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写真原稿入稿事情について(ほんの少し)物申す

RAWデータは分らん

3月22日〜3月25日、東京ビッグサイトで写真関係ではメジャーな展示会であるPIE(フォトイメージングエキスポ)が開催された。打ち合わせを主目的にPIEを訪問したのだが、ある印刷会社の社長さんに久々にお会いして三十分ほどではあるが写真談義に興じてしまった。(印刷・製版会社の経営者には写真好きが多い。この社長さんもお忍びかも?)その際に「どうもRAWデータというのが分らん」と質問されたのだが、よくよく考えてみると「分らん方が普通なのだ」と再認識した次第である。PIE会場で、根源的な疑問を突きつけられ、良い機会なので(デジカメ)写真入稿について、ジャブ程度に問題提起してみたい。

非破壊主義的RAWデータ

質問した社長は「撮影しただけで、露出も決まっていない写真に何の価値があるんだ?」という御意見なのだが、Adobe Systems社等が主張している「非破壊主義ワークフロー」とは、撮影した生データはそのままにして、写真家の撮影意図はタグ情報としてデータに残していくというものであるので価値がないというものではない。CEPS時代に登場した履歴ブラシのようなものを想像いただければ良い。確かにRAW信奉者には何でもかんでもRAWが良いと考えている人もいるのでRAWデータ推進派の中でも区別して考えなくてはいけない。

またRAWデータには16bit記録以外にデ・モザイクといってCCDのRGGBセンサーから各画素分のRGBデータを計算する前のデータで記録するというポイントも強調されることも多い。デ・モザイクのアルゴリズムが進化するとそれに応じて画質向上も図られるというものだ。これは嘘ではなく数年前のRAW現像ソフトと最新のものと同じRAWデータの現像結果を比べるとその進化はハッキリ体感することが出来る。このことを拡大解釈すれば純正以外の現像ソフトにも言えることで、ソフト技術が未熟なカメラメーカーならソフト開発を専門としているAdobe Systems社辺りが作ったソフトの方が優れているということも一概には否定できない。しかしこのことは画質進化とともに色も変化する可能性があるということで、デジカメの特徴の一つである色の正確さという点では疑問は残るものである。銀塩写真は正確な色という点では問題点が多いが、デジカメの場合は正確に色再現しようと思えば可能性は高い。各社のRAW現像ノウハウによって色が変わるということになるとワークフローや機材・ソフトを固定していく必要があるということだ。蛇足だがデジカメの画質はデジタル処理だけではなく、アナログ処理や光学的な歪をデジタル処理するというメカ(アナログ)的なノウハウが大きく作用する。この辺も考慮すると益々ソフトによって色が変わるという要素は大きくなる。

大は小を兼ねるが、逆は?

最近LightRoomで開いた画像とPhotoshopで開いた画像の色が違うということを耳にするようになったが、しごく当たり前の話でLightRoomはRAWデータを対称にしているため、デフォルトの作業領域がPro Photo RGBという非常に大きなエリアを使用している。ましてやsRGBやAdobe RGBがD65を基準にしているのに対して、Pro Photo RGBはD50だ。いくら知覚的変換をしようしてもこれでは色が変わるのは当たり前だ。(色域の大きさが違いすぎるのと色温度の差)

印刷業界ではプロファイル変換という便利なものを覚えたせいか、万能のように考えてしまっているように見受けられる。CMYK to CMYKなどその最たるもので、狭い色域から広い色域、つまりJMPAからJapan Colorへの変換など言語道断なのだ。1,000歩譲ったとしても色を変えないために致し方なく行うということを認識しつつ、トーンジャンプ等には細心の注意を払うべきものだ。
元データのRGBに戻って、基本的な調子は揃いつつもJapan Colorの方が色域は広く再現されているというのが本来の考え方である。そういう元データこにこそRAWデータの非破壊主義的なワークフローは使われるべきなのだ。

2007/04/05 00:00:00


公益社団法人日本印刷技術協会