本記事は、アーカイブに保存されている過去の記事です。最新の情報は、公益社団法人日本印刷技術協会(JAGAT)サイトをご確認ください。

インターネットで、王様は裸

デジタル化で情報伝達が正確で容易になることと、情報がコピーされたり流出することは、現象としては同一のことであり、ただ人の価値観からすると一方はよくて他方は悪いといっているに過ぎない。デジタルで完全にセキュリティを強化するというのはウソで、永遠にありえない話なのは、セキュリティの技術とハッキングの技術は全く同じモノだからだ。その技術をもった人が、社会に対して善を行おうとしているのか、悪を行おうとしているのかだけの違いである。

デジタル化を抑制することができないならば、そのような堂々巡りの話はやめて、デジタルではないところに土俵を移してルールを作らなければならないのに、デジタルで解決があるかのように思うのは、「矛盾」という単語のいわれと同じである。つまりデジタルで何でもソリューションできるのだという幻想のようなものに執り憑かれやすいことに注意しなければならない。

今日ではBlogやSNSを販促に使おうということが多くなっているが、これも最初からポジティブ・ネガティブの両面を考え合わせることが必要である。近視眼的な欲得は判断を誤らせるもので、自分に都合がよいことだけが起こるように考えても破綻するだろう。BlogやSNSは企業の真の姿を明らかにしているものなので、それは全く別分野でもあるようにみえるコンプライアンスと深い関係にある。経営者が販促のプロモータにちやほやされて、カッコよいことをしている気分になっても、「王様は裸だ」という声がインターネットから聞こえてくることになる。

インターネット上のコミュニケーションの方法が、NewsGroup→掲示板→Blog→SNS というように発展してきたのも、人々が安心してかかわれる関係が維持できるような方向へと技術の対象が移ってきたことをあらわしている。つまり技術の活きるところは、社会的な要請とともに移り変わっていくものである。

クロスメディア研究会会報208号」より

2006/08/21 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会