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「プロ」としてより良いものを求めて求めていく

◆中橋 睦子

「広告代理店」、そんな言葉に引かれて今の会社に入社して4年。全く違う分野からの転職。広告のことはもちろん、印刷のことは全く何も知らない素人で、心に残るコピーやデザインなどを見てはすごい発想だなぁとあこがれていた世界。何でもいいから自分も関わりたい、という思いからデスクワークとして入社しました。
もちろん、DTPなんて言葉は知らず、まさかDTPエキスパート認証試験を受けようとはそのころ夢にも思っていませんでした。

ただただ関わりたかっただけのこの世界に自分から深く入っていくきっかけは、私は文字どおり「はっ」としました。この世界に入って1、2年の自分の意見を求められたことが単純にうれしくもありましたが、それ以上に申し訳ない気持ちとくやしい気持ちになりました。知識も経験もない私がプロの立場からお客様に助言をするなんて自信がありませんでした。しかし、お客様は私が何年この仕事に従事しているかは関係なく、今まで付き合ってきた私の所属する会社を信用してくださって、何の疑いもなく意見を求めている。ベテランだろうが新人だろうが会社の顔としてお客様と話をしているということは、その時点で「プロ」でなくてはならないのだと痛感しました。より良いものを求めるお客様のことを何も考えていなかった、自分にはまだ勉強しなければならないことがいっぱいあるのに何をのんびりしていたのだろう、と深く反省しました。

そう思ってから、まずデザインの基本を習うためIllustratorとPhotoshopを学べる教室へ通いました。どのようなデザインだと訴求効果が高いのかを知らなければならないというのと、デザイナーの意図を理解したいと思ったからです。そこで、こんなことができるのか、今まで見てきたあの文字はこんなふうにして加工されていたのか、あの写真はこういう工程を経てあんなデザインに仕上がっていたのか、と驚きました。自分でそのソフトを使うまでは、こんなふうなデザインにしたい、と頭で考えていたものが簡単にできるものだと思っていたけれども、実際は地道な作業が何度もあって、限りない加工・デザイン・表現の仕方があるのだと分かりました。
それまではデザインの意図をクライアントにうまく説明できず、デザイナーのデザインに対する思いと、お客様がそのチラシに込める思い、表現したいことがなかなか一つにならず、折り合いを付けることがとても難しかったのです。どれもこれも大事な内容というお客様の思いばかりを優先させると、結局どれが一番大事なのか分からないデザインになってしまう。時にはクライアントの横暴な要求も聞きつつ、できないことはほかの方法で要望にこたえるように考えていたデザイナーさんはすごい!と今さらながら思いました。

DTPエキスパートの勉強は学べば学ぶほど奥が深く、一つ新しいことを知れば、それまで知らなかった項目が見えてきて、もっと勉強しなければという思いの連続でした。昼間は仕事、夜は勉強という日々はつらかったですが教室の先生にもたくさん協力していただいたのでがんばることができました。それまでの受験の中で一番勉強したと思います。
しかし、何の資格でもそうですが合格したら終わりではなく、それはDTPの扉をやっと開けた、という始まりなのでこれからの自分のあり方で無駄にするかどうかが決まっていくのだと背筋が伸びる思いです。

現在の仕事場ではデザイン制作者のMac環境とクライアントのWindows環境でメールの校正がうまくいかなかったり、色校と実際の刷り上がりの色みが違う、という問題など日々トラブルはたくさんありますが、より良いものを求める人々の思いが一つになるようにこれからも力を着けていきたいと思っています。また最近では、クライアントの広告スペースがフリーペーパーであったりWebであったりと、ほんの数年前とは様変わりしているので、その時々にあったより良い表現の仕方を求めていきたいと思います。

 

月刊プリンターズサークル連載 「DTPエキスパート仕事の現場」2006年8月号


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2006/07/28 00:00:00


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