1.3 色
光と色の関係、色の表し方、印刷インキの特性と発色の特性、デバイスインデペンデントカラーという概念を理解する。印刷物の色は、基本的には印刷インキの分光吸収特性によって決まるが、それ以外に環境や心理的要素によっても影響されることを理解する。
1.3.1 光
◆ 光は電磁波であり、エネルギーの伝搬または放出である。光と人間の知覚(明暗知覚および色知覚)を取り扱うのが色彩科学である。
◆ 電磁波の各波長領域に、それらに対応する電磁波の呼称を表したものを電磁スペクトルという。光学では、赤外光および紫外光を含めたスペクトル領域を光と呼ぶが、紫外光および赤外光は肉眼に対して何ら明暗感覚を起こさないので、不可視放射(光)である。
1.3.1.1 可視光線
◆ 可視光は、肉眼に入射して直接に視感覚を起こすことができる放射で、約400nmから700nmの波長をもつ。CIEでは下限波長380nm、上限波長780nmとしている。
◆ 波長の違いは光がプリズムを通る際の屈折率の変化で知ることができる。プリズムに白色光を通すと虹のような連続的な色の変化が見られる。
◆ 太陽光の白色光には可視光の波長が連続的に含まれるので、波長によってレンズでの屈折率が異なるので色収差が出る。
◆ 光の波長は短いほど大きく屈折する。屈折はプリズムやレンズの厚い方に向かって起こる。
1.3.1.2 光の性質
◆ シャボン玉や油膜のように、薄膜表面で反射した光と裏面で反射した光が重なって特定の波長に強弱が起こり、色を生じる現象を干渉という。
◆ 光が影の内側に回り込むので物体の影の輪郭がぼやけて見える。これは光の波動性の性質によるもので、回折という。
◆ 空が青く見えたり、夕方の太陽が赤・橙色に見えたりするのは、光が大気中の小さな粒子に当たって散乱することで起こる。
1.3.1.3 発光とレーザ
◆ 光は原子にたまったエネルギーの放出によって発生する。電球はフィラメントが熱せられて発光し、化学発光は主に酸化反応の結果で蛍光を出す。これらの過程で光量子を発する現象を自然放出という。
◆ 自然放出では1つの原子から放出される光の位相は、他の原子から放出される位相と関連なくランダムに変動している。
◆ 電子を非常に高いエネルギー状態にしておくと、同じ波長の光量子が原子とぶつかり、誘導放出によって連鎖的に光量子を発する。この光は波長のすべての山と谷が一直線に並ぶコヒーレントなもので、レーザの光となる。
◆ レーザは直進性に優れ、遠距離でも減衰しにくく、高いエネルギーを光としてコントロールしやすい。
◆ レーザの発振器は物質の原子の励起状態を利用するため、レーザには何らかの物質が必要で、その物質によってレーザは分類される。He-Neレーザは、レーザ発振を行っているガスはNeなので赤色になる。Arは青緑色、炭酸ガスは赤外光になる。YAG結晶中のイットリウムを他の希土類元素で置換した種々のYAGレーザがある。ネオジム添加YAGを用いたNd:YAGレーザは赤外線を発する。ただし非線形光学結晶を用いて高調波を発生させることによって、緑色の光や紫外線なども出すことができる。
◆ 規則正しい形に並んだ多数の原子からなる半導体結晶で、レーザ発振を起こすのがLDである。
1.3.2 色
◆ 人間の視細胞には、明暗を敏感に感じる棒状の桿体と、RGBの3種類の光に反応する円錐状の錐体とがあると言われている。両者は同じようには働かず、光が少ないと色の知覚ができなくなり、明暗だけの像を見ることになる。
◆ 色覚の研究が進むとともに各錐体の感度も正確に測定できるようになり、語句の定義や使い方も変化し始めている。最近CIEではRGBという言葉は使用せず、S錐体値、M錐体値、L錐体値と呼んでいる。S錐体値がBに当たり、M錐体値がGに、L錐体値がRに相当する。しかしM錐体値とL錐体値のカーブは非常に近似しており、従来考えられていたRGB感度とは若干開きがある。またCIEで用いられているR原色の基準光である700nm付近ではL錐体値の感度もピークから下がり気味で、B原色の光435.8nmとG原色の光546.1nmとは異なっている。
