1.4  イメージキャプチャ

スキャナやデジタルカメラ等の画像データを取り込む装置を広義にイメージキャプチャと呼ぶ。フィルムや印画紙など連続階調の画像は、スキャナによって色分解を行う。後に画像を加工する際に品質を落したり、手間どらないためには、スキャニング時の設定や慎重な作業が重要であることを理解する。スキャニング時に失われた情報は戻ってこない。


1.4.1  デジタルカメラ

◆ 半導体メモリと似た構造の固体撮像素子は携帯装置に使うことができたため、デジタルカメラが誕生した。
◆ デジタルカメラによる撮影は、事前に品質保証や要求品質にどのように応えるかなど、画像の使用目的を整理しておくことが重要である。
◆ リバーサルカラーフィルムは、撮影光源に合わせてデイライトタイプ(照明の色温度6000K)とタングステンタイプ(照明の色温度3200K)の2タイプがある。デジタルカメラでは、カメラ自体で照明光の色温度を計測するセンサをもっているため、照明の色温度が変化しても白い物は白く撮影できるようになっている。
◆ デジタルカメラのホワイトバランスを自動セットする機能では、朝日や夕日のシーンでも空が赤くならないため、いくつかの固定モードをもつことが多い。さらに細かくホワイトバランスをとるために、白紙を撮影してホワイトバランスをセットする機能をもつカメラもある。
◆ デジタルカメラの画像センサは、フォトダイオードが格子状に並んでいるため、被写体が周期的な模様でそのピッチが画素ピッチに近いとモアレが発生することが避けられない。
◆ これらを低減させるために、不必要な高域周波数をカットするローパスフィルタをCCDやCMOSセンサの前面にセットしている。
◆ デジタルカメラで撮影した画像(JPEG)ファイルには、Exif情報が含まれる場合がある。Exif情報には、カメラ本体や画像データのいろいろな情報が含まれており、画像の向きという情報も含まれる。
◆ PhotoshopCS以降は、Exif情報をもとに、画像を開くとき正しい向きに画像を回転するが、Photoshop7以前にはこの機能がない。
◆ Exif情報を含むJPEGファイルをEPS形式やPSD形式に変えても、Exif情報は基本的に保持される。この保持の仕方もPhotoshopのバージョンによって異なっている。Photoshop7以降では別名保存時に、向き情報を正しい向きに変更する機能があるが、Photoshop6では画像を回転しても、オリジナルの向きの情報が保存される。Photoshop5.5以前では、Exif情報に対応していないので無視される。

1.4.1.1  RAWデータ

◆ デジタルカメラのデータ形式は、規格化されたフォーマットのデータと、CCDなどから出てくるダイレクトな処理されていない生のデータであるRAWデータがある。
◆ RAWデータとは、生のデータ、つまり未現像の生フィルムのようなものであり、アナログの銀塩カメラ時代に未現像フィルムを直接入稿しなかったことを考えれば、RAWデータを印刷原稿として入稿するのは常識的とは言い難い。
◆ RAWデータは、RGB-TIFFと同じように劣化のない非圧縮で、TIFFよりもファイルサイズは小さい。データの加工性は高いが、パソコンの後処理の負担が大きくなるため、多量の撮影や機動性の求められる場合には向かない。
◆ RAWデータは、RAW現像ソフトが異なると画質が異なるため、印刷原稿としては適していない。
◆ RAWファイルは、機種に依存した形式であり、カメラメーカーの専用ソフトやカメラメーカーに対応したプラグインソフトを用いてPhotoshopに読み込むもので、標準工程外の扱いになるため十分な注意が必要である。
◆ 色演出一切を任されているカラーコーディネーターや、最近その存在感が大きくなりつつあるフォトデザイナー(通称レタッチャー)の入稿の場合に、RAWデータは使われると認識しておくべきである。
◆ DNG(Digital Negative)は、アドビシステムズ社がデジタルカメラの画像フォーマットの標準化を目的に提案したもので、デジタルカメラで撮影されたRAWファイル用に開発された。

