不正アクセスやスパムなどインターネットで悪いことが起きるとか、セキュリティに問題があるのは事実ではあるが、それがインターネットという技術上の問題であるかのように言うのは、リアルワールドで建物やドアの構造や鍵が悪いから犯罪が起こるといっているようなもので、筋違いである。
郵便のDMでも迷惑なものはあるが、1通80円かかるとなると、相手かまわず滅多やたらに送ることはできない。しかしインターネットのmailは幾ら出しても回線の契約代しかかからないから spam mail が可能になる。YouTubeへのテレビ番組のアップロードも、いくらかでもお金がかかると経済メカニズムが働くし、誰がしているのか記録が残るとなると、いたずら心で気楽に悪さをすることは抑制されるだろう。
つまり、正体の明らかな人かどうかの識別と、使用料という関係があると、クレジットカードのよう登録された人の間でのやりとりができ、ある意味で監視つきの安全地帯が出来上がる。今のインターネットはあまりにも経済メカニズムによる抑止力が働かないので、そこに今後は何かが起こりそうだ。しかしクレジットカードでも悪用は完全に防げないように、経済メカニズムだけでは完全なものにはならないが、それでも不正をする者はいたずらとはみなされず、明らかに意図的な犯罪として追跡すべきものなので別次元である。
現実にpaypalでは世界55カ国で1億人のアカウントが管理されているように、何らかの登録を介してコミュニケーションすることは技術的にも運用上も可能になっている。他にも多数の信用できるアカウントを管理しているコミュニティは多くあり、今は登録者間でmailを安全にやり取りできるクローズドな仕組みが提供されている。
身分証明と同様の意味を持つ企業内の社員アカウントも同じであるが、信頼できるコミュニティが横につなげていくようなサービスが大規模になって、非常に低額で行われるならば、各企業や個人ごとにセキュリティ用のソフトをインストールして使用料を払い続けるよりもよいかもしれない。インターネットの利用者が国民の大多数になるならば、リアルワールドの秩序のアナロジーがインターネットの世界にももたらされていくだろう。
(クロスメディア研究会会報211号より)
2006/11/20 00:00:00