2.6 画像処理
デジタル画像の各種処理の機能と原理を理解する。
◆ 画像データが数値情報として表現されるため、数値の演算処理によって画像を加工することができ、画像処理の自由度が格段に上がった。
◆ 画像処理には、自動処理するものと、画像を見ながら対話的に操作するマニピュレーションとがある。
2.6.1 画像処理の理論
◆ 画像は2次元に明るさや色の分布した情報である。画像を画素という十分に微小な領域ごとに標本化し、濃淡を量子化することで、視覚的品質を損なうことなくデジタル化できる。
◆ 画像処理とは、画素のデータをコンピュータで演算するアルゴリズムの問題、あるいは手法であり、アルゴリズムを蓄積することで次第に高度な処理が可能となる。
◆ 画素ごとの独立した濃度データを演算して、濃度分布の平均化や、回転、移動、変形などの座標変換(アフィン変換)、複数の画像を演算する。
◆ 各種フィルタのように近傍画素も含めた2次微分など空間的演算を行う処理がある。
2.6.1.1 デジタル化の効用
◆ 従来、人間が画像の状態を把握する際に目で抽出していたシャープさ、コントラスト、明るさ・暗さなどの画像の特質を、画像データから演算処理で抽出することができる。
◆ 画像の特質を表すデータに濃度ヒストグラムがある。これは、画像の中の濃度の分布を集計したもので、これにより画像の濃度特性(明暗等)色相の偏りが把握できる。
◆ 画像の特質を表す他のデータに、空間周波数がある。これは濃淡の変化の仕方を抽出したもので、高い空間周波数成分が多いと鮮鋭な画像、少ないとぼやけた画像になる。
◆ これらの画像の特質を表す要素をパラメータとして、コンピュータ上で画像データをさまざまに自動処理することができる。
◆ 例えば、画像の内容(顔や風景)や露光・ピントが適正かの判断ができる。スキャナや画像最適化ソフト等のオートセットアップやAIセットアップあるいはオートUSM処理がこの手法を利用している。
◆ 従来は、カメラ撮影やレタッチという形で、手作業で行っていた画像の修整や変更が、コンピュータで一元的に処理できるようになるとともに、いままで分業下で専門家のスキルとなっていたものが、色変換ソフトウェアに反映されている。
2.6.1.2 ガンマ補正
◆ 画像のガンマ補正は、ガンマ曲線つまり入出力の関係を変化させて、画像の濃淡を修正する方法で、画像の濃度の変化の仕方を変えることによって、明るさ、調子、色のバランスなどを調整できる。
◆ 元来ガンマ値は、感材のコントラストの強さをグラフの傾斜のtan(タンジェント)で示す数値で、写真感材への露光量を増すにしたがって、どのような濃度変化があるかを知る指標であった。
◆ 写真感材のガンマは、現像時間を変えて操作をした。コンピュータ上では、ガンマ補正をテーブル変換処理として自由に行えるようにした。
◆ 画像の入力から出力までの全体を通して、忠実に階調を表現するためには、使用する機器に合わせて、ガンマ補正することが必要になる。
◆ 画像を扱う装置はそれぞれ固有のガンマ特性がある。一般にハイエンドスキャナでは人間の特性に合わせてレンジを対数圧縮している。普及タイプのスキャナではCRTで美しく映るようにあらかじめガンマの逆補正RGB信号を作るものもある。
◆ WindowsとMacではモニタのガンマの基準が異なっていて、コントラストが高めなのはWindowsである。CMSのモニタプロファイルもそれぞれのガンマ設定があるので、重複した使用には気をつける。
2.6.1.3 ヒストグラム
◆ 濃度域の最小から最大を軸として、サンプリングされた画素の数を棒グラフ上に示したのが濃度ヒストグラムである。
◆ 濃度ヒストグラムが平坦な画像は明部・中間部・暗部がそれぞれ等しい面積となり、明部から暗部までの濃度分布が一様な画像である。
◆ 対象物が把握し難い画像では、ヒストグラム平坦化でわかりやすくなることがある。
