SIG-CTP活動報告-6



CTP導入の共同研究会であるSIG-CTPの活動報告の第六回目である。報告-1では生産のリエンジニアリングとCTPがテーマであったが、報告-2ではCTPを導入するのための準備段階として、自社業務を分析しての再認識が行われた。報告-3では、デジタルプリプレス技術/CTP生産技術について検討し、報告-4CTPへの投資シミュレーションを報告した。報告-5はCTPを前提とした校正と品質管理の考え方を報告した。今回は第二期SIG-CTP報告の最終回として、本研究会への参加企業の一部事例を紹介する。

第六テーマ:事例研究

1.A社の事例研究

A社は出版系の老舗印刷会社である。現状のワークフローは書籍印刷が多く、カラー印刷の割合は20%未満である。そのため現在でも写植/CEPSが主要なシステムとなっている。また、老舗ということもあり、子会社的な処理業者が社内に常駐しており、プリプレス作業の大部分、実に74%の処理を実行している。それでも画像処理を中心にしてDTP処理が急増している。しかしデジタル入稿は殆ど無く、アナログ原稿の処理を自社内で実行している。
この状況下でCTPを導入するとどのような事態が起き、あるいは効果があるかを検証したいというのが今回の検討の目的である。

○現状システム
外注比率:74%、外注加工費:66千万円と巨額で、全体のプリプレス経費の半分を占めている。しかし、完全内製化は経費的に不可能である。

○部分的CTPシステム
この状態で約40%のCTP化を検討した。完全CTPシステム:外注を含めたプリプレス費用が七割近くを占めているために、刷版工程を合理化しても、全体への効果は小さい。部分的CTP化では5%、完全CTP化でも、それに近い合理化効果である。

○これは改善案なのか?
明らかに現状のプリプレス製作体制を変革して、顧客からのデジタル入稿率を上げないかぎり、同社の合理化は進まない。あるいはフルデジタルの共通データによるCD-ROMと印刷といった業務改革によらなければ、同社の合理化は進まない。しかし、それはかなりの痛みを伴うし、経営方針の大きな変革を意味するので、参加当事者のレベルでは検討不可能な事柄のようであった。

大手出版社がDTPを内製化することなぞ考えられないともいう。悲劇的なことには辞書データのデジタル化、即ち、CD-ROM化は進行しているのだけれども、それが印刷には流れてこない。ある出版社では百科事典の書籍としての出版は止め、CD-ROMだけを発刊するといっている。印刷は見限られたのである。

共通のデジタル資産でCD-ROMも印刷もといった本来の目標は忘れられたようである。この跛行状態はいつ、どのようにして解消されるのであろうか?

2.B社の事例研究

B社はチラシ専門の中堅印刷会社である。プリプレスはかなりデジタルか進行しているが、校正は平台、フィルム出力中心のワークフローである。本社にプリプレスと印刷工場があるが、顧客は東京と中京地区に分散しており、印刷専門工場も遠隔地に一ヶ所ある。内校正としてはIrisを使用しているが、顧客への承認校正には平台を使用している。

従ってCTPワークフローは現在のプリプレスワークフローにCTPを接続する形になる。
勿論サーバー等の機能は強化する。同社の問題点は
1)CTP刷版による平台校正の実施。
2)顧客からのフィルム持ち込みは無くならない。
3)分散工場にはフィルム原稿を送る。
4)曜日による処理量に波がある。
5)現在使用中の設備は殆どリースのため、CTP導入時期は平成12年頃になる。
同社の版処理量は年間二万枚なので、CTPは一台で足りる。これを基準に投資計算をしてみると人員は24名が12名に削減でき、22%の合理化が達成できる目論見になった。

しかし、担当者としてはCTPによる人員削減を提案できないという。また、リースを解約して一挙にCTPを導入することも不可能であるともいう。担当者はリースアウト迄の段階的なCTP導入効果を計算したが、上記諸条件に制限されていては、CTP導入の効果は上がらないという結果になった。

○上記二社の事例研究をみて
CTPの導入というのは、職制の変更、ワークフローの変革、さらに顧客との関係調整という複雑な問題を抱えているので、日本企業お得意の提案型改革では否定的な意見で纏まりやすい。そして周りを見回して安心するというパターンに陥りやすい。
これが日本でのCTPの普及にブレーキがかかっている一因と思われる。これは欧米諸国でも共通の認識で、自社の改革はボトムアップでは実行できない。トップダウンで決断しないかぎり実現不可能なことである。従業員数百名といった中小企業ではトップの資質と決断が、その企業の運命を左右する。日本のトップがだらしないのは大企業でも同じことであるが、大きいだけ生き残る確率が高いだけの話である。
CTPを導入するということはフルデジタルワークフローの完成を意味する。そして、これが21世紀への展望を開く切り札であることは間違いない。CTPも使いこなせない企業ではDigital Asset Managementも実行できないし、Personalized印刷も夢のまた夢となり、21世紀への生き残りは覚束ない。最後のS社はトップダウンでCTPを導入した事例である。