◆ RGBによる色再現方式は長年使用され、一般的に不具合もないため今後も使用されていくだろう。ただし、医療関係など誤差が大事故につながる可能性のある場合などのために、分光スペクトル自体を近似させる色再現方式などが研究されている。分光色再現は宇宙観測などにも応用されているが、この方法なら環境光などの影響による問題を受けにくい。
1.3.2.1 色の混合
◆ 波長380〜780nmにわたる光の色相感覚には、単色光の色相に比べて複合光はあざやかでない感覚が生ずる。このあざやかさの程度を、飽和度 (saturation)という。
◆ 人間はR(赤)・G(緑)・B(青紫)の光の3原色のそれぞれの色光が目に入る強さの比率によってそれをさまざまな色として認識する。
◆ マゼンタは単色光では現われない色である。
◆ 2色を足して白(加法混色の場合)あるいは黒(減法混色の場合)になる関係を補色の関係という。RとC、GとM、BとYがそれにあたる。印刷における補色インキのことではない。
1.3.2.2 減法混色
◆ 可視光の各波長を混合した白色光が物体の表面にあたると、物体を構成する物質の種類や分子構造によって光の特定波長に吸収が起こり、残りが反射して目に入ると色を感じる。
◆ 印刷物に白色光を当てると、インキの顔料がその一部を吸収し、残りが反射光になって色として認識される。
◆ 白色光の一部の光が減る割合で色を表現することを減法混色(減色混合)という。網点はこのC、M、Y 3色のインキから反射されるR・G・Bの光の量を変化させてさまざまな色を再現する。
◆ インキの刷り重ねられた部分は減法混色であり、CRTによる加法混色の発色に比べて色が濁る。しかし、色インキが重ならずに併置されているハイライト部分は加法的な混色となる。
1.3.3 色の見え方
◆ 色には、色感覚による色と色知覚による色がある。色感覚による色は、心理物理実験のデータに基づいて定量的に表示できる。色知覚による色は、物体からの反射光が大脳の視認中枢において判断される色であって、言語などで表現される定性的なものである。「色相」は知覚色に対応するものと考えられる。
◆ 光の分光エネルギー分布と色感覚による心理物理色との間には対応関係があり、分光組成によって、心理物理色は一義的に定められるけれども、心理物理色に対応する色刺激の分光組成は、一義的には定められず多様性がある。
1.3.3.1 色の見え
◆ 色の見えは、観察者や対象物が置かれている環境や照明、発光している光の特性などによって大きく変わる。そこで色を正しく判断するには、観察環境や条件の標準化が必要となる。
◆ 色を正しく判断できる環境として最低限考慮すべき項目には、周囲の色、照明光の特性(分光エネルギー分布)、照度、モニタの輝度がある。
◆ 対象物の周囲に色によっては、対比、同化、順応などの現象が起きてしまい、正しく色を見ることができない。色を正しく評価、判断するには、周囲光は無彩色であることが望ましい。
1.3.3.1.1 照明光の分光特性
◆ 照明光の分光特性は、エネルギーの過不足がなく、分光エネルギー分布がフラットなものが望ましい。照明光の分光特性が異なると、同じ印刷物でも色の見えが変わってしまい、自発光のモニタでも色の見えが変わる。
◆ モニタの観察環境において、フラットな照明下に比べ赤い照明下では赤成分が多いものは明るく見える。赤のエネルギーが少ない照明下では、赤い部分は暗く見える。たとえば、標準光D50で2つのものが同じ色に見えても、D65では違って見えることもある。このように、分光反射率の異なる2つの色が、特定の光源下で同じ色に見えることを条件等色メタメリズムという。
◆ 照度とモニタの輝度は、それぞれ別個に決めればよいというものではなく、両者の関係を考慮して設定しなければならない。
◆ モニタと反射物の照度の適正値は、モニタの基準白色輝度、周囲の状況などにより変化すると考えられるので、@モニタの設置・調整、A反射物(サンプル:未印刷の用紙など)の設置、Bモニタ側照度の調整(モニタの基準白色は、白に認識され、シャドウ部の階調再現が確認できる照度に調整する)、C反射物側の照度の調整(印刷用紙などの明るさ感がモニタ基準白色の明るさ感と同じになる範囲に設定する。照度が高すぎると用紙の明るさ感が増し、モニタの再現範囲を超えてしまう)、という手順で設定することが望ましい。