◆ 自動でヒストグラムの平均化をするときには、画像中にベタや白地など人工的な要素がないことを確認しないと、不自然な結果となる。
◆ ヒストグラムを解析してAIセットアップなどの自動設定が行われる。
◆ RGBもしくはCMYK(Bk) などでは、個々のチャンネルを他のチャンネルと比較することで色かぶりやグレーバランスなどを確認したり補正したりすることができる。
2.6.1.4 フィルタ処理
◆ フィルタ処理とは、画像データを構成する個々の画素に、周辺の画素との間で演算を行って、画像に特殊効果を与えることを指す。
◆ ぼかしは近傍の画素の平均濃度値を出力する。平均化に方向性をもたせると、一定方向に動いたようなぼかし効果が出る。例えば方向性を円状に制御すれば、放射状のぼかしとなる。
◆ シャープネスを増すには近傍の画素の差を強調する。どれだけの範囲で差を見つけるか、どれだけの濃度差から強調をはじめるか、などをパラメータ指定することで、適切な強さにコントロールする。
◆ 上記の組み合わせにより、キズやゴミのように極端な異物を発見して、その部分だけボカすとか、輪郭以外をボカす、輪郭のみシャープネスをかける、などのツールを作ることができる。また、ブラシなどにこういったフィルタ機能をリンクさせ、画像の任意のところに任意の画像処理をさせるツールが発達した。
◆ 極端な画像処理をすると、写真を描画風にしたり、別の素材に変えるようなクリエイティブなことができる。クリエイティブツールとしてのフィルタは多く登場している。
◆ モザイク処理は、一定数の画素をブロックにまとめ、1ブロック内のすべての画素の濃度を、ブロック内の画素の平均濃度に置き換える処理である。
◆ ポスタリゼーションとは、画像の階調数を数段階に減少させ、なだらかな濃淡をなくした平板な画像にする処理である。
2.6.1.5 2値化
◆ 2値化とは、濃淡のある画像を、白と黒だけで中間のグレーの階調のない2値画像(1bit)に変換する処理である。
◆ 一定の濃度を基準濃度に指定して、基準より高濃度の画素は黒に、基準より低濃度の画素は白に変換する。多値画係は、ある閾値(しきいち、いきち)を基準に2値化その他の処理を行う。
◆ スキャナからの画像入力時に、適切な閾値を設定すると、原稿上の不要なゴミなどを除外して入力することができる。
◆ CTPのワークフローで使われることのある1bitTIFFは、2値化したデータである。
2.6.1.6 ベクトル化
◆ スキャナなどで取り込んだTIFFやPICTのビットマップイメージは、トレースソフトでベクトルデータへ変換することができる。いったん変換すると、Illustratorなどで編集/修正し、DTPで使用できる。
◆ ビットマップイメージをベクトル変換する場合に、各要素のアウトラインをトレースし、そのアウトラインを白・黒の色で塗りつぶして2値画像にするものと、各ラインの中心を抽出し、1ストロークのパスを作り出す「中心線」変換法と、両変換法の特長を合わせて、塗りつぶしエリアはすべてアウトライン変換し、特定の幅をもつラインはすべて「中心線」に変換するものがある。
◆ ビットマップのトレース精度は、細部を正確な点に至るまでそのまま保持したい場合には高精度に設定し、ギザギザを減らしたい場合には低精度にする。高精度に設定した場合には、より短い線分に分割され、多くのアンカーポイントが作り出され、大きいファイルとなり、トラブルのもとになる。
2.6.2 画像のマニピュレーション
◆ PCでは、従来レタッチャが手作業で行っていた画像の局部的な修正や、ダイトランスファーなどのモンタージュも、画像データの特性を利用してソフトウェアによって処理できる。
2.6.2.1 画像加工のツール
◆ ブラシをかけたような効果を与える処理では、ブラシの大きさ、形、色、濃度、透明/不透明を指定して、ブラシの効果を変更できる。