1.4.1.2  RGBデータ入稿

◆ JEITA(電子情報技術産業協会)のデジタルカメラ用画像ファイルフォーマットにExifがある。これはJPEGファイルの中にさまざまな撮影情報やサムネイル画像などのデータを埋め込むことができる。Exifでは、プリンタなどでの出力が意識され、露出モードやホワイトバランスなど撮影時のデータをもとに撮影シーンや意図に応じた画像補正ができる。
◆ JPEG圧縮は、高圧縮になるほど画像劣化が大きくなるため、細部の再現が必要な複雑なシーンを撮影する場合には画像品質を高くしておかなければならない。また背景の複雑さによって前景の画像が影響を受けることもあるため注意する。
◆ デジタルカメラでは、内部であらかじめシャープネスが強調されている場合が多い。上級カメラでは強調をOFFにできるものもあるが、カメラの輪郭強調の癖を把握しておいてから、印刷のUSMをかけないと、画像のエッジが汚くなりやすい。
◆ 分解フィルタがCCD素子の前に配列された1枚型のカメラでは、各色ごとに発生するモアレのため補間演算が不完全となり、被写体にあるはずのない偽色が現われることがある。これはレタッチで修正する必要がある。
◆ デジタルカメラの設定項目で重要なのはホワイトバランスである。デジタルカメラは光センサでもあるため、カメラが測光してホワイトバランスをオート設定できる。しかし、その効き方は機種ごとに異なったり、撮影意図にそぐわない場合もあるため、商品の撮影などではきちんとホワイトバランスをとる方がよい。
◆ 画像のデジタルデータを受け取っても現物を目にしていないオペレータには被写体の色は推測できないことが多いため、被写体とともに色基準となる撮影用カラーチャートを一緒に写し込んでおくと補正しやすい。


1.4.2  スキャナ

◆ 電子的に色分解を行う装置をカラースキャナといい、スキャナは基本的には入力部、演算部、出力部で構成されているが、現状では入力部だけを指すことが一般的である。
◆ スキャナ入力部はカラー原稿からのRGBの透過光もしくは反射光を、青紫(Bv)、緑(G)、赤(R)のフィルタを透過させることで、カラー原稿のもつ色の情報を、色分解された電気信号として得る。
◆ ハイエンドスキャナでは、色修正回路、スミ(K)版作成回路、下色除去回路(UCR)、階調修正回路、シャープネス強調回路をもち、印刷に適正なCMYK(Bk) データに調整する。
◆ 簡便なスキャナでは、あまり色補正を行わずに、なるべくストレートにRGBのまま出力し、コンピュータ上で色補正するのが一般的である。

1.4.2.1  反射原稿の入力

◆ スキャナで入力する原稿は大きく分けて透過・反射原稿がある。
◆ 透過原稿の多くはカラーリバーサルなどポジ原稿であるが、反射原稿はカラーの印画紙をはじめ各種イラスト原画、印刷物、プリンタ出力物など多岐にわたる。
◆ 反射原稿は、色材の種類や支持体の種類などが多いためスキャナ入力において注意しなければならない。
◆ 反射原稿(印画紙)は、一般に透過原稿より濃度再現領域は狭く、階調が透過原稿より少ないため極端な条件のセットアップは控えた方がよい。
◆ 反射原稿におけるカラーコレクションの設定は、反射原稿の色材ごとにカラーマスキングの違う設定をする必要がある。
◆ イラスト原稿は、一般的にプリント原稿に比べて雰囲気を出すため、シャープネスは若干弱めにかける方が無難である。
◆ 分解時にピントを合わせてしまうとモアレが発生するため、ピントは一応の目安として網点が確認できない程度にぼかす方がよい。

