環境保護、エコロジー、リサイクル、リユース…これらの言葉を聞かない日はない。「21世紀のキーワード」とも言えるだろう。物を作っては棄ててきた大量生産時代の限界に気づき、やっと、ビジネスとしても取り組まれるようになってきたところだ。
日本最大のオークション&ショッピングサイト「ビッダーズ」を運営している株式会社ディー・エヌ・エー(東京都渋谷区、代表取締役:南場智子)は、設立当初から「エコロジー、循環型社会の形成に貢献する」「新しい技術・媒体を駆使し、売り手と買い手の距離をぐっと縮める」の二本柱を事業ビジョンに掲げている。
「日本はアメリカと比べ、セカンダリーマーケット(二次流通)が遅れている。そこを疎かにすると、使い捨ての文化になってしまう。立ち上げ当初から、リサイクルやリユースを念頭に置いてきた」と同社の取締役・川田尚吾氏。
世の中のインフラになるサービスだと直感
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COOの川田尚吾氏 |
ディー・エヌ・エーは、コンサルティング会社のマッキンゼーに勤務していた南場智子氏(代表取締役)の「オークションサイトを立ち上げたい」との思いからスタート。同じチームで仕事をしていた川田氏も加わることに。
1999年、川田氏らはゼロからのサイト構築に着手することになった。そのころ、米国では「イーベイ」をはじめとするオークションサイトが活性化していたものの、日本ではオークションサイトというものがほとんどなかった。今でこそ、ネットオークションはインターネットの主要サービスの一つといえるほどメジャーになったが、その当時、果たして日本でビジネスとして成功するのかどうか皆目検討がつかない。また、ネットオークションを始めるにあたって、法的な問題やどのような仕組みがいいのか、どのようなサービスをしていくべきか等々、クリアしなければならない課題が山積みだった。
会社で寝泊りしながら、何度もシステムを書き直し、1999年11月29日、念願のサイトを立ち上げることに成功。
オークションサイト立ち上げにあたり、川田氏は、一体どんなものなのかを知るため、日本で展開している小さなオークションサイトを体験してみた。「実際にやってみると、自分の出品している物の値段や入札しているものの落札がいつも気になる。常にオークションをやってないとダメな体になってしまった(笑)。ある意味、中毒性をもったサービスだった」と振り返る。
「テレビや携帯電話も同じで、インフラになるサービスは、一度それを知ってしまったら、それなしの人生は思い出すことができないという不可逆性があるものなんです」。
そこで、ネットオークションは、「世の中のインフラになるサービスにちがいない!」と直感し、このビジネスに賭けてみようと腹を括ったと言う。
オークションとショッピングを融合
同社の展開しているサービスは、ビッダーズオークション、ビッダーズショッピング、ビッダーズECプラットフォーム、リサイクル情報サービス「おいくら」、メディア広告事業の5つである。
◆「ビッダーズ」オークション
個人、法人に関わらず、だれでも自由にモノの売買をできる場。個人会員は2003年9月現在200万人。法人ユーザーは約2万4000店舗である。常時出品数約90万品という多さ。
出品物は、ファッション関連(2、3回使ったけど着なくなった服など)、バッグ、デジカメ、子供服やおもちゃなどが多い。ペット(犬、猫、昆虫類、熱帯魚など)の出品もかなりある。
◆「クラブビッダーズ」
「オークションサイトだけではもったいない」という利用者の声によって2001年5月にスタートしたeコマースサービス。月額固定費を支払う会員には、サイトへの商品アップ、プロモーション、顧客からの質問、受注、決済、集客まで総合的にサポートする。会員は現在約2000社。ショッピングモールには、食品(地方の物産:讃岐うどん、京都のお菓子、洋菓子、魚介類、肉、ワインなど)、ファッション、ブランド、健康グッズ、家電など多彩な商品が並ぶ。
◆「おいくら」
リサイクルショップや質屋とユーザーをインターネットでつなぐ日本初のリサイクル情報サービス。全国約3000店が加盟しており、ネットオークションに参加するのが困難な人が、サイト上で近所のリサイクルショップを検索したり、不要品の見積もりや買取をしてもらえる。
