CTPで促進する印刷のオートメーション
−米国のCTP導入企業レポート−
CTP(コンピュータtoプレート)の米国での利用状況を視察するために,JAGATでは1997年11月30日〜12月8日,訪米し大手,中堅の印刷会社6社,製版会社2社(内1社はCTP導入の準備中であった)を訪問視察した。なお,今回の視察ツアーは,日本印刷産業連合会のCTP調査委員会と合同での視察実施となった。
日米の印刷市場の違い
端的にいうと日米の印刷会社の違いは,日本の「製版+印刷」業に対して,米国は「刷版+印刷」業といえる。米国は刷版工程から始まるので,顧客は製版フィルムや製版済みデータを持ち込んで印刷してもらうことになる。刷版工程から始まるので,製版の仕事である「直し」はしない。これに対して日本は製版(組版と製版)から請け負うので,直しは印刷会社の仕事となる。
つまり,DTPの成熟している米国では,従来から顧客が広告代理店などに対して印刷物を発注し,クライアントのOKが得られると出力ショップなどで単ページごとに網フィルム出力して印刷会社に持ち込む。印刷会社は殖版機や手焼きで刷版製版するという流れが出来上がっていた。この違いによって,米国の印刷会社ではCTPを印刷への受け口というポジションに徹底できる。顧客にとっても,今までのように出力センターなどで製版フィルムを出力して印刷会社に持ち込む必要はなくなり,完成したページデータを入稿すればよく,時間とコストが削減できることになる。
CTP導入の動機についてはQuad/Graphics社サセックス工場(以下,工場名を略す)では「フィルム工程の削減,デジタルワークフローの完成,生産性の向上とそれによる人員削減,印刷でのエラーの削減,スループットの向上」などを挙げている。World Color社シカゴ工場(以下,工場名を略す)の動機は,競合との競争に勝つため,省人化,高品質化と一定品質の維持,客の要望などで,現在すべてカタログ(メールオーダー,ファッションなど)はCTPで作成している。
経営者にとってのCTP導入の有効性について中堅印刷会社のArgus社では,印刷の自動化装置(自動見当装置など)とCTPの組み合わせで,印刷前準備時間が25〜30%削減できたこと,CTPによりゴミ付きなども減るので用紙のロスも少なくなったことを挙げていた。フィルムが節約できた分,プレート代が高額になるなどはあるが,印刷機の自動化まで含めると全体としては25%と大きなコストダウンを実現している。
また製版会社のImage Systems社では納期短縮(入稿〜納品まで3日が24時間にできる),印刷前準備時間の短縮,品質向上,管理の容易さなどを挙げていた。
CTP導入の最大の効果はオート化による省人化
CTPは製版工程と刷版工程の工程統合である。さらにCTP化を実現するためには,フルデジタル化が前提になる。そしてフルデジタル化されたワークフローで重要なのはオートメーションであり,これによる人員の削減である。今回の訪問企業では刷版部門を含むプリプレス工程の人員を平均で20%ほど削減することに成功していた。
国内でも小倉のマツモトのように70人を50人に削減し,年間1億円の経費削減を行った印刷会社が出現しているが,DTPはデザイン〜製版の工程統合を達成したが,CTPは製版〜刷版の工程統合を実現できる。
Donnelley社マトーン工場(以下,工場名を略す)のプリプレス部門の人員は,96年42人,97年42人と変わらないが,仕事量は対前年12%増加しており年間6万版をCTP出力している。
Quad/Graphics社は,CTP導入前の230〜240人が,導入後200人と,約20%の削減になっており,World Color社の人員数は導入前の56人が,導入後48〜49人になっていて,版数生産量は2%増加している。
Argus社はCTP導入前21〜25人が導入後は18人になり,CTP化によって3人,全社では5人削減でき,Straus社の刷版部門はCTP導入前の6人が導入後3人に半減した。
なお,東部での平均年収は従業員全体では3〜4万ドル,印刷オペレータが4.5万ドルである。
製版会社のCTPへの取り組み
米国の製版会社はDTPの普及とともに経営的に厳しい状況にある。今回の訪問では2社の製版会社が生き残りの一つの姿を見せてくれた。
