1.5  レタッチ

スキャナで画像をデータ化するときに失った情報は、後のレタッチでは回復できないが、豊富に情報をもった画像データに対しては、色変更、シャープネス、ボケ、合成などの加工ができる。写真に対する基本的な調子や色調の修正と、絵柄ごとに常識的な色演出の方法があることを理解しておく。


1.5.1  絵柄による色演出

◆ 期待通りの色調が再現されない場合は、まず画像処理で修正可能か、スキャナのセットアップデータを変えて再分解する必要があるか判断する。
◆ よく見うけられる代表的な絵柄については、それらしい色や調子として認知されている記憶色(あるいはプリーズカラー)を意識してレタッチする。この一般的な色演出の方法を理解しておく。
◆ 一般に、料理の素材感、人種、年齢、性別と肌、風景、静物の特性イメージと画像修整のポイント、白もの・黒ものの特性イメージと処理などを覚えておく。


1.5.2  調子修正

◆ レタッチするには、ディスプレイがカラーマネジメントされていることが条件である。
◆ 画像全体の調子を見やすくわかりやすく整えるには、まずハイライト/シャドウのポイントを再設定する。これは絵柄の濃度ヒストグラムを調べて全体の濃度分布を自動設定できる場合もある。
◆ 画像の階調修正はトーンカーブの操作によって、画像のどの濃度域に階調を豊富にもたせるか、どの濃度域を圧縮するかなどの調整をする。マスク画像を作ることで、一部分だけにこのような変更を加えることができる。
◆ 従来のハイエンドスキャナでは、CMYK(Bk) のトーンカーブの操作を中心に調子をコントロールしていた。それでは扱いにくい色もあり、RGBやCIEなど異なるカラーモデルによって色修正をすると有効なこともある。
◆ 画像処理のアプリケーションは、濃度分布やトーンカーブだけでなく、色のシフト、特定色の成分調整などの操作を総合的に組み合わせた色変換のメニューをいろいろと用意している。これらをうまく使うと、不完全な写真原稿の救済に役立つ。


1.5.3  フォトレタッチ

◆ デジタルカメラなどのRGBのデータが入稿されたときに色バランスをチェックするには、濃度ヒストグラムを見るとよい。対象物の視認性がよい画像とは、ヒストグラムが平坦な分布状態であるといわれている。
◆ 通常の画像を濃度ヒストグラムにすると明暗のすべての領域にわたってピクセルがあるわけではなく、色成分ごとに分布が異なることが多い。このとき色のバランスをとる操作が必要になる。
◆ 従来のハイライト/シャドウ/ミドルトーンの設定に相当する方法として、濃度ヒストグラムでRGB各チャンネルごとの濃度の分布状態に合わせてレンジの両端を設定する。
◆ 従来の製版ではカーブの変化で絵を作り変えるのが基本であったが、例えば明度は変えずに色味だけシフトするには、CIE L*a*b*をベースにした機能を使いLを固定すると階調のジャンプが少なくなる場合がある。
◆ CMYK(Bk) 色空間に比べてLab色空間は大きく、色成分をabだけで表現しているので、8bit深度で色相などを動かすとどうしてもトーンジャンプが目立ってしまう。なるべく16bitデータでハンドリングすべきである。
◆ Photoshop上で、Labレタッチを行う場合、Lab値で表現される色と印刷されたものに微妙なズレが生じる。これはPhotoshopで設定したRGB空間と印刷したCMYK(Bk) 空間とのズレによって発生する誤差と推定できる。Lab値と印刷物の対応チャートを作成し、逆算(類推)するなど現実的な対応が必要になってくる。
◆ 原則的には、レンジ、ホワイトバランス、トーンの後に、印刷に必要なシャープネスをかける。画像をJPEG圧縮すると画像が荒れがちになるため、さらにシャープネスやコントラストをかけるべきではない。
◆ アナログフィルムの場合は、極端な補正は不可能であったが、デジタルは自由に再現カーブを補正できるため、二重補正をするとトーンジャンプや反転が起こることもある。
◆ 適正な画像とは、「明るいところから暗いところまで十分な階調レンジを持ち、画像の色相や彩度、輝度、コントラスト、カラーバランスなどが適切な画像」である。
◆ 画像を印刷に利用する場合、「撮影→編集&リサイズ→色分解→(フィルム出力)→刷版作成→紙に印刷」という一連の工程で、利用可能な階調範囲は後工程にいくほど圧縮されていく。このことからも、入り口部分での画像の品質が重要である。
◆ 画像の階調レンジを調整することで、ハイライト部は明るいニュートラルに、中間調は濁らず濃くならず、シャドウ部は暗く濃くなるが、細部は維持されるような画像処理を行うことが望まれる。
◆ 具体的な例として、白いウエディングドレスの画像は主にハイライトに調子があり、黒い車の画像などはシャドウに調子がある。これらは印刷で調子を失いやすいので、慎重に画像処理する必要がある。
◆ 明部も暗部も多く含まれている白昼の海岸風景のような画像は、一般にコントラストは強い。仕上がり画像のシャドウ側の調子を強調するには、中間調を減らすとよい。
◆ 写真原稿は適正露光で撮影することがもっとも大切である。撮影時に露光量が多すぎると露光オーバーになり、全体の調子が明るくなる。極端な場合はハイライト側の濃淡変化がなくなる。それらの写真原稿は、Photoshopなどで調子を復元することはほぼ不可能である。
◆ 反対に露光量が少ないものを露光アンダーという。この写真原稿は濃度域が狭く、明暗の改善のためにレンジを再設定すると階調は粗くなる。
◆ 商業印刷物では、クライアントの望む色彩に仕上げることが重要であり、実物に忠実ではなく、適正な画像に仕上げるということでもなく、あくまでもクライアントが望む色彩になるように画像をレタッチする。たとえば、人物の肌色や食肉の赤色などは、実物に忠実にデータを作成しても見栄えのする写真にならないことの方が多いが、撮影者や編集側では自分達が描いている色のイメージがあり、印刷側もそれらを考慮して色を作り込む必要がある。このような場合、主観的要素がかなり入り込んだ画像を作る必要がある。よって、表現力と訴求力を膨らますこのレタッチ処理は、画像補正とは異なるテクニックが必要である。また、画像の合成もレタッチの一つである。