◆ 一般的なDTP環境では、印刷物をチェックする校正環境はアナログ時代とは異なり、5,000Kで500〜600luxくらいの部屋でモニタ管面の輝度80cd以下(出来れば60〜70cd)が望ましい。この環境下ならモニタの色と校正刷りが近似するはずである。
◆ 色を正しく判断するには、作業する現場の背景や壁などの色の整備から行うことが理想的であるが、第一ステップとして、照明光、照度によるモニタ環境を整備することは比較的容易にできる。
◆ モニタの観察環境の整備や標準化によって、色の伝達がより効率的になり、色見本を見ながらモニタ上で色修正をしたり、現場やクライアント側にも同様の環境を構築することによって、作業効率アップや品質向上になる。
1.3.3.1.2 プルキンエ現象
◆ プルキンエ現象は、色の見え方が変わる現象の一つで、薄暗い時間には赤色が暗く見え、青が明るく見えるという現象である。1825年、チェコの学者であるプルキンエ氏が発見したため、この名前がついている。
◆ 目の網膜には、外から入る光を受け取る、錐体細胞と桿体細胞と呼ばれる細胞がある。錐体は主に昼間、明るい場所で働き、逆に桿体細胞は暗い場所で主に働いて光を感じている。
◆ 明るい場所で働く細胞は、明るい光の下で色を識別する役割を持っているため、どのような色の光も鮮やかに見ることができるが、主に暗い場所で働く細胞は、波長の長い光は受け取ることができず、波長の比較的短い青色〜青緑色に感度のピークを迎える。したがって、明るい時間に赤は目立つが、辺りが薄暗くなってくると、網膜で主に働く細胞が次第に変化するため、青に近い色がはっきりと明るく見え、前者の色の光が暗く見えにくいと感じるようになると言われている。そのため、薄暗い夕方でも、青の標識は比較的はっきりと見えるのである。
1.3.3.2 光源と紙
◆ 光源の種類によって含まれる波長とエネルギーが異なり、印刷物などの色の見え方に影響を与える。
◆ 太陽光は自然な見え方の基準とされるが、天気によって自然光は変化し、常に太陽光の下で色を評価するわけにもいかないので、色評価するためには、測色用の標準光源の下で見ることが必要である。標準光源は、印刷評価用以外にも各種決められており、色温度、演色性により区別される。
◆ 紙上の色材の色は、紙自体の色、平滑性、吸油度、蛍光物質などの塗工材の特性の影響を受ける。
◆ 印刷物の色の厳密な比較や評価は、同じ紙・インキ・印刷条件・光源下でないとできない。
1.3.3.3 心理的影響
◆ 人間の生理的・心理的特性によって色の見え方は影響を受ける。1つの色の知覚は、直前の色の知覚、周囲の色の知覚の影響なども受ける。
◆ 訓練や色を観察する方法を工夫することによって、心理的・生理的要素の影響を小さくすることが可能である。
◆ 生理的・心理的影響の代表的なものに色対比、同化効果、色順応、残像がある。
◆ 知覚は脳が視覚情報を積分/補正した結果起こるものなので、計測の値と異なる場合がある。
1.3.3.4 色彩配色
◆ 紙面の印象は色の選択により変わる。明度の低い色は重厚な感じを与え、また明度が高く彩度が低中度の色は軽やかな感じを与える。これにより紙面の重心が影響を受ける。
◆ 色はさまざまな感情を人に与える。寒色系、暖色系など、色相、明度、彩度の組み合わせにより、どのような効果が生まれるかについて非常識な配色にならないように典型的なケースは理解しておかなければならない。
◆ 社会的な慣習として警告マークや交通標識のように目につきやすいものがどのような配色や明度差になっているかも理解しておく。
◆ 印刷物の表現として、代表的な色をCMYK(Bk) の網点パーセントの組み合わせに置き換えて考える能力も必要である。
1.3.4 色の表し方
色の「光としての物理量」と「心理量としての見え方」の対応関係を科学的に扱う方法があり、これがCRTの色と印刷物の色の問題の議論をする共通の土俵となることを理解する。