1.4.2.2  カラー原稿の点検作業

◆ スキャナで色分解作業を行う前に、カラー原稿の点検を行うことが必要である。
◆ 原稿がデュープである場合、オリジナルと原稿の向きを間違いやすいため、正像の向きを確認する。
◆ 原稿の画像の、ピント、色カブリ、ハイキー、ローキー、硬調、軟調などの撮影状態、濃度分布を確認し、適切な画像処理、補正を施すことが必要である。
◆ 出力サイズ、スクリーン線数を確認し、適切な入力解像度で入力することが必要であり、また原稿の絵柄の水平・垂直も入力時に合わせておく。

1.4.2.3  色再現域

◆ リバーサルカラーフィルムの色の再現域に対して、ディスプレイの再現域ははるかに狭い。さらに、印刷インキの色再現域はCRTディスプレイよりもいっそう狭い。
◆ 印刷の濃度域はカラーフィルムの10分の1くらいしかとれないため、カラーポジどおりの印刷は不可能である。
◆ 実際にはカラーポジ原稿の色再現域を、演算処理によって縮小して相似的に再現している。これらの色空間(Gamut)の圧縮方法は、用途に応じて、絶対・相対などの方法がある。
◆ 濃度圧縮を行う調子再現カーブは、一般に画像の調子がハイライトから中間にかけて再現性が損なわれにくいようになっている。逆にシャドウから中間にかけては階調数が少なくなる。

1.4.2.4  マスキングの設定

◆ プロセスカラーと呼ばれるC、M、Yインキは、現実にはそれぞれ他の色成分を含んでいる。このインキの分光特性の理論値と実際の値の差を補正するものがマスキングである。
◆ マスキング量はインキの分光特性から決まり、一般的なインキの特性を補正するものをベーシックマスキングまたは1次マスキングという。
◆ 上記のマスキング量は印刷条件を決めたときに、マスキング量も決まってくるわけで、印刷条件、例えばインキの盛り方(インキ皮膜厚)を変化させれば、必要なマスキング量も変化してくる。盛る量を増やすと一般にマスキング量も増えるといわれている。
◆ カラー原稿の色修正のためにマスキング機能を使うものはカラーコレクションという。
◆ デジタルカメラからのRGB入稿の場合、デジタルカメラですでに強く絵作りがされている場合と、絵作りが弱く強い補正の必要な状態とがあるため、カメラごとにマスキングには注意を要する。

1.4.2.5  カラーコレクション

◆ 印刷条件、特にインキの特性は、国やメーカーによって微妙に異なっているため、従来のスキャナではカラーコレクション(カラーコントロール)回路で補正していた。
◆ カラーコレクションで補正できる色は、印刷の1次色であるCMY、および2次色であるRGB、またスキャナの機種によってはダークブラウンなどの3次色が可能である。
◆ 原稿のマゼンタ色(原稿の色制御色)の中に含まれるM版部分のように、必要色と不要色のコントロールをするのに、カラーコレクションでは「M in Y」という表現をする。
◆ 例えば、リンゴの赤色をもっと鮮やかにしたい場合、リンゴの赤、すなわち印刷の2つの1次色MYは必要色で、その補色Cは不要色であるため、カラーコレクションのC in RでCを減らす。
◆ 撮影時の採光や感材特性などにより、画像データのカラーバランスは実際と異なり、内容/目的にふさわしい発色になるように色補正する。


1.4.3  グレーバランス

◆ グレー濃度は色濃度と関係なく、可視光域全体の濃度を表す。
◆ カラー印刷物はCMYK(Bk) のプロセスインキで印刷されるが、CMYの3色トーンカーブをきちんと設定しないと、印刷したときに適正なグレーバランスだけでなく、カラーバランスも保てない。
◆ 適正なグレーを得るためには、Cのトーンカーブを基準にしてM、YはCより少し網点面積率を少なめにする(網ポジの場合)のが一般的である。
◆ CMYのインキのバランスとともにBk版でグレーバランスを改善する。