1.5.4  シャープネスの強調

◆ あまりシャープネスを利かせるとジャギーが目立つ。逆にシャープネスが不足すると、元の画質が活かしきれなくなる。このためエリアを指定して絵柄の一部分だけに施す。
◆ 印刷を前提とするスキャニングでは、網点による印刷に適したシャープネスをかけるが、デジタルカメラによる入力では、入力時に印刷に最適なシャープネスはかからないため、用途や解像度に応じて後で施す。
◆ 原則的に、アプリケーションによるアンシャープマスキングは、解像度変更、寸法変更のあと最終仕上げサイズになってから施す。アンシャープマスキングの後に解像度変更、寸法変更を行うと効果が変わったり、失われたりする場合がある。
◆ シャープネスの反対の機能としてボカすツールがあり、修正を加えたところの不自然さをなじませたり、モアレ、ジャギーなどを軽減することができる。
◆ シャープネスやボケをコントロールし、金属などの質感、奥行感を増すことができる。
◆ 網点による印刷は鮮鋭さが不足するため、USMに代表されるフィルタ処理を適切にしておく。
◆ Photoshop CS2では、スマートシャープネスという機能が搭載されているが、「精細」のチェックをむやみに使用すると画像の荒れが目立つ場合があるので、注意が必要である。


1.5.5  画像の合成

◆ 画像の必要な部分だけ取り出すことをトリミングまたはクロッピングという。写真を矩形に切りとるのは角版という。
◆ 複雑な合成では、いったんマスク版(レイヤの作成)を使用して作業する。濃度差や色域差などを利用してマスクの作成ができるが、微妙なところはピクセル単位で修正が必要となる。
◆ 合成処理とは複数の線画や画像を重ね合わせることで、重なったどちらかをイキにする「毛抜き合成」と、両方をイキにする「透かし合成」がある。図形では重ならないところだけをイキにするノックアウト(排他OR)もある。
◆ 画像や線画の境界が接して合成する「毛抜き合成」の場合には、印刷のわずかなずれで下地が出ないように、色分解版の境界部分を重ねるトラッピングが行われる。画像同士の合成では、普通境界をなじませるためアンチエイリアス機能を使う。

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