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ミッシングリンクを探せ

PAGE2007でのクロスメディアコンファレンスの事前発表を1月23日にデジタルハリウッドで行なった。モデレータの清水計宏氏は基調講演もお願いしている方で、20年前のニューメディア以来メディアの変革を追いかけてこられた。また当日のディスカッションに登場した神田敏晶氏もDTPの黎明期からデジタルメディアもずっと追いかけてきた方である。この2人が、あともうちょっとでこういうことができるという話をされていた時に思ったことは、「機が熟しかけているな」ということだ。清水氏は年頭のCESでのCBSのCEOの話「新旧メディアのギャップはもはや存在しない」のようなことや、その背景としてアメリカのマスメディアも視聴者参加型に考えが大きく変わってきたことを説明された。神田氏は、YouTubeその他近年一気にブレイクしている現象も、10年、20年前からやっていたり考えていたものが多くあって、当時は実現に5年くらいかかるかなと感じていたのが、意外にかかって、今頃はやっているというお話があった。

YouTubeは、今の2ch的なカオスの状態を引き起こしていることは、人の注意を惹くという点でのセンセーショナルさはあっても、その最初の志からすると、まだ成功しているのかしていないのかよくわからない面もあるが、時代の流れを変える大きな力なっている点は確かだ。Broadcast Yourself というコンセプトどうり、自分や自社商品のプロモーションビデオを投稿して、それをいろんなホームページにYouTubeごとリンクしてもらうような、Web2.0的な使われ方もよくされるようになった。またYouTubeがYahooでなくてGoogleに買われたという点でも、単に今の人気に便乗して動画で人寄せをするというだけではなく、最初の志を生かした発展の仕方が考えられる。地図や検索のメタデータとの結びつきが最初に思いつくところだが‥。

CBSはYouTubeの対抗のような姿勢ではあるが、放送局の側がビデオクリップの取り出しを認め、それを前提に番組制作や経営の舵取りを変えたという点は画期的だ。大企業が時代の流れをみて早い目に自分を変えるということはあまり例がない。某国のテレビ界はYouTubeを蹂躙者と見ているし、新聞出版界はGoogleをも違法行為を働くものという立場をとって、Yahooのようなポータルですらなんとか締め出せないか、あるいは自分たちで対抗措置をとれないかと考えている。特に某国のテレビ界は、視聴者よりも番組スポンサーの方を向いていることや、電波という許認可の保護の下という従来の姿勢が、今日のメディアの激変の中で自分たちを縛り付けるものになっていることに気がつかないのだろうか。

マスメディアとしては劣勢ではあるが日本では新聞の方が読者との交流に取り組んできた歴史がある。読者に対して社の姿勢を示してキャンペーンや企画というのをするし、社説というのもある。朝日新聞は全日本写真連盟の後援をして、写真愛好家の投稿を受け付けるような関係をもっている。どこでいつ起こるともわからない突発事故は新聞記者が現場に到着するよりも前に、周囲に居合わせた人がケータイで報告するようになっているので、報道写真にもケータイのカメラやデジタルカメラの画像が使われることが多くなった。時々新聞でも作品紹介を行っていて楽しいが、そういうところに新聞の限界も感じられる。まずいくらケータイからリアルタイムに投稿しても新聞が出るタイミングは朝と夕しかない。もし新聞社がこういう市民記者的なものを積極利用する気があったなら、相応のWebメディアを作れたはずだ。このようなまだ手付かずのチャンスは大いにある。

1980年代の初めから、将来こういうことができるだろうということは相当たくさん語られていた。しかし近年まで1個人や1企業が努力しても収支の割が合わないようなことばかりなので、実際には成功例は出なかった。それは昔の話である。ニフティが上場するまでに20年かかったのが、mixiの上場は3年であったように、コンピュータもネットワークも、その他の電子機器も、またそれらを使いこなせる新しい世代も、いろいろな条件が整ってきたからこそ、個人のアイディアに基づくWebメディアがブレークできるようになったのである。逆にいえば、今からすぐ近いところで条件が整う 「何か」 が見えればいいのだが、という話になる。そんなことを模索している方々が集まってプレゼンテーションとディスカッションをするのがPAGE2007である。これだ! という結論を求めるのはまだ早い。しかし、基調講演トラックデジタルメディアトラック 以下の各セッションが重要なヒントになるだろう。

2007/01/25 00:00:00


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