1.3.4.1 カラースペース
◆ どのような方法であれ、色を表現するには3つの属性が必要になるので、3次元の空間(立体)で色を数値化したモデルが考えられた。
◆ 「色」をあるカラーモデルの規則に従って表示することで、意図した色を情報として正確に伝達できる。
◆ コンピュータのカラーモニタやスキャナ、テレビの画面などは、RGBカラーモデルを使い、光を直接コントロールして色の情報を作る。
◆ 印刷ではCMYK(Bk) インキを1枚の紙の上に刷り重ね、各色のインキが特定波長光を吸収したり反射したりした光によって色の認識をする。
◆ 規格化されたカラースペースの代表はCIE表色系であるが、色相、彩度、明度という感覚をベースにしたカラースペースもある。
◆ 色相、彩度、明度の3属性で客観的に数値化して表す感覚をベースにした体系にマンセル表色系、オストワルド表色系などがある。
◆ マンセル表色系は、色の知覚を段階分けしてHV/Cで表現するもので、光の物理量との関係付けが難しいが、人間の感覚には近いとされている。
1.3.4.2 色名法
◆ JIS Z 8102「物体色の色」では、系統色名と慣用色名の2つを規定している。
◆ 赤・橙・黄緑・青・紫・白・黒など世界共通の色名法を基本色名といい、これに明度と彩度に関する修飾語と色みを表す修飾語をつけたものを系統色という。
◆ さまざまな動植物や鉱物の特有の色から付けられた色名を固有色名という。
◆ 普遍化し一般に使われるようになった色名を慣用色名という。
◆ 国ごとの歴史的文化的背景によってつけられた色名のことを伝統色名という。
1.3.4.3 慣用色名
◆ 古代から使われてきた色名は、情報としてあるいは意思伝達の手段としての不完全さにもかかわらず、今日でも多く用いられる。
◆ 特定の色を表現する名称を固有色名といい、一般に広く使われているものを慣用色名という。JISでは慣用色名として約269色が定められている。
◆ 慣用色名や日本の伝統色の代表的な色は、赤系や青系など色系統や、色相など属性との関係を覚えておくとよい。
◆ 慣用色名の由来や顔料・染料の種類などを知ることは、色再現の理解につながる。
1.3.4.4 CIE表色系
◆ 色を光の物理量として、また人間の視覚神経刺激の心理量の問題として、科学的に扱った表色系にCIEの表色系がある。
◆ CIEは色や光に関する取り決めを行う国際照明委員会の略称である。CIE表色系は、当初CIEで定めた特定波長のRGB単色光の比率で色を表すRGB系であったが、負の値を含んでいたので、1931年にRGB系を線形変換したXYZ表色系に改めた。
◆ CIEのXYZ表色系では、与えられた色と同じ色感覚を起こさせるために混合すべき3原色の刺激の量X、Y、Z(3刺激値)で表す。Yは明度曲線と同一であるので、輝度を示す。XYZ表色系を図に表すと、光のスペクトル軌跡を包む三角形で表現される。
◆ XYZ表色系のひとつであるCIExy色度図は、平面で表示したものである。色再現域を単純化して三角形に内接する馬蹄形の図で表す。CIExy色度図では、中心W(白)に近づくほど彩度が低くなり、周辺に向かうほど高くなる。また、色度図の左下はBv、右下はR、色度図の頂部はGである。
◆ 印刷物とカラーCRTの色再現域を比べると、カラーモニタはプロセス印刷の再現域よりも大きな鋭角の三角形となる(一部は印刷の方が大きい)。
◆ 印刷ではRGBはCMYの混合によって作り出すため、RGBの頂に向かう領域は大きくおさえられ、一般に印刷の方が色の再現範囲が狭い。また、印刷物は可視光の中間域のGで表現レンジの制約が大きい。
1.3.4.5 CIE L*a*b*
◆ 色のズレを色差と呼び、その値を僞(デルタE)で表す。これを扱う表色系としてL*a*b*表色系が制定され、日本でもJIS(JIS Z 8729)となった。
◆ L*a*b*表色系ではL*で明度を表し、色相と彩度を示す色度をa*とb*で表す。a*とb*は色の方向を示し、+a*は赤、-a*は緑、+b*は黄、-b*は青のそれぞれの方向を示している。数値が大きくなるに従って色が鮮やかになる。