◆ 画像の一部を切り取り、必要部分のみを残す処理では、加工に使用する部分以外を落とすために、マスクを作成する。自動/半自動でマスクを作るとか、マスクの再利用やマスクの境界のなじませ方などを便利にするツールが作られている。
◆ 部分的画像の修正には、画像のある部分の画素データをコピーしたい箇所に複写することが有効である。
◆ マスクの作成方法には、特定の色の範囲をマスクにしたり、マスクする対象物と背景との濃度差を利用して自動的に作成する方法と、手動で境界をなぞったりブラシで塗りつぶして指定する方法がある。
2.6.2.2 合成
◆ ある画像に対して別の画像を合成する処理は、下地の画像の上に合成画像を重ね合わせる埋め込み合成と、上に載せる画像を透かして下地の画像の上に合成する透かし合成とがある。
◆ 透かし合成は、上に載せる画像と下地の画像の各画素のグレー値の間で、透かす割合を指定して演算を行い、合成後の濃度を決定する。
◆ 合成は、従来の手作業では継目をわからなくするのが非常に難しいとされていた処理であるが、画像処理では、専門家でなくても高い作業精度が得られる。
◆ 従来は手先の器用さが要求された画像の加工作業が、DTPでは、専門技能を不要にしたことから、デザイナなどが発想を自由に展開するのを可能にしている。
◆ Adobe CS2等では、テキストやグラフィックに対して、ドロップシャドウや境界のぼかしといった透明効果を適用、編集することができる。
2.6.3 データ圧縮
◆ コンピュータで扱うファイルは、テキストとバイナリに大別できるが、テキストファイルを圧縮するとバイナリになる。
◆ データ圧縮したファイルは、それ自身がコンピュータの実行形式になっていて、自分で伸長(解凍ともいう)するものと、専用の圧縮/伸長ユーティリティを必要とするものとがある。
2.6.3.1 ロスレス圧縮
◆ プログラムや文書ファイルには、完全に復元できるランレングス圧縮などのロスレス圧縮が使われる。
◆ ランレングス圧縮は、同一値が連続するところにおいて、出現頻度の値に置き換えてデータ量を減らす。LZ法は、出現頻度の高いデータほど小さい値に置き換えることで、圧縮を行っている。
◆ 拡張子が.ZIPや.LZH、.SEAなどのファイルはロスレス圧縮である。
2.6.3.2 ノンロスレス圧縮
◆ データ量が大きくなりがちな画像ファイルや動画ファイルは、完全に元の画質には復元できないロスあり圧縮が使われることが多い。
◆ JPEG圧縮は、Joint Photographic Experts Groupが規格化して一般化した方法である。画像品質的に見てあまり影響のない均一なエリアの情報差を無視するようにプログラムされており、数十分の一にまでデータを圧縮できる。
◆ DTPで標準的なファイルフォーマットであるPostScriptもJPEG圧縮をサポートしており、PostScriptレーザプリンタへの圧縮画像転送にはJPEGが使用される。
◆ JPEGは離散コサイン変換(DCT)方式を圧縮に利用していて、圧縮率は用途に応じていくつかの段階から選択できる。
◆ 圧縮率を高めると特有のノイズが出たりモザイク状になり、漢字の縦横のストロークのように、細かい点や線で構成される絵柄が画像中に多く含まれているものでは圧縮率を上げられない。
◆ 非可逆のノンロスレス圧縮では、JPEG以外にフラクタルやニューロベクトルなど新しいアルゴリズムも種々開発されている。
◆ JPEGの圧縮率や品質を改善するために、ウェーブレット変換を使う新たな規格として、JPEG2000がある。従来のJPEGよりも高圧縮、高品質な画像圧縮が行えるのが特徴である。
◆ JPEG圧縮では画像表示を行う際画像の上から1ラインずつ順番に表示され全体が表示されるまで時間がかかるが、プログレッシブJPEGは、初めは全体を粗く表示して次第に細密にしていく方式である。