Image Systems社では,6年間続けていたデジタル印刷をやめて,もっと本格的に紙器加工設備への投資を行っている。1991年に北米で初めてハイデルGTO-DIを導入して印刷へ参入したが,その後は本格的なオフセット印刷機を導入し,さらに今年は紙器パッケージ分野へ取り組み始めた。主要顧客はデパート,ビール会社,出版社,広告代理店であるが,これらの顧客自身でDTP制作を行ってくるケース,顧客からデザインプロダクションに一部,または全部が外注されるケースなどがあるが,いずれにしても米国の顧客は安く,速くを求めているという。
現在のCTP化率99%で,売り上げ構成はプリプレス40%,商業印刷60%,紙器が少し(今年,立上げたばかり)である。ヘキサクローム(6色プロセス)にも取り組んでおり,レタッチルームは3台のBarcoモニタを暗い部屋に設置して作業するなど,製版会社らしい気の使い方を感じる。勤務体制は日曜日午後11時〜土曜日午後3時の8時間3交代制と,まさにサービス業そのものである。
また,シカゴの製版会社ASG Sherman社ではCTPの導入を1年半後に計画しており,デジタルカメラによる撮影部門と本格的なオフセット印刷(A全判スピードマスター5色機)への投資を行っている。同社は過去3年間で色分解の仕事が15%減少している。分解の仕事そのものも粗データを外部のDTPデザイナーに渡して,編集データを受け取って出力するだけになっており,付加価値が少なくなるばかりだったという。
顧客とコストダウン効果をシェアする
Quad/Graphics社ではCTP化によって,顧客はフィルム入稿よりもデータ入稿のほうが, 12〜48時間(1〜4日)入稿を遅らすことが可能になり,製版出力〜刷版コストが25%削減できた。これはフィルム出力が不要なためで,従来は顧客はページ単位の網フィルムを出力して持ち込んでいた。しかし,データ持ち込みになると,このコストが削減できることになる。また,印刷用紙の無駄(予備率)なコストを減少させることができる。
Argus社では入稿から校正提出までの時間がアナログ工程の手集版では3〜4日要していたが,デジタル化により24〜36時間で可能になったという。
CTP化によるコストダウン効果を印刷会社と顧客がシェアしていることが,米国におけるCTP成功のひとつの要点であると感じる。
フィルム入稿はコピードットスキャン
Donnelley社では入稿原稿のデジタル化率は雑誌の本文ページやカタログでは100%であるが,広告ページは10%程度で,残りはフィルム入稿(75%はポジ網,25%はネガ網)にとどまっている。フィルム入稿への対応はコピードットスキャナでスキャニングしてデジタルデータ化している。CREOのルネッサンスはA4判4版の網フィルムを4800dpiで3分で入力でき,同工場の処理点数は550スキャン(4色)/月を,すべてコピードット(線画撮り)で使用している。デスクリーニング(網点ぼかし撮り)はサイテックスのモノスキャンを用いてグラビアにのみ使用している。
Quad/Graphics社の全社のCTP化率は約65%であるが,サセックス工場のCTP化率は約50%で,全社からみると低い方になる。理由は出版物の多くは広告ページがフィルム入稿になるためで,CTP導入への課題では,雑誌の広告ページがフィルム入稿なのでCTP化はやっかいであるという。雑誌の広告ページがフィルム入稿なのは,広告制作プロダクションと出版社との取引き慣習に起因し,網フィルムが最終成果物の現状では,広告ページの早急なデジタル化は期待薄であるようだ。
一方で,Argus社ではコピードットスキャナは大きなメモリなどが必要なので導入するつもりはないとしていた。
入稿データは顧客が直す
米国の印刷会社は基本的には刷版工程以降をもつので,顧客が持ち込んだデータの修正はしない。Argus社では入稿データのミスは客の負担で直してもらうが,客にとってもプリプレスで直しておかないと,印刷でミスが発見され,刷り直したときのほうが客の負担が大きいことを理解しているという。レタッチする場合は,料金は別にもらっている。
Donnelley社では,入稿してきた単ページデータの80〜95%はデジタルであり,原稿の65%は雑誌,35%はカタログで,エラーや内容の直しなどはすべて客が行う。デジタルデータで入稿する原稿(仕上がった単ページデータ)はサイテックス形式45%,デスクトップファイル(QuarkXPressが大半)50%,TIFF-IT形式5%で,PostScriptデータはフライトチェックで点検を行う。
