インターネットに魂を吹き込みたい
人がガイドする優しいサイト「All About Japan」


知りたい情報を手軽に探せるのがインターネットならではの利点。でも、検索サイトにキーワードを入れると、何万、何十万というサイトがヒットすることもあり、本当に欲しい情報にたどりつくまで、延々、勘に頼りながらクリックしていかなければならない。「これだ!」というサイトにたどりつければいいものの、時間をかけたわりには結局見つからなかった…という苦い思いを味わったことは誰でもあるのではないだろうか。
そういったロボット型の検索サイトとは対照的な「ヒューマン型」のサイト「All About Japan」は、専門家がガイドする情報サイト。2001年2月のオープンから丸3年、順調にユーザ数を伸ばし、月間のユニークユーザ数(重複を除いた実ユーザ数、クッキーと言われる技術を用いてインターネット視聴ソフトごとに判別)が約900万人(2003年10月実績)を超えるまでになった。その人気の秘密を探るため、同サイトを運営する株式会社リクルート・アバウトドットコム・ジャパン(東京都渋谷区、江幡哲也社長)を訪ねた。

米About,Inc.のスピードを買った


代表取締役社長・江幡哲也氏
「その道のプロが、あなたをガイド。」とうたっているように、All About Japanは、17カテゴリ、284の細かいテーマごとに、知識の深い専門家がついている。各サイトには、テーマごとに厳選してリンク集を整理した「おすすめINDEX」やガイドが執筆するオリジナル記事を「ガイド記事」として掲載している。ジャンルは、ビジネス、健康、グルメなど多岐にわたる。ユーザとしては、「ちょっと知的でちょっとリッチな、人生を愉しむ大人」を対象としており、30〜40代が中心だ。

リクルートで新規事業立ち上げに携わっていた江幡社長は、IT系の会員制情報提供サービス「キーマンズネット」やFAXをデータベースと連動して一斉に宛名付きで送信するサービス「FNX」など数々の事業を立ち上げた。そんな中、1996年、インターネットが産声を上げたころ、江幡氏の頭の中には「All About」のようなものを作ろうという構想がわいていた。

「インターネットのうねりは、何年かかるかわからないけれど、今でいう『電話』のようなものになっていくと思った。当時は、検索エンジンやロボットが中心だったけど、一般の人に普及していくときには、システマティックだと敬遠される。そのときに重要なのは『人』であり、ヒューマンタッチな部分。一般の人達がインターネットを使いやすいように、『人』がガイドとなるサイトを作りたいと思った」

いよいよ機が熟し、調査しているうちに、同じような構想で展開しているアメリカの「About.com」というサイトに出会う。About,Incの前身、Mining Co.com社が運営していた。提携の打診をすると「日本に進出する気がない」と一度は断られたものの、About,Inc.と社名を変えナスダック上場した直後、知人の紹介で、ニューヨークでトップと直接話す機会を得た。日本にもサービスを展開していきたいとの意思があり、議論を重ね、2000年6月ジョイントベンチャーとして「リクルート・アバウトドットコム・ジャパン」設立に至った。基本的には同じようなサービスを展開しているが、事業ノウハウやシステムを提供してもらい、「彼らからスピードを買った」のが大きなメリットだったと言う。

一人ひとりが主役の社会に

ガイドは、1テーマに1人で現在284人いる(2004年4月現在)。HPで公募しており、累計3000人以上の応募数があったというから、かなり倍率は高い。オンライン上で2回にわたる審査をするが、その間に本番に近いサイトを3週間かけて作ってもらう。これを最終審査して決定している。ガイドのうち80%はその仕事に関連のあるプロ、残りは趣味の延長の人だ。ガイドの規定業務は、月2〜3本の記事を書き、リンク集を作り、メールマガジンを発行すること。中には月20本くらいの記事をアップしているガイドもいる。

ガイドたちのスタンスとしては、このサイトで自分の専門性をアピールしたい、そのテーマで自分が成長したいといったことがあるが、「皆さん自分の持っている知識、経験を活用してもらって、ユーザの役に立ちたいというボランティア精神を持っていらっしゃると思います」と江幡氏は語る。

江幡氏自身、当サイトを作った動機に次のような気持ちがあったという。
「今までは、マスメディアを中心に、視聴率、部数競争のため、本当に生活を豊かにする情報ではなく、ブームを作ったり、面白おかしいものがはびこっていた。これだけ情報が発達しているのに、それを使っている人間が未熟で、日本をだめにしている…という個人的な思いがあった。現場で汗をかいている方々が前面に出る機会を作れば、真に役立つ情報が草の根で流通し、個人が尊重され、『一人ひとりが主役』という社会になるだろう」

