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写植の幕引き、XMLパブリッシングの幕開け

日本ではDTPの普及はグラフィックデザイナが先行して始まったが、欧米では雑誌や小規模新聞から立ち上がった。そのためにDTPのイメージは違ったものとなって、日本が写植ではやり難い商業印刷的な仕事をDTPで行おうという指向が強かったのに対し、欧米では写植を超える仕事をDTPでしようとする傾向があった。例えば多ページ処理とか新聞組版などである。とはいってもDTPの基本機能が高まるにつれて、結局は同じようなことになってしまう。日本でも2006年には凸版印刷が自社CTSの後継をInDesignのプラグインで用意したことを発表したように、名刺から年鑑まで規模の大小を問わずにDTPが組版レイアウトのプラットフォームになる。

ということは、かつては電算写植などは購入したハードウェアで仕事の差が判断できたのが、パソコン化でその区別は出来にくくなり、ある人が「私はDTPができます」といったとしても、その能力は千差万別になってしまった。実際のプロフェッショナルなスキルの区分けをすると、第一にオリジナルを創り出すクリエータ・デザイナ・出版企画の立場と、第二に効率的な制作システムを構築するSE的な生産技術の立場、また第三にその運用と印刷物の品質管理する生産管理的な立場に3分されるだろう。

第一と第三の立場は基本的にはアナログの時代と似たところがあるが、第二の立場が以前はプリプレスベンダーであったのが、今は非常に小さくなってしまって、その役割を誰が肩代わりするのかがまだ明確にはなっていない。凸版印刷のプラグイン開発のようなことはパワーユーザならできるだろうが、それでは残存する巷の電算写植の仕事を全部吸収することは出来ない。では方法はないのだろうか? 電算写植がサポートされないようになったら、残った仕事はどうなるのだろうか?

こういった、システムにデータ依存をする考え方から脱出して、データの独立性を高めて異なる環境でも作業できるようにし、またそのデータも編集で加工するところと、組版レイアウトの段階で調整するところを分離しつつ、出力が要求されたら一貫した自動処理としては統合的に扱えるものを作ることが必要である。こういった話はだいぶ以前にも聞いたことがあることを思い出さないだろうか? それは電算写植のフロントエンドとしてSGMLを使おうというもので、SGML側は規格化されたものの、そのデータを組むところは電算写植や多ページマニュアルシステムの凋落とともに曖昧なままになってしまった。

つまり日本では組版側の標準化とかオープンシステム化は、この10年ほどのDTP推進化の影で保留になっていたといっても過言ではない。いやSGMLからXMLへの流れの中で、漠然と今後はXMLでソリューションがあるだろうなと考えていた人は多かっただろう。それが冒頭のようにCTS・電算写植の余命が見渡せる段階に来て、今日尻に火がついたようにいろいろなところで取り組みが盛んになりつつある。

しかしかつてのCTS・電算写植を中心にしたシステムと大きく違い、データをXML化してパブリッシングにまで持っていくためには、例えば印刷出版以外のいろいろな業界において、XMLによる横断的な情報交換のための標準化が話し合われて業界標準のXMLボキャブラリが開発されているように、前述の第一、第二、第三の立場の人々が、編集業務に必要なタグ、制作上必要なタグ、他システム・関連XMLボキャブラリとの連携などシステムの拡張性から考えるべきタグ、などについて標準化すべきところは何かを話し合って決めねばならぬことである。

XMLボキャブラリは企業財務情報のXBRLのように「顧客」側が先行して動いている分野が少なからずあるので、印刷出版業界標準のXMLボキャブラリの制定は時間の問題であろう。また今日では紙の出版と同時にWebでの情報発信も行わなければならないので、そのニーズの高いところが印刷出版業界用XMLボキャブラリを率先して取り組もうとしている。PAGE2007のデジタルメディアトラック、グラフィックストラックは、今までの日本のスタンドアロンDTPの先にどのようなテーマがあるのかを知り、それに先進的に取り組んでおられる方々のプレゼンとディスカッションから、XMLパブリッシングの進み方を考える絶好の機会でしょう。奮ってご参加ください。

2007/01/04 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会