Quad/Graphics社は,入稿したサイテックスLW,CTファイルはPostScriptに変換して, Quarkデータとしてページ面付けする。ここでも客が持ち込んだデータは客が直す流れになっている。
校正(青焼き,色校正)の変化
中堅印刷会社のJ.D.Lucas社は,ほとんどの顧客がケミカルプルーフ(クロマリンやウオータープルーフ)を理解しており,デジタルプルーフも理解してくれる。特に,顧客に対するCTP化への説明は行っていないが,デジタルプルーフは従来の青焼きのように文字や画像を高解像度で再現できず,文字がボケたように見えてしまう。そこで,客にそのことだけは説明して納得してもらわなくてはならない。プレートと全く同じになる保証がないことを説明して,内容のみをチェックしてもらっているが,この点は問題であるという。
2つに機能を分けて校正出力
Donnelley社では,面付け確認用のカラープルーフにはコダック1000PSインキジェットプリンタ,ローエンドの単ページ用にはイメーション(3M)レインボー,正確な色のチェックにはコダックのアプルーバルを,客の要望に応じて出力し,印刷原稿としてもこれらのカラー出力物を用いる。
Quad/Graphics社のカラープルーフは,網点出力できるアプルーバル出力はA4判の売り値が50ドルである。網点出力できないIRISインキジェットプリンタ出力の売り値は25ドルと半額になっている。またキヤノン700PS(モノクロプリンタ)は従来の青焼きの代替えとして使われている。
平台校正機はないが,印刷立会いがある米国
色校正の問題については,日本のほうが合理的ともいえる。米国では40〜50%の割合で,顧客による印刷の刷り出し立会いが行われており,今回の訪問先でもカタログ印刷がほぼ100%のWorld Color社では立会いが80%もあり,5%のImage Systems社は立会いの少なさを自慢していた。顧客の要望によってはアワーコストの高いオフ輪が週に1〜2回は止まるということで,日本の顧客のありがたさを感じる。
この違いの最大の要因は,カラープルーフ(校正刷り)の重みの違いである。色校正に対する米国の「顧客OK」は日本の「責了(校了)」よりも軽い。米国には平台校正機はなく,昔からケミカルプルーフの利用が普通であった理由は,最終決定は刷り出し立会いで,という前提で成り立っていた面がある。しかし,これがCTP化には非常に有利に働いていることも事実である。
Quad/Graphics社は印刷への顧客の立会いは60%あり,刷り出しのOK判断はカラープルーフ基準であるが,顧客が持ち込んだ色調整されていないカラープリント出力が原稿になることもある。しかしこの時の顧客立会いで,客の都合による直しが入れば,料金を負担してもらうようにしているという。
World Color社は,顧客はデジタルデータとともに色見本としてイメーション(3M)レインボー,DuPontウオータープルーフなどカラーマッチングされていないものをデータと一緒に持ち込むが,多くは印刷立会いするので,プルーフの品質が悪くても問題ないという。本機とカラーマッチされたカラーアプルーバルが2台あり,顧客にはこれによる出力を勧めているので,30%はアプルーバル出力して客に戻す。そして80%の仕事は客が印刷の立会いに来て,最終的な色が決まる。社内の印刷基準濃度は決まっており,カラーバーはインキキー位置に合せた自社製を80%の印刷物に入れて濃度管理しているが,立会いに来た顧客が気に入らなければ,望みの濃度に調整する。この時に発生するコストは顧客が支払ってくれるように期待している。
Argus社では,DDCPには網点を形成するDS TCP1080/アプルーバルによって4ページの製本形態にして顧客に提出している。材料コストは30ドルだが売り値は100ドルである。簡易校正には昇華プリンタのコダックDCP-9000PSを使用している。刷り出し立会いによる校了の比率は30%程度はある。
製版会社のImaging Systems社でも,印刷会社と同様に校正刷り機はもっていない。ケミカルプルーフはイメーション(3M)のマッチプリント,デュポンクロマリン(トナーの調合ができるため特色用に使用),DS-TCP1080/アプルーバル(印刷で見本にする色校正用で,ヘキサクロームでも近い発色に調整している),昇華プリンタのコダックDCP9000(再校以降でのリモートプルーフによるレイアウト点検に用いており,色は見ていない)である。顧客が利用するのは同社の場合は95%はアプルーバルであり,同社の立会いは5%と,通常の40〜50%に対してほんのわずかであることを自慢していた。