そのようなチャンスを広げるには、インターネットの登場で個々人が情報発信できるようになったからといって、すぐに実現されるわけではない。All Aboutのように間に入る媒体が必要で、「メディアとして我々が役割を果たすことができれば…」と言う。

ユーザに溶け込む広告情報

インターネットの世界は、広告モデルが成り立たない…というジンクスを打ち破り、当サイトの収益は広告を軸としている。ただ、インターネット広告の代表とされる「バナー広告」はサブ的なものであり、メインは、「情報広告」である。

「インターネットのユーザがどんどん賢くなってくると、一方的にメッセージを送りつけても受け入れてもらえない。ユーザに役立つ情報をいかにマッチングしていくかが重要」と江幡氏。当サイトでは、自ら情報を求めてくるユーザに対して、コンテンツに溶け込むように広告情報を提供する。広告の形は、旧来型のインターネット広告とエディトリアル型の広告の二本柱から成る。

例えば、「住宅・インテリア」-「首都圏で家を買う」のガイドさんのサイトに行き、ガイドが作ったリンク集の中から「新築分譲マンション業者」を選んだとする。画面の上の方には[PR]と書いてある項目があり、クリックすると広告に飛ぶようになっていて、サイト情報を探しに来たユーザに関連のある広告が紹介される。

一方、エディトリアル型の広告は、ガイドが書いた「おすすめガイド記事」の並びに「by All About」というコーナーがあり、All Aboutが編集した記事形式の広告を載せている。記事を読みにきた人に、記事として広告をお知らせするという手法をとっており、広告色は前面に出ていない。さらに、一つの広告の入口は一つではなく、どのような人に訴求したいのかというシーンを広げることで、複数のテーマのページに掲載している。

「我々は、インターネットの中で唯一の大型編集メディア。インターネットの大型サイトは編集という概念がなく、ユーザはインターネットを使う人全て。でも、我々は、ターゲットを決めてコンテンツを作り、我々のメッセージを投げかけている。テーマを探している人にターゲットを絞り、しっかりと深いコミュニケーションができる」。そのような媒体であることが、広告主や代理店から安心感と信頼を得ているゆえんだ。現在、広告主は1500社を超える。

XML形式でサイトサマリーを外部に提供

3年間で蓄積された約25000件の記事。それらの情報を関連付けることによって、サイトからサイトへと横移動ができるような仕組みになっている。そのため、サイトとしては1つのHTMLだが、構造的にはリンク集や記事の一つひとつを全てDB化しており、バラバラの部品を再利用しやすい形にしている。

さらに、XML形式でサイトサマリーを外部に提供することもしている。All Aboutのページをよく見ると、全ページ、サイトの右上に「RSS」と書いてある。「RSS 」とは、RDF Site Summaryの略で、サイトの概要をメタデータとして簡潔に記述するXMLフォーマットのこと。ここをクリックすると、XMLフォーマットが出てきて、自由にコピーすることができる。インターネットの世界ではアメリカでは当たり前になりつつあるRSSだが、国内においては、一般サイトでは、All Aboutが先陣を切って2003年12月よりサービス開始。サマリー情報が多くのサイトに出ることによって、詳細を見るためにAll Aboutに来る人が増え、集客につながることを狙っている。

「インターネットの世界は、先進的にこのような取り組みを観察し、オピニオンリーダーになりたい、という人が多い。そのような人の心に火をつけるためにやってるんです」
江幡氏は目を輝かせた。

10年、100年続くサイトに…

All Aboutのガイドへの取材や講演依頼が殺到するようになり、2003年11月時点で累計1700件を超えている。今後は、個人が自分を売り込むことが必要な時代になってくることをにらみ、ガイド以外の人たちにもビジネスマッチングの場を提供していきたいと考えている。

「インターネットは道具でしかない。魂を吹き込むのは人間。利用者も人間。そこを発掘して、サポートしていくのが我々の仕事。今後も、地道にコンテンツを作っていき、クオリティの高い大きな情報源に仕上げたい。我々は、1個ずつ積み上げているので、他社が真似しようとしても、一足飛びにはいかないでしょう。10年、100年と続くベース作りをしていきたい」と息の長いメディアを目指す。

(文・写真 岡 千奈美/2004年3月)

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