3.C社の事例研究

同社は商業印刷主体の従業員100名程度の中堅印刷企業である。
印刷機は数台所有しているが、B-3判オフ輪、四六半裁枚葉機を中軸に、毎月2000枚強の印刷版を処理している。印刷物は一万枚以下の四色端物(チラシ)が多く、短納期が求められているが、高品質とか、校正には余りこだわらない顧客が多いようだ。
プリプレスはCEPSを中心としたフルデジタルのワークフローが完成していた。校正は既に20万円クラスのインキジェットプリンターによる原寸カラー出力を実行していた。昨年、相次いで2台のCTPを設置し、同時にイメージセッタを廃棄して全てCTP刷版に切り替えた。

○CTP投資シミュレーション
既にフィルム出力によるフルデジタルプリプレスシステムが稼働しているために、CTP導入によるプリプレスでの合理化効果は殆ど無い。同社ではプリプレスにおける経費削減は大きな課題であるけれども、外注、パート作業員などによる経費削減では限界があるとも理解しているようだ。CTPフル稼働という現在の状況を踏まえて、顧客サイドでのデータ作成に熱心に取り組み、通信等の環境整備を行っている。これが、同社にとっての最強の合理化手段となろう。

○CTP導入後の問題点
同社のCTPワークフローはイメージセッターをCTPに置き換えただけともいえるが、導入当初はプレートセッタがデータ待ちで止まることが多く、稼働率があがらなかった。
CEPSワークフローはPostScript等の入稿ファイルをPOMという中間ファイルに変換する。これはフォントはアウトライン化されているが、画像はビットマップデータ(多値)となっている。この中間ファイルをレンダリングし、その後、網点生成されプレートセッタ出力となる。チラシ主体で絵柄が複雑なためか、当初はCEPSのレンダリング処理がボトルネックとなり、一色一版あたりの平均出力時間は当初20-30分と長めになっていた。報告によると最長で55分/版、最短で10分/版であった。
一日80版の処理には二編成の網点生成/出力に15時間は必要であった。
その後、CEPSに4CPUの演算装置1台を増設し、これに二台のプレートセッタを接続した。これによってレンダリング処理をパラレルで行えるようになったため、刷版の平均出力時間は15分に短縮され、一日十時間で作業を終えることができるようになった。
もっとも日量80版の処理となるとプリプレス作業全体のスループットが追いつかないようで、データ待機がしばしば発生している由である。
校正は同じくローコストのインキジェットプリンターによる原寸カラー出力で責了に持ち込んでいる。
これは同社と顧客との優れた信頼関係に裏打ちされて実行できることである。

○CTP導入時点で、同社は以下のワークフローの変更をした。
1)職制を変更し、プリプレス担当者がCTPを運転するようにした。
2)印刷(仕様、機種等の)指示は現場担当者任せだったのを止め、生産管理部門で一本化して、指示書を発行し、プリプレス、印刷部門に流すようにした。
3)これにより印刷の標準化が著しく進んだ。

同社ではCTP導入の目的は印刷工程の合理化にあった。同社の平均印刷枚数は数千枚であり、CTP/CIP-3により印刷セット数が増えることを期待している。CIP-3については、印刷機を交換しなければ採用できないので、現在、メーカーとの打ち合わせが進行中である。CIP-3により印刷準備時間が四割以上も短縮されると試算している。これにより現在の一日30セットが飛躍的に増えると目論んでいる。

同社ではホトポリマー印刷版を使用しているが、特に不満は無いようである。
網点再現がよくなったことは実感している。
見当合わせについては印刷機の兼ね合いで実感できていない由。
しかし、現像周りのメンテナンスが厳しくなったとは感じているようだ。
同社では顧客に対してはCTP導入についての特別なキャンペーンはしていない。
いずれ顧客に説明したいと考えているようだ。

○CTP導入後の同社のコメント
CTPの全面的稼働は全ての生産システムを変える。そしてプリプレス、プレスの垣根を取り払う。刷版オペレーターの削減、作業効率が上がる、安定した品質といった個別的な効果もあるが、従来の個人的なノウハウ、馴れ合いでの作業から、全社的な標準化が進み、一元的な生産管理が可能になった。これが当社にとってのCTPの効果であり、21世紀に生き残れる起爆剤になりそうだ。
フィルムが無くなる。これは営業にも生産側にも大きな不安であった。これはトップからの命令であり、止むを得ず従った一面も確かにある。しかし、今となっては後戻りができない。設備が変わる。人も変わる。一人ひとりの考え方も変えていかなければ、時代に取り残される。
ホトポリマー印刷版からサーマルへ切り替わる時代がくるかもしれないが、その時にはCTP以外のシステムを導入することになるかもしれない。

○経営者からの同業者に対するコメントは「CTPはトータル的な利益を生み出すシステムである。早くしないとCTPを越えた、次世代の足音が近づいている。グズグズしていると、時代に取り残されるだけである。」ということである。

(第二期SIG-CTP資料、成果発表より)


(C)Japan Association of Graphic Arts Technology


HOMEJAGATについて