◆ L*a*b*はシステムやデバイスに依存しないこと、またRGBやCMYK(Bk) に比べて色再現領域が広いことなどから、カラーマネジメントシステムやソフトウェアの標準カラースペースとして用いられている。
◆ 各工業分野で色の管理に色差(僞)が用いられている。一般人の色の弁別能力は僞値3以上であるが、機器のキャリブレーションでは僞値1以下で管理する。
1.3.4.6 色温度と標準光源
◆ 色温度とはある光源の色を絶対温度Kで示したもので、JIS「色に関する用語」には「完全放射体の色度と一致する試料放射の色度の表示で、その完全放射体の絶対温度であらわしたもの」とある。
◆ 色温度は、白色蛍光灯はおよそ4300K、快晴の青空はおよそ20000Kとなる。数値が低いほど赤色光の量が多く、高いほど青色光が多い。
◆ CIEの標準光源A、C、D65などのうち、印刷以外で一般によく使われる照明光源はD65であり、その色温度は約6500Kである。
◆ 原稿の色の選定、インキの色合わせ、印刷物の色評価、色の均一性の評価など、印刷の照明光源には、5000KのD50を標準とする。
◆ 一般的な光源の色温度は、印刷の標準光源に比べると高めのため、作業内容によってはカラーモニタでの色温度を印刷用に設定して使う。
1.3.4.7 演色性
◆ 演色とは、照明される光源の違いによって色の見えかたが異なる現象をいう。その特性を演色性と呼ぶが、一般に演色性とは自然光と対比させた光源の性質を表わすものである。
◆ 演色性は、ある光源のもとでの色の見え方が、同じ色温度の基準光源での見え方にどれだけ近いかをRa(演色評価数)で示す。
◆ モニタや蛍光灯などを選ぶときは、まず色温度によって区別し、演色性の数値を見て評価する。
◆ Raが100に近いほど高演色性の照明光といえる。日本印刷学会の標準光源ではRaは90以上としている。
1.3.4.8 メタメリズム
◆ メタメリズムは、条件が変わることによって等しく見えた色が異なってしまうことをいう。メタメリズムには、湿潤・温度・光源などがあるが、一般にメタメリズムというと光源間メタメリズムを指すことが多い。
◆ 光源が変わって色が変化しても、メタメリズムがなく等色に見える場合がある。逆に演色性がないが、メタメリズムがある場合もある。
◆ 分光反射率、つまり色を分光スペクトルで近似させて目標色に合わせようとする方法で行うカラーマッチングをアイソメリックマッチと呼び、色再現システムを分光的色再現システムやナチュラルビジョンと呼んだりする。反射率が完全に合致した場合、メタメリズムによる色変化を完全に取り去ることができ、理想的な色合わせでの方法である。この方法は、デジタルカメラ入力には撮像システムの技術革新で実運用も可能であるが、インキなどの色を合わせる場合は目標色と同じ色剤・下地の場合でないと、反射率を合致させることは難しく、手持ち色剤を利用する着色業では利用範囲が限られる。
◆ スペクトルを一致させるアイソメリックマッチに対して三刺激値を目標色に合わせようとするカラーマッチングをメタメリックマッチと呼ぶこともある。視覚色を三刺激値で一致させるということは、計算する光源下では一致しても、他の光源では色が合わないリスクつまりメタメリズムを持つが、手持ち色剤を利用してほとんどの色を出すことができるメリットがある。
1.3.5 写真原稿
◆ 伝統的に写真原稿は銀塩感光材料を使った連続階調カラーフィルムや印画紙が使われる。カラーフィルムは35ミリのようなロール式のほかに、大きい写真原稿用のシートフィルムが使われる。
◆ リバーサルカラーフィルムは主にC発色層、M発色層、Y発色層の3層によって色を表現する。
1.3.5.1 写真濃度
◆ 写真濃度とは、写真画像の黒さの度合いを定量的に表すもので、フィルム上の画像は光の透過濃度、印画紙上の画像は反射濃度で表す。
◆ いずれの濃度も、光の透過度(または反射度)の逆数の常用対数で、10倍、100倍と等比級数的に変化する透過度(または反射度)が、2倍、3倍の等差級数的な変化で示され、重なり合ったフィルムの濃度は、各フィルムの濃度の和となる。
