生活者の視点にたった報道を
市民記者が伝えるニュースサイト「JanJan」


インターネットが普及し、既存のマスメディアとは違った視点のニュースを流す新しい試みが世界各国で広がっている。そんな中、日本でも「市民の、市民による、市民のためのメディア」を目指し、日本インターネット新聞株式会社(東京都千代田区、竹内謙社長)が設立され、2003年2月より、市民記者が生活の現場からの声を伝えるニュースサイト「JanJan」を展開している。

すべての市民は記者!


代表取締役・竹内謙氏
創刊して約1年。「他人の著作権を侵害しない」「名誉毀損、人権侵害的な記事は書かない」などといった行動規範となる「市民記者コード」を守ることに同意すれば、年齢、国籍問わずだれでも記者になることができる。現在、1100人が登録。ほぼボランティアだ。同社は、「すべての市民は記者である」をモットーにしている。記事は1日十数本届き、政治、経済から世界や暮らしまで幅広いジャンルを扱っている。市民記者から記事が送信されると、同社の編集部スタッフが市民記者とやり取りしながら編集作業をし、原則署名入りで記事を載せる。全ての記事が無料で読め、サイト内には広告も付いていない。

「インターネットの新聞は、まだまだビジネスとしては成り立っていないんです。日本だけでなくアメリカでもヨーロッパでも同じ状況。でも、紙媒体からWeb媒体に切り替わっていくということは、時代の趨勢として避けられない。自分の考え方を多くの人に伝えることができるインターネットという革命的なツールが現れたので、それを利用したメディアが必ず優勢になってくる。われわれは、そういう時代にどう対応していくかを研究開発している段階。こういったことが次の時代を生み出す原動力になるでしょう」
同社の竹内氏は、JanJanを立ち上げた意気込みをこう語ってくれた。竹内氏は、元朝日新聞の記者で、都市問題・地球環境の専門記者を長年務めた。1993年より神奈川県鎌倉市長に転じ、在任中には情報を独占する閉鎖性を指摘し、市制記者クラブ制度を廃止した実績がある。2001年退任して翌年日本インターネット新聞社を設立。

韓国のインターネット新聞をヒントに

JanJanがヒントにしたサイトは韓国の「Oh my News」で、やはり市民記者制度を採用している。数あるインターネット新聞の中でも成功している例として、筆頭に挙げられるニュースサイトだ。2000年2月に創刊し、市民記者が2万5000人を超え、1日のサイト訪問数が250万人。2002年の韓国大統領選挙では、若者を選挙に駆り立て、ノ・ムヒョン大統領を勝利に導く原動力となるほどの影響力があった。大手新聞に匹敵するまでに成長し、ビジネスとしても成り立っている。

「日本が同じような状況になるかどうかは疑問がある。韓国と日本ではインターネットの土壌が違うし、国民性も違う。韓国人と比べて、日本人はあまり自分の考えを発言しない。これから日本が国際的にもしっかりとした役割を果たしていくためには、一人ひとりが発言する社会を作らないといけない。そのためにも、インターネットのメディアが必要なんです」。竹内氏は、インターネット新聞の登場が市民の発言する場として一役買うことを期待している。

インターネットニュースの交通整理役


 編集部のスタッフたち
竹内氏は、朝日新聞社にいたころから「今の新聞のままでいいのだろうか」ということを常に考えてきた。
「新聞、テレビを含めて今のマスコミは報道の役割を果たしているかどうか、今でも疑問を持っている。マスコミは、中央政界、中央官庁、中央の経済団体など、権力側の情報に依拠していて、一般の人々が暮らしている生活側からの視点が足りない。生活者の視点にたってこそ報道であり、権力者の代弁をするのが報道ではない」と強調する。

近代新聞ができて130年、テレビの登場から50年経つが、いずれもプロの記者が取材し報道してきた。しかし、一般の人でも、多くの人々に知らせたいと思うものがあれば、それは全て「ニュース」だと竹内氏は言う。
「なぜそれが伝えられなかったかというと、今までは、大きな輪転機、販売組織、大きな放送設備などをもっていなければニュースを伝えられなかったからだ。そのためには大きな資金も必要だし、出資をするスポンサーが必要だった。でも、インターネットという便利なツールが普及して、だれでも情報を送ることが可能になり、生活者からのニュースを出していくには都合のいい時代になった」
とはいえ、個人で発信しようと思っても広がりに限界がある。「JanJanのようなメディアを利用すれば、より広く伝えられる可能性がある」。JanJanは、そういう存在になろうというスタンスである。

インターネット時代、溢れるように情報が流れているが、一つひとつの情報について、どれだけ信用できる情報なのか、という疑問もある。「すばらしい情報をどうやって見極めるかが、今のインターネット利用の難しい点」。そこで、JANJANは、中間媒体として「この情報は大事だと思いますよ」という交通整理の役目を果たせればという。

マスメディアを補完するメディアとして

1日1万人が訪問するサイトになったが、「1年以内には今の10倍にしたい」と言う。そして、サイトを一人前に育て、社会的に認知されるようになれば、広告での収入も考えている。

JanJanは、今の新聞に対抗するものを作ること考えているわけではない。あくまで、「今のマスメディアに足りない部分、すなわち庶民からの視点を補っていこう」と考えている。今の新聞には、政局ニュースが多く、国民の暮らしと直結する政策ニュースが足りない。

「例えば、年金の改革について、『自民党が、民主党がこう言っています…』というニュースは流れるけど、年金の利用者はわれわれ国民。一般の人たちの中から、年金はこういうふうにすべきだという意見が出てこなければ年金改革はできないですよ」

JanJanがどのようなメディアに成長するのかは、ある意味、インターネットメディアの方向性、位置付けの指標ともいえるのではないだろうか。

(文・写真 岡 千奈美/2004年2月)

(C)Japan Association of Graphic Arts Technology
JAGATのトップへ