このように米国の色校正に対するOKの確認については,日本とは違う大きな問題を抱えている。また,米国の印刷会社は印刷ビジネスに集中していてマルチメディアにあまり関心を示していない点も,日本の製版工程からと米国の刷版工程からという事業領域の違いが根底にあることを理解すれば,うなずける話である。
デジタル入稿をコントロールするデジタル工務課
ページ原稿のデジタル入稿に対応するために,データチェックや問い合わせ,手配をフルデジタルで行うことが重要になる。
World Color社における入稿〜刷版の流れは次のようになっている。
@ プリフライトで画像リンク,フォントなど点検
A 青焼き(ブルーライン)をOceのモノクロプリンタで出力
B 文字や画像の確認(VPS画面と青焼きを使用)
C プレート出力
D モノクロ出力した青焼きとの比較点検
E 最終的な色の確認は顧客の印刷立会いで行う
ブルーラインを大判カラーインクジェットプリンタでカラー出力する会社のほうが多いが,このような流れはCTP導入企業での一般的なものである。Argus社にも,専門のデジタル工務課といえる部門がある。ここでは顧客からの単ページで作成された入稿データのデータ点検の重要性を強調しており,専任スタッフ(1人)が,入稿原稿のすべてのデータをチェック,問い合わせ,現場への手配を行っていた。データで入稿する原稿の割合は,サイテックスCTファイル5〜10%,Macファイル90〜95%(QuarkXPress90%,PageMaker10%),またフォーマットはEPS,TIFF,DCSなどで入稿してくる。担当者はPostScriptデータなどはプリフライトによるファイルのチェックを行い,データのミスは電話やE-mailで顧客に直接問い合わせるが,大半はフォント関係の問題が多い。
プリフライトでをチェックする項目は,フォント,画像の有無やリンク,解像度,ファイルタイプ,RGBデータのままか,ページネーションの確認などで,以前はPhotoshopなどのDTPソフトでファイルを開いていたが,プリフライトを使うようになっていちいち開く必要がなくなった。プリフライトの処理時間は,90MB位の大きさで1分でプレビュー可能(Mac7100/120MHZを使用)である。
急速に社内で普及の始まったCTP導入各社
Donnelley社の全社のCTP普及は,全国34拠点に合計35台のCREOである。1996年に15台であったので,大幅増設になる。CTP比率の推移と計画は,96年CTP25%,97年CTP60%,98年CTP80%,99年CTP100%ということである。
World Color社のシカゴ工場におけるCTP化率は65%。10工場に14台のCREOシステムを設置済みで,2年後までには全工場30カ所にCTPを設備するという。
Quad/Graphics社のCTP化率は96年10月で25%,97年10月で50%弱であるが,1年後にはCTP処理100%を計画している(図2参照)。
米国でも出版印刷物が中心の大手印刷会社では,CTPを受け口に置いた印刷のメガプラントを着実に整備しつつある。
CTP導入への課題
CTP導入への課題は,CTPの購入ではなくて,どう稼働させるかであるという。
J.D.Lucas社ではCTP導入に際しては,種々の仕事で試す必要があり,その結果オートメション化ができなければならない。また,サーマルプレートの優位性はまだ見られないという。
同社では,これから導入するところへのアドバイスとして4つの導入のステップを提案してくれた。
@ 8ページの仕事(A全判)でスタートする。
A フルデジタル化を行う。
B デジタルプルーフに慣れる(これが大きな課題)。
C プレートセッタを入れるのは最後である。
また,中堅印刷会社のStraus社では営業マン教育の難しさについて,原稿の受け渡しがデジタル化してくるので,従来の営業マンを教育するのが難しくなってきたという。米国の一般的な分業形態では,セールスは客とのコンタクト,原稿や校正の受け取り,配送などが主な業務で,カストマーサービスは,スケジュリング,ジョブプランニング,客との打ち合わせを行う他に,見積り担当がいる。また,同社は近くの職業高校の学生を研修生として受け入れ,無給だが学生は単位がもらえる。