1.3.5.2 写真原稿の見方
◆ 写真原稿には、最も明るくて濃淡変化がない部分(キャッチライト)、明るくて濃淡がある部分(ハイライト)、中間的な明るさをもつ部分(ミドルトーン)、暗くて濃淡がある部分(シャドウ)、最も暗くて濃淡変化がない部分(ソリッド)がある。
◆ 最も強い光を受けたわずかの領域で濃淡変化のないのがキャッチライトである。印刷するとほぼ紙の地色に等しい。
◆ 明るくて濃淡がある部分がハイライトである。例えば、ウエディングドレスの調子は主にハイライトにある。
◆ 中間的な明るさをもつ部分がミドルトーンである。網点では50%前後になる。
◆ 暗くて濃淡がある部分がシャドウである。黒髪の調子はシャドウにある。
◆ 最も暗くて濃淡変化のない部分がソリッドである。印刷するとインキのベタの色になる。
1.3.5.3 露光と調子
◆ リバーサルフィルムを使用した写真撮影時に露光量が多すぎるものを露光オーバーという。露光オーバーの場合、全体の明暗の調子が明るく仕上がる。
◆ 極端に露光オーバーな原稿はハイライト側の濃淡変化がなくなる。この場合、いったん調子を失った部分からオリジナルの調子を復元することはほぼ不可能である。
◆ 写真撮影時に露光量が少ないものを露光アンダーという。露光アンダーの場合、全体的に暗く仕上がる。露光アンダーのデータから印刷物をよい方向に修正することは難しいが可能である。
1.3.6 網パーセントと色
◆ 2色以上のインキを刷り重ねて色を出すことを掛け合わせという。普通のカラー印刷におけるCMYK(Bk) プロセスインキ4色の掛け合わせは、各色の網パーセントを指定することで行う。
◆ 平網(ひらあみ)をかけることを網フセと呼び、色見本として10%単位で用意された網の組み合わせが印刷されているものが多い。
◆ プロセスインキを「M70%+Y100%」で掛け合わせると、オレンジになるが、オレンジ、黄緑、青紫のような色は、プロセスインキを掛け合わせるより特色を使った方が鮮やかである。
◆ 「C50+M50+Y50」など等量のCMYの掛け合わせたグレーは赤みを帯びるためBkに置き換えた方が安定する。
◆ 特定のプロセスインキ用に分解したCMYK(Bk) データを別のインキセットで印刷すると仕上がりが全く異なる可能性がある。つまりCMYK(Bk) データはインキに依存するデバイスデペンドバリューである。
◆ CMYK(Bk) の網パーセントがどのような色になるかは、インキ自体の分光反射率や紙、湿し水管理、刷り順、印刷機本体の調整、また温度・湿度等の印刷工場の環境が積み重なって影響する。
◆ 網パーセント自体は「面積率」という絶対値であるため、印刷工場内での管理には有効でも色を表現する情報としては万能でない。インキや紙や印刷条件が標準化されたものとして、日本ではジャパンカラー、アメリカはSWOPやGRACol、およびFOGRAなどの指標がある。
1.3.7 カラーマネジメント
◆ ディスプレイやプリンタなど物理的デバイスが理論的なカラースペース内で再現できる領域をガモットといい、各デバイスに固有である。
◆ カラーの入出力機器の発色の仕組みや、利用目的や、置かれている環境はそれぞれ固有であり、管理されていない装置間では相似の色の再現はできない。
◆ デバイスインデペンデントカラーは、画像の入力から出力までの工程全体で、個々の機器に依存しない一貫した色再現を目指す。これを実現するために、CIEなどの標準的なカラースペースをデータの基準にする。この基準値を個々の機器のカラースペースに適正にマッピングするために、機器ごとに補正値を用意して色再現を行う。
◆ 発色の仕組みによる特性を捉えるキャラクタライゼーションによって、装置の色を決めている要因と値をデータ化したデバイスプロファイルを作る。これは装置開発をするベンダが用意する。
◆ 機器の発色は変動するため、各装置の特性をデータ化したときの値を基準にして、使用中のデータを計測して基準値に合わせ込むキャリブレーションを行う。
◆ 色評価を行う環境は標準光源を用い、また外部の色の映り込みを排して、色評価条件を一定に保つ。
