組版しなければならない。
◆ 2バイトのJISにおける欧字、数字、記号は通常は全角フォントが設定されているが、これは略号や記号や縦組用にデザインされたもので、欧文単語を組むには適切ではない。
◆ 数字は従来の印刷でも全角と2分のフォントがあり、このうち連数字は主に半角に相当し、数字の桁合わせを容易にしたものである。半角は組版では限定的にしか使わないのが普通である。
◆ ワープロや表計算ソフトで作った表では、文字が罫線と重なることがあるが、文字と罫線の間隔はふさわしいアキをとるように気を配る必要がある。
1.2.4.9 組版の単位系
◆ 組版は活字の配列を意味したので、活字の寸法がすべての単位の基準となった。
◆ 欧文組版の単位系ではポイントが使われ、基準単位は72分の1インチで、2分割、3分割をしやすいように考えられた。パイカはひとまわり大きい欧文組版単位で、12ポイントに相当し、6パイカで1インチになる。
◆ JISでは1ポイントを0.3514mmとしており、72分の1インチとは異なる。DTPでは72分の1インチ(約0.3528mm)が使われる。
◆ 和文組版は、古くからの活版の基準単位で鯨尺に由来する号数が使われ、ワープロフォントのベースともなったが、印刷/出版では日本で写植が生まれたときの単位系の級数/歯が多く使われた。この基準単位は0.25mmでメートル法に基づく。しかし欧米で生まれたDTP環境は、ポイントを基本単位とする。
◆ アプリケーションによっては単位系が異なると最も近い文字サイズを選んでも端数の誤差が積み重なって行末やページ末に生じる。実際に組版されるシステム/プリンタを想定してレイアウトしなければならない。
1.2.5 制作管理
◆ 印刷物制作の方法は現場に任せられる場合が多い。制作にかかった時間を作業単位別に工数として捉えておくと新規の仕事の時間を見積もる目安になる。
◆ 工程ごとに費用の見積りと変動要因を把握して、予算オーバーにならないようにコントロールする。企画料は、デザインコンペでの企画書やカンプ作成によるプレゼンテーション費用なども含まれる。広告用印刷物の場合、文字原稿の作成は、コピーライター費用である。イラストやロゴタイプのデザインは、料金の幅が最も広い。
◆ 画像データが印刷物に耐えられないものは再度スキャニングとレタッチの費用がかかる。レイアウト済みの完成ページが入稿される場合でも、製版処理としてトラッピングやスミ文字のためのオーバープリントの作業が発生すると、データ整形料がかかることがある。
◆ 画像切り抜きは難易度によってクラス分けをし、その標準作業方法と作業時間の目安を何段階か作るとよい。画像合成や背景処理は、クリエイティブ処理の料金設定になる。
◆ レイアウトは、複雑さによって工数が大きく変わるので、標準的目安を決め、工数の増減を捉えやすくする。
◆ 罫表組は手作業では面積の割に作業時間がかかるものがあり、サンプルごとの工数を記入して、管理に用いるのがよい。
1.2.5.1 ページもの制作の管理
◆ 書籍制作では一連の作業管理のために、作業予定を時系列に記した進行表や、製本の折丁ごとにページの並びを区切って管理する台割表を作る。
◆ 編集企画段階では、どこのページに何が入るのかを確認するための台割であり、実際の印刷上では、ページ順とノンブルの関係、折りと表裏の関係を明確にするために台割表を作る。
◆ 序文や目次など前付けをかくしノンブルとしたときには、第1折は必ずしも1ページから始まらない。ノンブルの省略されている中とびら、白ページで何も印刷されていないところ、1折に満たない半端なページなど、面付けの際に注意すべきところを台割表で明らかにする。
◆ 編集側でも用紙の変更や印刷色の変更は折丁の単位で行うので、台割は重要である。見開きの画像が別の折丁に分かれることはなるべく起こらないように台割でチェックする。
1.2.5.2 印刷料金の見積り(積算)
◆ 印刷料金の見積りは、企画・デザイン料、DTP作成(修正)料、出力料、校正料、刷版(CTP)料、印刷料、製本・加工料の組み合わせによる積算に用紙代、諸経費(一般管理費、販売費など)を加算したものである。
◆ 各工程の算出方法は、基本的に仕様書に基づいた「単価×数量」であるが、単位の表現は統一されたものではないため、発注者および受注者は相互に確認する必要がある。