技術について
米国ではプロセスカラーにおいて,出版印刷ではスクリーン線数が133線,商業印刷では150線の利用が多い。Donnelley社では雑誌で133線60%,150線30%,175線10%であり,商印が中心のWorld Color社は150線90%,175線10%であるという。
World Color社ではCTPの興味ある使い方として,2台のCREO(全自動+マニュアル機)を組み合わせて,オフ輪用の1セット(8版)は全自動機から出力し,焼き直しなどの応急処置用のプレートをマニュアル機で出力する体制を取っていた。そのために2台の見当などの特性の一致は問題ないという。
訪問した会社が導入していたCTPシステムは,CREO社と大日本スクリーンのものであり,プレートはCREOはサーマルプレート,大日本スクリーンは高感度フォトポリマーであった。サーマルプレートは大手印刷会社で使われているが,導入理由はポストベーキングを行って数百万部という高耐刷性を実現することが主たるものであった。しかしサーマルプリントは高出力のレーザ光源が必要であり,例えばCREOの場合は寿命が6〜9カ月で5万〜7万ドルというレーザ光源費用か,または購入価格の10%という年間保守料金が必要になる。また,CTPに接続されるプリプレスシステムは,(完全にオープンでなくとも)システムとしてのパワー,フレキシビリティがあれば良いという。この点からは,レナトス,ダビンチ,ダリムなどCEPS系のシステムを評価していた。一方で,PDFは期待されており,Image Systems社では使えるところまで完成すれば,現在のCEPSからでも切り替えていくという。また同社はプリプレスと印刷機のインタフェイスであるCIP3を97年12月インストールして北米で2番目に採用する予定である。
まとめ
DRUPA95で実用機としてのCTPシステムが発表されてから2年が経過したが,日本でのCTP議論は,色校正をどうする,下版直前の直しをどうするなど,現状追認型の議論から出発した否定論も多い。
米国におけるCTP導入企業を見ると,CTPフルデジタル化による総合的な合理化を目指しており,これに成功した企業ではCTP化率を加速している。しかしカラープルーフについては,米国では刷り出し立会いの問題,日本では本紙による校正刷りがDDCPで代替えできるかという問題がある。ただしCTPが安くなってくればCTPで校正版を出力しても,コスト的に見合うようになるだろう。日本ではこの点をもっと議論しても良いと思う。
米国の経営者の姿勢から読み取れるものは,生き残りマインドが高く,新しいものへの取り組みに積極的である。技術的な完成度が80〜90点であっても競合他社よりも早く導入して,とにかく使いこなす,というパイオニア精神がある。
市場にあるものを,知恵を働かしているという感じであり,大企業とトップダウンができる個人オーナーの企業にCTPが入っていた。
新しい技術であるだけに,World Color社のようにスペシャリストが技術決定に対する権限があるということが重要であり,同社の技術担当重役のように,知識と権限をもっている必要がある。
CTP化による経営的なメリットは,プリプレス〜印刷までのオートメーション化を促進することが可能であり,米国の経営者はこの点をきちんと理解して生産工程のスリム化を徹底的に追求していることがよくわかった。
このような厳しい中でも,各社の従業員の生き生きした姿が印象に残った。余談であるが,Quad/Graphics社は米国では珍しく社員の制服があり,洗濯や補修費は全額,購入時は会社から30%の補助金が出してもらえる。社長から社員まで皆が着用しており,社員の誇りだとも言っていた。
訪問先の概要
R.R. Donnelley & Sons Company (シカゴの南方,約300Kmのマトーン市,工場)
1996年 $66億,出版印刷100 %
正社員 1400人 (全社で39,000人)(Mattoon工場,プリプレス42人で3シフト,12〜13人/チーム)
CREO Platesetter 3244サーマル2台,Kodak Thermal Infrared Plate
Mac9台,PC2台,サイテックス10台以上,グラビア彫刻機(16ヘッドモデル)2台など
