起業願望をもつ女性が増えているが、26歳の若さでマーケティング会社のトレンダーズ株式会社(本社:東京都渋谷区)を設立した経沢香保子氏は、マスコミにもたびたび登場するなど注目の存在。「女性起業塾」の主宰者でもある経沢氏にビジネス戦略や経営手法、今後の夢を伺った。
常に自分の成長を感じる環境にいたい
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代表取締役・経沢香保子氏 |
「起業して、毎日が楽しいです」。キラキラした笑顔がまぶしい。トレンダーズ(株)は、2000年4月に設立。スタッフは女性のみ8人の少数精鋭。
「トレンダーズは、こちらから無理に営業しないスタイルをとっているので、ホスピタリティをもって迅速な対応+気のきいた対応ができることが、お客さんのロイヤルティ向上につながるんです。その微妙なニュアンスの部分は女性の方がうまく伝わりやすい。女の子の方が真面目ですしね(笑)」。
経沢氏は、大学卒業後に就職したリクルートでの1年目、飛び込みの営業で1週間に550枚の名刺を集めたというエピソードをもつ。始発で会社に行き、営業リストを作り、昼は営業、夜は終電まで企画書作り…。ずば抜けた営業力、人一倍の努力の賜物だ。
2年目、移動体通信のアウトソーシング事業を手がける会社にヘッドハンティングされ転職。その後、楽天に移り、楽天市場の出店者向けの教育を行う『楽天大学』をゼロから構築した。「常に自分が成長を感じる環境にいられることが幸せなタイプなんです」と言うように、新天地を追い求めてきた。
サラリーマン生活にピリオドを打ち、MBA取得のため留学を考えていた。そんなときに出会ったのが、「渋谷ビットバレー」と呼ばれるITベンチャーの集まりだった。自分と同年代の社長たちと話をし、目からウロコが落ちる思いがしたという。
「私にとって、社長は雲の上の存在だった。社員を雇用して新しいサービスを生み出し、経済の循環の中心にいる人だから、自分とは違う人種だと思っていた。でも、同年代の人たちがやっているのを見て、『私にもできるかもしれない』って思ったんです」。
こうして、起業する道があることに気づいた経沢氏は、留学資金の1000万円を会社の資本金にあててトレンダーズをスタートさせた。
トレンドリーダーのネットワーク作り
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少数精鋭のスタッフ陣 |
事業としてまず最初に目をつけたのが、F1世代(20〜34歳女性:マーケットで最も購買決定権を握ると言われる層)を使ったマーケティング。その中でも、世の中のトレンドを作り出しているクチコミの元になるオピニオンリーダー的な女性たちを「トレンダーズメンバー」と名づけて組織化し、彼女たちのアイデアや意見を企業の商品開発や新規事業の立案に活用するサービスである。
経沢氏は、会社設立前、コンサルティングとして商品に関するレポートをよく頼まれていた。商品を購入するのは女性が多いのに、物を製造している人はほとんどが男性なので、作っている側としては説得力がほしいわけだ。
今、自分に頼まれているコンサルティング的なことをパッケージ化できないかと考え、世の中に敏感で、かつビジネスがわかる複数の女性が意見を出す方が、1人の意見より信憑性が高いので、そういう仕組み作りをしてマーケティングを事業化しようと思った。といっても、マーケティング会社はたくさんあり、数万人レベルで会員を集められる資本力と強力なシステムを持っている会社には対抗できない。
「私自身が持っているものは、周囲にいる優秀な女性のネットワークなので、それを手作りでネットワーキングして、人数が少なくてもレベルが高ければ、1万人の中途半端な意見より役に立つのではないかなと思ったのが、F1のトレンドリーダーに限った理由です」
トレンドリーダーたちを集めるにあたっては、まずは、経沢氏自身の高校時代の友人や、元の会社の同僚たちに協力のお願いをし、その人たちから紹介してもらう、というアナログな作業から始まった。また、雑誌に載っている人にアプローチしたりというスカウト作業なども試みた。最初100人集め、そこから200人になり、300人になり、今ではネットワークは約700人にまで広がった。トレンドリーダーたちは、第一線で活躍し、周囲への影響力が強く商品理解に優れる女性たちばかりで、他社に比べ、質が高く、値段も安くして、競争力を高めた。
実際のサービスとしては、トレンドリーダーたちへのアンケート調査、グループインタビュー、商品開発支援、ミステリー・ショッピング(覆面調査員が、一般客と同じように買い物や食事をし、サービスなどを評価する手法で、アメリカで多く利用されている市場リサーチ方法)などによるマーケティングである。