オークションもリサイクルも「家の中で不要になったモノの処分」という共通項があり、それぞれに合ったサービスを選択できる。
数あるショッピングサイトの中でも、ビッダーズは「使いやすさに力を入れている」。ユーザーからのニーズがあれば、どんどん新しい機能を追加している。スピーディーに対応することで他のサイトとは差別化している。また、何といっても、オークションとショッピングがうまく融合しているのが特徴である。
ビッダーズでは、通常のオークション、ショッピングだけでなく、さまざまなイベントを企画している。
「小学館DIMEとの雑誌連動企画」として、放送作家小山薫堂氏の選んだこだわりの逸品をオークションする企画を今まで12回開催している。例えば、「世界的グラフィックデザイナー松永真さんに、あなたの名刺をデザインしてもらえる権利」=252,000円で落札。「演出家/映像作家・長嶺正俊氏があなたの『結婚式ビデオ』を作成」=116,000円で落札など。
ECプラットフォームでは、「アフガニスタン100万人の子供達を救え」をスローガンに、現地の子供達を救うのに必要とされている物資100万人分の購入を目指すチャリティーオークションが2002年に行われた。落札金額は、日本ユニセフ協会を通じて、アフガニスタンの子供達の支援活動のため、全額寄付した。
リアルの世界ではできない『売買の出会い』を
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活気あるオフィス |
「オークションもショッピングも、ネットを利用する方がずっと便利なものでさえも、物理世界で行われていることがまだまだ多い」と川田氏。
「インターネットオークションを知ってしまった人は、『ないと困るけど、それほどこだわりをもたないもの』が壊れたような場合、新しい物を買いに行くのではなく、オークションサイトを見るようになるんです。例えば、夜寝る前に本を読むためだけの電気スタンドが壊れたら、以前なら店に買いに行っていたけど、今はオークションサイトを見るんですよ」(川田氏)。
意外に時間と手間がかかるお中元やお歳暮選び…これも、ビッダーズのお中元特集などで選び、送りたい人の名前を書けば、瞬時に送ることができる。
「そういう便利さを知ってしまうと、二度と元に戻れなくなる。そのように、一つひとつ便利なものに人々は気づいていくはず。何かの拍子に、ネットの可能性に気づくと、その部分はネットの領域になっていく。今は、少しずつネット領域が広がっている途中…」。
「物の売買は、人と人の本質的なコミュニケーションで、太古の時代からある。売り手と買い手を効率的につなげる世界は、まだまだ広がっていくだろう」と川田氏。これからは、今以上に使いやすく、だれでも使えるハードルの低さを追求していきたいと言う。そのため、「必要な機能をどんどんつけていき、リアルの世界ではできない『売買の出会い』をネットを通じて広げていきたい」と考えている。
とはいえ、リアルの店舗とは競合するのではなく、共存していく姿勢だ。リアル店舗がすべてなくなることはない。場合によって使い分けたり、リアル店舗で見たものをネットで買ったり、リアル店舗で一度買ったものを2回目からはネットで買ったり…というようなことが増えてくるだろう。
「ネットで物を買うという新しいライフスタイルが、世の中全体に徐々に浸透してくるだろう。その中で、E-コマースの事業者として可能なかぎり、みんなが便利に暮らせるような、そしてみんながハッピーになれるようなサービスや機能を作っていきたい」と川田氏は力強く語る。
社名の「ディー・エヌ・エー(DeNA)」は、遺伝子のDNAとeCommerceのeを組み合わせたもので、「自らが発信者となって新しい世界観を世の中に広げたい」という思いからネーミングした。その名のとおり、DeNAは、新しいマーケット、新しい時代を切り開こうとしている。
(文・写真 岡 千奈美/2003年11月)
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