1.4.4  調子の設定

◆ 印刷物では画像を網点の面積率に置き換えて再現するため、写真原稿のうち再現すべき濃淡のレンジを網点の0〜100%までに表現する。
◆ 印刷物の再現範囲は原稿の再現範囲より狭いため、視覚的に近い再現をするために、写真原稿の中で重要な部分が失われないように、また重要でない濃度域に階調をもたせないようにする。
◆ 調子の管理方法は、写真原稿のハイライト、中間、シャドウにどれ位の網点面積率を設定するかのセットアップ条件を決定し、トーンカーブを設定することである。


1.4.5  シャープネスの設定

◆ シャープな画像とは鮮明な画像であり、それはディテールの情報が多いことである。濃淡変化が起こっている境界部分の変化量を強めればシャープネスは強められる。
◆ ハイエンドドラムスキャナにおいて、画像の見かけの鮮明さを向上させる機構として光学式のボケマスクを使う方法と、電気的処理のピーキングとがある。
◆ シャープネスの設定は、原稿に基づいて判断して調整しないと、かえって不自然な感じになる。一般に人の顔(肌)などはシャープネスを弱めにし、金属物などは強めにする。また倍率に応じても調整する。
◆ 画像データを作成したあとでコンピュータ上の画像処理によって濃淡のエッジ等を強調する方法もある。


1.4.6  プロファイルによる変換

◆ 製版スキャナで色分解された画像はCMYK(Bk) データとして処理されるが、RGBカラーモデルのデータは工程のどこかでCMYK(Bk) カラーモデルに変換しないと印刷には使えない。
◆ 2つのカラーモデルの間で色空間の変換にPhotoshopなどのレタッチソフトを使い、CMYK(Bk) データをDTPで貼り込むことが行われてきた。
◆ ICCプロファイルによる分版は、CMYK(Bk) にオレンジとグリーンの蛍光インキを用いた6色印刷や、薄RGBインキを加え、CMYK(Bk) の色再現性を改善した印刷などに応用を広げている。
◆ 色校正を含むすべての作業はRGBのまま行い、出力時にICCプロファイルを使用してRGBからCMYK(Bk) 変換する方法もある。


1.4.7  Bk版の設定

◆ カラー印刷に墨(Bk)インキを使用することで、CMYの3色だけでは不足しがちな中間部からシャドウ部にかけてのコントラスト・濃度を増すことができる。
◆ プロセス印刷ではCMYとBk版があるため、画像の黒の部分はベタ換算で合計400%のインキ量になるが、これは印刷不可能なため、Bk版の下ではBk版以外の色版のインキ量を減らすUCR(下色除去:Under Color Removal)を行う。
◆ 3色の重なりで無彩色になる部分をBk版に置き換えることにより、シャドウ部の再現は向上し、シャドウ部のグレーバランスも取りやすくなる。Bk版は日本ではスケルトンブラックといい、Cの中間部分からBk版が始まり、シャドウに向かって70〜80%くらいの網点を置く。
◆ UCRは、印刷のシャドウ部の総インキ量を減少させたり、インキの裏移りトラブルを削減でき、印刷の生産性にも寄与する。
◆ UCA(Under Color Addition)は、下色追加を意味しUCRと逆になる。シャドウ部の濃度を強くすることで色カブリの補正などに使われる。
◆ Bkインキは無彩色成分を表現するため、色領域のCMYの中からグレー成分に相当する量を取り除き、それを墨の網点に置き換えても原理的には同じ色調となる。これをGCRという。
◆ GCR(Gray Component Replacement)は、CMYの掛け合わせが少なくなるため、色は安定し、印刷も行いやすい。そのためグレー部分に色浮きが出ては困るカメラのボディなどの原稿に向いているが、粗線数でロゼットが目立つというデメリットもある。

カリキュラム目次へ