企業サイドからは、アイデア系の仕事を求められることが多い。例えば、「テクノロジーを使って何でもできるとしたら、どんなことを実現したいか」、「ロボットが何でもできるとしたら、どんなロボットでどんなことができるのがいいか」などの質問に、絵を描いてアイデアを50出すなど、クリエイティブな意見を要求される。半年間、毎月レポーティングしてほしいという会社や、あるプロジェクトを単発で手伝ってほしいなど、さまざまな形で請け負っている。化粧品、自動車(軽自動車)、電気メーカーなどからの依頼が多く、HPを見たり記事を見て連絡をしてくるところが多いという。
今のお客様を大切に
後発サービスとして、主に中小企業を対象に格安でプレスリリースの作成から配信までを請け負うプレスリリース代行業を2001年、スタートさせた。
創業当初、自社をマスコミに露出するため、戦略的に取材依頼の資料をマスコミにFAXし、1年で100件以上の取材を受けた。「あまりにもマスコミによく載るので、周りの人が、『トレンダーズさんは何でそんなによく載るんですか』と聞きにくるようになったんです。それで、これはもしかしたらビジネスになるんじゃないか…と思いついたんです」。
マーケティングにしても、プレスリリース代行業にしても、すべて、自分自身の経験からの発想をビジネスに結びつけるという無理のない戦略がトレンダーズの強みなのだろう。
「マスコミに載るにはコツがある。話題性、ストーリー性、コンテンツ自体の内容、活用法などいろいろノウハウがあるのだけど、あとは、どういう形でマスコミにリリースするか。ポイントは2つで、リリースの書き方の工夫と、持っているリストの精度の高さ。送り先の担当者の名前も入っていると机の上に置いてもらえるので、載せてもらえる確率が高いのです」
トレンダーズでは、このように、新しいアイデアを求めたり新しいサービスをヒットさせたいと思っている企業の商品・サービスが売れるための一環したお手伝いを提供している。顧客からの反応は非常に良く、リピーターも多い。
「これからも、顧客数を広げていく気はあまりないんです。新規を獲得するためにかけるエネルギーや精神的ストレスを今のお客様にかけた方が、いいおつきあいができるし、会社内にもサービスのノウハウが蓄積されます。さらに、その会社のことをよく知るようになれば提案できることが増えるし、何度か使ってもらうと口コミでお客様も自然と増えてくる。『つきあいの深さ』って、けっこう忘れがちなことだけど大切なんです」。
経沢氏自身、飛び込み営業に携わった経験から、1社あたりの頻度を高め、自社に関心を持ってもらうというスタンスがトレンダーズらしいと判断した。約400社の顧客を大切にしていきたいと考えている。
女の子に夢を与えたい!
経営者というポジションに立つことは、決して一筋縄ではいかない。「経営者の自分の人格とプライベートの人格は別だとわかっておかないと、全て受け止めて傷ついてしまったこともあった。今は、わりきっています。私は、本音でやっていきたい。素直でいたいと思ってます」。経営者としての悩みは、年上の経営者たちに相談することで解消してきた。彼等からは、ヒューマニティの部分を学んだと言う。
「仕事は慎重に、プライベートでは人間の幅を広げたい」と経沢氏。「トレンダーズは、社会的な影響力のある、人の役に立つ会社にしたい。『F1のマーケティングといえばトレンダーズ』『PR代行ならトレンダーズ』『ネイルの派遣ならトレンダーズ』となるようにそれぞれのサービスをどれも真剣にやりたいし、似たようなサービスをする会社があとに続いてきてもお客様から選ばれるサービスでありたい。クオリティーの面で、『トレンダーズなら間違いない』と安心して仕事を任せてくれるような会社にしたい」と力強く語る。
「私は、自分の理想の人生を歩みたい、そして人の役に立ちたいという気持ちが強いんです。その一つとして、自分の会社が不可欠。人間的にも成長できるし、私たちが蒔いた種で、トレンダーズを経由していった人たちに幸せを広げたい。優秀な女性たちは、会社の中でいかにキャリアをアップしていくか、身を削って競争しているし、私にもそういう時期があった。『こんな生き方もあるんだ』というサンプルのようになれたら嬉しいなと思います。今までとは違う経営者のスタイルを作っていって、女の子に夢を与えたいですね」。彼女の、自分を信じて真っ直ぐに人生を歩む姿は、私達女性に勇気を与えてくれる。
(文・写真 岡 千奈美/2003年12月)
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