オフ輪8台,グラ輪 8台
34拠点(合計で35台のCREOがある,1996年は15台であった)
QUAD / GRAPHICS (訪問先はミルォーキー市の郊外,サセックス工場)
1996年 $12億 (全社),サセックス工場は商印46%,出版(雑誌)40%,その他(クーポン)14%
正社員10,500人 (全社員)(サセックス工場のプリプレスは200人,全社では1,471人)
CREO Platesetter 3244サーマル2台,Kodak Thermal Infrared Plate
Mac:14台 (全社104 台),サイテックス10台以上,ドラム型カラースキャナ,イメージセッタ2台など
オフ輪 17台
(場所・規模・主要設備)-13工場 -全社で17セットのCREO製CTPシステム,10台のコピードットスキャナがある。
World Color (訪問先はシカゴ工場)
1996年$20億 (全社),商印100%(カタログ,通販カタログ)
全社員数14,000人,シカゴ工場は正社員250 人(プリプレス50人)
CREO PLATESETTER 4555サーマル(A倍判),同TRENDSETTER 4557サーマル(A倍判),Kodak Thermal Infrared Plate
Mac20台,ドラム型カラースキャナ1台,イメージセッタ1台など
オフ輪8台
30工場
The John D. Lucas Printing Company(ワシントンDCの北東,約50Kmのボルチモア市)
1996年$3000万 ,商印100 %,(薬品ラベル,出版もある)
正社員 146人
CREO PLATESETTER 4555サーマル(A倍判),TRENDSETTER 4557サーマル(A倍判),Kodak Thermal Infrared Plate
Mac25台,PC 10台,CEPS(レナトス)2台,イメージセッタ2台など
枚葉オフ機(6色機)など3台,オフ輪(4×4)など3台
The Argus Press, Inc. (ArgusPress@AOL.COM) (シカゴ市郊外)
1996年$2500万,商印100%
正社員120人(全社員は非ユニオン,プリプレス18人,営業 16など)
DS PI-R1080 1台,DuPont Silverlithプレート
Mac17台,PC1台,レナトス2台,ドラム型カラースキャナ1台イメージセッタ2台,殖版機1台など
枚葉オフ機(6色機)など5台
Straus Printing Company (ウイスコンシン州 マディソン市)
1996年$1250万,商印ほぼ100%
正社員85人,(営業7人,見積り3人,カストマーサービス4人,フライトチェック6人) 2交代勤務,パート15人
DS PI-R1080,同PF-R1080 各一台,富士フイルムLPY
Mac9台,レナトス3台,平面カラースキャナ1台,イメージセッタ2台など
枚葉オフ機(5色機など)3台,オフ輪(5色,7色)2台
Image Systems, Inc. (www.image-sys.com) (ミルォーキー市郊外)
1997年$1000万,商印60 %,プリプレス40%,紙器少し(今年,立上げ)
正社員 85人
DS PIR-1080 1台,三菱化学 ダイヤモンドプレート
Mac 50台(事務用も含む),PC 1台,レナトス4台,サイテックス1台,ドラム型カラースキャナ4台,イメージセッタ1台など
枚葉オフ機(6色機など)計3台(平均ロット3000枚)
ASG SHERMAN GRAPHICS, INC. (www.asgsherman.com) シカゴ市
1996年$700万,商印100% (プリプレス,デジタル印刷など)
正社員 55人,(営業マン 10人)
(CTP導入は1年半後)
Mac20台,PC10台,ダビンチなど3台,デジタルカメラ2台,ドラム型カラースキャナ2台,イメージセッタ3台など
枚葉オフ機(菊全5色機)1台,デジタル印刷機(GTO-DI5色機)1台
日本印刷技術協会 相馬 謙一
プリンティングインフォメーション 1998年2月号より
(C)Japan Association of Graphic Arts Technology
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