昭和情報プロセス株式会社は、1948年に創業し、現在は東京都港区に本社を、埼玉県加須市と群馬県桐生市に事業所を構える。ページ物を中心に、情報処理、データベース、Webなどデジタルメディアの制作も手掛ける。同社の人材育成と教育について社長の中村栄一氏と常務取締役営業本部長の小崎昭男氏にお話を伺った。
各社員の能力を明確化するには、具体的に社員の力量をどのようにして評価するのかということが問題になる。同社の場合は、この取り組みをスタートするにあたって、各部門での職務内容によって技能評価基準をマニュアル化したものを作成した。それに従って項目ごとに評価していき、その評価内容から各人に対する必要な教育内容をきちんと決めていこうということである。
「営業であれば、営業活動する上での知識基準や実際の行動が十分なのかどうかを評価します。その評価に基づいて、例えばこの人は○○の部分が弱いから、この研修を受けてもらおう、というようにして研修計画を作っています」(中村社長)
また、この評価制度に伴って成果主義も導入しており、評価制度と成果主義とを連動することで、意識改革、モチベーションのアップも狙っている。
評価については、当初は部門長が評価することでスタートしたが、現在は少し変更して部門長の評価のほかに自己評価も加えることで2段階になっている。この結果、自己評価と部門長の評価が著しく異なる場合も出てくる。その場合には、個々のヒアリングの中で、違っている部分についての話し合いを行い、納得いく形で相互の評価を再検討している。個々のヒアリングについては、年に1度社長が社員全員と個人面談という形で行っている。この評価表と面談を元に教育計画が立てられる。
従って、評価表による各人の弱い部分を教育するだけではなく、社員自ら勉強したいという希望もヒアリングして、それらを考慮して教育計画に生かしている。社員の希望の中には、印刷とは直接関係のないものもある。しかし、それらの場合、希望がすべて聞き入れないというわけではなく、ビジネス全般を考えて個人の能力やモチベーションのアップが期待できるものについては、自己啓発につながるという意味で支援することもある。
なお、評価項目の作成では、JAGATの『印刷企業向け職能資格基準』を元に同社に合うような形にカスタマイズしたものを利用している。例えば、営業の「あるレベルの社員」にとっては、できていなければならない項目を挙げて、それについて、どの程度できているかを評価するような形になっている。
実際の教育は外部での研修が中心になる。このほかにOJT形式での教育を常に行っている。ここで言うOJTは、きっちりした制度として行っているということではなく、上長並びに先輩社員が部下や後輩社員に対して日常的に指導することを指している。例えば営業の新人については、必ず部長やリーダークラスに同行して営業活動を学ぶようにしている。
外部研修への参加については、教育計画から上長が研修を指定する。そのほかに社員自らが参加したい研修を希望する場合がある。会社では研修にあたり、受講の目的、受講者に期待しているということを事前に説明し、研修後は報告書を提出してもらう。外部研修には同社が定期的に参加する研修があり、年間である一定の人数を派遣している。例えば商工会議所の主催する研修や中小企業大学校などであるが、後者に対しては毎年10名前後が2泊3日の研修に参加している。中小企業大学校の研修については、営業部門だけではなく、製造部門も参加している。これらの研修にはレベルがいくつかあり、営業が参加するものであれば、初任者クラスのビジネスの心構えや説明力といった内容ものから、レベルが上がるに従っての提案営業やマーケティング、管理者の心構えなどまでと、営業全般で必要になる一般知識的なものが中心になる。同社でも社員の階層よって、そのレベルに応じた研修を受けることになる。外部研修では、これらのほかにもJAGATの研修なども積極的に利用している。
なお、以上の個別の社員に対応した研修制度とは別に、新入社員については社内で基本的な研修を行うとともに、JAGATの新入社員研修などを利用している。その後はOJTでの教育となり、1〜2年後にまたフォローの研修を行っている。
教育計画に基づくもののほかにも、必要に応じて社内で行う研修もある。
「社内の研修については、定期的に計画を立てて行うものではないですが、例えば新しい分野の受注開拓を行うプロジェクトを立ち上げた時などには、その分野の専門的な知識をもつ人を講師にした研修を行うことがあります。こうした研修ではプロジェクト参加者だけではなく、営業担当者全員に行う場合もあります。
例えば、現在は営業の新規開拓は独立した専門の部署になっているのですが、新規開拓のメンバーと業務部門、XML関連の部門が一緒に新規開拓で必要になる新しいサービスやツールについての勉強会を月に2回行っています」(小崎常務)
同社がこれから求める人材としては、営業であればもちろん受注が獲得できる人であるということは言うまでもないが、そのためにはやはりクライアントに対して提案できる能力をもった社員であることが基本になる。
「これからの営業は何かしらの提案ができないと、クライアントに会うことも難しくなっています。特に新規開拓においては、近年の情報セキュリティに対するリスク管理が厳しくなっていることもあり、単なるお伺いでは受付すら通ることができないこともあります。やはり、訪問したいクライアント情報をできるだけ事前に集めて、興味をもってもらえる提案を行えないと受注は難しくなっています」(小崎常務)
そういった意味では営業としての基本スキルや知識をベースにして、きちんとしたクライアントとの関係を作れるコミュニケーション力を元に、企画提案をできる人材を育成していく必要があるという。
現状では、提案できる営業とそれができていない人の差があり、そのことが実際に受注の実績でも大きな差になっているとのことである。そのため、営業全体のレベルアップが課題の一つになっているようだ。
また、全社的に見ると、社会人としての役割や責任を自覚できる人材が求められるという。この部分が欠けていると、会社にとっても大きなリスクにつながるという認識がある。
「営業であれば、個人情報に限らずクライアントから預かったもの、その仕事を受注しているということ自体を含めて、すべてについて機密事項だということを自覚して、きちんとリスク管理することが必要です。それらすべてがコンプライアンスに含まれるということを認識することが、これからビジネスを行う上では欠かせません」(中村社長)
そのため、中小企業大学校などで印刷に直接関係ない内容を一般企業の人と一緒に受けて、それらの人たちと交流することで、自分たちの会社以外の人たちの考え方を知り、社会人としての基本的なマナーや責任・役割を身に着けてほしいと期待している。
プリンターズサークル 3月号より一部抜粋
2007/04/03 00:00:00