◆ DTPにおけるカラーマネジメントの目的は、印刷再現の予測であり、画面では紙で再現できる範囲の色だけが表示できればよいが、電子出版では離れたモニタ間でも色が相似になる仕組みとして使われる。
1.3.7.1 デバイスプロファイル
◆ DTP環境でカラーマネジメントを行いやすくするために、OSが色変換のエンジンを使えるようにしたり、装置の特性を示すデバイスプロファイルデータのフォーマットの標準化が行われている。
◆ ColorSyncはMacOSが色変換を扱うための仕組みと内蔵の色変換エンジンであり、WindowsではICMが相当する。いずれもデバイスプロファイルフォーマットの標準であるICCに対応する。
◆ それぞれ異なる色再現領域をもつデバイス間でのカラーマッチングのために、いったん汎用のカラースペースに変換するのがデバイスインデペンデントカラーの考え方であり、CIEのXYZやL*a*b*が共通のカラースペースとして使われる。
◆ 各デバイスの色再現能力を共通のカラースペース上の情報にしたのがデバイスプロファイルである。DTP環境では複数の装置を扱うため、各装置のデバイスプロファイルを参照して、異なる色空間の間で色相似になるようにデータ変換をする。
◆ アプリケーションがOSにRGB/CMYK(Bk) 変換を依頼すると、OSはCMS(Color Management System)を呼び出し、デバイスプロファイルと変換エンジンCMM(Color Metrics Match / Color Management Module)を読み込み色変換し、その結果をアプリケーションに返す。再現不可能な色も、最も近い色に置き換える。
◆ 変換前後の色再現域には違いがあるため、色変換の整合性をとるには変換規則(意図)を決める必要がある。これをレンダリングインテントという。再現不可能な色を置き換える場合も、レンダリングインテントに沿って最適な色に変換する。
◆ 色の品質を決めるのはデバイスプロファイルとCMMの精度であり、広義のカラーマネジメントシステムではない。
1.3.7.2 ICCプロファイル
◆ ICCプロファイルはICCにより策定された、あるデバイスがどのようにカラーを再現するか、そのカラースペースや特性について記述したファイルである。
◆ RGBとCMYK(Bk) の間で色の設定を変換する場合や、ディスプレイやプリンタの色を調整する場合に参照することで、正確な色の再現性を得ることができる。
◆ ICCプロファイルは、モニタなどのディスプレイデバイス、スキャナやデジタルカメラなどの入力デバイス、プリンタなどの出力デバイスによる3タイプのデバイスに対して作成される。
◆ 標準的なプロファイルは、デバイスメーカーによってプロファイリングソフトウェアやツールを使って作成される。
◆ ICCプロファイルはタグの集合体であり大きく分けると、プロファイルの情報を記述するヘッダの部分、プロファイルを構成する要素の一覧を記述するタグテーブル、それぞれの構成要素タグの内容を記述するタグエレメントデータの3つの部分から構成される。
◆ ICCプロファイルの実体は変換テーブルである。各デバイスに対して、例えばCMYK(Bk) のある値に対するL*a*b*値が書かれている。重要なことは一つのプロファイルに対して必ず双方向を定義しなければならないことである。また、プロファイル編集ツールはトーンカーブなどに置き換えることによって、変換テーブルを編集する。
◆ 従来の色分解にかわって、デジタル画像をICCプロファイルによってPhotoshop+プラグインソフトとCMMを使ってダイレクトに分版できる。彩度重視の再現やシャドウ部、特定色の階調が豊かな仕上がり等、さまざまな再現が可能である。
◆ カラーマネジメントの運用として重要なことは、独立したプロファイルを使う設定や埋め込まれているプロファイルを使う設定などである。TIFFやPDFのデータにICCプロファイルを埋め込むことができるが、デバイス間のカラーマネジメントを理解しないまま運用すると二重にプロファイルをかけることになる。