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「CGが変える写真の世界」報告

PAGE2007の基調トラックA2「CGが変える写真の世界」(2月7日16:00〜18:00)について報告する。本セッションはCG技術を中心にしたビジネスで成功されている株式会社アマナの進藤博信社長と株式会社キャドセンターの山形康弘事業部長をスピーカーとしてお招きし、JAGAT郡司秀明がモデレーター役で進行した。


株式会社アマナ

株式会社アマナはもともとストックフォトで有名だったが、現在はデジタル技術、それもCG技術を中核として多角化し、現在ではグループ企業が24社、社員数も800名を超える大グループに成長している。その中心となるスタッフや営業を担当する100名近いプロデューサーが、撮影や3DCGなどのデジタル画像制作から、データベースでのビジュアル管理、ウェブを活用したコミュニケーションツールの制作までワンストップで解決している。プロデュースにあたっては、社内外のネットワークを活用し、クリエイターのキャスティングから予算、スケジュール、品質の管理まで、ビジュアルに関する業務に一括して応え、顧客の利便性を高めている。

いち早くCG技術に着目した先見性も大きいが、プロデュース力(これこそが営業力)が大きなポイントといえる。そして、そのプロデュース力の下に「写真制作」「デジタル画像制作」「ストックフォトコンテンツ」「その他ソリューション」ビジネスを展開している。広告写真の制作業務、デジタル画像の制作業務、ストックフォトエージェンシー業務、さらにビジュアルを活用した企画などの総合プロデュースまでを手がける国内最大手のトータルビジュアルソリューションカンパニーである。

1.写真制作

広告写真業界の第一線で活躍するフォトグラファーが、企業の想いや商品の魅力を最大限に引き出す写真を「オーダーメイド」で制作している。天王洲のスタジオをフル活用し、アマナグループの原点ともいえる事業である。
2.デジタル画像制作
ビジュアルコンテンツ制作部門は、広告写真や企業イメージ、Webなどに使用される各種の写真や、2D/3D CGをはじめとするビジュアル全般を制作している。制作物は新聞・雑誌広告、看板、ポスターをはじめ、photowall(後述)まで幅広く、企業の求めるビジュアル戦略の最先端を担う制作物が、多くの人々の目に触れている。 同社では、デジタルカメラの採用や高品位CG制作など積極的にデジタル対応を進め、撮影部門とデジタル部門が総合的なソリューションをお客様のニーズにあわせて提供し、「デジタルのアマナ」という評価はすでに業界では定着している。
3.ストックフォトコンテンツ

あらゆる分野の写真をカバーし、約7,300万点を超えるイメージ点数を持つストックフォト部門は、世界第3位の売上高を誇る。広告・出版をはじめとするプロフェッショナルニーズに応える同社の質の高さは、国内はもちろん世界中のプロフェッショナルから高い評価を得ている。ストックフォト部門もデジタル化を率先して進め、amana.jpはビジュアルのポータルサイトとしてe-コマースサービスを提供している。(画像管理としてADAMと名付けた独自ソリューションを持つ)
4.その他のソリューション

前述したものも含め次のような独自ソリューションを持つ。
■ADAM/企業のもつ商品写真やヒストリカルな写真などのビジュアル資産をデータベースで管理するソリューション。
■photowall/オフィスや商業スペースをストックフォトで活用して空間演出するソリューション。
■photoEmotion/企業の受付や公共スペースに置かれた大型ディスプレイに向け、ストックフォトなどの静止画を動画コンテンツとして編集するソリューション Interactive Flash Video/企業や商品のプロモーションサイトをエモーショナルに表現するソリューション。

株式会社アマナは急成長会社の筆頭である。ストックフォトビジネスも決して小さくはないが、現在のビジネスは画像処理が多くを占めている。製版業は画像処理ビジネスが少なくなったと嘆くが、実は決してなくなったわけではなく、「切った貼った」の世界からCG技術を応用した画像処理ビジネスに変革してしまっただけのことなのである。

株式会社キャドセンター

株式会社キャドセンターは都市計画、まちづくり、マンション、オフィス、商業施設、教育、歴史、報道、エンターテインメントなどの幅広い分野でCG映像(静止画・動画)を提供している。同社は建築・不動産関係の制作では業界随一の実績を持ち、設立以来携わったプロジェクトはおよそ5,000件におよぶ。しかし現在はCG映像の制作にとどまらず、見せるための空間の演出からシナリオの企画・制作、映像機材の選定・設置まで総合的にビジュアルのプロデュースをするビジネスに発展しようとしている。

ビジュアライゼーションNo1.を目指している企業であり、
「存在しないものを見せる」
「失われてしまったものを見せる」
「通常の方法では見ることが困難なものを見せる」
ことがキャドセンターの目指すことである。常に先見的な目で時代のニーズをとらえ、あらゆるシーンで企画から制作までトータルに提供できることを強みにしている。

以下に箇条書でソリューションを列記する。

1.画像・映像制作(HD静止画、HDムービー)

3DCGをフルに活用し、建築前に完成図や景観シミュレーションを行うもので、CG利用の原点ともいうべきものである。
2.VRコンテンツ制作/プログラム開発

VR(バーチャルリアリティ)をCGと混同される方もいると思うが、VRはリアルタイム性を重視したものである。PCの高性能化とともにVR分野は益々広がりを見せている。
3.三次元デジタルアーカイブ/三次元デジタル計測

レーザーによる三次元計測による「ミロのビーナス」の計測、新薬師寺の十二神将の計測によるアーカイブ画像の作成等興味深い技術だ。このセッションの前に行った「分光技術による色再現」と合わせて新時代のアーカイブビジネスに期待が持てそうである。
4.土木建築分野へのCAD/コンテンツ制作スタッフの派遣
人材派遣業だが、印刷関係でもスキルさえ合致すればウエルカムということである。
5.三次元デジタル地図 MAPCUBE

「MAPCUBE(R)(マップキューブ)」は、コンピューターグラフィックス技術と、三次元都市データ生成技術によって生み出された、限りなく現実に近い高品質・高精度なデジタル都市データであり各種解析、シミュレーションからカーナビゲーションまで、幅広い用途に利用できる非常に興味深い製品である。 また、関係するソリューションであるビュアーやASP、サーバーなどのソリューションも総合的に開発している。

株式会社キャドセンターの場合は営業展開というより、その技術開発力を強みにしており、建築というコア業界から展開する可能性はたった60分程度の講演の中からでも読み取れる。

聴講側としては開発力自体を真似するというよりは、こういう技術力を持った会社とどのようにコラボレーションしてビジネスを発展できるか?というのが最大のキーポイントになると感じた次第である。

2007/02/22 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会